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日本言語文化研究会論集 2006 年第 2 号 【特定課題研究報告】 ヤンゴン外国語大学における漢字授業改善 -コース・デザインの作成に向けて- スストウェー 要旨 本稿ではヤンゴン外国語大学(ミャンマー)の漢字授業を改善するために、教師および学 習者を対象に漢字授業に関する調査を行なった。調査の結果から、現在の漢字授業は教師が 作成した講義ノートに基づく板書が中心であること、また、教え方の工夫はあまり行なわれ ておらず、学生の活動は板書を書き写すことが中心となっていることが分かった。学生の学 年別に見ると、1年生は漢字学習の意欲が高く、授業に対する不満が少ないが、2年生は学習 に対して一番難しさを感じており、3 年生は漢字学習に慣れていること、また、2 年生と 3 年生は漢字授業に対して大きな不満はないが、授業は工夫がなく、書くことが中心などの問 題点を認識していることが明らかになった。そこで、板書中心の授業の見直しと、中級以降 を見据えた初級の指導による授業改善案を提出し、「識字中心の体系的漢字指導法」(西口 1996)を取り入れたコース・デザインを提案した。 〔キーワード〕漢字授業、授業改善、識字中心の体系的漢字指導法、板書中心、ミャンマー 1. 研究の背景 ヤンゴン外国語大学(ミャンマー、以下YUFL と略す)の学習者は非漢字系学習者であるた め、日本語を学習する際、漢字学習は問題点の1つとなっている。また、漢字授業において も、体系的な説明や知識の整理などの効果的な指導法はあまりとられていない。そのため、 学習意欲が低下する学習者も少なくない。したがって、現在の漢字授業には改善が必要だと 考えられる。 1.1 ヤンゴン外国語大学の日本語コースと漢字授業の概要 外国語科目として日本語教育が実施されている大学は、ミャンマーではYUFL とマンダレー 外国語大学(以下 MUFL と略す)の 2 校しかない。2 つの大学では日本語は英語に次いで人気 がある科目であり、年々学習者も増加している。 YUFL では、日本語学科は 1964 年に開講された。現在、日本語授業は B.A コース日本語専 攻を中心に 6 つのコースに分けられ、学習者は全体で約 800 人以上いる。本研究では、B.A コース日本語専攻(学習者約 150 人)を取り上げる。 〈表1〉は、YUFL の B.A コース日本語専攻における日本語の授業の概要を表したものであ - 165 -

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日本言語文化研究会論集 2006年第 2号 【特定課題研究報告】

ヤンゴン外国語大学における漢字授業改善

-コース・デザインの作成に向けて-

スストウェー

要旨

本稿ではヤンゴン外国語大学(ミャンマー)の漢字授業を改善するために、教師および学

習者を対象に漢字授業に関する調査を行なった。調査の結果から、現在の漢字授業は教師が

作成した講義ノートに基づく板書が中心であること、また、教え方の工夫はあまり行なわれ

ておらず、学生の活動は板書を書き写すことが中心となっていることが分かった。学生の学

年別に見ると、1年生は漢字学習の意欲が高く、授業に対する不満が少ないが、2年生は学習

に対して一番難しさを感じており、3 年生は漢字学習に慣れていること、また、2 年生と 3

年生は漢字授業に対して大きな不満はないが、授業は工夫がなく、書くことが中心などの問

題点を認識していることが明らかになった。そこで、板書中心の授業の見直しと、中級以降

を見据えた初級の指導による授業改善案を提出し、「識字中心の体系的漢字指導法」(西口

1996)を取り入れたコース・デザインを提案した。

〔キーワード〕漢字授業、授業改善、識字中心の体系的漢字指導法、板書中心、ミャンマー

1. 研究の背景

ヤンゴン外国語大学(ミャンマー、以下YUFLと略す)の学習者は非漢字系学習者であるた

め、日本語を学習する際、漢字学習は問題点の1つとなっている。また、漢字授業において

も、体系的な説明や知識の整理などの効果的な指導法はあまりとられていない。そのため、

学習意欲が低下する学習者も少なくない。したがって、現在の漢字授業には改善が必要だと

考えられる。 1.1 ヤンゴン外国語大学の日本語コースと漢字授業の概要

外国語科目として日本語教育が実施されている大学は、ミャンマーではYUFLとマンダレー

外国語大学(以下MUFLと略す)の2校しかない。2つの大学では日本語は英語に次いで人気

がある科目であり、年々学習者も増加している。

YUFL では、日本語学科は1964 年に開講された。現在、日本語授業はB.A コース日本語専

攻を中心に 6 つのコースに分けられ、学習者は全体で約 800 人以上いる。本研究では、B.A

コース日本語専攻(学習者約150人)を取り上げる。

〈表1〉は、YUFLのB.Aコース日本語専攻における日本語の授業の概要を表したものであ

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る。B.Aコース日本語専攻は3年制であり、1、2、3年生とも前期と後期(学期ごとに14週)

となっている。1クラスの人数は50人前後であり、1、2、3年生とも1クラスずつしかない。

授業時間は1コマ50分である。

〈表1〉ヤンゴン外国語大学B.Aコース日本語専攻授業の概要 学年 科目名 時間数 使用教材 備考

文法 7コマ 『初級日本語』1課~28課(東京外国語大学留

学生日本語教育センター)

練習 3コマ 『初級日本語練習』(東京外国語大学留学生日本

語教育センター)

漢字(かな) 2コマ 『かな入門』(国際交流基金)

担当教師の講義ノート

『初級日本語漢字練習帳』(東京外国語大学留学

生日本語教育センター)

聴解 2コマ 『毎日の聞き取り50日』(初級)(凡人社)

『楽しく聞こう』(文化外国語専門学校編)

1年

15時間(週)

コンピュター 1コマ

文法の授業でテキ

ストの読解や作文

の指導も一緒に扱

文法 8コマ 『日本語中級読解入門』1課~31課(アルク)

練習 2コマ 『中級から学ぶ日本語』1課~25課(kenkyusha)

日本文化 3コマ 『中級日本語』1課~7課(東京外国語大学留学

生日本語教育センター)

漢字 2コマ 担当教師の講義ノート

聴解 2コマ 『楽しく聞こう』(文化外国語専門学校編)

『毎日の聞き取り50日』(中級)(凡人社)

発表(スピーチ) 2コマ

2年

20時間(週)

コンピュター 1コマ

文法の授業でテキ

ストの読解や作文

の指導も一緒に扱

文法 12コマ 『中級日本語』8課~21課(東京外国語大学留

学生日本語教育センター)

『上級で学ぶ日本語』1課~15課(kenkyusha)

『上級で学ぶ日本語ワークブック』(kenkyusha)

『日本語読本Ⅳ』の一部(国際学友会)

日本文化 6コマ 『日本語Ⅱ』の一部(国際学友会)

漢字 2コマ 担当教師の講義ノート

翻訳 2コマ

作文 1コマ

聴解 3コマ 『ニュースで学ぶ日本語』(凡人社)

新聞用語 2コマ 『新聞で学ぶ日本語』(凡人社)

『外国人のための新聞の見方』(凡人社)

3年

30時間(週)

発表(スピーチ) 2コマ

文法や日本文化の

授業でテキストの

読解の指導も一緒

に扱う

以下、B.Aコース日本語専攻における漢字授業について述べる。

漢字授業は週に2回、各1コマ行われ、その時間は漢字だけを指導している。現在、1年

生の場合、時間数が一番多い文法授業の教科書として使われているのは『初級日本語』(東京

外国語大学留学生日本語教育センター)であり、漢字授業ではその教科書に含まれている漢

字600字を導入している。担当教師は辞書と『初級日本語漢字練習帳』(同)を参考に、漢字

600字の講義ノートを作っており、これを授業では板書して教える。また、2年生と3年生の

場合、文法授業に使われている教科書の中から、まだ、教えていなかった漢字を選び、辞書

を参考に、講義ノートを作っており、1年生と同じく、板書して教える。2年生には464字、

3年生には616字、3年間で1670字を教えている。

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1.2 漢字授業の現状と問題点

ここでは筆者自身の経験から、漢字授業の現状と、問題点について述べる。

漢字授業では、一般的に1年生から3年生まで1コマに10字~20字前後の漢字を導入し

ている。授業の流れは、黒板に漢字1字の筆順を分解して書き、それから読み方(音読み、

訓読み)と熟語、例文を書く(〈図 1〉参照)。学習者は教師の板書と同時に自分のノートに

書き写す。5~6字ぐらい黒板いっぱい書き終わったら、全部を説明する。以上のような手順

を1コマの授業に2回ぐらい行なう。授業が終わった後、その時間に教えた漢字を学習者に

マス目のノートに1字につき20~40回宿題として書かせる。授業内に時々小テストを行なう

こともあるが、学期末の期末試験で評価を行なう。

〈図1〉漢字1字を教える板書の例

以上の漢字授業には次の問題点が考えられる。

① 担当教師は講義ノートを自分で作らなければならないので、負担が大きい。

② 教授法についての知識や参考資料が不足しているため、指導のポイントが絞り込めない。

③ 文法の授業の進度に合わせ、限られた時間に教えるため、1コマに導入する漢字数が多く

なる。

④ 講義ノートの内容を板書して教えているため、時間がかかる。

⑤ 授業で学習者は板書を書き写すことが中心になっている。

⑥ 教師が主導する授業であり、単調な授業になっている。

⑦ 1クラスの学習者数が50人以上で、教師は学習者1人1人に気を配ることはできない。

⑧ 学習者に漢字学習方法についての情報提供は少ない。

⑨ 教師に頼って、自学自習する学習者はほとんどない。

⑩ 授業で習っただけでは記憶に残らない学習者が多い。

2. 研究の目的

上述した漢字授業の問題点を改善するために、他の教師は授業でどんな教え方で教え、ど

よろこ・ぶ / よろこ・ばす / よろこ・ばしい / キ

・ しけんにごうかくして大変 喜よろこ

びました。

・ 私が仕事を始めることはおやを 喜よろこ

ばせます。

・ 兄の結婚は 喜よろこ

ばしいことです。

・ 人生は時々喜き

げきのようで、時々ひげきのようです。

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んな問題が生じているのかを明らかにしたうえで、授業の見直しを行なう必要がある。また、

学習者が何に興味を持っているか、どんな問題を感じているかなど、学習者の視点から考え

ることも必要である。そして、漢字授業を改善するには、効果的な指導法を授業に取り入れ

ると同時に、漢字授業全体のコース・デザインを考えることも重要である。 本研究では、まずYUFLでの漢字指導や漢字学習の現状と問題点をさらに明確にするため、

教師および学習者に対する質問紙調査を実施する。そして、調査の結果を基に、漢字授業の

改善とコース・デザインへの提案を行なう。

3. 質問紙調査

YUFLでの漢字授業の現状と問題点を把握するため、(1)教師に対する漢字授業についての

調査、(2)教師に対する漢字テストや試験についての調査、(3)学生に対する漢字授業につ

いての調査を行なった。全ての調査は日本からミャンマーに調査紙を郵送し、現地の同僚教

師の協力によって、実施した。

3.1 教師に対する漢字授業についての調査

3.1.1 予備調査

2006年3月にYUFLの教師8名(1年生の担当教師2名、2年生2名、3年生4名)を対象

に漢字の教え方に関する予備調査を行なった。教師8名に1回の漢字授業の内容を自由記述

式で調査した。その際、筆者の漢字授業の具体的な教え方を記述例として提示した。

調査の結果(詳細は添付資料①参照)、1コマの授業の流れは教師9名(筆者を含む)とも

ほとんど同じで、1コマの授業で10~20字ぐらい導入し、それぞれの漢字の画数(書き順)、

訓読みと音読み、熟語、例文を中心に教えており、授業中、小テストをすることも多いこと

が分かった。この結果から、本調査の質問項目を確定した。

3.1.2 本調査

3.1.2.1 調査方法

本調査は、「1.2漢字授業の現状と問題点」と予備調査の結果を踏まえ、教師に対する漢字

授業についての質問紙を作成し、2006年4月上旬にYUFLの教師28名とMUFLの教師18名、

計46名を対象に行なった。

本調査は以下の3つの部分から構成される(添付資料②参照)。

Ⅰ.漢字授業で漢字を教える時、どんなことをしますか。(18項目、5段階評定法)

Ⅱ.漢字授業についてどう思いますか。(21項目、5段階評定法)

Ⅲ.漢字授業や教え方についてどんなところを改善するといいと思いますか。(自由記述式)

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3.1.2.2 調査の結果と考察

質問Ⅰ.漢字授業で漢字を教える時、どんなことをしますか。

質問Ⅰは(1.いつもする、2.よくする、3.どちらともいえない、4.あまりしない、5.

全然しない)の5段階評定法で行なったが、ここでは、全体の傾向を見やすくするため、「ど

ちらともいえない」を除き、以下のようにまとめた。

「いつもする」、「よくする」→「する」 「あまりしない」、「全然しない」→「しない」

〈表2〉教師の漢字の教え方 (「する」の降順) 番号 項目 %

Ⅰ. 漢字授業で漢字を教える時、どんなことをしますか。 する しない

⑦ 音読みと訓読みを同時に教える 100 0

③ 例外的な読み方を教える(例えば:大人、一日など) 98 2

⑮ 学生に漢字を何回も書くように勧める 98 0

① 漢字の書き順や画数を教える 96 4

⑧ 例文を書いて説明する 96 2

⑰ 学生が提出する宿題をチェックする 93 4

⑫ 一つの漢字を教える時、それに関連がある熟語を教える 93 2

⑬ 学生が漢字の字形が正しく書けるよう気をつけて教える 93 2

⑪ 意味をミャンマー語で説明する 89 4

⑭ 教師自身の体験から漢字学習方法を学生に教える 85 11

⑯ 漢字の部首について説明する 76 17

⑥ 試験の他に授業で小テストをする 74 20

⑤ 新しい漢字を導入する前に習った漢字の復習をする(前回の授業で習った漢字) 43 48

⑨ 漢字の例文や熟語をひとりずつ読ませる 33 63

⑩ 新しい漢字を導入する前に復習をする(導入する漢字と関連がある漢字) 30 57

② 漢字をグループ分けして教える 28 67

④ 漢字の成り立ちを教える 28 67

漢字授業では、ほとんどの教師が⑦③読み方(丸数字は該当する質問番号、以下同じ)や

①⑬書き方、⑧例文、⑫熟語に焦点を当てて教えており、⑮⑰宿題などで何回も書かせてい

る。これは予備調査の結果と一致している。教師はこのような教え方をよくしているが、そ

れは、自分が習ったとおりの教え方で教えているからだろう。一方、漢字学習や記憶に役立

つといわれる②漢字をグループ分けして教える、④漢字の成り立ちを教えるなどの工夫はあ

まり行われていないが、それは漢字指導についての知識が不足しているためではないかと考

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えられる。したがって、⑭教師自身の体験から漢字学習方法を学習者に教えるというものの、

実際には何回も書いて覚えることが中心になっていると思われる。これについては後述の学

生に対する調査結果にも表れている。また、⑤⑩復習をあまりしていないため、既習漢字と

の関連付けが十分に行われていないと考えられる。

質問Ⅱ.漢字授業についてどう思いますか。

質問Ⅱは(1.全くそう思う、2.そう思う、3.どちらともいえない、4.あまりそう思わ

ない、5.全然そう思わない)の5段階評定法で行なったが、ここでは、全体の傾向を見やす

くするため、「どちらともいえない」を除き、以下のようにまとめた。

「全くそう思う」、「そう思う」→「思う」 「あまりそう思わない」、「全然そう思わない」→「思わない」

〈表3〉教師の漢字授業に対する考え方 (「思う」の降順)

番号 項目 %

Ⅱ. 漢字授業についてどう思いますか。 思う 思わない

⑫ 小テストは学生の漢字学習に役に立つ 100 0

⑭ 授業で熟語や例文を教えると役に立つ 98 2

⑳ 学生が授業中、ノートに正しく書き写しているかどうか確認する必要がある 96 4

⑯ 漢字授業でもっと小テストをする必要がある 89 9

② 担当教師が違っても、授業の流れはほとんど同じ 78 11

③ 1クラスの学生の人数が多い 74 26

① 自作教材を作るのが大変だ 74 22

⑪ 教師の教え方はいつも同じで、工夫がない 70 20

⑥ 漢字活動のための参考書や辞書が少ない 67 24

⑤ 教授法についての知識が浅いため、工夫ができない 65 26

⑲ 漢字試験の問題の形式はいいと思う 65 15

⑬ 短い時間にたくさんの漢字を教えている 61 28

⑧ 熟語によって意味がいろいろあるため、指導するのが難しい 50 39

⑰ 学生によって漢字定着率に差があるので、授業がしにくい 50 39

⑩ 学生が教師の説明をどのぐらい理解しているか分からない 43 41

⑮ 学生は漢字授業にあまり興味がない 39 41

⑦ 音読みと訓読みを同時に教えるため、学生には覚えにくい 37 50

⑨ 黒板に書き順を書くのが大変だ 26 74

⑱ 漢字授業で学生に書かせることだけを中心にするのがいい 26 70

④ クイズやゲームのような活動練習は必要ない 9 85

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まず、漢字授業で⑫⑯小テストをすることは学習者のため、重要であると思っている教師

が多い。予備調査でも小テストをする教師が多く見られ、結果が一致している。このことか

らミャンマー人教師は全般に漢字学習におけるテストの重要性を認識していると考えられる。

また、⑭熟語や例文、⑳書くことを重視しており、実際の授業について答えた質問Ⅰの結

果と一致している。 次に、現在、使用教科書に沿った漢字教材がなく、⑥参考書なども不足しているため、授

業のため①自分で自作教材(講義ノート)を作るのは大変だと感じている教師が多く見られ

る。そして、⑬短い時間に数多くの漢字を教えていることを問題点と思っている教師が多い。

それに、③1 クラスの学習者数が多いことも指導上の困難点として挙げられる。これらは、

1.2 で筆者が挙げた問題点と一致している。ただし、⑨黒板に書き順を書くのが大変だと思

っている教師は少なく、筆者と他の教師の所感は違っている。

また、担当教師による②授業の流れはほとんど同じだと思っている教師が多く、これも予

備調査の結果と共通している。

そして、従来の授業にはほとんど⑤工夫がなく、⑱学習者に書かせることだけではなく、

授業に④活動練習なども取り入れる必要があると感じている教師は多く見られる。このこと

から、多くの教師が現在の漢字授業に改善の必要を感じているようである。 質問Ⅲ.漢字授業や教え方についてどんなところを改善するといいと思いますか。

〈表4〉教師の漢字授業改善に対する考え方 (自由記述を項目化して集計) 項目 人数

時間が少ない 9名

学習者数が多い 5名

導入する漢字数が多い 6名

時間や人数に関すること

時間、教師、学習者の人数がバランスよくあること 1名

学年別に使用教科書に沿った漢字教材が必要 6名

能力試験レベルに合わせた漢字教材が必要 1名

教材に関すること

漢字辞書が必要 1名

新しい工夫をして教える 12名

ゲームやクイズのような練習を授業に取り入れる 5名

教え方に関すること

従来の教え方を充実する 6名

漢字試験の問題形式を変えたほうがいい 3名 テスト

よくテストをする 2名

*46名のうち無回答は15名いた。有効回答は31名で、重複した回答もある。

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時間や人数に関して、漢字授業時間が少ないこと、導入する漢字数が多いこと、それに学

習者数が多いことを改善が必要な点としてあげている。これは筆者があげた問題点と共通し

ている。学習者数は変えることができないが、授業時間と導入する漢字数のバランスを考え

た改善を行なう必要がある。 また、教材に関して、それぞれの使用教科書に沿った漢字教材、能力試験レベルに合わせ

た漢字教材や辞書が必要という意見があった。その理由として、担当教師によって、教える

言葉や熟語が違っていることを挙げる教師もいた。前述のように、自分で講義ノートを作る

のは負担が大きいという意見も多いことから、機関で共通に使える漢字教材の作成が必要で

ある。 次に、教え方に関して、新しい工夫をして教えたい、ゲームやクイズのような練習を授業

に取り入れたい、従来の教え方を充実する必要があるという意見が見られる。その他、上級

レベルになったら画数はあまり教える必要はないという意見もあり、教え方の改善について

は教師によって意見が異なっている。 最後に、テストに関して、よくテストをするのがいい、問題形式を変えたほうがいいとい

う意見があり、テストの工夫も必要であると考えられる。 3.2 教師に対する漢字テストや試験についての調査

3.2.1 予備調査

YUFLの漢字授業中に実施した小テストや期末試験(採点済み答案)の一部のコピーを収集

し、問題形式や採点の仕方や学習者の答え方などを調べた。その結果から、本調査の質問項

目を確定した。

3.2.2 本調査

3.2.2.1 調査方法

本調査は、予備調査を参考に、教師に対する漢字テストや試験についての質問紙を作成し、

YUFLの試験問題作成担当教師8名を対象に行なった。

本調査は以下の3つの質問から構成され、全て自由記述式で行なった(添付資料③参照)。

① 漢字テストや試験の問題形式について、どのような問題を作成していますか。そのよ

うな問題形式を作成する理由を書いてください。

② 出題形式について、教えた全体の漢字の中からどんな漢字をどんなふうに考えて問題

に出しますか。

③ 漢字試験の回答用紙を採点する際、どんな基準で採点していますか。

3.2.2.2 調査の結果と考察

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漢字テストや試験についての調査結果の概略は以下の通りである(詳細は添付資料④参照)。

質問①問題の形式

漢字の読み方を書かせる問題と漢字を書かせる問題を出すのが一般的であり、その他、

正しい漢字や同音異字を選ばせる問題、言葉の意味を書いて、その言葉を漢字で書かせる

問題を出す教師もあった。このような問題を出す理由として、学生に正確な使い方を身に

つけさせるため、初級段階から音訓読み両方を覚えさせるため、漢字の意味の理解や読み

書きの能力を高めるため、などがあった。

質問②出題する漢字

読みの問題には長音、促音、特別な読み方の漢字など読み方に特徴がある漢字を出題す

るという点はほぼ一致している。書きの問題には書き間違えやすい漢字を出題する教師と、

書き方が簡単な漢字を出題する教師で意見が分かれている。その他、試験問題の 3 分の 1

はほぼ全員が答えられるようなもの、3 分の 2 は勉強した学生が書けるようなものを出題

する教師もいた。

質問③採点基準 採点基準について、読みの問題の場合、促音、濁音、長音などを含めて、正しい読み方

であること、書きの問題の場合、字形や画数が正しいことを重視している教師が多い。

問題形式や出題する漢字は担当教師によって異なる点があるが、採点基準は教師による違

いはほとんどなく、一致している。テストの形式や採点基準は教師の教え方や学習者の勉強

の仕方に影響がある。そのため、問題作成担当者ではない他の漢字担当教師もテストの形式

や採点基準に合わせ、授業では画数(書き順)に時間をかけて教え、学習者が漢字の字形が

正しく書けるよう気をつけて教えていると考えられる。したがって、授業を改善するために

はテストの見直しも必要と言えるだろう。 3.3 学生に対する漢字授業についての調査

3.3.1 予備調査

予備調査として2005年9月の中旬にYUFLの学生1年生32名、2年生70名、3年生30名、

計132名を対象に、どのような方法で漢字を学習しているかを調べた。調査は14項目(筆者

と学科長との検討によって選定)の中から自分が採用している方法にチェックをつけるとい

う方法で行ない、複数回答をみとめた。調査は日本語で行なった。 〈表5〉学生の漢字学習方法 (上位5位まで) 調査項目 1年生

32名 2年生 70名

3年生 30名

全体 132名

⑨漢字を繰り返して書く 84% 82% 77% 82%

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②漢字を熟語(語彙)として覚える 69% 81% 83% 79%

④新しい漢字を覚えるため習った漢字と結びつけて学習する 69% 41% 73% 55%

⑫文章や会話文を読むことによって、漢字を学習する 9% 56% 70% 48%

③毎日漢字の復習をする 75% 36% 37% 45%

全体的に⑨漢字を繰り返して書く学生が一番多く、1、2、3 年生ともよく使用している学

習方法である。次は②漢字を熟語(語彙)として覚えるだが、2、3年生に比べると1年生は

やや少ない。④新しい漢字を覚えるため習った漢字と結びつけて学習するは、1、3年生は多

いが、2 年生はあまり行なっていない。また、⑫文章や会話文を読むことによって、漢字を

学習するは、2年生と3年生は多いが、1年生は非常に少ない。そして、③毎日漢字の復習を

するは、1年生は多いが、2年生と3年生ではかなり減っている。

3.3.2 本調査

3.3.2.1 調査方法

本調査は、予備調査の結果を踏まえ、調査項目をさらに詳しく検討したうえで質問紙を作

成した。調査対象者は、YUFLの1年生45名、2年生41名、3年生53名、計139名であった。

2006年4月上旬に授業時間内に一斉に実施した(時間は約25分)。

本調査は以下の4つの部分から構成される(添付資料⑤参照。実際の調査はミャンマー語

で行なった)。

Ⅰ.あなたは漢字の学習についてどう思いますか。(15項目、5段階評定法)

Ⅱ.あなたは漢字の授業についてどう思いますか。(14項目、5段階評定法)

Ⅲ.あなたは漢字授業でノートを書く時、何に注意して書きますか。(自由記述式)

Ⅳ.あなたは試験の前に漢字を覚えるためにどうやって勉強しますか。(11項目、5段階評定

法)

3.3.2.2 調査の結果と考察

質問Ⅰ.漢字の学習についてどう思いますか。

〈表6〉学生の漢字学習に対する考え方 (平均値の昇順) 番号

項目

1年生45名

2年生 41名

3年生 53名

全体 139名

Ⅰ. あなたは漢字の学習についてどう思いますか。

④ 漢字を覚えると役に立つ 1.2 1.4 1.3 1.3

③ 字を見て意味が想像できるのがおもしろい 1.8 1.8 1.9 1.8

⑥ 音読みと訓読みなどで混乱する 2.1 1.7 1.9 1.9

⑨ 漢字を勉強するのがすきだ 1.5 2.7 2.0 2.1 *

- 174 -

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① ミャンマー語の文字と全く違う文字だからおもしろい 1.9 2.5 2.4 2.2 *

⑧ 漢字で書かれた文章は意味が分かりやすい 2.4 2.4 2.2 2.3

⑪ 送り仮名をつけるのがむずかしい(例;「明るい」の「るい」の部分) 2.7 2.3 2.3 2.4

② 画数が多くて書くのがむずかしい 2.5 1.8 2.7 2.4 *

⑩ 自習のための適当な辞書や参考書がない 2.2 2.9 2.4 2.5 *

⑭ 学習しなければならない漢字が多いので飽きる 3.5 2.2 2.5 2.7 *

⑬ 熟語が覚えられない 2.9 2.9 2.9 2.9

⑫ 習った漢字が思い出せない 2.9 2.8 3.0 2.9

⑤ 書き順は覚えられない 3.0 2.6 3.0 2.9

⑦ 正しい字形が書けない 3.7 3.5 4.0 3.8 *

⑮ その他

5段階評定法:1.全くそう思う、2.そう思う、3.どちらともいえない、4.あまりそう思わない、5.全然そう思わない

*分散分析の結果、3学年の平均の差が.05で有意なもの。多重比較検定の結果は省略する。 各学年の学生は漢字に対して、①③⑨興味を持っていて、それに漢字の④⑧有用性を認識

している。また、②字形の複雑性、⑥読みの多様性、⑪送り仮名に難しさを感じているが、

⑦書けない、⑤⑫⑬覚えられないという否定的な答えはそれほど多くない。このことから、

学生は全体的に漢字学習に対して肯定的であり、学習上の困難点もある程度克服していると

考えられる。

学年別に見ると、1年生が漢字に対して一番①⑨興味を持っている。1 年生の場合、漢字

学習を始めたばかりで、漢字学習に対する意欲がまだ高いためだと考えられる。それに対し

て、2年生が⑭意欲が一番低くなっている。これは、2年生になると、学習する漢字数が増加

し、字形や読み方が複雑になるが、漢字学習にまだ慣れていないため、一番難しさを感じて

いると考えられる。そして、3年生は②⑦書くことについて難しさを感じていない。これは、

漢字を書くことにある程度慣れているからだと考えられる。

質問Ⅱ.漢字の授業についてどう思いますか。

〈表7〉学生の漢字授業に対する考え方 (平均値の昇順) 番号

項目

1年生45名

2年生 41名

3年生 53名

全体 139名

Ⅱ. あなたは漢字の授業についてどう思いますか。

⑫ 小テストや試験は漢字の学習に役に立つ 1.2 1.4 1.4 1.3

⑪ 授業で習う熟語や例文が役に立つ 1.2 1.4 1.5 1.4 *

⑬ 試験の問題の形式はいいと思う 1.6 1.8 1.8 1.7

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② 漢字授業でおもしろいクイズやゲームのような練習は全然ない 1.6 1.7 1.8 1.7

⑨ 短い時間にたくさんの漢字を教えている 1.6 2.3 2.4 2.1 *

⑦ 漢字の音読みと訓読み全部を同時に教えるから覚えにくい 2.2 2.0 2.4 2.2

③ 授業で習っただけでは記憶に残らない 2.0 2.1 2.5 2.2

⑥ 授業中教師が漢字の様々な学習方法を教えてくれる 1.6 2.7 2.7 2.3 *

⑤ 漢字授業で書くことだけが中心になっている 2.6 2.2 2.2 2.3

⑧ 担当教師が違っても、授業の流れはほとんど同じ 2.7 2.5 2.2 2.5

④ 教師の教え方はいつも同じで、工夫はない 3.2 2.7 2.0 2.6 *

① 漢字授業はおもしろくない 3.8 3.3 2.6 3.2 *

⑩ 宿題で同じ漢字を何回も書くのがいやだ 3.1 3.2 3.5 3.3

⑭ その他

5段階評定法:1.全くそう思う、2.そう思う、3.どちらともいえない、4.あまりそう思わない、5.全然そう思わない

*分散分析の結果、3学年の平均の差が.05で有意なもの。多重比較検定の結果は省略する。 ⑫小テストや試験、それに⑪授業で習う熟語や例文が漢字の学習に有益だと考える学習者

が多く見られ、これは前述の教師に対する調査と一致していることが分かった。また、⑩宿

題に対して、強い不満がないこともわかった。これは、学習者が何回も書くことに馴染み、

漢字学習では書くことが必要と認識されているからだと考えられる。

次に、学生は漢字授業に対して特に①不満を感じていないが、④授業は教師による違いが

なく、⑤書くことが中心になっており、⑨短い時間にたくさんの漢字を教え、③記憶に残ら

ないと感じている。このことから、学生は授業について大きな不満はないが、いくつかの問

題を感じていることが分かった。これも、教師に対する調査の結果と一致している。一方⑦

漢字の音訓読みを同時に教えるため覚えにくいと感じる学習者が多いが、教師に対する調査

ではそう感じていない教師が多かった。

学年別に見ると、1 年生は①漢字授業に対して一番不満が少なく、また、⑥教師がさまざ

まな学習方法を教えてくれると思っている。これは、質問Ⅰで述べたように1年生は漢字学

習を始めたばかりで、漢字学習に対する意欲が高いためだと考えられる。ただし、1 年生は

⑨短い時間にたくさんの漢字を教えているという漢字の数や③授業で習っただけでは記憶に

残らないという記憶保持に難しさを感じている。これは、1 年生にとっては初めての漢字授

業であるし、漢字の学習にまだ慣れていないからだと考えられる。一方、2年生と3年生は、

漢字授業で④工夫がない、⑧流れは同じ、⑤書くことが中心などの問題点を認識しているこ

とが分かった。

質問Ⅲ.漢字授業でノートを書く時、何に注意して書きますか。

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1.1 で述べたように、漢字授業では学習者は教師の板書をノートに書き写すことが中心に

なっている。そこで、学習者は授業中、教師の板書をノートに書き写している時、どのよう

なところを意識しているかを明らかにする。

〈表8〉学生が授業中ノートを書く時に注意すること(自由記述を項目化して集計)

項目 1年生 45名

2年生 41名

3年生 41名*

全体 127名

画数(書き順) ①86.7% ①82.9% ②65.9% 78.7%

音読みと訓読み ③64.4% ②61.0% ①75.6% 66.9%

意味 ②68.9% 39.0% ③34.1% 48.0%

字形(書き方) 26.7% ③51.2% ③34.1% 37.0%

熟語 4.4% 29.3% 22.0% 18.1%

例文 11.1% 7.3% 26.8% 15.0%

用法 20.0% 4.9% 14.6% 13.4%

送り仮名 2.2% 4.9% 7.3% 4.7%

特別な読み方のある熟語 2.2% 4.9% 0.0% 2.4%

振り仮名 2.2% 0.0% 2.4% 1.6%

教師が注意したところ 2.2% 0.0% 0.0% 0.8%

まだ習ったことのない漢字がのっている時、それに注意する 0.0% 0.0% 0.4% 0.8%

自分が好きなとおりに書く 0.0% 0.0% 2.4% 0.8%

*3年生は53名中無回答が12名いたので、有効回答は41名であった。丸数字は学年別の上位3項目の順位を示す。

全体で見ると、「画数(書き順)」に注意する学生が一番多い。ただし、1 年生は非常に多

いが、学年があがるにつれて減少している。これは、3 年生になると、だんだん「画数(書

き順)」に慣れてきて、それに注意しなくても書けるためだと考えられる。「音読みと訓読み」

が二番目に多い。ただし、3年生は非常に多いが、1年生と2年生はやや少ない。これは、3

年生になると、漢字数が増加するとともに、読み方も複雑になってくるためだと考えられる。

学年別で見ると、1年生は「意味」は2年生と3年生より多いが、「熟語」は少ない。これ

は、1年生は漢字1字1字の意味に注目して、熟語としてとらえることに馴染んでいないた

めだと考えられる。2年生で「字形(書き方)」が他の学年より多く見られ、これは、2年生

になると学習する漢字数が増加して、字形を覚えるのが難しくなり、字形自身も複雑になる

ためだと考えられる。3年生は「例文」が多いが、これは、3年生になると、同音異義語など

を文脈で理解する必要性が高くなり、例文の重要性を認識するからだと考えられる。

質問Ⅳ.試験の前に漢字を覚えるためにどうやって勉強しますか。

試験に向けてどのような学習法を使用しているかを調べることで学生の漢字の自習法を明

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らかにする。

〈表9〉学生の試験前の漢字の覚え方(平均値の昇順)

番号

項目

1年生45名

2年生 41名

3年生 53名

全体 139名

Ⅳ. あなたは試験の前に漢字を覚えるためにどうやって勉強しますか。

⑦ 漢字を間違わないように気をつけて書く 1.3 1.6 1.6 1.5 *

⑧ 読み方を見て、漢字を書く 2.1 1.7 1.7 1.8 *

① 漢字を何度も書く 2.2 2.3 2.0 2.2

⑩ ミャンマー語で漢字の意味を覚える 2.6 2.4 2.3 2.4

③ 漢字を見て、読み方を書く 2.5 2.3 2.5 2.5

② 授業の漢字のノートを見て、覚える 2.5 2.8 2.6 2.6

⑨ クラスでやった小テストの問題をもう一度練習してみる 3.7 2.0 2.5 2.7 *

⑥ 熟語を分解しないで、一語として意味を覚える 3.4 2.4 2.2 2.7 *

⑤ 授業の漢字ノート以外に自分で漢字カードやノートを作って覚える 4.2 3.9 4.1 4.1

④ 漢字を大きく書いて部屋の壁などにはる 4.5 4.9 4.7 4.7

⑪ その他

5段階評定法:1.いつもする、2.よくする、3.どちらともいえない、4.あまりしない、5.全然しない

*分散分析の結果、3学年の平均の差が.05で有意なもの。多重比較の結果は省略する。 学習者の試験前の勉強の仕方として⑧①何度も書くことが中心になっている。一方、書く

こと以外、覚えるための④⑤他の勉強の方法はほとんど行っていない。また、学生は勉強す

る際、漢字の細かなところまで⑦間違わないように注意して書いている。

学年別に見ると、3 年生の場合、⑥単漢字として覚えるより熟語として覚えている。これ

は、3年生になると漢字数が増加するとともに、熟語も増加してくるからだと考えられる。2

年生は試験の前に⑨小テストの問題を練習してみることに効果を感じている。しかし、1 年

生の場合、他の勉強の方法をあまり知らないため、書くことだけが中心になっている。

3.2.2.2 に述べたように、授業では書くことを中心に教えているため、学習者の勉強の仕

方も書くことが中心になっていると考えられる。

4. 漢字授業改善の提案

4.1 調査の結果から

漢字授業の改善案を検討する前に、これまでの調査結果をまとめる。

4.1.1 漢字授業に関する調査の全体結果

ここでは教師および学習者に対する漢字授業に関する調査の全体結果を、1.2 で筆者があ

- 178 -

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げた問題点と対照してまとめる。

〈表10〉教師および学習者に対する漢字授業に関する調査の全体結果

(1)授業について

①授業のため、自分で講義ノートを作るのが大変であると思っている教師が多い。 1.2‐①

②授業時間が少なく、1コマで導入する漢字数が多い。 1.2‐③

③学習者は授業では書く活動のみ行ない、また、宿題でも何回も書くことを課せられている。 1.2‐⑤

④1クラスの学習者数が多い。 1.2‐⑦

⑤漢字授業で教師は画数(書き順)、読み方、熟語、例文を重視して教えている。

⑥授業では漢字をグループ分けして教える、漢字の成り立ちを教えるといった活動や練習など

の工夫はあまり行なわれていない。

⑦授業の中で復習はあまりしていないため、既習漢字との関連が十分に行なわれていない。

(2)テストについて

①漢字学習のため、テストが重要であることは教師と学習者両方とも認識しており、現行のテ

ストと試験の問題形式がいいと思う者が多い。

②テストや試験の問題形式や出題する漢字は教師によって違う点があるが、採点基準はほとん

ど一致している。

以上から、現在の漢字授業は③書くこと中心で、⑥工夫が行なわれていないことについて

改善する必要があると考えられる。書くこと中心の授業を見直すことによって、②授業時間

と導入する漢字数のバランスも多少は改善できるのではないかと思われる。また、①講義ノ

ートを作ることに関しては後述のような問題を含んでおり、やはり改善の必要があるだろう。

なお、テストについてはこの調査の結果からは改善の必要性は認められないが、授業を改善

することでテストの見直しも必要になると考えられる。

4.1.2 学習者の学年別の特徴

学習者は全体的に漢字学習に対して興味を持っているという肯定的な考えが多い。また、

字形の複雑性、読みの多様性、送り仮名に少し難しさを感じているが、書けない、覚えられ

ないという否定的な答えは少ない。1年生から3年生まで学年別の特徴は以下の通りである。

(1) 1年生は、漢字学習を始めたばかりなので、漢字学習に対して、意欲が高く、漢字授

業に対して不満は少ない。しかし、授業で習っただけでは、記憶に残らないという記

憶保持や漢字の数の多さに難しさを感じている。

(2) 2年生は、学習すべき漢字数が増えるとともに字形や読み方が複雑になるが、一方学

習方法にはそれほど慣れていないため、漢字学習の意欲が相対的に低く、学習に対し

て一番難しさを感じている。

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(3) 3年生は、漢字学習に慣れているため、書くことには困難を感じていないが、読み方

の重要性を認識し、注意している。

(4) 2年生と3年生は、授業について大きな不満は感じていないが、漢字授業は工夫がな

く、書くことが中心であるということを認識している。

以上から、授業の改善は全体だけではなく、学年別での特徴にも配慮する必要があると考

えられる。

4.2 漢字授業の改善案

4.2.1 板書中心の見直し

4.1.1 で明らかになった漢字授業の全体的な問題点を解決するために、これまで漢字学習

における定着のために有効と考えられてきた板書中心の授業を見直す必要がある。板書中心

の授業では教師は事前に講義ノートを作る負担が重く、学習者は授業中、板書を書き写すこ

とが中心となり、その作業に時間がかかる。

また、板書中心の授業で教師が講義ノートを作る場合、教える言葉や熟語、例文の選択が

担当教師個人の判断に任されているため、学習者のレベルにあまり合わない、親しみのない

語彙や例文が入る場合がある。それに、学習者がノートに書き写す際、間違って書き写し、

そのまま覚えてしまうこともあるなど、問題が少なくない。

そこで、漢字授業の全体的な改善として、板書中心方式の代わりに筆順の説明、字形、読

み方、熟語、例文を記載したコース共通のプリント(ハンドアウト)を作成、配布し、学習

者がノートに書き写していた時間を効率的で工夫された指導に充てることが有効だろう。

4.2.2 中級以降を見据えた初級の指導

豊田(1995)は漢字学習に対する学習者の意識を調査した結果、「初・中・上級レベルで共

通して、漢字の字形よりも読み方が、読み方よりも記憶保持が難しい」こと、また、「初級段

階では漢字学習に対する態度は、楽観的で、また、教師に依存する非自律的なものであるが、

中級段階では漢字学習の難しさを初級段階以上に感じている」ことを明らかにした。これは

4.1.2 の調査結果とも一致している。豊田はこのような状況を改善するために、初級から中

級まで一貫した、自律学習をめざした漢字指導が不可欠であると述べている。

YUFLの漢字授業においても、今後は初級段階から中級以降を見据えた指導法を取り入れる

必要があるだろう。それにより、2 年生になって漢字学習に難しさを感じ、学習意欲が下が

ることを防ぐことができるだろう。

4.3 コース・デザインに向けて

4.3.1 漢字指導の考え方

- 180 -

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西口(1996)によると、「古典的漢字学習」には以下の2つの形態がある。

① 教科書に出てきた漢字を逐次学習していく方法

② 授業や教科書などとは別個に、漢字参考書により独自に漢字を学習する方法

この分類によると、YUFLにおける漢字授業も古典的な漢字学習法に該当するだろう。つま

り、1 年生から 3 年生まで文法の授業で使用している教科書に含まれている漢字を順次教え

ているという点は①になる。ただし、漢字を教える際に、適当な漢字教材がないため、担当

教師が辞書を参考に、自分で講義ノートを作って教えているという点は②の要素を含む。こ

のような古典的な漢字学習法が持つ非組織性と非効率性の問題を解決する方法として「体系

的な漢字指導」が考えられた。

加納他(1988)は効率的な漢字学習を実現するためには、初級段階から漢字に関する体系

的な説明や知識の整理、実際の生活場面に即した実用的な練習などが必要であることを主張

し、初級段階における効率的な漢字教育のために、漢字や漢字語彙の「構造」、使われる「場

面」や意味的なつながりなども取り入れた教材『基本漢字500』を作成した。また、加納(1994)

では、中級段階の漢字学習をも射程に入れ、初級・中級段階の漢字教育において必要となる

学習項目を検討し、より効率的な漢字教育のためのシラバスを提案した。

加納(1994)は、入門期においては、効率的な漢字教育のために表音文字にはない表意・

表語文字の特性を取り上げて教える必要があると述べ、1)字形の複雑性、2)表意性・多義

性、3)表音性・多読性、4)表語性、5)造語性の5つの特性を挙げている。そして、これら

の特性が学習者から見た漢字の難しさの理由として取り上げられることも多いことから、そ

れを克服するための初級および中級段階の学習項目を明らかにしている。

YUFLの漢字授業では、これまで体系的漢字指導は行われていなかったが、漢字学習上の困

難点を克服するために今後はそのような発想による指導を取り入れることが必要だと考えら

れる。

一方、西口(1996)は「体系的な漢字指導」の問題点を指摘し、「識字中心の体系的漢字指

導法」を提案した。これは、すでに学習していると思われる語彙を基礎として組織的に漢字

指導を行なうもので、学習者の語彙力の発達と相互促進的関係にあり、かつ漢字のシステム

に内在する体系性や規則性も学習できるものだという。「識字中心の体系的アプローチ」では、

漢字語の解読処理(いわゆる読み)と符号化処理(いわゆる書き)ができるようになること

が目標であり、漢字の音や意味は学習漢字語の音や意味として学習させる。そして、漢字潜

在能力、つまり漢字のシステムに内在する体系性や規則性に関する知識を開発することによ

り、漢字の記憶が保持されやすくなり、また後続の漢字学習が容易になり、さらに未知の漢

字の意味や音をある程度予測することができるようになるとしている。

西口は、加納の「体系的漢字指導」が漢字システムの体系性や規則性を中心に指導を展開

するのに対して、「識字中心の体系的アプローチ」ではそれらを学習漢字の範囲に限って副次

- 181 -

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的に指導することを強調している。YUFLの漢字授業が他の日本語授業で使用する教材に沿っ

て実施されている現状を考えると、完全な体系的漢字指導よりも、「識字中心の体系的アプロ

ーチ」の方が導入しやすく、より現実的な指導法と言えるだろう。

4.3.2 コース・デザインの基本方針

前述のようにYUFLの漢字授業のコース・デザインは、「識字中心の体系的アプローチ」を

参考に考えることとする。つまり、他の日本語授業で使用する教材に出てくる漢字を漢字語

として逐次的に学習しながら、漢字システムの体系性や規則性を副次的に導入していく。た

だし、導入すべき「漢字潜在能力」について西口(1996)には具体的・全体的な記述がない

ため、ここでは加納(1994)を参考にYUFLの1年生から3年生の漢字授業で段階的に導入す

べき学習項目を考えた。その具体的な内容は以下の通りである。

〈表11〉1年生から3年生のための漢字学習項目一覧

1年生 2年生 3年生

字形

(1)漢字の筆順、画数の数え方*

(2)漢字の字形的構造(部首)によ

る分類

(3)漢字の造字成分への分解

(1)漢字の筆順、画数の数え方*

(2)漢字の字形的構造(部首)によ

る分類

(1)漢字の筆順、画数の数え方*

(2)漢字の字形的構造(部首、音

符)による分類

字形

意味

(1)象形文字、指示文字、会意文字

の字源の説明

(2)漢字の字義による分類(グルー

ピング)

(3)反義の漢字と反義語*

(1)漢字の字義による分類(グルー

ピング)

(2)漢字の意味的な構造(部首)に

よる分類

(1)同音の漢字と漢字語

(2)類義の漢字と類義語

字形

(1)漢字の音訓の読み分け*

(1)形声文字の音符による音の整理

(2)同音の漢字、同訓の漢字

(1)形声文字の音符

(2)同音の漢字、同訓の漢字

漢字語

意味・

用法

(1)形容詞や動詞の漢字の送り仮名

(2)漢字語の用法、漢字語の意味・

使用場面による分類

(1)漢字熟語の用法(品詞)別の

分類

(2)漢字語の意味・使用場面による

分類

(1)文脈による漢字読みの類推

(2)文脈による漢字語の選択

漢字の

造語性

(1)漢字の接辞的用法(接頭辞、接

尾辞)

(1)漢字の接辞的用法(接頭辞、接

尾辞)

(2)漢字熟語の造語成分の分解

(3)複合語のアクセントや連濁など

の音変化

(1)漢字熟語の意味的な構造(語

構成)

*は現在の漢字授業ですでに導入しているもの。

加納(1994)の項目のうち「漢字の中心義と派生義」と「日本語の漢字音の特徴」はYUFLの学習者にとって、必要性が高くな

いため、取り入れない。

西口は「識字中心の体系的アプローチ」は一時に複数の項目を扱う複合型であり、それに

同じ学習項目を違った角度から何回も扱う多角的アプローチであると述べている。YUFLでの

漢字授業のための漢字学習項目を選定する際、学習者が難しいと感じているものに、漢字学

習に必要とされるものを加え、それにYUFLでの従来の漢字授業ですでに導入している項目も

充実する必要があると考え、上記のような項目を選定した。

- 182 -

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また、西口によると、「識字中心の体系的アプローチ」はどのような順で学習を展開しても

よいモジュール方式であるという。しかし、実際に教師が行なう授業には一定の提出順が必

要であり、YUFLの漢字授業に取り入れる項目を選定する際には学年別・段階的に考えなけれ

ばならない。それで、1年生にはしっかり指導すべき漢字の基本的項目を導入し、2年生と3

年生には漢字語が増え、文脈で理解する必要があるため、これと合わせた項目を導入した。

また、2、3年生になっても必要に応じて、復習として1年生で導入した同じ項目を取り入れ

ることも考えた。

5. 今後の課題

本研究では、YUFLでの漢字授業を改善するため、教師と学習者に対する調査を行ない、そ

の結果に基づいて改善案を提出し、さらにコース・デザインに向けての基本方針を検討した。

授業の改善案としてはこれまでの板書中心方式を見直し、段階的な指導を取り入れることを

提案した。また、コース・デザインの基本方針として「識字中心の体系的アプローチ」を取

り入れることを提案し、各学年で重点的に導入すべき学習項目を明らかにした。この授業改

善案とコース・デザインの基本方針は、これからの効率的な漢字指導を考えるための第一歩

であり、帰国後、現地の教師と共有し、実現に向けて具体的な方法を考える必要がある。

また、西口によると、「識字中心の体系的アプローチ」における教師の役割は、学習者が学

習リソースを十分に活用できるよう、教師は学習指導の中で指導と助言を行なうことである。

学習者が学習リソースを十分に活用できるようになれば、学習者の自律性も高まり、自らの

力で有効な学習を展開できるようになる、という。また、漢字と漢字語の学習材料を整然と

提示する際、単純に最初から順に学習していると、時として単調になる。そのような場合、

学習に変化を持たせたり、ゲーム的な要素のある学習活動を実施したり、漢字や漢字語の体

系性を発見させるような学習活動を行なったりして、学習を活性化することも教師の役割だ

と述べている。YUFLの漢字担当教師も漢字授業を行なう際に、そのような教師の役割を自覚

して工夫していく必要があるだろう。

謝辞

本研究の調査実施に多大なるご協力をくださったミャンマーのヤンゴン外国語大学とマン

ダレー外国語大学の教師および学生の方々に深くお礼を申し上げます。

参考文献

(1) 石井恵理子(1998)「非母語話者に対する漢字教育」『日本語学』17(5)、明治書院、

73-82.

(2) ウラムバヤル、ツェツェグドラム(2005)「モンゴル国立科学技術大学の学生が使用し

- 183 -

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ている漢字学習ストラテジー・漢字シラバスの作成に向けて」『日本語教育指導者養成

プログラム論集』1、国際交流基金日本語国際センター・国立国語研究所・政策研究大

学院大学、201-228.

(3) 大北葉子(1995)「漢字学習ストラテジーと学生の漢字学習に対する信念」『世界の日本

語教育』5、105-123.

(4) 大北葉子(1998)「初級教科書の漢字学習ストラテジー使用及び漢字学習信念に与える

影響」『世界の日本語教育』8、31-45.

(5) 加納千恵子(1994)「漢字教育のためのシラバス案」『筑波大学留学生教育センター日本

語教育論集』9、41-50.

(6) 加納千恵子(1999)「漢字教育の動向:情報処理科学や認知科学の視点から」『月刊言語』

28(4)、大修館書店、70-76.

(7) 加納千恵子・清水百合・竹中弘子・石井恵理子(1988)「基本漢字の選定」『筑波大学留

学生教育センター日本語教育論集』3、75-93.

(8) 川口義一・加納千恵子・酒井順子(1995)『日本語教師のための漢字指導アイデアブッ

ク』創拓社

(9) 東京外国語大学留学生日本語教育センター(1994)『初級日本語』凡人社

(10)豊田悦子(1995)「漢字学習に対する学習者の意識」『日本語教育』85、101-113.

(11)西口光一(1996)「識字中心の体系的アプローチによる漢字教育の内容と指導法」『JALT

Journal of Japanese Language Education』1、64‐78.

- 184 -

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添付

資料

教師

8名

の具

体的

な漢

字の

教え

方(

自由

記述

を項

目化

して

分類

教師

A(

3年

生)

B(

3年

生)

C(

3年

生)

D(

3年

生)

E(

2年

生)

F(

2年

生)

G(

1年

生)

H(

1年

生)

1コ

マの

字数

1コ

マ15字

ぐら

1コ

マ15字

ぐら

い1コ

マ15字

ぐら

い1コ

マ20字

ぐら

1コ

マ10字

ぐら

い1コ

マ10~

15字

らい

1コ

マ10~15

字ぐ

らい

1コ

マ10~15

字ぐ

らい

既習

漢字

の復

前の

授業

で習

た漢

字を

復習

する

前の

授業

で習

た漢

字を

復習

する

時々

復習

する

画数

につ

いて

書き

方を

画数

ごと

書く

②総

画数

総画

②総

画数

総画

①総

画数

書き

方を

画数

とに

書く

①書

き方

を画

数ご

とに

書く

訓読

みと

音読

みに

つい

②音

読み

と訓

読み

を書

③訓

読み

を説

明す

③音

読み

と訓

読み

を書

④訓

読み

を説

明す

②音

読み

と訓

読み

を書

③音

読み

と訓

読み

を書

②音

読み

と訓

読み

を書

②音

読み

と訓

読み

を書

②音

読み

と訓

読み

を書

⑦時

々例

外の

音読

みを

教え

②音

読み

と訓

読み

を書

熟語

と例

④訓

読み

の例

文を

書い

て説

明す

⑤音

読み

を説

明す

⑥音

読み

の熟

語を

書い

て、

説明

する

⑤熟

語を書く(説明

する

③熟

語を

書く

④熟

語の

例文

を書

④例

文を

書く

熟語

を書

④例

文を

書く

③例

文を

書く

例文

を書

③例

文を

書く

ここ

まで

の説

⑤こ

こま

での

説明

をす

⑤こ

こま

での

説明

をす

⑤こ

こま

での

説明

をす

④こ

こま

での

説明

をす

④こ

こま

での

説明

をす

④こ

こま

での

説明

をす

復習

習っ

たこ

とを

う一

度復

習す

⑥習

った

こと

をも

う一

度復

習す

宿題

⑥宿

題として

30字

書か

せる

⑦宿題として

30字

書か

せる

⑥宿題として

20字

書か

せる

⑤宿

題と

して

40字

書か

せる

⑤宿

題と

して

40~

60字

書か

せる

⑤宿

題と

して

40字

書か

せる

テス

トに

つい

⑧月

に1回

テス

トす

月に

1回

テス

する

⑥時

々テ

スト

する

時々

テス

トす

その

⑧プ

リン

トし

て教

える

こと

もあ

⑧時

々プ

リン

トを

配っ

て教

える

⑧時

々グ

ルー

プ分

けし

て訓

読み、音

み、熟

語を

注意さ

*(

)内

は筆

者の

補足

、①

~⑧

は順

番を

表す

- 185 -

Page 22: 001 2003 i2j - grips.ac.jp

添付

資料

〈教

師用

アン

ケー

ト〉

漢字

の授

業に

つい

ての

アン

ケー

ト調

この調

査は

、皆

様の

漢字

授業

につ

いて

の問

題点

や意

見、

考え

など

につ

いて

詳し

く知

り、

ヤンゴ

ン外

国語大

学で

漢字

がど

のよ

うに

教え

られ

てい

るか

を調

査す

るも

ので

す。

他の

目的

に使用

する

ことは

あり

ませ

んの

で、

最後

まで

回答

して

くだ

さる

よう

ご協

力を

お願

いい

たし

ます

(調

査者

スス

トウ

ェー

国際

交流

基金

日本

語国

際セ

ンタ

ー・

国立

国語

研究

所・

政策

研究

大学

院大

携大

学院

2005年

度日

本語

教育

指導

者養

成プ

ログ

ラム

(修

士)

ヤン

ゴン

外国

語大

日本

語学

助講

下記

の欄

に所

定の

事項

をご

記入

くだ

さい

性別

□男

女性

年齢

:_

__

本語

教授

経験

:_

__

__

漢字

授業

を担

当し

たこ

とが

あり

ます

か:

はい

□い

いえ

(は

いと

答え

た方

)ど

のぐ

らい

担当

した

こと

があ

りま

すか

:_

__

__

_

カ月

何年

生で

すか

:_

__

__

__

_

現在

、担

当し

てい

る授

業:

文法

漢字

文化

発表

聞用

何年

生で

すか

:_

__

__

__

_

以下の

項目

のそれ

ぞれ

につ

いて

、あ

なた

の考

えに

近い

答え

を1

~5

まで

の中

から

ひと

つ選

んで番号に○をつ

けてく

ださい。ま

た、それ

以外

に理由

がある場

合は、「

その

他」に

記入し

てく

ださ

い。(

漢字の授業を担当したことがある方はその経験から、担当したことがない方

はも

し自

分が

担当

する

とし

たら

どう

か、

とい

うこ

とで

答え

てく

ださ

い)

Ⅰ.

漢字

授業

で漢

字を

教え

る時

、ど

んな

こと

をし

ます

か。

いつ

もす

くす

ちら

とも

言え

ない

あま

りし

ない

全然

しな

漢字

の書

き順

や画

数を

教え

漢字

をグ

ルー

プ分

けし

て教

える

例外

的な

読み

方を

教え

る(

例え

ば:

大人

おと

、一

日つ

いた

など

漢字

の成

り立

ちを

教え

新し

い漢

字を

導入

する

前に

習っ

た漢

字の

復習

をす

試験

の他

に授

業で

小テ

スト

をす

音読

みと

訓読

みを

同時

に教

える

例文

を書

いて

説明

する

漢字

の例

文や

熟語

をひ

とり

ずつ

読ま

せる

新し

い漢

字を

導入

する

前に

復習

をす

意味

をミ

ャン

マー

語で

説明

する

一つ

の漢

字を

教え

る時

、そ

れに

関連

があ

る熟

を教

える

学生

が漢

字の

字形

が正

しく

書け

るよ

う気

をつ

けて

教え

教師

自身

の体

験か

ら漢

字学

習方

法を

学生

に教

える

学生

に漢

字を

何回

も書

くよ

うに

勧め

漢字

の部

首に

つい

て、

説明

する

学生

が提

出す

る宿

題を

チェ

ック

する

その

__

__

__

__

__

__

__

__

__

__

__

__

__

__

_

- 186 -

Page 23: 001 2003 i2j - grips.ac.jp

Ⅱ.

漢字

授業

につ

いて

どう

思い

ます

か。

全く

そう

思う

う思

どち

らと

も言

えな

あま

りそ

う思

わな

い 全

くそ

う思

わな

自作

教材

を作

るの

が大

変だ

担当

教師

が違

って

も、

授業

の流

れは

ほと

んど

同じ

一ク

ラス

の学

生の

人数

が多

クイ

ズや

ゲー

ムの

よう

な活

動練

習は

必要

ない

教授

法に

つい

ての

知識

が浅

いた

め、

工夫

がで

きな

漢字

活動

のた

めの

参考

書や

辞書

が少

ない

音読

みと

訓読

みを

同時

に教

える

ため

学生

には

覚え

にく

熟語

によ

って

意味

がい

ろい

ろあ

るた

め、

指導

する

が難

しい

黒板

に書

き順

を書

くの

が大

変だ

学生

が教

師の

説明

をど

のぐ

らい

理解

して

いる

分か

らな

教師

の教

え方

はい

つも

同じ

で、

工夫

がな

小テ

スト

は学

生の

漢字

学習

に役

に立

短い

時間

にた

くさ

んの

漢字

を教

えて

いる

授業

で熟

語や

例文

を教

える

と役

に立

学生

は漢

字授

業に

あま

り興

味が

ない

漢字

授業

でも

っと

小テ

スト

をす

る必

要が

ある

学生

によ

って

漢字

定着

率に

差が

ある

ので

、授

業が

しに

くい

漢字

授業

で学

生に

書か

せる

こと

だけ

を中

心に

する

のが

いい

漢字

試験

の問

題の

形式

はい

いと

思う

学生

が授

業中

、ノ

ート

に正

しく

書き

写し

てい

るか

どう

か確

認す

る必

要が

ある

21

その

_________

__

__

__

__

__

__

__

__________

__

__

_

Ⅲ.漢

字の授業や教え方についてどんなところを改善するといいと思いますか。(

自由に書

いて

くだ

さい

。ミ

ャン

マー

語で

書い

ても

いい

です

。)

協力

あり

がと

うご

ざい

ます

- 187 -

Page 24: 001 2003 i2j - grips.ac.jp

添付

資料

〈漢

字テ

スト

や試

験に

関す

る調

査〉

この

調査

は、漢

字テ

スト

や期

末試

験の

問題

作成

につ

いて

調べ

よう

とす

るも

ので

す。

3つ

の質問

から

なって

いま

す。

教師

ひと

りの

回答

のみ

を問

題に

した

り、

公表

した

りす

るこ

とは

ありま

せん

。分析

処理

した

アン

ケー

ト用

紙は

、調

査者

は責

任を

持っ

て廃

棄さ

せて

いた

だき

ます。

お忙

しいと

ころ

、大

変恐

縮で

すが

、最

後ま

で回

答し

てく

ださ

るよ

うご

協力

をお

ねが

いい

たし

ます

(調

査者

スス

トウ

ェー

国際

交流

基金

日本

語国

際セ

ンタ

ー・

国立

国語

研究

所・

政策

研究

大学

院大

連携

大学

2005年

度日

本語

教育

指導

者養

成プ

ログ

ラム

(修

士)

ヤン

ゴン

外国

語大

日本

語学

助講

下記

の欄

に所

定の

事項

をご

記入

くだ

さい

性別

□男

女性

年齢

:_

__

本語

教授

経験

:_

__

以下

の3項

目に

つい

て自

由に

記述

して

くだ

さい

漢字テストや

試験

の問

題形

式に

つい

て、

どの

ような

問題

を作

成し

てい

ます

か。

その

うな

問題

形式

を作

成す

る理

由を

書い

てく

ださ

い。

出題

形式について、教えた全体の漢字の中からどんな漢字をどんなふうに考えて問題

に出

しま

すか

漢字

試験

の回

答用

紙を

採点

する

際、

どん

な基

準で

採点

して

いま

すか

ご協

力あ

りが

とう

ござ

いま

す。

- 188 -

Page 25: 001 2003 i2j - grips.ac.jp

添付

資料

教師

に対

する

漢字

テス

トや

試験

につ

いて

の調

査結

果(

自由

記述

を項

目化

して

分類

教師

A

B

C

D

E

F

G

H

レベ

記述

なし

中・

上級

述な

記述

なし

述な

記述

なし

初級

漢字

の読

み方

漢字

の読

み方

(音

訓読

みを

書か

せる

・文中にある漢

字を

カナ

で書

かせ

熟語

の読

み方

を書

かせ

・文

中の

漢字

の訓

読み

を書

かせ

・漢

字の

読み

方 ・

漢字

の読

み方

・読

み方

中心

問題

・漢

字の

読み

・漢

字の

書き

・漢

字の

書き

方(

字を

1つ

ずつ

や熟

語を

書か

せる

・文

や言

葉を

漢字

で書

かせ

・文中にある言

葉を

漢字

で書

かせ

熟語

の書

き方

を書

かせ

・漢

字の

書き

方・

漢字

の書

き方

・漢

字の

書き

・文

脈か

ら同

音異

字を

選ば

せる

間違

った

漢字

と混

ぜて

、正

しい

漢字

を選

ばせ

る(例:間(違、

偉、緯)っ

た(漢、

難)

・言

葉の

意味

を書

いて

、言

葉を

漢字

で書

かせ

①問

題形

読み

の問

書き

の問

その

理由

・学

生が

正確

な使

い方

を身

につ

ける

ため

・初

級段

階か

ら、

漢字

の音

読み

や訓

読み

を覚

えさ

せる

ため

・同じ読み方の

言葉

がた

くさ

んあ

るか

漢字

の意

味を

理解

する

能力

を高

める

ため

漢字

の読

み書

き能

力を

伸ば

すた

学生

が漢

字に

つい

ても

っと

面白

くな

るた

・漢

字は

難し

いか

ら毎

日練

習す

べき

だと

いう

こと

が分

かる

ため

・書

けな

くて

も日

常漢

字が

読め

れば

いい

・ミ

ャン

マー

人に

とっ

て初

めて

の漢

字コ

ース

なので

、簡

単な

問題

から

出す

・長

音、

促音

、読

み方

のい

ろい

ろあ

る漢

字(

例:

くう

こう

、し

ょっ

き、

三百

、今

年な

ど)

・長

音、

促音

で読

む熟

・特

別な

読み

の漢

字・

同じ

読み

方の

漢字

・促

音、

長音

など

があ

る漢

・紛

らわ

しい

漢字

の音

読み

、訓

読み

同じ

発音

の漢

・漢

字の

音読

みと

訓読

みに

注意

する

はず

の漢

・読

み方

の読

みに

くい

漢字

②出

題す

る漢

読み

(発

音)

書き

(字

形)

・書

き間

違え

やす

い漢

・間

違え

やす

い画

数の

漢字

形が

間違

いや

すい

漢字

画数

が複

雑で

はな

い漢

・レ

ベル

によ

って

書け

るべ

き漢

・学

生に

あま

り難

しく

ない

漢字

形が

似て

いる

漢字

・紛

らわ

しす

ぎる

部首

があ

る漢

・書

き方

の簡

単な

漢字

- 189 -

Page 26: 001 2003 i2j - grips.ac.jp

教師

A

B

C

D

E

F

G

H

・教

科書

で使

用さ

れて

いる

漢字

の中

から

3分

の1

程度

(ほ

ぼ全

員が

答え

られ

るよ

うな

もの

・3分の

2は

勉強

した

学生

が書

ける

よう

なも

・学

習者

のレ

ベル

に合

わせ

、学

習者

が知

るべ

き漢

・教えた

漢字の

3分

の1

・テ

キス

トに

のっ

てい

る漢

例外

の言

葉(

例:

都合

、大

人な

ど)

新出

漢字

の熟

語・熟

語に

注意

すべ

き漢

②出

題す

る漢字

(続

き)

レベ

ルに

関す

るも

熟語

に関

する

もの

く使

用し

てい

るも

日常

生活

でよ

く使

用し

てい

る漢

・学

生が

ずっ

と使

うこ

との

ある

漢字

読み

方を

はっ

きり

示す

かど

うか

注意

をお

・正

しい

読み

方で

ある

こと

・読

み方

につ

いて

促音

、長

音、

濁音

に注

意す

読み

方に

つい

て促

音、

長音

が間

違っ

たら

、点

数は

なし

促音

、濁

音、

長音

に注

意す

・正

しい

発音

のと

おり

平仮

名が

かけ

るか

・極

端に

形の

悪い

字、

トメ

やハ

ライ

など

を見

・画

数の

正確

・形

の正

確さ

送り

仮名

の正

確さ

・部

首と

画数

が正

しい

こと

画数

に注

意す

・正

しい

漢字

であ

るか

画数

が十

分で

ある

・画

数が

正し

いか

どう

・形

が間

違う

と点

数は

なし

・書

き順

と書

き方

が正

しい

③採

点基

読み

方に

つい

書き

方に

つい

その

・1文字

でも

、3

文字

でも

同じ

配点

とし

、そ

の中

から

1つだ

けが

間違

えて

いる

場合

、部

分点

はな

字が

きれ

いで

ある

こと

・き

ちん

と書

いて

いる

・四

角の

中に

きれ

いに

書け

るか

- 190 -

Page 27: 001 2003 i2j - grips.ac.jp

添付

資料

〈学

生用

アン

ケー

ト〉

漢字

の授

業に

つい

ての

アン

ケー

ト調

この調査は、漢字授

業に

ついての

皆さん

の問題点

や意見

、考

えな

どにつ

いて詳し

く知り

ヤンゴ

ン外

国語大

学に

おけ

る漢

字指

導法

の改

善を

考え

る上

の資

料と

する

ため

のも

ので

す。

他の目

的に

使用す

るこ

とは

あり

ませ

んの

で、

最後

まで

回答

して

くだ

さる

よう

ご協

力を

お願

いい

たし

ます

(調

査者

スス

トウ

ェー

国際

交流

基金

日本

語国

際セ

ンタ

ー・

国立

国語

研究

政策

研究

大学

院大

連携

大学

2005年

度日

本語

教育

指導

者養

成プ

ログ

ラム

(修

士)

ヤン

ゴン

外国

語大

本語

学科

助講

下記

の欄

に所

定の

事項

をご

記入

くだ

さい

性別

□男

女性

年齢

:_

__

学年

:_

__

勉強

した

こと

のあ

る外

国語

:__________________________

下の項

目そ

れぞれ

につ

いて

、自

分の

考え

に近

い答

えを

1~

5ま

での

中か

らひ

とつ

選ん

で番

号に○をつけてく

ださい

。また、そ

れ以外

に理由

がある

場合は、「

その

他」に

記入

してく

さい

Ⅰ.

あな

たは

漢字

の学

習に

つい

てど

う思

いま

すか

全く

そう

思う

う思

どち

らと

も言

えな

あまり

そう

思わ

ない

くそ

う思

わな

(1

)ミ

ャン

マー

語の

文字

と全

く違

う文

字だ

から

もし

ろい

(2

)画

数が

多く

て書

くの

がむ

ずか

しい

(3

)字

を見

て意

味が

想像

でき

るの

はお

もし

ろい

(4

)漢

字を

覚え

ると

役に

立つ

(5

)書

き順

は覚

えら

れな

(6

)音

読み

と訓

読み

など

で混

乱す

(7

)正

しい

字形

が書

けな

(8

)漢

字で

書か

れた

文章

は意

味が

分か

りや

すい

(9

)漢

字を

勉強

する

のが

すき

(1

0)

自習

のた

めの

適当

な辞

書や

参考

書が

ない

(1

1)

送り

仮名

をつ

ける

のが

難し

(例

:「

明あか

るい

の「

るい

」の

部分

(1

2)

習っ

た漢

字が

思い

出せ

ない

(1

3)

熟語

が覚

えら

れな

(1

4)

学習

しな

けれ

ばな

らな

い漢

字が

多い

ので

飽き

(1

5)

その

__

__

__

__

__

__

__

__

__

__

__

__

__

__

Ⅱ.

あな

たは

漢字

の授

業に

つい

てど

う思

いま

すか

全く

そう

思う

う思

どち

らと

も言えない あまりそう思わない 全くそう思わない

(1

)漢

字授

業は

おも

しろ

くな

(2

)漢

字授

業で

おも

しろ

いク

イズ

やゲ

ーム

よう

な練

習は

全然

ない

(3

)授

業で

習っ

ただ

けで

は記

憶に

残ら

ない

(4

)教

師の

教え

方は

いつ

も同

じで

、工

夫は

ない

(5

)漢

字授

業で

書く

こと

だけ

が中

心に

なっ

てい

- 191 -

Page 28: 001 2003 i2j - grips.ac.jp

(6

)授

業中

教師

が漢

字の

様々

な学

習方

法を

教え

てく

れる

(7

)漢

字の

音読

みと

訓読

み全

部を

同時

に教

える

から

えに

くい

(8

)担

当教

師が

違っ

ても

、授

業の

流れ

はほ

とん

ど同

(9

)短

い時

間に

たく

さん

の漢

字を

教え

てい

(1

0)

宿題

で同

じ漢

字を

何回

も書

くの

がい

(1

1)

授業

で習

う熟

語や

例文

が役

に立

(1

2)

小テ

スト

や試

験は

漢字

の学

習に

役に

立つ

(1

3)

試験

の問

題の

形式

はい

いと

思う

(1

4)

その

__

__

__

__

__

__

__

__

__

__

__

__

__

__

_

Ⅲ.

あな

たは

漢字

授業

でノ

ート

を書

くと

き、

何に

注意

して

書き

ます

か。

(自

由に

書い

てく

ださ

い。

いく

つで

もい

いで

す。)

Ⅳ.

あな

たは

試験

の前

に漢

字を

覚え

るた

めど

うや

って

勉強

しま

すか

いつ

もす

くす

ちら

とも

言え

ない

あま

りし

ない

然し

ない

(1

)漢

字を

何度

も書

(2

)授

業の

漢字

のノ

ート

を見

て、

覚え

(3

)漢

字を

見て

、読

み方

を書

(4

)漢

字を

大き

く書

いて

部屋

の壁

など

には

(5

)授

業の

漢字

ノー

ト以

外に

自分

で漢

字カ

ード

ノー

トを

作っ

て覚

える

(6

)熟

語を

分解

しな

いで

、一

語と

して

意味

を覚

える

(7

)漢

字を

間違

わな

いよ

うに

気を

つけ

て書

(8

)読

み方

を見

て、

漢字

を書

(9

)ク

ラス

でや

った

小テ

スト

の問

題を

もう

一度

習し

てみ

(1

0)

ミャ

ンマ

ー語

で漢

字の

意味

を覚

える

(1

1)

その

__

__

__

__

__

__

__

__

__

__

__

__

__

__

_

ご協

力あ

りが

とう

ござ

いま

す。

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