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www.pwc.com/jp/assurance 中国における 外資系銀行 本調査は、外資系銀行が中国 で事業を拡大していく上での 戦略的課題や新たに提起され た問題に焦点を当てて実施さ れました。 2011 6

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  • www.pwc.com/jp/assurance

    中国における 外資系銀行

    本調査は、外資系銀行が中国で事業を拡大していく上での戦略的課題や新たに提起された問題に焦点を当てて実施されました。 2011 年 6 月

  • 1

    目次

    はじめに 2

    エグゼクティブサマリー 3

    市場環境 11

    リスク管理 30

    商品および市場セグメント 40

    投資 53

    流動性と資金調達 58

    規制 64

    業績 76

    ピアレビュー(同業者比較) 78

    現地法人を設立している外資系銀行一覧 86

    Tier1 資本・資産上位50 行- 中国系銀行 87

    調査参加行の概要 88

    本資料は、PwC 中国が 2011 年 6 月に発刊した『Foreign Banks in China 2011』を PwC 中国とあらた監査法

    人が翻訳したものです。翻訳には正確を期しておりますが、英語版と解釈の相違がある場合は、英語版

    (http://www.pwccn.com/webmedia/doc/634442705425169010_fs_foreign_banks_china_jun2011.pdf)に依拠し

    てください。なお、英語版のうち Appendix については、一部のみ翻訳しています。

    http://www.pwccn.com/webmedia/doc/634442705425169010_fs_foreign_banks_china_jun2011.pdf

  • 2

    はじめに

    プライスウォーターハウスクーパース(PwC)は、このたび、中国の外資系銀行に対して第6回

    アンケート調査を実施しました。今回は、中国で活動する金融機関42行を対象としています。

    本調査を実施した目的は、以下のとおりです。

    • 中国で活動する外資系銀行の戦略的課題や新たに浮上している諸問題に対する意識

    を高める。

    • 業界動向に関する特定のデータを作成する。

    • 銀行セクターのCEOの見解を把握する。

    • 様々な動向から機会を捉えていくにあたって、外資系銀行にとって最善の選択肢につ

    いての議論を促す。

    • 今後三年間で、中国の銀行セクターがどのように進展していくかに関して見解や展望を

    提供する。

    中国で業務を展開している外資系銀行 127 行の総資産は、2010 年に 29%増加しました。外

    資系銀行の資産総額は 1.7 兆人民元に達し、中国の銀行資産総額の 1.83%を占めていま

    す。すでに、外資系銀行 40 行が現地法人化しています。中国銀行業監督管理委員会

    (CBRC)のデータによると、2010 年末には、外資系銀行の現地法人の資産総額が外資系銀

    行の資産総額の 87%を占めています。また、調査対象銀行 42 行は、2014 年までに、雇用が

    全体として 53%増加し、52,000 人を上回ると見込んでいます。

    以下は、外資系銀行が挙げた今後の変化を方向づける上位5つの要因です。

    • 規制改革

    • 資金調達上の制約

    • 流動性

    • 資本市場の発達

    • 景気循環

    中国は、今後、ますます重要なグローバル銀行市場へと発展していくと考えられます。PwC

    UKが最近公表したレポート『Banking in 2050』 では、銀行資産の成長予測を踏まえ、早け

    れば2023年までに、中国は米国に代わって世界最大の銀行市場になる可能性があると予測

    しています。

    今回の調査にご参加頂いた銀行のCEOやシニア・エクゼクティブの皆様に対し、本レポート

    の発刊において賜りましたご協力に御礼申し上げます。また、Brian Metcalfe博士に対しまし

    て、調査および分析を行なって下さったことに感謝申し上げます。

  • 3

    エグゼクティブサマリー

    本調査は、外資系銀行が中国で事業を拡大していくにあたっての戦略的課題や新たな問題

    に焦点を当てて実施され、2005年から2010年にかけて実施された5回の調査に続くものです。

    本調査の目的は、多様な見解をとりまとめ、急速に変化を遂げている金融サービスを取り巻

    く環境に関しての所見を提供することにあります。なお、レポートの作成にあたっては、情報

    の機密性は保持されています。

    本調査は、中国の外資系銀行42行のCEO、シニア・エクゼクティブおよび支店長を対象とし

    て、インタビュー形式で行なわれました。

    当該インタビューは約1時間行なわれ、2011年4月から5月にかけて、北京、香港、上海、深

    圳にて実施されました。

    今回の調査対象銀行を以下にアルファベット順に紹介しています。

    • Australia and New Zealand Banking

    Group (ANZ)

    • Banco Santander

    • Bank of America Merill Lynch

    • Bank of Montreal

    • BBVA

    • BNP Paribas

    • BNY Mellon

    • Credit Agricole

    • Citibank

    • Commerzbank

    • Commonwealth Bank of Australia

    • Credit Suisse

    • Dah Sing Bank

    • DBS Bank

    • Deutsche Bank

    • First Sino Bank

    • Hang Seng Bank

    • HSBC

    • ING Bank

    • Intesa Sanpaolo Bank

    • JPMorgan Chase

    • KBC Bank

    • Mizuho Corporate Bank

    • Natixis

    • Norddeutsche Landesbank

    • OCBC Bank

    • Rabobank

    • Raiffeisen Bank International

    • Royal Bank of Canada

    • RBS

    • Scotiabank

    • Société Générale

    • Standard Chartered Bank

    • Sumitomo Mitsui Banking

    Corporation

    • The Bank of East Asia

    • UBS

    • VTB Bank

    • Wells Fargo Bank

    • West LB

    • Westpac Bank

    • Wing Hang Bank

    • Wing Lung Bank

  • 4

    概観

    中国の外資系銀行は、中国市場における自行の役割を確立し、業務を拡大していくこ

    とに引き続き注力しています。

    外資系銀行の資産総額は、2003年から2007年にかけて堅調に増加しました。その後、

    2008年から2009年にかけては中国政府の景気刺激策を受けて中国地場銀行の貸出

    が急増したことを受けて、資産の拡大は停滞しましたが、2010年には再び増加に転じ

    ています。外資系銀行の市場シェアは、2009年の1.7%から2010年には1.83%へと上昇

    しています。

    ただし、市場シェアの推移は、外資系銀行が常に市場セグメントを見直し、自らの得意

    とする分野において、他行をしのぎ、安定的かつ長期的な事業拡大につなげようとし

    ているかという戦略的な動きをあらわすものではありません。

    2011年に入り、外資系銀行は、流動性引き締め策が継続される環境下で事業を展開

    しています。本レポートの作成期間中に、People’s Bank of China(PBOC)は、2011年

    初頭から6回預金準備率を引き上げました。

    このようにマクロ経済や経済環境の不透明性が増しているにも関わらず、外資系銀行

    は中国戦略に一層注力しているように思われます。

    向こう3年間は非常に厳しい環境となることが予想されますが、本レポートの調査対象

    銀行は本業の成長戦略を推し進めていくことを決意しています。本業の成長に加え、

    戦略的なパートナーシップとの提携を追求し、可能であれば、金融セクターの様々な

    分野で買収を行おうとしています。

    実際、中国経済の更なる国際化に向け、段階的かつ明確な道筋が立てられており、

    外資系銀行が今後の先行きを楽観視していることは当然といえます。外資系銀行は、

    経済の開放政策および交換可能通貨への移行が、自行の事業機会の拡大に繋がる

    ものと確信しているのです。

    今回の調査から、外資系銀行が依然として中国市場には多くの機会があると考えてい

    る一方で、このような機会を活用するためには、経営環境の安定に加えて規制当局が

    中国経済の国際化を推進することが不可欠であると考えていることが浮き彫りになりま

    した。

    中国への継続的コミットメント

    外資系銀行の親会社による中国市場に対するコミットメントは不動なものであることが

    今回の調査で明らかになりました。

    1から10の評価段階(10が最高評価)のうち、どの国の各種銀行グループも、コミットメ

    ントを8以上としています。例えば、外資系銀行の現地法人は10段階中8.8、アジア系

    銀行は10段階中9.1としています。25行の調査対象銀行は、2014年までに自行の親会

    社のコミットメントレベルは9以上になると見ています。

  • 5

    ポスト世界金融危機の環境下で各行の独自戦略が明確化

    規制上の障害や課題への対応方法は市場参入戦略によって様々であることから、市

    場参入戦略に応じて、外資系銀行をより明確に分類することができます。

    リテール業務では、6行が顧客基盤および支店網の点で、競争優位に立っています。

    このグループには、The Bank of East Asia、Citibank、DBS Bank、Hang Seng Bang、

    HSBC、Standard Chartered Bankが含まれ、2014年までにグループ全体として、500以

    上の支店および出張所を開設すると見込んでいます。このグループに属する銀行は、

    (他の外資系銀行に比べて)金融セクター全体で強固なプレゼンスを確立しています。

    第2のグループとして、法人取引が主体の銀行と投資銀行が出現しています。このグ

    ループには、大手欧米系の銀行も一部含まれます。これらの銀行は、小規模なリテー

    ル業務は行ってはいるものの、投資銀行とコーポレートバンク市場に注力しています。

    第3グループには、アジア系銀行が多く含まれます。このグループの銀行は中国との

    貿易やビジネス関係の強い結びつきを梃子に業務を拡大しようとしており、一部の銀

    行はリテール業務も行っています。

    アジア系銀行の区分のサブグループには日本と韓国の銀行が含まれ、中国で自国の

    顧客を対象に業務を提供するという点で固有の地位を確立しています。香港の銀行も

    また、特定の市場ニーズに沿った業務を提供しています。オーストラリアもサブグルー

    プに分類することができます。オーストラリアの銀行は、中国との特別な地理的関係を

    十分に活用していくという戦略を追求しています。

    第4グループには、狭いニッチ市場に焦点を当てた銀行が含まれます。これらの銀行

    は、主にウェルスマネジメント、トレードファイナンス、外国為替などの特定の市場セグ

    メントにおいて、グローバルに業務を展開している銀行で、中国における規模によって

    は、上記の他のグループに区分される場合もあります。

    最終グループには、一部の小規模な外資系銀行の支店が含まれます。これらの支店

    は、顧客に追随し中国に進出し、顧客の財務上のニーズに応じた業務を提供していま

    す。

    このグループは、とりわけ規制の強化により強い影響を受けます。このグループに属す

    る銀行の業務は小規模なため、業容を拡大し、確固たる成長の道筋を立てることが難

    しい状況にあります。

    当該グループに属する銀行の親会社の中には、世界的な金融危機により損失を被っ

    ており、そのため、中国の規制当局は、これらの銀行に対しより慎重な姿勢をとってい

    ます。

    小規模な銀行から成るこのグループに属する銀行の中には、市場参入が遅かったも

    のの、将来に向けて意欲的な計画を立てている銀行もあります。

    ここで強調すべき重要な点は、全ての外資系銀行をこれらの分類のいずれかに明確

    に単純に区分することはできないということです。実際、相当数の銀行が複数のグルー

    プの特徴を有しています。一方で、いくつかの銀行がある一定の特徴をもったグルー

    プを形成していることも事実です。これらの銀行の一部は、将来、市場の規制緩和が

  • 6

    行われた場合に、その恩恵を受けられる有利なポジションにいることになるかも知れま

    せん。

    雇用の増加と離職率の上昇

    自行の事業範囲とネットワークの拡大に伴い、外資系銀行は雇用を拡大しています。

    調査対象銀行42行は、2014年までに全体として雇用者数が53%増加し、52,312人に達

    すると予想しています。

    一方で、現在1,000人余り存在する外国籍行員の数は、2014年までにそれ程増加しな

    いと予測されます。

    予想通り、2009年に減尐した従業員の離職率は、2010年には上昇しました。離職率が

    10%未満の銀行が12行ある一方、ほぼ同数の銀行において離職率が20%を超えました。

    2011年については、18行が離職率は15%を超えると予想しています。大手外資系銀行

    はネットワークを拡大してはいるものの、類似の市場に後から参入する小規模な同業

    他行によって人材を奪われやすくなっています。

    コンプライアンスオフィサー、リレーションシップバンカーやファイナンシャルアドバイザ

    ーなどの主要な職種が、ヘッドハンティングの対象となっています。

    最も求人の多い職種は、コーポレートリレーションシップです。

    予測される給与の増加

    調査参加行40行全行が、2011年に給与は増加すると回答しており、その約半数が、

    2011年に昇給率が10%に上昇すると見込んでいます。

    昇給に影響を及ぼす要因としてインフレ水準の上昇もありますが、銀行は人員を確保

    するためにも昇給は必要であると考えています。調査参加行は、上海における要職の

    税引き後の給与水準が、香港、ロンドン、ニューヨークなどに匹敵するものである点を

    指摘しています。

    法人貸出先の信用は安定しているとの評価

    経済全体に対する懸念はあるものの、外資系銀行の大半は法人貸出先の信用は安

    定していると考えています。

    2009年の調査では20行が信用は悪化するとの憶測を示していましたが、今回は反対

    の結果になりました。これは、中国銀行業監督管理委員会(CBRC)が公表したデータ

    からも裏付けられます。2011年第1四半期前の15カ月間において、中国の大手銀行、

    都市商業銀行、外資系銀行の不良債権比率は下落し、2011年第1四半期末の外資

    系銀行の不良債権比率は0.5%にとどまりました。

    市場全体に対する懸念の一つとして、国内銀行の地方政府に対するインフラプロジェ

    クト向け融資が挙げられています。

  • 7

    多数の調査参加行は、法人貸出先の信用に対する楽観的見通しは法人貸出業務固

    有のものであり、中小企業(SME)、不動産業界、建設業界、日用品業界の信用は不

    確実であると指摘しています。

    消費者信用も安定

    同様に、回答銀行の過半数(29行のうち16行)が、個人貸出先の信用も安定している

    と回答しています。

    ある大手外資系銀行のCEOは、中国の消費者の消費性向は高まっており、不動産や

    乗用車等の高額商品を購入していると指摘しています。

    債券市場

    債券市場は、法人向けサービスを提供する外資系銀行にとって、将来、最大のビジネ

    ス機会をもたらす分野とみなされています。

    債券市場は、過去3年間にわたって今後の有望なビジネス分野として第1位の座を確

    保しています。2011年の調査において有望分野としての第2位は通貨スワップで、金

    利スワップが第3位となりました。

    人民元の国際化-大きなビジネスチャンス

    2009年に、当局はクロスボーダー取引の人民元決済に関する試行プログラムを開始し、

    2010年にはこれを拡大しました。人民元の国際化に踏み出したことにより、中国とクロ

    スボーダー取引の人民元決済を行う国において、輸出業者、輸入業者、投資家にサ

    ービスを提供する銀行すべてにビジネスチャンスが広がるという見方が一般的です。

    主に中国国内と香港の銀行および中国と香港にプレゼンスのある外資系銀行が、ま

    ずは恩恵を受けると考えられます。また、人民元建預金や人民元関連業務に対する

    需要が高まることも予想されます。

    規制ガイドラインが明確化され、キャッシュ管理や中国への人民元の本国送金のチャ

    ネルが拡大すれば、外資系銀行も恩恵を受けられるようになります。

    外資系銀行の現地法人が主体

    現在、40の外資系銀行が現地法人を設立しています。CBRCのデータから、2010年末

    時点で現地法人は外資系銀行の資産合計の87%を占めていることが判明しました。

    預貸率

    現地法人の主な懸案事項の一つとして、75%という預貸率規制があります。

    リテール業務でプレゼンスを確立している大手の外資系銀行の現地法人は、個人顧

    客の預金の増加に満足していると回答しています。一方「法人取引に特化した」外資

    系銀行の現地法人の多くにおいて、法人預金の割合がかなり高くなっています。実際

    に、調査対象となった外資系銀行15行の資金調達の50%以上を法人預金が占めてい

    ます。

    このような状況にもかかわらず、預貸率75%という上限規制に対応するために設定され

    た5年の準備期間が2011年12月31日に期限が到来してしまうため、多数の外資系銀

    行が、中国で預金を獲得することができるか懸念を抱いています。

  • 8

    2011年初頭の報道では、4、5行が当該期限までに基準を満たすことができない可能

    性があると伝えられていましたが、本調査対象の現地法人20行は、自行の預金獲得

    能力について自信を持っていると回答しています。

    収益の力強い成長

    厳格な規制環境や流動性引き締め政策にもかかわらず、外資系銀行は力強い成長を

    見込んでいます。

    22行が2011年の年間収益成長率を20%から50%の間と予測しており、5行は成長率が

    100%、あるいは100%を上回ると予測しています。

    銀行は、今後3年間にわたって成長が持続すると見込んでいます。実際に、7行が

    2014年までに成長速度が上がることを期待しています。

    2008年から2009年にかけて市場シェアが低下し、2010年にはわずかな上昇にとどまっ

    たわけですが、そうしたシェアの水準にも関わらず、外資系銀行は中国市場の成長性

    に楽観的な見方を示しています。このことは、外資系銀行が中国の国内、国外におけ

    る既存顧客との関係をより深めることに注力していくつもりであることを示しています。

    また、約40の外資系銀行が業績を伸ばしていく上では現地法人化しておくことが必要

    であると回答しています。実際、多角的で高い成長を示す銀行は現地法人化した銀

    行の中からあらわれるでしょう。

    国際的に業務を展開する一部のコーポレートバンクと投資銀行については、現時点で

    現地法人化を選択していなくても、資産の急成長が期待できます。それらの銀行は、

    今後数年間で戦略を変更し、現地法人化を目指すことも考えられます。

    規制改革

    外資系銀行は、依然として、度重なる規制改革が重荷となっていると感じています。

    2011年に適用となった重要な新たな規制「3弁法と1ガイドライン」は、外資系銀行の業

    務範囲と業務規模に影響を及ぼしています。

    「3弁法と1ガイドライン」では、銀行に対して、運転資金融資を固定資産の資金調達、

    プロジェクトファイナンス、株式保有に充当してはならないと指導しています。外資系銀

    行は、このような措置の原則を理解し、要件を満たすためにあらゆる取り組みを行って

    いるものの、顧客が当初の融資目的から逸脱した使途に資金を充当した場合に、規

    制当局が銀行に責任を負わせることに対しては不満を感じています。

    中国が依然として重要な市場である理由

    本レポートから、外資系銀行は中国に対して強固なコミットメントを維持し、限定的とは

    いえ楽観的な見通しを持っていることが浮き彫りとなっていますが、これは国内業務の

    拡大に加え、中国が人民元の交換性に向けて動いており、市場が開放されるという期

    待に基づいています。

    中国は、今後ますます重要なグローバル銀行市場に発展していくと考えられます。

    PwC UKが最近公表したレポート『Banking in 2050』 (www.pwc.co.uk/financialservices)

    では、国内の信用資産の成長予測(下図を参照)を踏まえ、2023年までに、中国は米

    国に代わって世界最大の銀行市場になると予測しています。

    http://www.pwc.co.uk/financialservices

  • 9

    これらの予測は、外資系銀行セクターが中国において継続的に事業拡大を図り、強固

    なプレゼンスを築く必要性をさらに裏付けるものとなっています。

    米国、中国、インド、日本における国内の銀行資産

    出典:PwC UK Banking in 2050(2011 年 5 月)

  • 10

    同業者比較ランキングサマリー

    以下の表は、外資系銀行・金融機関による同業他社の評価(上位3社)をまとめたもの

    です。同評価は、今回の調査に参加頂いた金融機関のCEO、シニア・エクゼクティブ、

    支店長のご意見に基づいています。

    1位 2位 3位

    ブランド認知度 HSBC Standard Chartered Citibank

    キャッシュマネジメント Citibank HSBC Standard Chartered

    コーポレイトファイナンス HSBC Goldman Sachs Citibank

    法人向け融資 HSBC Standard Chartered Citibank

    企業の社会的責任(CSR) HSBC Citibank Standard Chartered

    クレジットカード Bank of East Asia HSBC Standard Chartered/Citibank

    債券資本市場 HSBC Citibank Goldman Sachs

    デリバティブ HSBC Citibank Deutsche Bank

    株式資本市場 Goldman Sachs JPMorgan Chase UBS

    外国為替およびトレジャリー HSBC Citibank Standard Chartered

    インベストメントバンキング Goldman Sachs Morgan Stanley JPMorgan Chase

    M&A Goldman Sachs Morgan Stanley JPMorgan Chase

    プライベートバンキング UBS HSBC Citibank

    プロジェクトファイナンス HSBC Standard Chartered Citibank

    リテールバンキング HSBC Standard Chartered Bank of East Asia

    トレードファイナンス HSBC Standard Chartered Citibank

  • 11

    市場環境

    今後の雇用成長

    2011 年度の調査では、調査対象 42 行の従業員数は 34,166 人で、前年度の調査で

    は 29,739 人でした。調査参加行となった金融機関は前年度のそれと多尐異なります

    が、それが従業員数全体に与える影響は軽微です。

    調査結果によれば上記 42 行は、従業員数を 2014 年までに 53%増の 52,312 人に増

    やす予定です。

    従業員数の上位 6 行はリテール市場に参入している銀行であり、アルファベット順に、

    Bank of East Asia、Citibank、DBS Bank、Hang Seng Bank、HSBC、Standard

    Chartered Bank です。

    これら 6 行合算で従業員 23,900 人を現在雇用しており、2014 年には 36,700 人に達

    すると見込まれます。

    非中国籍の従業員

    一方で、上記 42 行は現在 1,220 人の非中国籍の従業員を雇用していますが、2014

    年までに 64 人の微増で、1,284 人にとどまる見込みです。

    そのうち 4 行では、2014 年までに非中国籍の従業員数が減尐すると予測されます。

    非中国籍従業員数の全従業員数に占める比率は平均で 3.5%となっています。調査参

    加行のうち非中国籍従業員の比率が高い銀行は、特定の分野に特化している銀行や、

    香港または日系の銀行です。

    2014 年までの予測従業員増加率

    41 行の回答に基づく。

  • 12

    専門性が高く、経験豊富な人材の確保が、依然として金融機関の課題となっています。

    リテール顧客

    一般的に調査参加行の多くは、既存および将来の顧客に関連するデータの提供には

    慎重でした。

    商業銀行上位 6 行である HSBC、Standard Chartered bank、Citibank、Bank of East

    Asia、DBS Bank、Hang Seng Bank は、特にその傾向が顕著です。うち 2 行は、今年

    度のデータ提供を拒否しました。そのため、上位 6 行の合計は前年度の数値を基に

    PwC において予測したものです。

    予測の結果は、これら 6 行の 2011 年のリテール顧客数はおおよそ 98 万人と試算さ

    れ、2014 年までに 204 万人に増加すると見込まれます。

    2010 年度の調査時には、外資系銀行 15 行は 835,600 人のリテール顧客を有し、

    2014 年までに 200 万人に増加する見込みであると回答していました。その他リテール

    業務に従事している外資系銀行の規模・業務範囲はさまざまです。1000 人以下の顧

    客しかない小規模な銀行もあれば、顧客数が 1 万人弱の銀行もあり、2 万人の顧客を

    擁する銀行も一行ありました。

    支店網

    調査対象行のうち 40 行は、支店網の規模について、2011 年度末までに支店・出張

    所の数は 493 に達すると見込まれ、さらに 2014 年までに 290 以上増加し、783 となる

    と回答しました。

    また 2 行が 2014 年までに支店・出張所数を 50 以上増加させる計画がある、と回答し

    ました。

    なおこの予測には、ジョイントベンチャー設立を通じておよそ 100 の支店を地方に開

    設することを報じられた外資系銀行に係る予測は含まれていません。

    中国銀行監督管理委員会(CBRC)は、現在、外資系銀行に対し発展している地域に

    支店を開設する場合には未発展地域にも支店を開設することを義務付けています。こ

    のような現行政策を勘案すると、野心的な支店網拡大が計画されていると考えられま

    す。

    外資系リテール銀行上位6行の支店網

    現在、支店・出張所の規模上位 6 行は、HSBC、Bank of East Asia、Standard

    Chartered Bank、Hang Seng Bank、Citibank、DBS Bank となっています。

    各銀行のウェブサイトからの情報を基に、それぞれの支店網の規模を以下に図示して

    います。

    今回の調査によれば 2014 年までに、上位 6 行は 545 の支店と出張所を開設すると

    予測しています。

  • 13

    2010年末の中国における外資系銀行の総数

    外資系現地法人 37 行が 223 支店を開設し、外資系銀行 74 行が 90 支店を設立して

    います。

    2010 年末には、外資系銀行 44 行の支店と外資系現地法人 35 行が人民元業務取り

    扱いの許可を受け、56 行の金融機関がデリバティブ取引の許可を受けました。

    (出典:CBRC2010 年度年次報告書)

    出典:CBRC2010 年度年次報告書

    出典:2011 年 2 月の各銀行の HP

    * RBS の旧支店の買収が完了すると、DBS Bank のネットワークは更に拡大する。

    2010 年の中国における外資系銀行の設立状況

  • 14

    中国における外資系銀行の状況(2004年-2010年)

    外資系銀行の地理的な広がり

    CBRC によると、2003 年にはわずか 20 都市にのみ店舗を有していたのが、2010 年

    末には 27 の省、45 の都市にまで拡大しました。

    中国における外資系銀行の総資産の成長(2003年-2010年)

    調査対象行の中には、総資産額や収益の見積り額を回答することに慎重な銀行もあり

    ました。

    CBRC によると、外資系金融機関の総資産は 2010 年末には 1.74 兆人民元に達し、

    2009 年から 2010 年までに 29.13%増加しています。

    2010 年の外資系銀行の預金高は 1.06 兆人民元で、同じく前年比 44%増でした。

    貸出金は総額 9,137 億人民元と同 26.26%増で、流動性比率は 61.49%でした。

    また、2010 年における不良債権比率は 0.53%、自己資本比率(CAR)は 18.98%、中核

    的自己資本比率は 18.56%でした。

    * 本社、支店と子会社を含む

    ** 1 億人民元

    出典:CBRC2010 年度年次報告書

  • 15

    中国における全外資系銀行の業績(2007年-2010年)

    CBRC の報告によると、2010 年の外資系銀行の税引後利益は合計 77 億 8 千万人民

    元で、2009 年に比べ増加しましたが、2008 年との比較では大きく減尐しています。

    2011 年 3 月に、CBRC は 2011 年度の上海の外資系銀行の利益見通しを公表しまし

    た。上海には外資系現地法人 20 行が営業しており、これら 20 行合算で、中国の外

    資系現地法人の総資産額の 83%を占めています。

    中国における全外資系銀行の資産総額

    (2003 年-2010 年)

    出典:CBRC

    出典:CBRC

  • 16

    上海を拠点とする外資系銀行が2011年の収益成長目標を下方修正

    中国政府がインフレの進行に対し引き締め政策を進める中、上海を拠点とする外資系銀

    行は今年度収益の成長目標を半減したと、規制当局は伝えました。また、上海に現地法

    人を設立する外資系銀行は、前年度比 17%減の 21%を 2011 年の収益成長目標としてい

    ると、CBRC は報告しています。

    これらの動きは、中国の銀行セクターが金融引締め、特に信用収縮にいかに脆弱である

    かを反映しています。

    欧米などの自国市場での業務の状況とは著しく異なり、中国における外資系銀行は、中

    国の銀行と同じように、その収益源を融資業務に大きく依存せざるをえません。通常、外

    資系銀行は収益源の相当部分を世界市場における商品の販売手数料やサービス手数

    料から得ていますが中国市場では同じようにはなりません。中国当局は信用リスクの増大

    に対応するため、外資系銀行の現地法人に対しても、国内銀行と同様、預貸率を 75%に

    抑えるように要求しています。

    「外資系銀行の現地法人は、中国のマクロ経済環境下におけるビジネスの見通しに対し、

    慎重ながら楽観的である」と報道は伝えています。経済の過熱化を防ぐため、中国の中央

    銀行は 4 回にわたり金利を引上げ、2010 年初頭から預金準備率を 10 回引上げていま

    す。

    エコノミストは、今後数カ月以内に金利と預金準備金率が更に引上げられると予想してい

    ます。中国の消費者物価指数は 3 月に 5.4 % と、ここ 3 年で最大の上げ幅となりました。

    外資系銀行は収益成長目標を引き下げたものの、中国は世界金融危機からいち早く回

    復しつつあり、中国における拡大ペースを今後加速させていくであろうと CBRC の報告は

    伝えています。

    上海を拠点とする外資系現地法人は、CNY70 兆(US11 兆ドル)に上る預金に対してシェ

    ア争いを繰り広げています。今年度に中国本土で 147 の支店を開設する予定で、前年度

    の目標を 42 上回ると報告は述べています。

    さらに、CBRC の報告によると、外資系銀行は、政府による人民元国際化の取組みを中国

    での事業拡大の好機と捉え、人民元の為替リスクへのヘッジや、人民元建て債券のオフ

    ショア決済など外国為替ビジネスに着手すると見られています。

    銀行規制当局のデータによると、2010 年末現在、中国における外資系現地法人全体の

    半数以上を占める 20 行が上海で事業を行っています。HSBC Holdings PL、Citigroup

    INC.など上海の外資系現地法人の総資産合計は、12 月末現在において 1.27 兆人民元

    と、中国全体における外資系現地法人の総資産の 83%を占めています。

    (出典:2011 年 4 月 19 日付 Dow Jones)

  • 17

    Q. 現地法人化後、今後の業績見通しが変化しましたか。

    現法化後の今後の見通しについて、11 行がポジティブに、2 行がネガティブに変化し

    たと回答しました。7 つの銀行は変化なしと回答しました。

    Q. 2014年までに現地法人の数はどの程度になると予測しますか。

    2014 年までの外資系現地法人数の予測について、33 行が回答しています。

    現在、現地法人形態の銀行は 40 行ありますが、12 行が 5 行、13 行が 10 行以上増

    えるだろうと回答しました。

    上記回答に基づくと、2014 年には現地法人の総数がおおよそ 45 行から 50 行となる

    と見込まれます。

    なお、4 行は、これ以上増加することはないと回答しています。

    台湾の銀行が現地法人化を目指すことで、現地法人の総数は増加

    Land Bank of Taiwan、Taiwan Cooperative Bank、Chang Hwa Bank、Cathay United

    Bank、First Bank、Hua Nan Bank の台湾系銀行 6 行が、中国本土において台湾の銀

    行として初めて現地法人化しました(出典:CBRC2010 年度年次報告書)。

    中台経済協力枠組み協定(ECFA)に付帯した中台金融相互協力覚書上、台湾の銀

    行は、中国に現地法人を設立後一年が経過し、かつ 1 会計年度通年で利益をあげて

    いれば、人民元建取引の営業許可を申請することが認められています。

    さらに、中国に支店を設立した場合、2 年間営業を行い、そのうちの 1 年において利

    益をあげていれば、人民元建て取引を行うことが出来ます。通常の基準では、支店と

    して 3 年の営業後、2 年間利益をあげることが要求されます。

    現在、多くの台湾の銀行が中国現地法人を設立する動きは見られませんが、その可

    能性は高いといえます。

    調査回答行は、外資系銀行の中国現地法人には、いずれ台湾の銀行が加わるだろう

    と考えています。

    Q. 中国市場に対して抱いている懸念を挙げて下さい。

    本調査で明らかとなった主な懸念事項は、以下のとおりです。

    ・ 利上げおよび預金準備率規制による流動性が低下すること

    ・ 銀行セクターは現状健全であるが、当局が慎重になりすぎて問題となる可能性が

    あること

  • 18

    ・ 過去 2 年間の融資残高の増加で、多額の貸倒損失が発生する可能性があること。

    また、融資残高の急増を管理する十分な能力が備わっているのか疑わしい。ある

    銀行は国内大手銀行数行の不良債権の水準について懸念を表明し、現在の不

    良債権の見積りの合理性に疑問があり、その影響についても疑念を抱いている

    ・ 国内銀行大手4行の優位性と都市商業銀行との格差

    ・ 小規模外資系銀行にとって規制環境の事務的な負担があること

    ・ CBRC、People’s Bank of China(PBOC)、国家外国為替管理局(SAFE)、中国国

    家発展改革委員会(NDRC)、中国銀行間交易市場商協会(NAFMII)などの規制

    当局の責任範囲が重複していること。クロスボーダーの人民元取引について

    PBOC と SAFE の解釈が異なる

    ・ 地域毎に異なる規制が適用されること

    ・ ある外資系銀行は、CBRC が外資系銀行を国内銀行の型にはめようと試みている

    が、それは不可能と述べています

    ・ 長短負債比率、人民元の海外送金に関する割当、預貸率など遵守すべき指標が

    増加していること

    ・ ある外資系銀行大手は、特に人民元建債の引受業務など、外資系銀行に均等な

    ビジネス上の機会が望まれると回答

    ・ ある外資系銀行大手は、業界における規制緩和の進捗が遅すぎると感じている。

    中国証券監督管理委員会(CSRC)は保守的であるのに対し、CBRC はより変化を

    受け入れると指摘

    ・ あるアジア系銀行は、国内銀行が外資系銀行への貸出意欲に欠けていると見て

    いる。

    ・ ある欧州系銀行は、CBRC が健全性比率を要求していることから、主要顧客のニ

    ーズを満たす能力が制約を受けると指摘

    Q. 現在の中国の銀行セクターに変化をもたらす主な原動力は何でしょうか。上位5つ

    を挙げてください 。

    2011 年に最も重要な変化の原動力として挙げられたものは、2009、2010 年と同様、

    「規制改革」でした。

    40 行の回答を案分して算出した今年度の「規制改革」のスコアは 161 で、第 2 位の資

    金調達上の制約の 2 倍以上となりました。資金調達上の制約のスコアは、2010 年度よ

    り約 10%上昇しました。これは、外資系銀行の成長にとって重大な阻害要因となってい

    ます。

    第 3 位は「流動性」であり、2010 年の第 5 位から上昇しました。

    第 4 位の「資本市場の発展」は、その速度は外資系銀行の予測を下回るものの、変化

    の重要な原動力であることに変わりません。本レポートに記載のとおり、資本市場の開

    放が今後一段と進み、多くの外資系銀行が中国市場においてその経験と能力を活用

    できるようになると、慎重ながらも楽観的な期待が示されています。

    2011 年には規模の経済がより広くされ、前年度の第 10 位から第 6 位へと順位を上げ

    ました。多くの外資系現地法人がこの要因を回答しており、地域的および業務的な範

    囲の拡大が成長に必要であると認識しています。

  • 19

    予想通り、「世界金融危機の変化に対する影響」は縮小し、2010 年の第 3 位から今年

    度は第 7 位に順位が下がりました。現地法人化も第 8 位から第 10 位へと順位を下げ

    ました。

    その他の変化の原動力として、ディスインターメディエーション、コモディティ化、証券

    化などが市場の変化に重要と認識されています。

    Q. 中国の銀行セクターにとっての課題は何であると考えますか。

    外資系銀行が中国の銀行セクターにおける課題として挙げた上位 3 つは以下のとお

    りです。

    ・ 規制環境

    ・ 優秀な人材の採用と定着

    ・ 国内銀行との競争

    下の図が示すとおり、上位 2 項目は過去 5 年間連続して上位にランクされています。

    昨年度は、政府による景気刺激策の影響により「国内銀行との競争が最大」の課題と

    して挙げられましたが、今年度は流動性に関する引き締め規制が導入され中国の銀

    行の資産拡大テンポが鈍化したことを受け第 3 位に順位を下げました。「規制環境」は

    2008 年以来重要とみなされており、世界金融危機の際に一時的に順位を下げたもの

    2011 年と 2010 年それぞれ 40 行の回答に基づく。

    なお、2009 年については、38 行のスコアについて調整を行っている。

  • 20

    の、現在は再び重要度を高めています。第 4 位は「革新的な商品・サービスの提供」

    で、2010 年から順位を 2 つ上げています。外資系銀行は、資本市場で彼らの能力を

    活用すること、また人民元によるビジネスチャンスを捉えていきたいと考えています。多

    くの外資系銀行がポスト世界金融危機の時代における戦略を立てる中で、中国市場

    において新商品を導入できること、また出資に関する制限が緩和されることが、より重

    要な項目になりつつあります。

    2011 年は 39 行の回答に基づく。

  • 21

    中国の銀行セクターにとっての3つの最大の課題(2007年-2011年)

    外資系銀行にとって、規制環境は依然として、中国の銀行市場における最大の課題と

    して認識されています。

    銀行間の競争(2007年-2011年)

    外資系銀行は、中国の銀行市場で業務を営む上で他の外資系銀行やノンバンクとの

    競争は課題とはみなしていません。一方、上述したように、国内銀行との競争は重要

    な課題として位置づけられています。

  • 22

    Q. 2011 年における中国市場への親会社(本社)のコミットメントを、世界各国の他の

    市場と比較して 1~10 のスコアを付けてください(10 は「非常に積極的」)。

    予想どおり、外資系銀行の中国市場へのコミットメントは今後 3 年間で高まるとみられ

    ています。2014 年までに最大のスコアである 10 をつけた銀行の数は 11 行から 12 行

    に増加しました。9 を付けた銀行の数も増加し、7 行から 15 行となりました。その結果、

    スコアの平均は全体で 8.4 から 8.6 へと上昇しました。

    2013 年までに 15 行がスコアが上昇することを予測しています。

    過去 4 年間のコミットメントに係るデータと比較すると、いずれの銀行グループについ

    ても、2011 年には 2008 年と比較してスコアがやや減尐しています。

    ただ、全体的な平均スコアは 8.4 前後となっており、本社の中国市場に対するコミット

    メントが引き続き高水準であることが分かります。

  • 23

    Q. 2011 年と 2014 年を比較し、中国市場に対する親銀行(本社)のコミットメントをど

    のように特徴付けますか。

    最大スコア 10 をつけた銀行数が 2011 年については 11 であるのに対し 2014 年につ

    いては 12 へと増加し、9 をつけた銀行数は 2014 年については 2 倍以上の 15 行であ

    り、2014 年までにコミットメントの水準は上昇し続けると見込まれます。

    これは、多くの銀行が 2011 年に 8 を付け、2014 年については 9 を付けたからです。

    2011 年は 40 行、2010 年と 2009 年はそれぞれ 41 行、2008 年

    は 42 行、2007 年は 39 行の回答に基づく。

  • 24

    2010 年のレポートでは、4 行が 6 以下のスコアをつけました。2010 年に 4 を付けた銀

    行を含め、今年度も 4 行が 6 以下をつけました。下図では、2014 年には全ての調査

    参加行が 7 以上のコミットメントのスコアをつけたことを示しています。

    Q. 貴行本社の中国に対する事業方針は、積極的または消極的になりましたか。ある

    いは変化はありませんか。

    2009 年には、18 行が世界的な金融危機が中国での事業方針にマイナスの影響を与

    えたと回答しました。

    2010 年には 2 行、2011 年には 1 行のみが、中国での事業方針にマイナスの影響が

    あったと回答しています。

    多くの調査参加行は、中国市場に対し非常に高いコミットメントを表明しています。調

    参加行の顧客のみならず中国の大手企業にとっても、中国は潜在的な成長機会が存

    在する、発展し続ける市場です。

    あるヨーロッパ系銀行は、中国には依然として多くの問題があるものの、主要な戦略的

    市場であると考えています。

    別の大手ヨーロッパ系銀行は、将来的にはさらに積極的になるであろうと回答していま

    す。

    2011 年と 2014 年それぞれ 40 行の回答に基づく。

  • 25

    Q. 世界金融危機は中国における貴行のビジネスモデルに影響を与えましたか。

    世界金融危機の影響は徐々に弱まってきており、中国でのビジネスモデルに金融危

    機が影響を与えたと回答した銀行は 2011 年には 12 行のみでした。このように回答し

    たグループには政府所有でその管理下にあるヨーロッパ系銀行が多く含まれます。

    2009 年には、世界金融危機がビジネスモデルに影響を与えたと 18 行が回答していま

    した。

    Q. 2010 年における従業員の離職率はどの程度ですか。

    2010 年の従業員の離職率の実績について、39 行から提供を受けました。離職率は

    10%以下と 12 行が回答していますが、20%以上の離職率を回答した銀行も 12 行ありま

    した。離職率は 30%以上と回答した銀行が 1 行ありました。

    この回答結果は、世界金融危機を受け離職率が大幅に下がった 2009 年とは非常に

    対照的です。金融危機の調査時には、半数以上の銀行において離職率が 5%以下で

    した。

    2009 年、2010 年と 2011 年それぞれ 40 行の回答に基づく。

    2011 年は 39 行、2010 年は 40 行、2009 年は 38 行の回答に基づく。

  • 26

    今後の見通しとして、回答した 39 行のうち 29 行が 2011 年の離職率は 10%を超えると

    予測し、18 行が 15%を超えると予測しています。

    興味深い点は、多くの大手外資系銀行が、2010 年に比べ 2011 年には離職率はわず

    かに低下するだろうと回答しているところです。この理由は明らかではありませんが、理

    由の一つとして、これらの銀行では、2011 年に賃金上昇を余り抑制していないことが

    挙げられるかもしれません。

    ある大手外資系銀行は、国内経済の低迷が離職率の低下につながっていると指摘し

    ています。

    一方で、大手銀行は、二級都市で初めて支店を開設する他の外資系銀行からの従業

    員の引き抜きによる影響を受けやすい状況にあります。

    ある大手アジア系銀行は、従業員に対する人事制度が充実していることから、離職率

    が 2010 年の 20%から 2011 年には 10%へと引き下がると予測しています。このような制

    度には、従業員の社会活動への支援、昇進の早期化、新しい才能開拓コース、長期

    勤続への現金手当などが含まれます。

    ヘッドハンターは、需要の高い職種をターゲットに活動しています。あるヨーロッパ系

    銀行では、年収 36 万人民元の法務・コンプライアンス部門の職員が他のヨーロッパ系

    銀行に 150 万人民元で転職しています。

    2011 年の予想離職率

    20%以上と回答したのが 8 行。39 行の回答に基づく。

    2010 年の離職率

    20%以上と回答したのが 12 行。38 行の回答に基づく。

  • 27

    Q. 2011 年の給与は現状維持ですか、増加あるいは減尐していますか。

    2 年前には、23 行が給与は現状維持であると回答していました。2011 年については

    40 行全てが給与を引上げると回答しています。

    あるヨーロッパ系銀行は、2011 年に中国ベースの給与は 15%上昇すると予測していま

    す。同銀行は、今年度のヨーロッパ本社における給与上昇率の見通しは 6%であり、中

    国の自行の行員の給与を 6%しか引き上げなかった場合、3 分の 2 は転職するであろ

    うと指摘しています。

    給与上昇の要因として、人材不足に加えて、インフレ率の上昇が挙げられています。

    世界金融危機の後に給与および賞与の差別化が顕著になったと多くの銀行が述べて

    います。賞与はより業績連動となっているため、高額の賞与を得る人がいる一方で、賞

    与額が僅尐あるいはゼロとなる人もいました。

    ある大手ヨーロッパ系銀行は、給与面での競争力を保つため、上海の給与(中国の税

    率は高いので、税引き後)は、香港、シンガポール、ロンドンまたはニューヨークと同一

    水準となってきていると指摘しています。

    Q. 2011 年には人件費全体を抑制または削減しますか。

    5%以上と回答したのが 22 行。41 行の回答に基づく。

    2009 年の離職率

    2011 年は 40 行、2010 年と 2009 年はそれぞれ 41 行

    の回答に基づく。

  • 28

    40 行のうち 1 行のみが、人件費を削減すると回答しています。これは、これまで重要

    であったビジネスラインからの撤退という例外的な事象が生じた影響です。8 行が人件

    費抑制と生産性の向上に取り組んでいると述べています。

    しかしながら、中国を市場の拡大、発展を重要視していく成長市場としてみていること

    を反映しているような回答が一般的でした。

    本レポートの別のセクションで記載のとおり、成長が今後規模の経済と業務の範囲の

    拡大につながるだろうという見方もあります。

    Q. 2011 年の給与の上昇率はどの程度と予想されますか。

    2010 年と比較して、2011 年の給与水準は上昇すると予想されます。

    2011 年については、16 行が給与の 10%上昇を予測し、他の 8 行は 10%以上を見込ん

    でおり、うち 1 行は 30%以上と予想しています。

    2010 年には、9 行のみが 10%以上の上昇を予想し、23 行が 5%から 9%の間で上昇す

    ると考えていました。

    2011 年は 39 行、2010 年は 36 行の回答に基づく。

  • 29

    Q. 2011 年において、採用を最優先する職種について、上位 3 つを挙げてください。

    2011 年の採用にあたって最優先された職種は、引き続き法人営業担当です。2009 年

    と 2010 年は同じでしたが、2011 年にはスコアが上昇しました。第 2 位は、スコアは減

    尐したものの、リスク管理担当でした。

    第 3 位はリテール営業担当です。リテール部門の重要性が増していることを反映して、

    2010 年の第 6 位から上昇しました。

    対照的に、法務・コンプライアンス部門は、2009 年の 42 点、2010 年の 34 点から

    2011 年には 18 点と減尐しました。

    その他の回答として、商品管理やグローバルなトレジャリーサービスなどが挙げられて

    います。

    2011 年は 40 行、2010 年は 41 行、2009 年は 40 行の回答に基づく。

    必ずしも全ての銀行が 3 つのランクをつけているのではない。

  • 30

    リスク管理

    Q. 中国版バーゼルⅢの導入は、銀行にこれまでとは異なる規制要件を課すことにな

    ります。この動向を肯定的または否定的に捉えていますか。

    外資系銀行は、中国へのバーゼルⅢの導入を肯定的に捉えています。

    また、外資系銀行は、中国経済の特殊性を踏まえ、今後中国においては多尐変更さ

    れた形での規制が導入されるであろうと考えています。

    中国版バーゼルⅢの規制要件の一つに 2.5%の最低貸倒引当率がありますが、この要

    件は銀行の収益性に影響をもたらすことになります。

    銀行の収益性は、景気の動向および不良債権比率によっても左右されます。

    銀行は、自己資本比率(CAR)を毀損しないため、資産の増加のペースに見合うだけ

    の資本の増強を図る必要があります。

    収益性は市況にも左右されますが、不良債権比率が上昇した場合、CAR の維持が銀

    行にとって圧力となります。

    CBRC は、システム上重要な金融機関(SIFI)は 2013 年末までにバーゼルⅢの要件を

    満たす必要があるだろうとしています。一方、それ以外の金融機関についてはより長

    い移行期間が設けられる見込みです。

    SIFI には CAR11.5%が要求され、それ以外の金融機関については CAR10.5%が求め

    られる見込みです。

    中国におけるバーゼル III 導入に対する見解

    34 行の回答に基づく。

  • 31

    銀行の自己資本規制に関する CBRC の草案

    銀行の自己資本規制に関する中国の新基準草案

    Reuters によると、中国の銀行当局はバーゼルⅢ規制導入の取組みの一環として、自己

    資本に関する厳格な新基準案を草案しています。

    中国の大手銀行(SIFI)は、「通常」の状況で最低自己資本比率 11.5%を維持することが要

    求されています。しかし、CBRC が融資額の増加が異常に強すぎると判断した場合には、

    2.5%のカウンターシクリカル・バッファーが追加され、比率は 14%まで引上げられます。

    貸出リスクと金融リスクの管理のために、流動性比率とレバレッジ比率に対してもより広範

    囲の規制が導入されることになります。

    主要な規制は、以下のとおりです。

    自己資本比率

    ・ SIFI については、最低自己資本比率は 11.5%、ただし、2.5%のカウンターシクリカル・

    バッファーが追加される場合がある。新規制は 2012 年 1 月 1 日より施行され、2013

    年末までに要件を満たさなければならない。

    ・ SIFI 以外の金融機関または小規模銀行については、最低自己資本比率は 10.5%、

    カウンターシクリカル・バッファーは要求されない。

    ・ コア Tier 1 の最低自己資本比率は 5%、これはバーゼルⅢの 4.5%よりも厳しい。

    レバレッジ比率

    ・ オンバランス・オフバランス総資産に対して、尐なくとも Tier-1 自己資本比率 4%の維

    持、新規制は 2012 年 1 日 1 日より導入するが、SIFI は 2013 年末までに、SIFI 以外

    の金融機関は 2016 年末までに要件を満たさなければならない。

    ・ 4%の要件は、バーゼルⅢの 3%規制よりも厳しいものとなっている。

    流動性比率

    ・ 流動性カバレッジ比率(LCR:高品質の流動資産とネットキャッシュアウトフロー30 日

    分の比率)が尐なくとも 100%でなければならず、全ての銀行は 2013 年末までにこれ

    を満たす必要がある。

    ・ ネット安定調達比率(NSFR: 安定調達額と所要安定調達額の比率)が尐なくとも

    100%でなければならず、全ての銀行は 2013 年末までにこれを満たす必要がある。

    貸倒引当金

    ・ 総貸出金に対して最低 2.5%の貸倒引当金の引当。

    ・ 総不良債権に対して最低 150%の貸倒引当金の引当。

    ・ SIFI は 2013 年末まで、SIFI 以外の金融機関は 2016 年末までに要件を満たさなけ

    ればならない。

    猶予期間

    原則として、中国当局は SIFI に対して 2013 年末、SIFI 以外の金融機関に対しては 2016

    年末までに要件を満たすことを要求しています。バーゼルⅢは 2019 年 1 月 1 日の期限

    を設定しています。SIFI の適格要件はまだ最終決定していませんが、貸出上位 5 行

    (Industrial & Commercial Bank of China, China Construction Bank, Bank of China,

    Agricultural Bank of China and Bank of Communications)はおそらく SIFI と認定されるで

    しょう。

    (出典:2011 年 2 月 25 日付 Reuters)

  • 32

    Q. 世界金融危機は、中国での金融商品の展開に影響を与えましたか。どのような商

    品が影響を受け、その理由は何でしょうか。

    上記 2 調査で述べたように、外資系銀行は世界金融危機によってデリバティブや証券

    化などの主要な金融商品の展開が遅れたと考えています。

    今年度の調査では、新たな金融商品の展開や人民元の交換性拡大の可能性につい

    ての言及がありました。

    過去 3 年に規制および管理が強化されたことにより、新商品の開発や展開がより難し

    くなっています。

    したがって、世界金融危機は金融商品の展開を直接的または間接的に遅らせ、外資

    系銀行の創造性および革新性への貢献に影響を与えたと結論付けることが可能です。

    また、世界金融危機は、外資系銀行の競争力にも影響を与えました。

    Q. 現地法人化はリスク管理に対しプラスの影響がありましたか。

    36 行のうち 24 行が、現地法人化がリスク管理に対しプラスの影響があったと回答して

    います。

    現地法人化は地域により密着した業務を提供できるとし、預貸率などの要件を例に挙

    げています。

    しかしながら、現地法人化を選択した銀行を含む多くの銀行は、本社からの要求が広

    範囲にわたり、リスク管理の運営が厳しいものであると主張しています。

    またある銀行は、現地法人化がリスク管理の強化につながるわけではないと主張しま

    す。

    ある大手外資系銀行は、中国の規制の多くが不明瞭であり、これが混乱と不確実性を

    もたらしているとの意見を述べています。

    2011 年は 38 行、2010 年は 41 行、2009 年は 40 行の回答に基づく。

  • 33

    ある回答者は、中国向けのリスク管理態勢を新たに構築しても有効ではないと考えて

    います。

    Q. 現在の法人向け与信状況をどのように考えていますか。改善、安定または悪化し

    ていますか。

    以下の 3 つの表は、2009 年にはほとんどの回答者が与信状況は悪化していると回答

    したことを示しています。2010 年には 3 分の 1 の回答者が改善、多くの回答者が安定

    したと考えています。

    2011 年には、与信状況が改善したという回答数は減尐し、安定と回答した数はほぼ同

    数で、悪化と考える回答者が増加しました。

    36 行の回答に基づく。

    リスク管理に対する影響は肯定的か

  • 34

    法人向け与信状況

    2011 年は 42 行、2010 年と 2009 年はそれぞれ 40

    行の回答に基づく。

  • 35

    不良債権 -現状と今後

    下記の CBRC のデータが示すように、過去 5 四半期を通じて不良債権比率は低下し

    ています。外資系銀行では、不良債権比率は 2010 年の第一四半期の 0.74%から、

    2011 年第 1 四半期では 0.5%まで減尐しています。

    上位 5 行では、同時期の不良債権比率が 1.59%から 1.20%まで低下しました。幾つか

    の外資系銀行は、中小企業向け貸し出しのほか、不動産、建設、商品向け貸し出しな

    ど特定分野における信用の先行き見通しが不透明であると警告しています。

    中国の LGFV の見通しと中国の銀行への影響

    中国には 1 万以上の local government financing vehicles(地方政府の特別目的会社、

    LGFV)が存在し、その数は 2008 年末から 25%増加しています。地方政府は LGFV を

    通じて銀行から借入れ、その借入の担保として土地を差し入れています。

    2011 年 6 月現在、LGFV の 70%が地方政府により運営されていると、中国人民銀行

    は述べています。

    貸出金の 50%以上は返済期間 5 年以上の契約で、50%以上が一般道路、高速道路、

    地方自治体の建設プロジェクトに使われています。

    (出典:2011 年 6 月中国人民銀行公表の China Regional Financial Operation Report)

    不良債権比率(2010 年-2011 年)

    出典:CBRC

  • 36

    Q. 現在の消費者金融の状況は好転、安定または悪化していますか。

    29 行のうち 16 行の半数以上の銀行が消費者金融は安定していると考えています。8

    行は好転していると回答しました。これに対し、2010 年では、9 行が好転していると回

    答しました。

    ある大手商業銀行は、今後もより多くの消費者が住宅や車などを購入すると回答して

    います。

    2011 年は 29 行、2010 年は 23 行、2009 年は 29 行の回

    答に基づく。

    消費者金融

  • 37

    個人消費の動向

    拡大が続く個人消費

    2011 年 4 月の車両販売台数は 114 万台と、前年度からは微増にとどまりました。2010 年

    の販売台数は 1,800 万台と 32%増でしたが、ガソリン価格の高騰、交通規制や補助金の

    終了により、今後成長率は減速すると見込まれます。

    (出典: 2011 年 5 月 10 月付 Associated Press)

    Bloomberg によると、政府による住宅への投機防止策にもかかわらず、2011 年第 1 四半

    期には住宅価格は 26%上昇しています。

    2011 年 4 月 13 日、温家宝首相は関係閣僚会議において中国の多くの都市で資産価格

    が高騰するなど、さまざまな社会的な問題に直面していると伝えました。

    (出典:2011 年 4 月 15 日付 Bloomberg News)

    2011 年 3 月のレポート「Understanding China’s Love for Luxury」において、マッキンゼー

    社は富の増加と富裕者層による派手な消費がある一方で、その下の所得階層においても

    奢侈品への需要が高まっていると報告しています。

    同社は、1,300 万人の中流上層階級(年間 10 万~20 万人民元の所得層)が中国経済成

    長の原動力と結論付けています。

    その調査によると、奢侈品の購入者数も急増しており、奢侈品を購入できる所得階層がい

    る都市は今後 5 年間で 30 都市から 60 都市に増えるだろうと予測しています。

    このような動向は、消費者金融に対する需要の増加に反映されています。そのような増加

    により、外資系銀行のプライベートバンキング市場でも、最上層に位置する個人富裕層よ

    り、増加する中流上層階級に注力するリテール業務に移行する動きが高まっています。

  • 38

    Q. 中国の銀行には強固なリスク管理態勢が整備されていると考えますか。

    外資系銀行は依然として、中国の銀行のリスク管理態勢に対して懐疑的です。

    回答者の多くは中国の銀行のリスク管理が継続的に改善されているとしているものの、

    政府の景気刺激策を受けて中国の銀行がとった行動を受けてリスク管理態勢への懸

    念は高まったとしています。

    また、多くの回答者が融資意思決定に対する外部の影響について言及しています。さ

    らに、汚職、ネット詐欺、個人情報の詐欺についても述べています。

    2011 年は 36 行、2010 年は 40 行、2009 年は 38 行の回

    答に基づく。

  • 39

    中国の銀行の記録的な融資額が Fitch Ratings の格付の低下を招く

    3 年以内に銀行の資産の質が「相当に悪化する可能性が高い」として、昨日ロンドンを拠

    点とする Fitch Ratings が、中国の長期現地通貨建て発行体デフォルト格付け AA-のアウ

    トルックを「ステーブル」から「ネガティブ」に引き下げました。中国の外貨建て長期 IDR の

    格付けについては A+を維持しました。

    簿外融資の増加と融資の品質悪化が懸念され、不良債権は総額で 15%から 30%増加する

    と見込まれます。昨年の中国の銀行の新規融資額は 7.95 兆元(1.2 兆米国ドル)となり、

    世界金融危機からの景気急回復に寄与しましたが、資産価格の高騰を煽ることにもなりま

    した。

    Fitch Ratings のアジア太平洋ソブリン部門の代表 Andrew Colquhoun 氏に電話でインタ

    ビューを行ったところ「オフバランス取引やいろいろなチャネルを通じて与信が行われいる

    ようであり、その結果、金融政策の有効性が低下している」との懸念を表明しました。

    Fitch Ratings の中国の債務格付け引下げは、1999 年 7 月に S & P が外貨建て・現地通

    貨建て長期格付を 1 段階引き下げて BBB として以来でした。Bloomberg によると、Fitch

    Ratings はこれまで中国の信用格付けを引き下げたことはなく、Lu Tin 率いる Bank of

    America-Merrill Lynch のエコノミストは、今後数年以内に中国においてシステミックな銀

    行危機が起こる可能性はほとんどないとコメントしました。

    「リスクに注意深くあることと、リスクを過大視することは別のことだ」と、エコノミストは E-mail

    で寄稿しました。ある格付け機関は、中国の銀行セクターにおける危機の可能性を予測

    するにあたって、「モデルを使用するにあたってはより慎重である必要がある」と述べてい

    ます。

    2.8 兆米国ドルの外貨準備を保有する世界第二位の経済大国である中国は、2010 年 10

    月以降にインフレ対策として利上げを 4 回行いました。温家宝首相は、「適正な範囲を超

    えた」住宅価格の上昇は、外需よりも内需によって経済成長を実現していく中国にとって、

    重要な懸念事項であると発言しています。

    中国の法人・個人向け貸出は、2008 年の対 GDP 比 111%から、昨年度には 140%に増加

    したと Fitch Ratings は報告しています。この増加は、資産関連融資や地方自治体への融

    資によるものです。

    地方自治体は開示が不十分で、どの程度債務があるかが懸念事項であると Colquhoun

    氏は電話で話しました。不良債権比率が 30%に達しているとすると、不良債権への引当が

    GDP の 30%に達することはあり得ないことではないと発言しました。地方自治体への融資

    に対する 2010 年末における不良債権比率は 1.1%ですが、より保守的な方法をもって区

    分した場合には 6%に達すると Fitch Ratings は発表し、銀行システムへの国家的支援が

    期待されると述べています。

    (出典:2011 年 4 月 13 日付 Bloomberg News)

  • 40

    商品および市場セグメント

    Q. 今後 3 年間でどのような法人向け商品が中国の銀行セクターで重要となってきま

    すか。

    法人向け業務を行う外資系銀行にとっては、債券発行市場が今後最も発展性のある

    分野であると認識されています。過去 3 年間にわたり、債券発行市場が有望先として

    首位を維持してきました。債券市場は、今後も中国において成長し続けると見込まれ、

    その市場規模は今ではアジア 2 位、世界 6 位となっています。2010 年の 1 月~10 月

    で社債発行高は 25%増加し、8.2 兆人民元に達しました。

    クロス・カレンシー・スワップは 2 位となりました。中国の人民元の国際化を推進する中

    で、中国外貨取引センター(China Foreign Exchange Trading System: CFETS)は引き

    続き改革を進めています。外資系銀行は、通貨国際化に関連する多くの金融商品で

    の目覚ましい成長を期待しています。

  • 41

    Q. 仕組み商品は現在中国で用いられているような状態でさらに拡大が続くと思われ

    ますか、あるいは 2013 年には何らかの発展を示すと考えますか。

    仕組み商品の重要性が今後も増していくであろうという見解が一般的です。発展性の

    ある分野として以下が挙げられました。

    負債側 ‐ 高利回りを提供できる仕組預金

    船舶ファイナンスや船舶リースといったストラクチャードファイナンス商品

    高利回りの預金、通貨やコモディティなどのウェルスマネジメント商品

    金利スワップ、通貨スワップ

    航空機の燃油ヘッジ

    一部の銀行では CBRC による一連の新規制に伴い、単純な仕組みの商品からより複

    雑な商品へと移行していくことを見込んでいます。

    一方で、国内銀行が遅れをとらないよう、CBRC が外資系銀行による革新的な商品開

    発を規制していくのではないかとの意見もありました。

    2011 年は 40 行の回答に基づく。

  • 42

    Q. 今後 3 年間で、中国の個人向け業務のうち、いずれの商品が重要となってきます

    か。

    この質問に対する回答は、前年のレポートと同じでした。

    今後最も重要となるリテール商品は、依然として以下の 3 つです。

    個人富裕層向けプライベートバンキング

    投資商品

    住宅ローン

    上記の商品に次いで、レバレッジ投資商品やクレジットカードが挙げられました。外資

    系銀行の中で Bank of East Asia のみが自社の名称でクレジットカードを発行していま

    す。その他の大手外資系銀行は、引き続き大手国内銀行との提携カードを通してクレ

    ジットカード市場に参入しています。

    2011 年は 22 行の回答に基づく。

  • 43

    2010 年末時点で、銀行は前年末比 18.6%増の 24.1 億枚のカードを発行し、取引総額は

    対前年比 74.2%増の 283.6 兆人民元となりました。

    新規に発行されたクレジットカードは 2.11 億枚に達し、2.7 兆人民元の利用金額を含む

    取引総額は 5.1 兆人民元となりました。小売販売総額に占めるクレジットカード利用額の

    比率は 2006 年の 3.1%から 2010 年には 17.7%に上昇し、GDP に占める割合は 2006 年の

    1.1%から 2010 年には 6.9%にまで上昇しました。

    (出典: CBRC2010 年度年次報告書)

  • 44

    Q. 個人向け業務について、営業を展開している銀行の支店において、以下の問題

    の深刻度を 10 点を最大として 1 から 10 で採点してください。

    今回も前回調査同様、国内銀行が運営をしていく中での 3 つの課題である商品販売

    での行員の専門知識の不足、一部商品の不適切な販売、販売チャネルの規制という

    点について、外資系銀行にコメントを求めました。

    2011 年の調査では、11 行がこの質問に回答しました。

    回答からは、国内の提携先銀行が依然としてこれらの課題を抱えていると外資系銀行

    が考えていることが示唆されました。

    専門知識の不足には、7 行が 7 点以上の点数をつけました。

    不適切な販売は問題になっていないとする銀行がある一方で、7 行が 6 点以上を、そ

    のうち 5 行が 8 点以上をつけました。

    特定の商品販売での行員の専門知識の不足

    11 行の回答に基づく。

  • 45

    銀行の販売チャネルの規制についても、7 行が 7 点以上をつけました。

    特定の商品の不正販売

    11 行の回答に基づく。

    販売チャネルの規制

    2010 年は 19 行、2009 年は 20 行の

    回答に基づく。

  • 46

    過去 3 年間の平均点の推移をみると、専門知識の不足と商品の不適切な販売につい

    てはいずれも若干の改善が見られます。しかし、支店レベルでの販売チャネルの管理

    状態については、外資系銀行は引き続き改善に向けて多くの労力が必要としていま

    す。

    Q. 外資系銀行全体の中国市場におけるシェアは(国内銀行に対して)今後も同じ水

    準、あるいは増加または減尐しますか。

    2009 年、2010 年のいずれにおいても 16 行がグループとして市場シェアを伸ばすこと

    ができると考えていました。2011 年にはこの数字は 12 行まで減尐し、市場シェアは横

    ばいになるという回答が初めて過半を占めました。

    下のグラフが示すように、市場シェアは 2007 年の 2.36%がピークとなっており、2010 年

    は 1.83%でした。

    大手の外資系銀行は、規制の撤廃がない限り、市場シェアが伸びることはないであろ

    うと示唆しています。また、一部の外資系銀行の見解では、外資系銀行は技術やネッ

    トワークにおいて優位性があるものの、国内銀行が差を縮めてくるにつれ、その優位

    性は損なわれていくであろうと予測しています。あるヨーロッパ系銀行は、もし金利に対

    する規制が撤廃されれば外資系銀行は市場シェアを獲得し、撤廃されなければ変化

    はないであろうと指摘しています。

    ある回答銀行は政府がシェアの上昇を期待していると主張している一方、政府は 2%の

    市場シェアまでしか認めないであろうと主張している回答もありました。

    平均点(2009 年 – 2011 年)

  • 47

    外資系銀行の市場シェア(2003 年 – 2010 年)

  • 48

    Q. 中国での事業拡大を推進する上で、貴行の主たる手段は何ですか。

    外資系銀行の中国での展開は、M&A などに拠らない内部成長(本業の成長)を主要

    な手法としていることに変わりはありません。

    2011 年は 30 行がこの方法を選択しました。唯一の例外はヨーロッパ系のある銀行で、

    同銀行は拡大戦略を採らないとしています。

    この質問では回答は 1 つまででしたが、2 行がジョイントベンチャーを積極的に進める

    と回答し、3 行が買収を計画していると回答しました。

    ある銀行は、農村銀行業務への進出が市場拡大の最も重要な手段であるとしていま

    す。

    今年の調査結果は、拡大のための最も重要な選択肢は本業の成長であると 38 行が

    回答した 2009 年、同じく 37 行が回答した 2010 年の結果と類似する結果となりました。

    2011 年は 40 行、2010 年は 42 行、2009

    年は 40 行の回答に基づく。

  • 49

    Q. 今後 3 年間にパートナーシップの提携を予定していますか。

    パートナーシップの提携は外資系銀行にとって引き続き重要です。以下の分野にお

    いて銀行は関係を構築し、より深めていこうとしています。

    消費者金融

    プライベートバンキング

    保険

    信託業務

    資産運用

    リース

    証券

    農村銀行業務

    コルレスバンキング

    外資系銀行によるパートナーシップ提携の例として、ANZ Bank と China Exim Bank に

    よる提携契約が挙げられます。

    同契約は、オーストラリアとアジア太平洋地域における貿易、エネルギー、インフラ、エ

    ンジニアリングのプロジェクト開発を対象としており、輸出関連のストラクチャードファイ

    ナンスやプロジェクトファイナンスの提供に重点が置かれています。

    外資系銀行が金融セクター全体に進出していくことに伴い、外資系銀行と証券会社と

    のパートナーシップが増加しています。

    外資系銀行と証券会社によるパートナーシップ提携の最近の事例としては、Citibank

    と Orient Securities、The Royal Bank of Scotland(RBS)と Guolian Securities が挙げら

    れます。

    今後パートナーシップの提携を予定していますか

    2011 年は 40 行、2010 年は 41 行

    の回答に基づく。

  • 50

    外資系銀行はこれらの証券会社の株式の 3 分の 1 までを保有することが認められて

    います。

    上記以外の証券会社のジョイントベンチャーの例は以下のとおりです。

    JP Morgan と First Capital Securities の FC JPM Securities

    Deutsche Bank と Shanxi Securitie の Zhongde Securities

    Credit Suisse と Founder Securities の Credit Suisse Founder Securities

    Goldman Sachs と Beijing Gaohua Securities の Goldman Sachs Gaohua

    Securities

    UBS Securities(旧 Beijing Securities からの再編)

    Daiwa SMBC と Shanghai Securities の Daiwa SSC Securities

    CLSA(Credit Agricole)と Fortune Securities(Fortune CLSA Securities)

    Morgan Stanley と Huaxin Securities の Morgan Stanley Huaxin Securities

    Morgan Stanley は、34.3%を所有する China International Capital Corporation(CICC)

    の株式を Kohlberg Kravis Roberts、TPG Capital、シンガポールのソブリンウェルスファ

    ンドである Government of Singapore Investment Corporation、Oversea-Chinese

    Banking Corporation(OCBC)傘下の保険会社である Great Eastern Holdings へ売却

    する認可を政府から受けました。

    1995 年に複数の中国投資家と提携した Morgan Stanley は、中国と外資の合弁投資

    銀行である CICC を設立し、中国における証券販売のトップクラスの引受会社となりま

    した。

    RBS と Guolian Securities の合弁である Huaying Securities について、Gualina の雷建

    輝会長は、「この合弁は、中国で未発達の債券市場における RBS の専門的知識を活

    用し、債券業務を拡大していくことにより焦点を当てている」と述べました(出典:2011

    年 5 月 20 日付 Wall Street Journal)。

    中国におけるジョイントベンチャーは、成長市場の IPO 市場開拓も期待しています。

    2010 年、中国の IPO 市場では 346 社が 837 億米ドルを調達しており、世界最大の

    IPO 市場となりました(出典:2011 年 5 月 30 日付 Financial Times)。

    Q. プライベートバンキング業務で成功する上での主な要因を 3 つ挙げてください。

    調査参加行により示されたプライベートバンキング業務における成功要因は以下のと

    おりです。

    人材の質

    顧客との良好な関係を維持し、ニーズを把握し、それを満たすことのできる高度なスキ

    ルを有する優秀な人材が含まれます。世界有数のプライベートバンキングである参加

    銀行は、こういった人材は供給が限られるため、その維持が特に難しいと述べていま

    す。

  • 51

    ブランディング

    外資系銀行のブランディングと評判は非常に重要です。

    商品の質

    調査参加行は、現地の規制により商品ポートフォリオや自行が有する国際的な専門知

    識の活用が妨げられていると感じています。このため、国内銀行の競争が可能になっ

    ています。外資系銀行は提供できる商品の種類に制限があるため、プライベートバン

    キング業務提供の実効性が損なわれています。たとえば、QDII 規制により外資系銀

    行の潜在的な成長が制約されています。

    プライベートバンキングのあるグローバルリーダーは、確かな商品を設計し、同時に商

    品の差別化を図ることが難しいと述べています。

    顧客を啓蒙する意欲

    ある銀行は、外資系銀行は顧客についてより理解し、西洋的なモデルのウェルスマネ

    ジメント業務の開拓は避けるべきであると指摘しています。

    中国のウェルスマネジメントの顧客は年齢層が若く、その富を最近獲得していて、「トレ

    ーディング」指向を有する傾向にあると強調しています。

    こういった顧客は自身のニーズを理解していないことが多く、したがって、ウェルスマネ

    ジメントにおいては啓蒙的なサポートが必要となります。

    明確な戦略

    外資系銀行は明確かつ焦点を絞った目標を設定する必要があります。

    複数の法人組織

    顧客がバンキングと証券の両サービスを必要としている場合、外資系銀行は幅広い商

    品を提供できるような複数の法人組織が必要になる場合があります。

  • 52

    2010 年�