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独立行政法人 海上技術安全研究所 National Maritime Research Institute 2010

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  • 独立行政法人

    海上技術安全研究所National Maritime Research Institute 2010

  • National Maritime Research Institute1

     独立行政法人海上技術安全研究所は、行政・社会・産業から与えられる海事・海洋分野の様々な問題・課題に対して高度な技術ソリューションを提供することが使命です。2010年度は、当研究所に与えられた中期目標を達成すべき最終年度です。 顕在化する老齢化社会に伴う課題、好転しない景気動向、激化する国際競争、厳しい財政状況と無駄遣いへの批判という環境の中で、当研究所が与えられた使命を果たすためには、細心の注意をもって臨むことが必要です。

     2010年度の業務を執行するに当たり、どのような考えで臨むかについてご説明します。

     第一に、当研究所の研究テーマは、温暖化ガス排出性能基準、温暖化ガス低減技術開発、海難事故の分析、EEZ(排他的経済水域)開発、物作り技能伝承等、いずれも行政施策に密着に結びついたものであり、その成果は、政策提言され、基準として提案され、安全対策、国際競争に打ちかつ産業技術等として利用されるものです。 海事・海洋に関する課題解決型の研究所として、様々な課題に高度な技術的成果を提供できることが必要です。このため、研究資源の選択と集中を行い、最大の成果をあげます。また、その研究成果をフォローし、その普及まで着実に実施します。

     第二に、当研究所は中立性を有する機関ですが、それだけではなく技術が他の機関で得られないほどの独自性と高度なものであることが必要です。「安全・環境のスペシャリスト」「海事イノベーションセンター」として比類ない技術を築きあげるために日々研鑽を積んでいきます。 このため、昨年、コア技術の高度化、蓄積のための組織の編成を行ったところです。与えられる課題に対する研究の中で、成果をあげることと同時に研究所が定めたコア技術の高度化を必ず図ります。研究所がカバーできない分野については、大学や他の機関との連携を構築することにより高次元の技術力を確保し、また、優秀な人材の確保や研修体制の充実により研究能力のポテンシャルアップを図ります。

     第三に、予算の大部分を国からいただいている研究機関として、徹底的に無駄をなくし、国民の皆様に納得いただける業務の進め方を追求しなければなりません。 このため、支出項目の内容、事務の進め方、契約等について自ら進んで点検を行うとともに外部有識者により契約業務の点検をしていただき、必要な見直しを積極的に行います。その際、これまでの慣習にとらわれることなく、国民の目線で現状を分析し、新たな発想により改革を行い、業務を進めてまいります。

    理事長 井上 四郎

    独立行政法人 海上技術安全研究所

    理事長 井上 四郎

    ご 挨 拶

  • National Maritime Research Institute 2

    ご挨拶 1

    目 次 2

    海技研のミッションと中長期戦略 3

    海技研のポリシー 4

    第2期中期計画の重点課題 5

    新たな政策課題への対応 7 地球温暖化防止に向けて

    新たな政策課題への対応 8 海難事故防止に向けて

    海上輸送の安全の確保 9

    海洋環境の保全 11

    海洋の開発 13

    海上輸送の高度化 14

    知的財産の普及・社会還元 15

    国際活動の推進 16

    外部機関との連携 17

    成果の発信 18

    概要・沿革 19

    組織 20

    研究系 21

    研究系・大阪支所・プロジェクトチーム 24

    主な施設 25

    所在地 27

    目  次

  • National Maritime Research Institute3

    海技研のミッションと中長期戦略

    海技研のポテンシャル

    品揃えの充実 高い技術成果

    売れる技術

    行政・社会からの要請

    質の高いサービスの提供

    海上輸送の安全の確保

    海洋環境の保全 海洋の開発

    海上輸送の高度化

    各種要請への迅速かつ的確な対応

    豊富な専門的知見

    国内外の技術基準の提案

    安全の確保・環境の保全

    海事新技術の創出

    大型研究施設質の高い技術力

    海技研のポテンシャル

    ■ミッション

    ■中長期戦略

    海技研が保有すべき技術領域の確立

    コア技術海技研のシーズ お客様のニーズ

    コア技術海技研が保有すべき技術領域の確立

    海技研の技術基盤

    お客様への質の高いサービスの提供

    海上輸送に係る「安全・環境のスペシャリスト」ニーズ、規制の動向を先取りした新技術創出の「海事イノベーションセンター」

    経 営 ビ ジョン

  • National Maritime Research Institute 4

    海技研のポリシー ─基本理念と行動規範─

    所の基本理念と所員が共有すべき行動規範を以下のように定めます。

    ■お客様の立場で考えます。 私たちは、海事・海洋に関する行政や産業、ひいては国民の皆様というお客様すべてにご満足いただける技術的ソリューションを提供するため、常にお客様の視点からのニーズの把握・対応に努めます。

    ■社会動向を把握し、機動的に課題解決に取り組みます。 私たちは、日々変化する社会において次々に湧き起こる課題を迅速かつ的確に把握・分析し、直ちに課題解決のための行動に移していきます。  

    ■自らを変革し新たな可能性に挑戦します。 私たちは、個人の専門分野や既存の技術にとらわれることなく、新たな分野の開拓や前人未到の技術課題の解決に対して、常に前向きの意志をもって積極果敢に挑戦します。

    ■健全な成果意識を持ちます。 私たちは、課題の解決で満足するのではなく、他の機関では実現できない高レベルな成果をお客様から高いご評価をいただける形で提供できるよう、常に心掛けます。

    ■目標意識を明確にし、創造力を発揮します。 私たちは、この行動規範に基づき行動を起こす際には、各々が達成目標を常に念頭に置き、新たな創造力を発揮して目標の実現に向けて邁進します。

    安全安心な社会の実現へ貢献します

    環境と調和した社会の実現に貢献します

    海事産業の競争力強化に貢献します

    未来を拓く技術の創造に貢献します

    基本理念

    行動規範

  • National Maritime Research Institute5

    第2期中期計画で実施している主な研究課題◆船舶からのCO2の排出による地球温暖化の防止

    ◇ 船舶からのCO2の排出低減技術の開発◇ 国際的な課題となっている外航海運のGHGの排出 量算定手法の構築

    ◆船舶からの油及び有害液体物質の排出・流出による海洋汚染の防止◇ 荒天時にも油及び有害液体物質の種類と流出量を推

    定する計測技術の開発◇ 沈船からの油の流出を含む流出した油及び有害液体

    物質の環境影響評価手法の構築

    ◆船舶からの排出ガスの放出などによる大気汚染の防止◇ 排出ガスの規制強

    化の検討に必要な計測技術の開発及び環境影響評価手法の構築

    ◇ 船舶塗装からの揮発性有機溶剤の排出低減技術の開発

    ◆船舶の運航に伴う海洋生態系被害防止◇ 非有機スズ系船舶用防汚塗料の環境影響評価手法

    の構築◇ 船舶のバラスト水処理システムの性能評価手法の構築

    ◆船舶の解撤に伴う環境汚染防止

    ◇ 経年劣化・損傷船舶の残存強度評価法の構築◇ 海水バラストタンク内等の塗装基準作成◇ 構造基準の体系化(船体構造強度GBS)◇ 超大型コンテナ船の安全評価手法の構築

    ◆テロ等の不法行為に対する船舶の保安向上◇ 危険物ばら積み船へのテロによる被害推定方法構築◇ 放射性物質運搬船へのテロによる被害推定方法構築◇ 船舶の脆弱性評価手法構築

    第2期中期計画の重点課題

    第2期中期計画において基本理念を実現するため、4つの重点研究分野を設定しています。

    ① 海上輸送の安全の確保

    ② 海洋環境の保全

    第2期中期計画で実施している主な研究課題◆リスクベースの安全性評価手法の構築

    ◇ 目標指向型基準(GBS)ガイドラインの作成◇ リスク評価の実用的な活用

    ◆異常波浪が発生するような荒天下における船舶の事故原因分析手法の構築及び安全性向上◇ 荒天下における操船環境の再現技術の開発◇ 非損傷時復原性基準の体系化◇ 波浪衝撃荷重低減支援システムの開発◇ 船体動揺条件下での安全な乗艇等を可能とする自由

    降下式救命艇の技術要件案作成◆船体構造の経年劣化対策の強化及びこれを踏まえた構

    造基準の体系化◇ 疲労設計指針の簡易適用法の構築

     現行の経験に基づいた安全規制体系に替わる、安全対策によるリスク減少を定量的に評価する手法により、船舶が建造から解撤までの生涯を通じ確保すべき安全性を明確にすることによる規制の強化と緩和を両立する総合的・合理的な安全規制体系の構築に向けた研究を行っています。

     CO2による地球温暖化の防止、排ガス中のNOx、塗料中のVOC等による大気汚染の防止、バラスト水、油による海洋生態系被害の防止、船舶の解撤に伴う環境汚染の防止等の社会的問題を迅速に解決する環境規制体系の構築に向けた研究を行っています。

    船体構造の経年劣化による折損事故写真提供:ロイター/ アフロ

    大規模油流出事故写真提供 = 第11管区海上保安本部

    NOxの排出規制強化

    空気潤滑法によるCO2 の排出削減

  • National Maritime Research Institute 6

    第2期中期計画で実施している主な研究課題◆モーダルシフトの推進等に資する高効率海上物流システムの実現に必要な基盤技術の開発

    ◇ 高効率海上物流の基盤技術の開発◇ 高効率船舶の基盤技術の開発

    ◆海事産業における熟練者の減少の対応に必要な基盤技術の開発◇ 熟練技能を有する船員減少に対

    応した船員作業の支援及び簡素化の実現に必要な基盤技術の開発

    ◇ 船舶産業の熟練した技能を有する作業者減少に対応した新しい生産システムの実現に必要な基盤技術の開発

    ③ 海洋の開発

    ④ 海上輸送の高度化

    第2期中期計画で実施している主な研究課題◆大水深、強海流等の厳しい自然条件下で使用する石油・天然ガス生産シ

    ステムの安全性評価手法構築◆再生可能エネルギー生産システムの安全性評価手法構築◆サハリン大陸棚での石油・天然ガスの開発に対応した氷海域での船舶の

    安全性向上及び事故時の流出油の防除技術の開発◇ オホーツク海を対象とした氷荷重の船体強度への影響評価手法構築 ◇ オホーツク海を対象とした氷中流出油の防除システム開発

     エネルギー、鉱物、食料、空間等の未活用かつ膨大な可能性を秘めた我が国の海洋環境を踏まえ、エネルギー安全保障、地球環境問題の解決、新たな産業の創成等、経済社会の発展に寄与するため、海洋資源・空間の利活用を推進し、我が国の海洋権益の確保を図るための海洋開発技術に関する研究を行っております。

     産業立地のグローバル化の進展、少子高齢化社会の到来等の環境・構造変化が進む中、我が国の産業社会の持続的発展を図るため、これら環境・構造変化に対応した新たな海上交通輸送システムの構築と熟練技能人材の減少に対応した新たな海事産業の基盤技術の研究を行っております。

    外洋上プラットフォームの利活用の例

    設計における視覚化

    我が国の排他的経済水域(EEZ)

    海底熱水鉱床開発 メタンハイドレート試探掘

    燃料油系統 機関室の階層構造

  • National Maritime Research Institute7

    を、はるかに超えるものが得られることになりました。さらにリアクションポッドの採用は、機関配置を柔軟にでき貨物搭載スペースの拡大、針路安定性の向上なども図られ、ポッド推進のメリットを最大限生かすことができます。

    新たな政策課題への対応 ─地球温暖化防止に向けて─

    評価するため、水槽試験と数値解析を組み合わせたハイブリッド シミュレーション手法である「海の10モード指標」を開発して、普及に努めています。

     現在、2013年以後の国際的な地球温暖化防止の枠組み(ポスト京都議定書)作りが行われており、二酸化炭素等の温室効果ガス(GHG)の排出削減に向けた取り組みが世界的に活発化しています。外航海運のGHG排出削減の枠組みは、IMOで検討されていますが、我が国は、国際的な検討に積極的に貢献するとともに、新造船舶からのGHG排出量30%削減を技術開発目標として掲げています。そのため、海技研では、次のような総合的な取り組みを行っています。

    IMOにおけるGHG排出削減の国際的な枠組み作りへの貢献

    GHG排出量半減に向けた省エネ技術の開発「ZEUSプロジェクト」

    外航海運GHG排出量算定と新造船GHG排出算定設計指標の提案 IMOにおいてGHG排出削減の枠組みの基本として重視される新造船の単位輸送能力当たりのGHG排出量を示す指標であるエネルギー効率設計指標(EEDI)について、その詳細見直し案及びその具体的な算出手順に関するガイドライン案をIMOに提案しました。この結果、EEDI及びその算出手順は、2009年7月に開催されたIMO海洋環境保護委員会(MEPC)での審議を経て任意のガイドラインとして合意されています。 また、海技研の保有するデータベース等を活用し、現存する船舶の船種・大きさ毎の平均的なEEDI値を示す曲線(EEDIベースライン)や各種GHG削減技術により将来的に実現可能なEEDI値の改善幅の推定値等を計算してIMOに提案しました。これらは今後IMOにおいて行われる強制力を有するGHG削減の枠組みに関する審議において活用されることが期待されています。

    海の10モード指標の開発 設計時に船型による実海域の運航性能の省エネ効果を

     船舶からの排出ガスを半減し、長期的にはゼロにする「ZEUSプロジェクト」を開始しました。ZEUSはZero Emission Ultimate Shipの頭文字を取ったもので、超幅広ツインスケグ、リアクションポッド、波浪中抵抗低減装置、船尾トンネル部境界層制御をコア技術とします。 超幅広ツインスケグとリアクションポッドの相乗効果で、コンテナ船においては高くても75%程度だった推進効率

    平水中模型試験

    正面規則波抵抗試験 波浪中抵抗増加計算

    理論計算の補正

    船体斜行・あて舵計算

    波浪中自航計算

    主機燃料消費 波浪中馬力計算

    海の10モード指標 波浪中船速低下計算

    リアクションポッド船型

    20ノット航走時0.600

    0.650

    0.700

    0.750

    0.800

    0.850

    0.900

    0.100 0.150 0.200 0.250 0.300

    推進

    効率

    Froude Number

    Zeus

    省エネ装置

    肥大船 コンテナ船

    H22目標値

  • National Maritime Research Institute 8

    新たな政策課題への対応 ─海難事故防止に向けて─

    ン技術を用いて事故を再現し、国が行う再発防止対策に貢献します。運輸安全委員会から委託を受け、多数の事故解析も行っています。

    実海域再現水槽による再現 実海域再現水槽において、実際の現場海域の波や風の状況をリアルに再現し、模型船で実験を行うことにより、事故の状況を把握し、再発防止策の検討に貢献します。

     国においては、2008年10月、徹底した原因究明を行うとともに再発防止対策を講じるために運輸安全委員会が設置されました。このような状況の中、海技研では、2008年9月に海難事故解析センターを、2009年4月に海上安全イニシアティブプロジェクトチームを設置し、次のような総合的安全対策への取り組みを行っています。

    海難事故への即応体制と事故解析力の強化

    事故の再現(見える化)技術の高度化

     海技研は、重大事故発生時に、豊富な専門的知見を活用して即座に情報を分析し、その結果を迅速に発信します。更に、詳細な解析が必要な場合には、各種シミュレーショ

     事故の再発防止策を的確に検討するため、リスクシミュレータ及び実海域再現水槽(平成22年度完成予定)を用いて、海難事故をできるだけ忠実に再現するための研究を行っています。

    操船リスクシミュレータによる再現 事故再現事例として、2008年3月に明石海峡で発生した3隻による2重衝突事故の衝突時の船舶挙動をリスクシミュレータにより再現しました。この再現技術では、操船操作を変えて何度も再現できるため、どうすれば事故が

    防げたか、再発防止対策が検討できます。

    2 重 衝 突 事 故 の 衝 突時船舶挙動シミュレーション

    実海域再現水槽(平成 22 年度完成)

    専門的知見に基づく迅速かつ正確な情報提供

    専門的知見に基づく迅速かつ正確な情報提供

    再発防止対策の立案等への支援再発防止対策の立案等への支援

    詳細解析が必要な場合詳細解析が必要な場合

    事故情報の収集

    詳細データの収集 詳細データの解析事故再現及び各種状況の

    シミュレーション国・関係機関等

    国・関係機関等

    事故情報の分析 分析結果の情報発信

  • National Maritime Research Institute9

    海上輸送の安全の確保

    波浪荷重を適切に計算する必要があります。 海技研では、従来できなかった大波高斜波・横波での船体運動を計算する6自由度の時系列計算法(NMRIW : Nonlinear Motion in Regular and Irregular Waves)を開発し、縦曲げ、横曲げ、捩りの複合荷重計算を実現できるようにしました。

    このようなことから、今後の造船所における構造設計や国際的な構造基準策定に活用されることが期待されます。

    大型船の構造強度評価のための実用的な波浪荷重推定法の開発

     IMOにおいて船体構造強度の目標指向型基準(GBS)が審議されていますが、合理的な基準体系の構築のためには、外力等の船体強度に影響する諸因子の把握が重要になります。 一方、従来の線形理論では、構造強度を評価する上で重要となる大波高中での波浪荷重を十分に評価できませんでした。特に上甲板に大開口を有し、大波高中の捩りが問題となる大型コンテナ船については、大波高斜波中での

    構造設計、国際的な基準策定で活用できる評価ツールを開発

     海技研で開発した計算法NMRIWは、不規則波中における応答も短時間で計算することができます。このため、強度評価で重要となる荷重の統計値を直接計算により求めることが可能になりました。 また、この計算法は、ホイッピング(海面が船底を叩くスラミングに伴う船体振動現象)のような弾性振動も計算することができ、従来以上に高度な強度解析を行うことが可能となります。これらの体系的な計算手法を所有しているところは少なく、海技研の計算法は世界のトップランナーに属していると言えます。 コンテナ船が大型化する中、ホイッピングが事故の一つの要因として注目されるような船体折損事故が発生し、対応の必要性が国際的にも検討されています(英国海難調査局の事故報告書)。

    船首揺れ(ヨーイング)

    上下揺れ(ヒービング)

    縦揺れ(ピッチング)

    前後揺れ(サージング)

    横揺れ(ローリング)

    左右揺れ(スウェイング)

    Vertical Acc. (χ=180deg., Fn=0.179)

    051015202530354045

    0 0.5 1 1.5 2

    λ/L

    aL/gζ

    Cal.(Hw=1.0m)Cal.(Hw=3.5m)Cal.(Hw=9.0m)Cal.(Hw=15.0m)Exp.(Hw=3.5m)Exp.(Hw=9.0m)Exp.(Hw=15.0m)

    MSC Napoli の船体折損事故(H19.1) 写真提供:Geoff Moore/Rex Features/ アフロ

    船体加速度の規則波中周波数応答関数

    海技研で開発した計算法による大波高斜向波中での6自由度船体運動の計算例(大型コンテナ船)スラミングや大きな波浪荷重が発生する大波高中での船体運動が適切に計算できている。

    船体の6自由度運動

  • National Maritime Research Institute 10

    て、二重船殻のコンテナ船模型を製作し、作用させる曲げモーメントと捩りモーメントの比率を変えた逐次崩壊試験を実施するなど、縦曲げ最終強度に対する曲げと捩りの相関関係を明らかにする研究を進めています。

    リスクベースの安全性評価手法の構築のための研究

    船体構造の経年劣化対策の強化及びこれを踏まえた構造基準の体系化のための研究

    次世代航行支援システムの開発

    環境変化に伴うリスク変動も予測し、安全性評価手法が実用段階に 船舶の合理的かつ効率的な基準の策定を目的に、安全対策によるリスク減少を定量的に評価する手法(リスクベースの安全性評価手法)の研究を行っています。この手法を採り入れた目標指向型基準(GBS)は、過剰な規制や規制の盲点をなくすことができると考えられ、IMOで国際ガイドラインの作成が行われています。このため、船舶が達成すべき安全目標の設定やリスクモデルの構築に関する研究を進めています。 また、リスク評価を実用的に活用し、危険物ばら積運搬船を取り巻く環境の今後の変化に伴うリスク変動を予測し、リスクを制御する措置を検討する研究を、総合的安全評価手法(FSA)に基づき行いました。

    縦曲げ最終強度に対する曲げと捩りの相関を大規模実験で解明 経年劣化対策も含んだ合理的な構造基準体系の構築を目的に、大型コンテナ船の縦曲げ・ねじり荷重時の逐次崩壊解析手法、疲労設計、バラストタンク内等の防食塗装基準、検査技術等の経年劣化対策など、IMOでの審議に対応した船舶構造強度基準等の研究を行っています。コンテナ船の大型化にともなって重要となるねじりモーメントの影響も考慮した船体の最終強度評価に関し

    協調型航行支援システムを開発 海難事故の減少と船員の負担軽減を目的として、船船間あるいは船陸間での情報通信技術を活用した航行支援システムに関する研究を行っています。 航行支援システムの一例として、船船間の意思疎通を支援する協調型航行支援システムの開発を行っています。避航操船は従来、相手船との合意なしに、その動きを推定して、衝突しないコースを自身の判断で決定し行っていましたが、協調型航行支援システムの利用により、船舶自動識別システム(AIS)を通じて、相互の意思疎通が容易に図れるようになり、相手船の動きを考慮した操船が可能になります。 協調型航行支援システムを開発

    崩壊試験結果(船側外板) 有限限要素解析結果の等価塑性ひずみ分布 (図中赤四角部分が試験体写真に対応)

    GBSの機能のイメージ

    リスクベースの目標

    リスク回避措置の抽出

    IMO:性能及び機能要件による 規則と基準

    現実の危険度 社会の安全需要

    受容できる危険度の設定

    安全評価

    (FSA)

    目標の設定海上の安全と海洋環境保護の目標を設定する

    性能機能要件による

    船舶の安全設計設計自由度の増加

    設計が性能機能要件を満たしていることの検証

  • National Maritime Research Institute11

     エンジンの特性としてNOxの削減対策を進めるとCO2の排出が増えてしまうという、いわゆるトレードオフの問題があります。この問題に対処するため、全海域一律のNOx規制と陸岸からの距離で規制値を設定するNOx規制を比較し両者に同等の効果があるという評価結果を海技研よりIMOに提出し、これがIMOの国際基準に反映されました。 このような国際状況を受け、NOx排出量を80%削減するための燃焼改善技術の改良、触媒を用いた後処理装置実用化に向けた要素技術の確立のための研究を行っています。具体的には、試験用エンジンなどを用いて触媒の基本的な性能の把握、触媒性能シミュレーションの開発、還元剤の噴射・制御システムの開発、触媒の劣化・再生機構の研究を行うとともに、補機用の触媒システムについて実

    船試験を行っています。 また、NOxの船上計測の問題(手間・時間)を解決する新たな計測技術を開発し、その計測手法がISO規格に採用されました。

    IMOの基準策定への貢献 NOx80%削減への挑戦 2001年からIMOの規制により世界的に実施されているNOxの第1次規制(1990年の排出量の30%減)は、2000年の技術で無理なく実施できる値となっています。その後、IMOにおいてNOx削減の議論が進められ、第2次規制として2011年に第1次規制の20%減、第3次規制として2016年に第1次規制の80%減のNOx排出削減を行うことで各国の合意が得られました。

    海洋環境の保全

    船舶からの排出ガスの放出などによる大気汚染の防止に資する研究

    船舶塗装からの揮発性有機溶剤VOCの排出低減技術の開発のための研究

    VOCを大幅に削減した塗料を開発 2010年までにVOC(揮発性有機化合物)の排出を3割削減する政府目標が定められました。しかしながら、船舶は屋外で塗装を行っており、従来の技術ではこの目標をクリアーすることは困難でした。このため、関係機関と共同で、この課題に取組み、VOCの排出が従来の1/2程度となる低VOC防汚塗料の開発に成功し、実船への適用が塗料メーカーにより進められています。 また、防食塗料についても、従来法に比べて塗料の使用量を10%以上少なくできる、SIT(Self Indication Technology:所定膜圧に達すると色が変わる)の開発等に成功しました。

    触媒システム 699DWT 貨物船検討例 実船に搭載された補機用触媒システム

    開発した低VOC防汚塗料を塗装した練習船「弓削丸」

  • National Maritime Research Institute 12

    シップリサイクル国際ガイドラインを策定 船舶の解撤に伴う有害物質による環境汚染を防ぐため、IMOでは有害物質の使用禁止を含むシップリサイクル条約を策定しました。条約では、船舶に使用されている有害物質の種類・量・所在を示すイベントリの作成が要求されており、その支援のための研究を行っています。 これまでに、日独共同で作成した有害物質インベントリ作成ガイドライン原案をIMOに提案し、この原案をベースにIMO海洋環境保護委員会(MEPC)においてガイドラインが策定されました。また、条約の円滑な実施のため、中小造船所向けのインベントリ作成マニュアルを作成しました。

    非TBT系船底塗料の環境影響評価案をISOに提案 海洋生態系被害防止のため、トリブチルスズ(TBT)系船底塗料の使用禁止の国際条約が成立しました。本研究では、普及が進む非TBT系塗料であるジンクピリチオン系防汚剤等による被害防止を目的に、その環境影響評価の研究を行っています。これまでに、船底からの溶出と海中での分解・拡散のプロセスを解明した環境濃度予測手法を開発しました。また、生物毒性試験の結果を統合させた環境影響評価手法を開発し、評価規格案をISOに提案しました。

    油流出・防除の環境影響評価法を開発 油・有害液体物質の排出・流出対策技術の高度化を目的に、実海域での流出油等の計測技術、3次元流出油挙動モデルの開発、流出油による環境影響評価手法の構築のための研究を行っています。これまでに、流出油・油処理剤の影響を漁業被害の観点から評価するツールとして、油防除支援ツールを開発しました。また海上において、有害化学物質を含んだ流出油の拡散・漂流・大気拡散シミュレーション計算が可能な、3次元流出油挙動予測モデルを開発しました。

    船舶の解撤に伴う環境汚染の防止のための研究

    船舶の運航に伴う海洋生態系被害の防止に資する研究

    船舶からの油・有害液体物質の排出・流出による海洋汚染の防止に資する研究

    船舶の解撤作業

    GISを用いた漁業被害予測モデル(東京湾)

    防汚物質の生態系影響と回流水槽試験による溶出過程の解明

  • National Maritime Research Institute13

    ジェクトに日本側コンソーシアムの一員として参画し、MPSO

    (モノコラムハル型洋上生産・貯蔵・出荷)システムに関して、DP (Dynamic Positioning) に より位置保持を行うシャトルタンカーの制御アルゴリズム開発、安全性に関する水槽試験並びにシャトルタンカーのMPSOへの衝突を含む各種シミュレーションに基づく安全性評価を行った結果、米国船級協会(ABS)から出荷・係留システム等に対して安全規則に適合しているとの確認が得られ、MPSOシステムの実用化に向けた技術課題の解決に貢献しました。  さらに、本邦企業が検討しているFLNG(洋上天然ガス液化基地)に対して、Pre-FEED(概念設計)段階において出荷時における稼働性評価を実施し、プロジェクトの実現に向け信頼性向上に貢献しました。

    海洋の開発

    可能な係留技術等の要素技術の研究を行ってきました。さらに、利用ニーズ等の調査を行って優先度の高い利活用分野を選定するとともに、基本計画等の策定を行っています。

    我が国周辺海域の利活用に資するプラットフォーム技術の研究を推進 我が国の排他的経済水域(EEZ)は、世界第6位/陸域の12倍の面積を持っています。そこに眠る膨大かつ未活用の自然エネルギー・海底資源・空間を利用するため、活動の基盤となる外洋上プラットフォーム(浮体構造物)の技術開発を行っています。 これまでに、国土交通省のプロジェクトとして、利活用目的に応じて安全性・経済性・環境影響のバランスのとれた最適なプラットフォームの設計を支援するツール(調和設計プログラム)の開発を行っています。また、我が国EEZの約7割をカバーする、水深5,000mまでの海域に対応

    MPSOシステム、FLNGの実用化に向けた技術課題の解決に貢献 未開の大水深域での石油、天然ガス等の資源開発のため、強海流等での厳しい自然条件下における大水深対応の浮体式生産システムの総合安全性評価手法の研究を行っています。 海技研は、(独)石油天然ガス・金属鉱物資源機構

    (JOGMEC)等による大水深域における石油開発プロ

    再生可能エネルギー生産システムの安全性評価手法の構築のための研究

    大水深石油・天然ガス生産システムの安全性評価手法の構築のための研究

    オフローディングホース

    MONOBR

    係留ライン

    シャトル船

    FLNG

    ライザー

    DPST

    調和のとれたプラットフォーム

    利活用目的設置海域

    基本計画

    環境

    経済性

    安全性

    調和設計プログラムの概念

    プラットフォームのイメージ(食料・海洋エネルギー複合利活用、洋上風力発電)

    大水深浮体式生産システム出典:JOGMEC 技術センター年報 平成 20 年度

    接舷・出荷時2浮体動揺計算モデル

  • National Maritime Research Institute 14

    転にいたる作業と勘所を示しました。 教材作成で得られた技術を応用して生産システムの効率化にも着手し、展開図の他外板3D図等を出力し鋼板にぎょう鉄の施工線を書き込むプログラムを開発しました。ぎょう鉄作業では、非熟練技能者が施工線に従い作業することで船体外板の曲面を容易・効率的(作業時間が40%削減)

    に作成できる可能性が高まりました。 さらに、我が国船舶産業の国際競争力強化に向け研究成果を活用し、艤装工程における生産性向上の技術開発を進めています。

    海上輸送の高度化

    配管・板曲げ作業を大幅に効率化できるソフトを作成 船舶産業の熟練技能者の減少に対応し、技能伝承、生産技術の高度化を目的に、ものづくり技術を科学的に解明した技能伝承法、これを応用した新しい生産システムの基盤技術の研究を行っています。 これまでに、配管設計・機関据付の技能講習用教材

    (DVD・テキスト)を作成しました。配管設計では、実態調査を通じて、配管自体が非効率なもの、生産過程での作業性が考慮されていないものといった問題が見られたため、配管自体が効率的な設計、生産過程の作業性が良い設計の事例を映像により視覚化し、解りやすい教材を作成しました。また、機関据付では、機関仕上げから機関試運

    船員の見張り作業を支援する機器を開発 内航海運分野では多くの熟練船員が退いていく一方、国際的には情報通信技術を活用した次世代航海設備の検討が行われております。海上技術安全研究所では国内外の環境変化に対応し、成熟した情報通信技術を用いて船員作業の支援・簡素化・効率化の実現を目的に、e-Navigation戦略の実現に向けた研究を行っています。また、熟練船員の退職により経験の浅い船員に運航を頼らざるを得ない状況が生じており、操船作業の支援は重要な問題となっています。このため、レーダー画面上の他船の速度や進行方向などの見張り作業に関連する情報を実際に船橋から見える景観中の船舶に重ねて表示する目視認識支援装置を開発しています。 2009年度には、この試作機による実船評価実験を実施し、他船の情報収集時間が大幅に短縮し、操船者に余裕を与えることに成功しました。

    新生産システム実現のための基盤技術の開発

    船員作業の支援及び簡素化実現に必要な基盤技術の開発のための研究

    外板展開図

    目視認識支援装置の実海域実験時の表示例

    配管設計の技能講習用教材(配管系統の図面上の検討と視覚化)

  • National Maritime Research Institute15

     規則波及び不規則波中での船体運動、加速度、波浪荷重、船体表面水圧分布を時系列で計算するプログラムです。非線形ストリップ法の考えに基づいて構築されており、様々な波高、波向、波周期、船速において時々刻々の流体力の変化を考慮して計算することが可能です。

     CFD研究開発センターが開発した、船体周りの格子生成ソフト(HullDes)及び流体解析ソフト(NEPTUNE, SURF)を、簡易な操作で格子生成・流体計算を行うパッケージソリューション“ワンクリックCFD”として提供しています。

     平水中及び実海域での推進性能とコストを同時に考慮し、最適な船体主要目の探索やプロペラ要目の決定、主機の選定ができるプログラムです。  HOPE LIGHT は、必要最低限の入力データ

    (船型要目)を用いて、平 水 中・波 浪 中 性 能、燃費、操縦性能、MAUプロペラの最適性能等が得られるプログラムです。

    知的財産の普及・社会還元

    船型設計のための流体解析システム 波浪荷重評価ツールNMRIW

    船型要目最適化システムHOPE/HOPE LIGHT

     熟練技能を要した船舶の外板の曲面加工について、船体外板の曲率線を算出し、この曲率線を用いて曲面外板を平面に展開する曲率線展開法を開発、特許出願し、日米他のパテントを取得し、この手法によるプログラムも開発しました。

    実用化特許の例

    著作権の例

    外板展開プログラム

     海技研は、効率的かつ効果的な知的財産権の確保、知的財産の普及・社会への還元に積極的に取り組んでいます。

    展開された外板図

    計算結果の可視化

    要目(長さ、幅)に対する伝達馬力の変化 特許出願及びプログラム登録件数

    計算した荷重分布、船体表面水圧分布表示、計算結果のアニメーション表示

    ぎょう鉄後溶接された外板

    HullDesによる自動格子生成

    0

    20

    40

    60

    80

    100

    13年度 14年度 15年度 16年度 17年度 18年度 19年度 20年度 21年度

    特許出願プログラム登録

  • National Maritime Research Institute 16

     ISOの委員会でも当所の職員が議長を務め、SOLAS条約、MARPOL条約、AFS条約(船底防汚システムの安全と管理に関する条約)をはじめ、IMOの火災試験方法コード、火災安全設備コード、救命設備コードでのISO規格の利用を通して、IMOの基準作成作業の進展に貢献しています。

    国際活動の推進

    国際会議への出席者数

    IMOの海洋環境保護委員会の温室効果ガス(GHG)作業部会で議長を務める吉田国際連携センター長(写真壇上中央)

    IMOから委託を受けたGHGの報告書

    0

    10

    20

    30

    40

    50

    60

    13年度 14年度 15年度 16年度 17年度 18年度 19年度 20年度 21年度

    国際標準化機構(ISO)国際海事機関(IMO)

     海上における安全確保及び環境保護のための規則・基準は、国際海事機関(IMO)、国際標準化機構(ISO)、国際電気標準機構(IEC)、国連環境計画(UNEP)、及びその他の国際会議での審議を経て国際的に実行に移されています。これらの国際会議への取り組みは、我が国の政策及び海事産業にとって極めて重要です。 海技研は、これらの国際機関への我が国政府の活動に対して、技術的な裏付けのための調査・研究の実施や資料の作成、国際会議への専門家の派遣及び議長・幹事の役割の実行、関連する国際会議の誘致・開催など、積極的に貢献しています。  平成21年度に海上の安全、保安及び環境に係る研究成果を、日本からIMOに提案した文書36件に反映させ、船舶の安全確保、環境保全に係る条約及び基準、規則の策定、改正等に貢献しました。また、これらの文書を含む我が国提案の実現のために、延べ29名がIMOの会議に参加しました。 船舶からの窒素酸化物(NOx)規制強化に係る海洋汚染防止条約(MARPOL条約)の改正では、当所の研究成果を基にした我が国提案について、各国の理解を得るため技術的な説明を行い、各国の理解形成に大きな役割を果たし、我が国提案の実現に貢献しました。 IMOからの受託により外航海運全体からのCO2排出算定及び将来予測を行い、IMOの船舶からの温室効果ガス排出に関する報告書をまとめる作業に従事し、今後のCO2排出削減措置及び目標の基準制定に貢献しました。 シップリサイクル条約では、当所の研究成果を基に、日独で協力して有害物質インベントリ作成マニュアルや国際ガイドラインをIMOに提案し、この原案を基にシップリサイクル条約のキーである有害物質インベントリガイドラインが策定されます。また、関連するISO規格作成へも貢献しています。

    海上における安全・環境に関する国際規則・基準の策定に対する貢献

    海技研が直接係っているIMOの活動

    目標指向型新造船建造基準(GBS)の策定

    船舶からのSOxガス排出に関する専門家による調査

    船舶からの温室効果ガス(GHG)排出に関する調査

  • National Maritime Research Institute17

    外部機関との連携

    海 洋 研 究 開 発 分 野 で( 独 )海 洋 研 究 開 発 機 構(JAMSTEC)と、海洋石油・天然ガス開発分野で(独)石油天然ガス・金属鉱物資源機構(JOGMEC)と、また、艦船分野で防衛省との間で研究協力に関する基本協定を締結しています。これにより、各機関との連携研究を推進するとともに技術の革新を図ります。

     海技研と外部機関が、共通の研究課題について共同で取り組むことにより、優れた研究成果が生まれることを促進する制度です。

     皆様からの委託を受けて研究を行い、その成果を委託者に報告する制度です。

     国土交通に関わる政策課題を解決するための研究を確実かつ円滑に実施するためには、産・学・他の公的研究機関との連携が必要不可欠であり、共同研究、受託研究等を通じて積極的に交流を進めます。 外部機関のニーズ及びシーズに関連する研究テーマで海技研が連携可能なテーマについて、外部機関と連携して研究を実施します。

     国際的な取り組みが必要な課題について、研究協力協定の締結、国際共同研究の実施、国際シンポジウムやセミナーの開催などに戦略的に取り組み、海技研をハブとした研究協力ネットワークを構築し、国際的なプレゼンスの向上に努めています。また、IMOから調査研究を受託し、IMOに対して直接、技術的な支援を行っています。

     研究活動の活性化、研究成果の普及促進のため、大学等からの要請により連携大学院制度に基づく研究指導、単位認定やインターンシップ生に対する研修を実施しています。

    外部機関との連携研究の推進

    海外研究機関等との連携強化

    連携大学院、インターンシップ制度

    共同研究・受託研究の件数

    0

    50

    100

    150

    200

    250共同研究国受託民間受託

    14年度 15年度 16年度 17年度 18年度 19年度 20年度 21年度

    ●オランダ海事研究所(MARIN)●サンパウロ大学(ブラジル)●韓国海洋水産開発研究院(KMI)●カンピナス大学

    東京大学東京海洋大学横浜国立大学大阪大学

    大阪府立大学工学院大学東京電機大学日本大学

    海技研が研究協力協定を締結している主な海外研究機関

    海技研が連携大学院協定等を 締結している大学

    法政大学九州大学流通経済大学

    共同研究

    受託研究・請負研究

  • National Maritime Research Institute 18

    成果の発信

    平成 21年度講演会(東京都千代田区・砂防会館)

    平成 21年度研究発表会(三鷹本所)

    海技研ニュース「船と海のサイエンス」

    平成 21年度研究発表会のポスターセッション

     毎年11月頃に、当所が重点的に実施している活動と研究について、講演を行っています(東日本地区と西日本地区で交互に開催)。また、特定のテーマについて、シンポジウム、セミナー等を年間数回開催しています。

     毎年6月頃に、三鷹本所において、個々の研究成果の発表を行っています。

     質の高い研究成果や報告書、資料等を取りまとめて、年間4回発行しています。

    (ホームページからダウンロードできます)

     研究の実施状況をはじめ、所有特許・登録プログラム、受託研究、共同研究の状況等、当所の活動状況を取りまとめて発行しています。

    (ホームページからダウンロードできます)

     当所の広報誌で、年間4回発行しています。海技研の研究紹介や我が国の技術情報、新造船紹介、新造船写真集、その他海技研のホットな情報をお届けしています。平成21年秋号から特集ページを新設しました。

    (ホームページからダウンロードできます)

     海技研の概要、研究情報、施設の紹介、イベント情報、トピックス・ニュースの他、海技研報告、海技研ニュースや所有知的財産情報を掲載しています。アドレス http://www.nmri.go.jp

    講演会

    研究発表会

    海上技術安全研究所報告

    業務実績報告書(総集編)

    海技研ニュース「船と海のサイエンス」

    ホームページ

  • National Maritime Research Institute19

    概要・沿革

    平成22年度人員

    沿 革

    平成22年度予算

    大正 5年 7月 逓信省管船局所属の船用品検査所として発足昭和 2年 11月 逓信省管船局船舶試験所に改称昭和 25年 4月 運輸技術研究所設立昭和 34年 4月 三鷹第一船舶試験水槽(80m角水槽)完成昭和 38年 4月 船舶技術研究所設立昭和 41年 10月 三鷹第二船舶試験水槽(400m水槽)完成昭和 42年 3月 動揺試験水槽完成昭和 46年 3月 三鷹第三船舶試験水槽(中水槽)完成昭和 49年 3月 キャビテーション水槽完成昭和 53年 3月 海洋構造物試験水槽完成昭和 55年 3月 氷海船舶試験水槽完成平成 13年 4月 独立行政法人海上技術安全研究所として発足(第1期中期目標・計画)平成 14年 6月 深海試験水槽完成平成 18年 4月 第2期中期目標・計画へ移行

    区 分 金額(単位:百万円)

    収 入

    運営費交付金 2,933施設整備補助金 349

    受託収入 574その他の収入 49

    計 3,905

    支 出

    人件費 2,362業務経費 547施設整備費 349受託経費 551一般管理費 96

    計 3,905

    理 事 長 1理   事 2監   事 ※2職   員 213

    (事務職)  44(研究職) 169

    合   計  218

    【参考】 昭和37年4月 港湾部門を分離昭和42年7月 電子航法部を分離昭和45年7月 交通安全部及び交通公害部を分離

    ※内1名は非常勤

  • National Maritime Research Institute 20

    組 織

    経営計画主管研究連携主管 研究戦略主管国際連携センター知的財産・情報センター産業連携センター

    理事長

    理 事

    研究統括主幹

    流体設計系

    流体性能評価系

    構造系

    生産システム系

    海洋環境評価系

    動力システム系

    運航・物流系

    海洋リスク評価系

    海洋開発系

    大阪支所

    基盤技術PT

    海上安全イニシアティブPT

    温室効果ガス対策PT

    企画部

    総務部

    理 事

    監 事 研究系・大阪支所中期計画に基づく研究を実施し、一定の継続性をもった研究展開とシーズ発掘、ボトムアップ型テーマ提言を行う。

    プロジェクトチーム課題解決に向けた短期集中的研究展開等を行う。

  • National Maritime Research Institute21

    研究系

     海事産業の多様なニーズに対応できる新船型開発技術の高度化及びそれら流体技術のシステムインテグレートによる新形式船の創出を目指すとともに、その実証船として「実用的な30%GHG削減船の試設計」を行っています。また、CFDソフトウェアの開発も行っています。

     実海域における船舶の性能(推進、操縦、耐航、復原性)の評価、向上を目指した研究を行い、海難事故の原因究明や船舶の国際的なルール作りの技術的バックアップを通じて、安全な船舶を造るために貢献しています。また、新たな試験水槽の建造や計測技術の開発等、水槽実験技術の研鑽により、海事分野での研究開発を強力にサポートします。

     水面波の計算や複雑形状まわりの乱流場の解析等の研究を行い、海事流体力学分野のCFD (計算流体力学)技術において世界をリードしています。 造船設計過程で、容易に使用できるよう、使いやすく、信頼性の高い船体周り流場解析用CFDソフトウェアを開発し、国内の造船所に提供するとともに、様々な支援。

     温室効果ガス排出削減への取り組みが活発になる中、船舶の「実海域における燃費性能」を正しく表現できる指標が求められています。そのため、船舶の基本設計において、実海域における性能を「計算と最小限の実験」を用いて、高精度かつ低コストに推定するハイブリッド評価システムを開発しています。

    流体設計系

    流体性能評価系

    CFD研究開発センター

    海の10モードセンター

    推進・氷海性能研究グループ流体制御研究グループ

    運動性能研究グループ水槽試験技術グループ

    CFD研究開発センター

    海の10モードセンター BF5,BF7における性能評価(速力低下)(例)

    A船

    B船

    船速V

    風浪(BF)平水中の性能(従来の評価)

    速力低下

    風浪風浪5

    タンカーの自航計算例先進的な船型開発を進めています

    Zeus (Zero Emission Ultimate Ship) プロジェクトのコア技術イメージ(コンテナ船の場合)

    事故解析結果に基づくほたて漁船の転覆事故発生状況の再現CG

  • National Maritime Research Institute 22

     船舶や海洋構造物に関連する環境保全を目的として、化学分析技術、材料分析

    技術、燃焼・熱工学に関する計測・シミュレーション技術、環境・エネルギーに関連する計測技術や評価手法に関する研究を進めています。

     安全で経済的な船舶の合理的な設計・建造を目指し、船体

    にかかる荷重とこれに耐える構造方式、材料の腐食特性や疲労強度、鋼・軽合金・FRP等を用いた各種構造法の研究を行っています。

     地球環境保全のため舶用ディーゼルエンジンの排ガスに含まれるNOxやSOx等の有害物質を低減させることが求められています。舶用エンジンメーカ等と連携して、排ガス浄化装置の開発、既存船舶のNOx低減技術の構築、国際基準の提案等の研究・開発を進めています。特に、排ガス規制の強化に備えて、舶用ディーゼルエンジンと排ガス処理設備を組み合わせた実用的な環境エンジンシステムを開発しています。

     地球環境保全のため舶用ディーゼルエンジンの排ガスに含まれるNOxやSOx等の有害物質を低減させることが求められています。舶用エンジンメーカ等と連携して、排ガス浄化装置の開発、既存船舶のNOx低減技術の構築、国際基準の提案等の研究・開発を進めています。特に、排ガス規制の強化に備えて、舶用ディーゼルエンジンと排ガス処理設備を組み合わせた実用的な環境エンジンシステムを開発しています。

    動力システム系

    生産システム系

    構造系

    海洋環境評価系

    次世代動力システムセンター

    生産技術研究グループ保守管理技術研究グループ

    環境影響評価研究グループ環境分析研究グループ大気環境保全研究グループ

    (動力システム開発研究グループ) 機関伝熱システム研究グループ

    次世代動力システムセンター

    化学分析システム

    外板曲面加工(ぎょう鉄)技能講習用教材

    尿素SCR 脱硝システム

     技能講習用教材の作成やこれを応用した工数を大幅に削減するための新しい生産システム、生産工程の合理化技術など、生産技術に関する研究に取り組んでいます。

    構造基準研究グループ構造解析研究グループ

    直接荷重による大型コンテナ船の全船解析例(応力分布)

  • National Maritime Research Institute23

     経済のグローバル化、社会のIT化、環境保全意識の高まり等により、物流とそれを取り巻く環境は大きく変化していく中、物流現象の解明、物流解析技術の開発、物流高度化の提案等、研究成果を行政・民間企業に提供することで、産業社会の持続的発展と産業競争力の強化に貢献しています。

    研究系

    運航・物流系

    海洋リスク評価系

     次世代シミュレーターによるマンマシン評価、航海機器の開発・安全性評価、ヒューマンファクタの解明、物流の高度化等に取り組んでいます。

     リスク解析、信頼性解析などの解析技術の高度化を通じて、費用対効果を考慮した国際基準の策定のための安全性評価(FSA)、舶用機器の品質改善・故障予防のためのシステム信頼性解析手法の研究、放射性物質等の危険物輸送の安全確保の研究等を行っています。

    物流研究センター

    海難事故解析センター運航支援技術研究グループ

     重大海難事故に対する即応体制組織です。重大海難事故発生時に、当所の研究者の持つ豊富な専門的知見を活用して即座に情報を分析しその結果を迅速に発信します。また、事故の再現などのシミュレーションを行うことにより、国土交通省海事局や運輸安全委員会等と連携を図りながら、事故再発防止対策の立案等に貢献します。

    物流研究センター 海難事故解析センター

    リスク解析研究グループシステム安全技術研究グループ

    操船リスクシミュレータにおける模擬操船の様子、双眼鏡もシミューレーションしている

    平成 20 年明石海峡2 重衝突事故のシミュレーションエネルギーの海上フロー図

    イベントツリー・ベイジアンネットワーク・TSARによる定量的解析

  • National Maritime Research Institute 24

    研究系・大阪支所・プロジェクトチーム

    海洋開発系

    大阪支所

     変動風水洞、深海水槽等、世界に類を見ないユニークな実験施設を利用した高度な水槽試験技術と数値シミュレーション技術を駆使するとともに、実海域実験におけるデータ計測及び解析技術によって、新しい高度なニーズに対応できるように研究開発を進めています。

     FRP成形、材料強度・耐久性評価等の船舶材料に関する研究、弁・配管の流体解析や強度解析等の船舶艤装に関する研究等、西日本地区に多く立地する船舶関連の中小製造業を技術支援する研究、安全・環境に係る試験・分析に関する研究を行っています。

     海難事故の未然防止に効果的な安全対策を立案するため、事故の半数を占める衝突・座礁に着目し、航行支援技術、安全マネージメント、ルール、費用対効果等の総合的な観点から、事故半減シナリオを研究しています。また、シナリオに沿った対策の実施に必要な技術開発要素を抽出することで、将来の技術開発目標を明確にします。これらの研究を通して、海難事故の半減を目指します。  ポスト京都議定書、IMOでの議論等を踏まえ、二酸化

    炭素等の排出抑制の枠組みの構築、船舶からの二酸化炭素等排出量指標の提案、各種省エネ技術の評価と共同研究コーディネイト等を通じて、国際的な海運の二酸化炭素等削減の動きを積極的にリードしていっています。

     研究に必要な計測技術、センサー技術等の基盤技術の研究を行っています。

    海上安全イニシアティブ プロジェクトチーム

    温室効果ガス対策 プロジェクトチーム

    基盤技術 プロジェクトチーム

    深海水槽における浮体式海洋構造物の実験風景

    「船舶の主機関の排熱を利用したバラスト水処理装置の開発」実験で使用の模擬バラストタンク(大阪支所)

    衝突・座礁事故防止対策の3つの視点

    海洋資源開発技術研究グループ洋上浮体技術研究グループ深海技術研究グループ

    材料・艤装研究グループ

    航路

    外洋

    港内

    湾内

    ショートレンジ

    ミドルレンジ

    沿海

    ロングレンジ

    沿岸

    見合の視点

    船橋内の視点

    マクロな視点

  • National Maritime Research Institute25

    主な施設

    400m試験水槽 大型キャビテーション水槽

    氷海船舶試験水槽 海洋構造物試験水槽

    変動風水洞 実海域再現水槽(平成22年度完成予定)

    ●世界最大級の水槽長さ:400m幅:18m

    ●堅型減圧回流式高さ:10 m 長さ:18m圧力:0.005 ~ 0.2 MP

    長さ:35m幅:6m水深:1.8m結氷速度:2.5mm/hr

    ●風洞計測部長さ 15m ×幅 3m ×高さ 2m正弦的に変動する風を発生最大 30m/s の定常風●水槽部長さ15m×幅3m×水深1.5m

    長さ:40m X - Y曳航台車  幅:27m 造波装置深さ:2m 送風装置

    長さ:80m X - Y曳航台車幅:40m 全周分割吸収造波装置深さ:4.5m 送風装置

     水深:8m曳航台車(最大速度 15m/s)

    第1計測部:0.75m φx 2.25m第2計測部:2 × 0.88 x 8m

  • National Maritime Research Institute 26

    船用品有限要素解析装置FRP成形用樹脂注入装置

    高圧タンク 深海水槽

    構造材料寿命評価研究施設 材料・化学分析システム

    操船リスクシミュレータ

    内径:1.1m高さ:3.0m圧力:水深 6,000m を再現

    最大水深:35m 上部:直径14m、深さ5m ピット部:直径6m、深さ30m造波装置、潮流発生装置、水中3次元挙動計測装置第1計測部:0.75mφx2.25m 第2計測部:2×0.88x8m

    反力床:長さ 12m ×幅 8m  反力壁:高さ 4m ×幅 8m載荷容量:静的荷重± 1,200kN 動的荷重± 1,000kN     ストロ-ク± 100mm

    半径:6.5 m円筒スクリーン  視野角:水平 240° 垂直 40°模擬船橋:長さ 4m 幅 4m 高さ 2.2 m船橋動揺装置:ピッチ± 10°ロール± 15°

    透過電子顕微鏡高分解能走査電子顕微鏡ガスクロマトグラフ質量分析装置液体クロマトグラフ質量分析装置X線回折分析装置

    大阪支所

  • 海上技術安全研究所三鷹本所までの交通のご案内

    三鷹駅 至新宿JR中央線

    武蔵境通り

    調布駅 京王線

    バスのりば バスのりば

    京王井の頭線

    甲州街道(国道20号)

    バスのりば

    中央自動車道

    至府中

    至府中

    神代植物公園

    バス停(航研前)

    野崎八幡宮

    至立川

    宇宙航空

    研究開発機構

    東八道路

    至高井戸

    至給田至仙川

    三鷹市役所

    三鷹郵便局

    GS

    GS

    バス停(三鷹市役所前)

    バス停(三鷹農協前)

    三鷹消防署

    三鷹総合

    保険センター

    GS

    大成高校

    八幡神社

    交番

    丸井

    吉祥寺駅

    野村病院

    至久我山

    井の頭公園

    多摩青果

    三鷹一中

    海上技術安全研究所

    JA東京むさし三鷹支店

    〒181-0004 東京都三鷹市新川6-38-1

    ①JR吉祥寺駅公園口より小田急バスもしくは京王バス [乗り場3]武蔵境駅南口行 [乗り場4]調布駅北口行 [乗り場8]調布駅北口行で三鷹農協前下車

    ②JR三鷹駅南口より小田急バス 「乗り場7」仙川行又は晃華学園東行 [乗り場8]野ヶ谷行で三鷹農協前下車

    ③京王線調布駅北口より、小田急バスもしくは京王バス [乗り場14]吉祥寺駅中央口行、航研前下車

    独立行政法人 海上技術安全研究所

    〒576-0034 大阪府交野市天野が原町3-5-10

    大阪支所

    [TEL]0422-41-3005   [FAX]0422-41-3247[E-mail][email protected] [HP]http://www.nmri.go.jp

    <パンフレット及びホームページ関するお問い合わせ先>

    企画部知的財産・情報センター 広報・国際係

    詳しくはホームページのアクセスマップ 「三鷹本所の交通案内図」

    http://www.nmri.go.jp/main/overview/accessmap/accessmap_j.htmlをご覧ください。