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Contents 1. 会計基準 IFRS P .2 JGAAP P .4 2. 国際税務アップデート BEPS P .6 3. 英国のEU離脱 英国のEU離脱(BrexitP .7 4. 地域・国別アップデート 中東・北アフリカ地域(MENAP .8 ベルギー P.9 チェコ P .10 フランス P .12 ドイツ P .14 ハンガリー P .17 オランダ P .18 ポーランド P .20 スペイン P .23 英国 P .24 Contacts P .25 JBS updateは、 EY のニュースレターやアラート などの一部を抜粋し、加筆、編集をしたもの、 または公的機関等で公表されている情報の サマリーです。詳細情報や曖昧な箇所に ついては、それぞれの原文をご参照ください。 原文リンクのないものについては各国担当 者にお問い合わせください。 JBS update Europe November 2016 Issue 12

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Contents

1. 会計基準

► IFRS P.2

► JGAAP P.4

2. 国際税務アップデート

► BEPS P.6

3. 英国のEU離脱

► 英国のEU離脱(Brexit) P.7

4. 地域・国別アップデート

► 中東・北アフリカ地域(MENA) P.8

► ベルギー P.9

► チェコ P.10

► フランス P.12

► ドイツ P.14

► ハンガリー P.17

► オランダ P.18

► ポーランド P.20

► スペイン P.23

► 英国 P.24

Contacts P.25

JBS updateは、EYのニュースレターやアラート

などの一部を抜粋し、加筆、編集をしたもの、

または公的機関等で公表されている情報の

サマリーです。詳細情報や曖昧な箇所に

ついては、それぞれの原文をご参照ください。

原文リンクのないものについては各国担当

者にお問い合わせください。

JBS update EuropeNovember 2016 Issue 12

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欧州ニュースレター l November 2016 Issue 12

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1. 会計基準

IFRS IFRS第15号「顧客との契約から生じる収益」の改訂

2014年5月のIFRS第15号「顧客との契約から生じる収益」の公表から本稿執筆時までに、同基準書は2度改訂されています。一つはその強制適用日の変更であり、従前の2017年から2018年1月1日以降開始事業年度となりました(早期適用は可能)。二つ目の改訂は、収益認識に関する合同移行リソースグループ(IFRS第15号

を実務で適用する上で課題となる論点について検討するグループ)が議論した適用上の問題(履行義務の識別、本人か代理人かに関する適用指針および知的財産のライセンスに関する適用指針、ならびに経過措置)に対応するものです。当該改訂は、IFRS第15号のより首尾一貫した適用と、その適用コストと複雑性を低減することを目的としています。

保険契約の議論が実質的に完了

保険契約に関する議論が実質的に完了しました。すなわち、有配当性を伴わない保険契約については、以下の要素を用いて(公正価値ではなく)期待現在価値で、保険契約負債を測定するアプローチが採用されています。

1. 保険契約を履行するための予想キャッシュフロー

2. 貨幣の時間価値

3. リスクおよび不確実性の影響に関する調整

4. 契約上のサービスマージン(保険会社が提供するサービスの金額)

有配当性を伴う保険契約については、上記のアプローチに有配当性を伴うことから生じる要素を加味したアプローチ(Variable fee approach)が採用されています。

両アプローチの差異は、オプション及び保証の価値の変動に係る会計処理および契約上のサービスマージンに係る付利(使用する利子率)に関するものとなっています。

なお、一定の条件を満たす固定料金のサービス契約に対する新基準の適用は任意であり(強制ではありません)、金融保証契約への適用も、現在のIAS第39号と同様に任意とされています。

現在、保険契約新基準のドラフティングと共に、最終基準化に向けたフィールドワークが行われており、新基準の解釈や実務上の課題について検討が行われています。新基準の公表は2017年上半期と予想されます。

現行IFRS第4号「保険契約」の改訂

その複雑性を考慮し、2017年に公表予定の保険契約新基準の発効日をIFRS第9号の発効日(2018年1月1日以降開始事業年度)と同日にすることが非現実的であるとの判断から、IASBは、2016年9月、IFRS第4号を改訂し以下の二つのアプローチを許容することで、IFRS第9号と保険契約新基準の発効日が相違することから生じた利害関係者の懸念(損益上のボラティリティーの増加など)に対応しています。

► IFRS第9号適用の一時的な延期(2021年1月1日よりも前に開始する事業年度まで)(延期アプローチ)

► IFRS第9号を適用するものの、一定の金融資産について、IFRS第9号適用によ

る損益上の影響額をその他の包括利益に振り替えるアプローチ(上書きアプローチ)

上記の延期アプローチは2018年1月1日以降開始事業年度から、上書きアプローチはIFRS第9号適用時から適用されます。

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IFRS第16号「リース」の完成

新たなリース基準であるIFRS第16号が、2016年1月に公表されました。IFRS第16

号では、借り手はほとんどのリースに関して使用権資産およびリース負債を認識することが求められます。一方で、貸し手の会計処理に関しては、現行基準であるIAS第17号「リース」から基本的に変更はありません。

IASBは、 IFRS第16号を米国財務会計基準審議会(Financial AccountingStandards Board、以下「FASB」)との共同プロジェクトの一環として公表しました

が、審議の過程で一部の論点について両審議会は異なる決定を下しており、両基準間では差異が存在します(例えば、FASBの基準では、借り手にもリースの分類の判定が求められます)。

IFRS第16号は、2019年1月1日以降開始する事業年度から適用されます。早期適用も認められますが、その場合には、IFRS第15号「顧客との契約から生じる収益」をすでに適用しているか、IFRS第16号と同日に適用する必要があります。

1. 会計基準

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欧州ニュースレター l November 2016 Issue 12

詳細は企業会計ナビ(日本語ウェブサイト)をご参照ください。

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平成29年3月期から適用される会計基準等

この平成29年3月期(平成28年6月第1四半期)決算においては、繰延税金資産の

計上額に影響を及ぼす、回収可能性適用指針が原則適用となります。また、平成28年度税制改正のうち、法人税率の引下げなどの税率変更が決算に影響してくる

ことが考えられるほか、減価償却に係る改正(新規取得の建物附属設備および構築物に関する定率法の廃止)の影響も検討する必要があります。

JGAAP

区分 会計基準等 適用時期 内容

税効果会計(繰延税金資産の回収可能性)

繰延税金資産の回収可能性に関する適用指針

(企業会計基準適用指針第26号)平成27年12月28日公表平成28年3月28日

改正(早期適用した翌年度の比較情報の取扱いの明確化)

► 平成28年4月1日

以後開始する事業年度の期首から適用

► 平成28年3月31

日以後終了する事業年度の年度末に係る財務諸表から適用することができる。

► 監査基準委員会報告第66号

における企業の分類に応じて繰延税金資産の回収可能性を判断するという枠組みを基本的に踏襲する。

► 分類2の企業におけるスケ

ジューリング不能な将来減算一時差異のうち、一定の要件を満たす場合は、当該将来減算一時差異に係る繰延税金資産の回収可能性があるものとして取り扱う。

► 分類4または分類5の要件に

ついて、「期末における重要な税務上の繰越欠損金の存在」や「債務超過の状況」等の期末の残高(ストック)は考慮せず、過去(3年)および当期の

税務上の欠損金の状況(フロー)等により判定する。

減価償却(税制改正)

平成28年度税制改

正に係る減価償却方法の変更に関する実務上の取扱い(実務対応報告第32号)平成28年6月17日公表

► 実務対応報告公表日以後最初に終了する事業年度のみに適用

► 平成28年4月1日

以後最初に終了する事業年度が本実務対応報告の公表日前に終了している場合には、当該事業年度に適用することができる。

► 従来、法人税法に規定する普通償却限度相当額を減価償却費として処理している企業が対象。

► 建物付属設備、構築物のいずれかまたはその両方に係る減価償却方法として定率法を採用している場合で、平成28年4月1日以後に取得する当該

すべての資産に係る減価償却方法を定額法に変更するときは、法令等の改正に準じたものとし、会計基準等の改正に伴う会計方針の変更として取り扱う。

► 上記以外の減価償却方法の変更は、正当な理由に基づき自発的に行う会計方針の変更として取り扱う。

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詳細は企業会計ナビ(日本語ウェブサイト)および太田達也の視点(日本語ウェブサイト)をご参照ください。

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企業内容等の開示に関する内閣府令等の改正

平成28年8月19日に、「企業内容等の開示に関する内閣府令」等の改正(内閣府令第55号。以下「本改正」という)が公布されています。平成27年6月30日に閣議決定された「『日本再興戦略』改訂2015」では、経営陣に対して中長期的な企業価値創造を引き出すためのインセンティブを付与することができるよう、株式による報酬や業績連動報酬などの制度を柔軟に活用できる仕組みを整備すること等が掲げられました。これを受け、平成28年度税制改正では、株式報酬として役員等に割り当てられる一定期間の譲渡制限が付された「特定譲渡制限付株式」(いわゆる、

リストリクテッドストック)に係る制度整備(当該株式による給与の額について事前確定の届出を不要とするとともに、役務の提供に係る費用の額について、譲渡制限が解除された日の属する事業年度で損金算入する)がなされました。本改正では、いわゆるリストリクテッドストックが役員等に対する報酬の支給の一種であると考えられることから、ストックオプションを付与する際と同様、第三者割当の定義から除外することとされています。

1. 会計基準

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欧州ニュースレター l November 2016 Issue 12

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2015年10月5日に、経済協力開発機構(OECD)により税源浸食と利益移転(BaseErosion and Profit Shifting、以下「BEPS」)に関する最終レポートが公表されてから、1年が経過しました。現在、BEPSプロジェクトは、最終レポートに含まれる推奨事項の実施フェーズに入っており、OECDおよび各国政府によるさまざまな対応が進められています。

OECDは、最終レポートに含まれる15の行動計画についての推奨事項は、以下の通り区分することができると述べています。

► 合意した最低基準:有害な税制上の慣行(行動5)、租税条約の濫用防止(行動6)、国別報告書および移転価格文書化(行動13)および紛争解決(行動14)についての推奨事項

► 強化された国際基準:OECD移転価格ガイドラインの改正(行動8-10)およびOECDモデル租税条約の改訂(行動7恒久的施設の認定を含む)

► 国内法の共通アプローチとベストプラクティス:ハイブリッド・ミスマッチ・アレンジメント(行動2)、外国子会社合算税制(行動3)、利子損金算入制限(行動4)およびアグレッシブな税務プランニングの開示(行動12)

► 分析レポート:電子経済についての課税上の課題(行動1)、BEPSに関するデータおよび分析(行動11)ならびに条約に基づく推奨事項実施のための多国間協定(行動15)

最終レポートに含まれる推奨事項には、国際税務の枠組みの重要な要素について大幅な変更をもたらす内容が含まれています。同時に発表された解説文書では、技術的な事項に関する追加的作業とBEPS推奨事項の実施に関するモニタリングの計画等、次の作業ステップが説明されています。また、OECDは、BEPSの推奨事項を

首尾一貫して実施することへの注力、二重非課税および二重課税双方への影響をモニターしていくことの重要性を強調しています。さらに、当該解説文書は、OECDとG20 諸国が2020年まで協調して活動を継続することに合意したと述べています。

前述の通り、BEPSプロジェクトは現在、最終レポートにおける推奨事項の実施フェーズに入っており、OECDによる指針等の公表が行われています。また、欧州諸国を含む各国政府によって、BEPS行動13への対応をはじめとする税制改正が進められています。

今後、多国籍企業は、最終レポートに含まれる推奨事項が与え得るビジネスへの影響について、慎重に検討していく必要があります。また、移転価格については、行動13に提案される新たな移転価格文書化制度の要件を理解し、必要な情報の

入手方法、様式への記載方法、毎年対応していくための持続可能なプロセスと役割分担等について検討しなければなりません。加えて、行動8-10に提案されるOECD

移転価格ガイドラインの改正を受け、移転価格の見直しおよび再構築が求められる可能性があります。同時に、各国における法制度化の動向を注視していくことが必要です。今まさに、多国籍企業にとって、国際税務における大きな変革への対応が求められる局面を迎えています。

BEPS

2. 国際税務アップデート等

行動計画1から15の最終レポートの内容については、こちらのリンク(英語、PDF)をご参照ください。

最終レポート公表後の、2016年上半期におけるOECDと各国政府の動向および今後予想される動向の詳細については、こちらのリンク(英語、PDF)をご参照ください。

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2016年6月23日、英国は欧州連合(EU)の残留・離脱を決定する国民投票を行った結果、離脱派が勝利しました。ただし、英国は直ちにEUを離脱するわけではなく、EUから離脱する法的手続きを完了するまではEU加盟国としてとどまることになります。加盟国のEU離脱を認めるリスボン条約第50条の発動時期を決定するために

必要な手続きをいつ開始するかについては、これから議論が開始されます。実際のEU離脱プロセスにおいては、今回初めて適用されるリスボン条約第50条の運用に

加え、欧州議会および加盟国の(特定)多数決による合意が必要であることも考慮すると、離脱協定を締結するには、大きな不確実性が伴うとともにEU全域で幅広く合意を得なければなりません。

EU離脱に伴うボラティリティについては、税務、法務、サプライチェーン、人事等に至

るまでその影響が及ぶ範囲が広範であるだけに、英国に事業拠点または欧州本社を多数有する日本企業グループにとっては、潜在的な影響を注意深く見守り、対策を打ち出す必要があります。特に、間接税(関税、付加価値税等)についてはサプライチェーンを含むその他の戦略の練り直しとして、例えば①英国製造拠点の再配置の検討および欧州調達戦略の見直し、②EU諸国における新たなVAT登録、納税代理人の任命、VAT申告の効果的手法の検討、③VAT税率・物品税率の変更の可能性の検討とそれに即した販売戦略の再検討、④ITシステム変更の検討、⑤コンプライアンス体制の再構築、トレーニングの必要性、が項目として挙げられます。

また、現状享受できている権利・恩恵と引き換えに、EU条約の下で保障されている

自由に移動する権利が消滅する場合、もしくは、汎欧州の規制や製品承認制度に基づく恩恵を享受できなくなる場合には、特定のセクター、業界に大きな影響が及ぶ可能性があります。例えば、金融サービス業界のEU「パスポート制度」等がこれに

該当します。これ以外のセクター、業界においても潜在的に影響の及ぶ範囲は広範であることから、今後の交渉の動向を注視するとともに、潜在的な影響度合いについてあらかじめ分析、評価を行っておくことが有用であると思われます。

英国のEU離脱間接税への影響の考察

現在、英国はEUのメンバーとしてEU関税同盟(EU Customs Union)に加盟しています。 EU関税同盟は、EU域内における物品の自由移動を実現するものです。 欧州連合関税法典(Union Customs Code、以下「UCC」)という共通ルールの下、域内の関税や通関手続きが撤廃され、EU以外の国々との貿易にはEU共通の関税、通関手続き、関税政策が導入されています。 UCCにより、EUにおける貨物の輸出入・通過に係る統一されたシステムが運営され、28の加盟国の税務当局があたかも一つの税関であるかのように機能しています。 また、EU域外の国々と締結するFTA(自由貿易協定)やEPA(経済連携協定)といった貿易協定はEUとして実施されています。 EUは、すでに53のEU外の国・地域との自由貿易協定を締結しており、それ以外に一部途上国に対する一般特恵関税制度も存在します。

英国がEUから離脱した場合、当然EU関税同盟からも外れることになり、英国とEUはいわば外国の関係になります。 EUとの取引が輸出入と見なされ、関税の徴収・通関手続き・輸出入規制の対象になり、企業にとっては手間とコストが増えます。 英国は、EUとの取引における物品の自由移動を維持するためには、交渉が必要となります。 また、EU単位で締結しているあらゆる貿易協定から離脱することにより、EU域外の国・地域と貿易協定を再交渉する必要があります。

3. 英国のEU離脱(Brexit)

詳細はこちらのリンク(EY Japanのウェブサイト)をご参照ください。

詳細はこちらのリンク(PDF)をご覧ください。

3. 英国のEU離脱(Brexit)

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欧州ニュースレター l November 2016 Issue 12

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税務アップデート

EYでは中東・北アフリカ地域における税務情報に関する定期的なアップデートを以下の通り発行しています。

MENA Tax Insight(英語)

各国におけるビジネス、税務、その他アップデートをまとめています。2016年9月号の掲載内容は以下の通りです。

► エジプト:VAT Law No. 67 of 2016の発行

► イラク・クルディスタン自治政府: 生産物分与契約の石油・ガス企業に対する個人所得税の支払義務

► サウジアラビア:サウダイゼーション・プログラムの第3フェーズの導入

► その他国際税務:英国のEU離脱(イギリスの関連記事を参照)

MENA Tax Review(英語、毎四半期発行)

各国におけるビジネス、税務、その他のアップデートに加え、国際税務関連のアップデートがまとめられています。2016年7月号の主な掲載内容は以下の通りです。

► レバノン:2015年度の税務申告書の電子申請/脱税や不正対応のための税務情報ルールの交換

► オマーン:新投資法の提案/LNG、石油化学および鉱業企業の法人税の増税を議会が承認

► パキスタン:Finance Act 2015からの主要な税法の改正

► イラク:イラクのGeneral Commission for Tax (GCT)が2016年の指針(多国

籍石油企業の下請企業に対する税務控除/駐在員事務所・支店・現地企業のマネージャーの最低給与レベル)

► GCC:アラブ首長国連邦の財務省によるGCC VATのQ&Aの設立

► ヨルダン:暦年ベースの納税者の2016年度の支払期限(2016年7月30日)

► クウェート:Public Authority for Manpowerによる新しい統一された雇用契約の採用

► サウジアラビア:サウジアラビア政府はサービスPE(Permanent Establishment、

恒久的施設)のコンセプトを明確化/投資庁は持続的な投資への改革を導入/アピール・コミッティ(Appeal Committee)によるザカットに関連する2015年の重要事項

► カタール:税務当局は紙での税務申告を2016年4月以降受け付けない

► アラブ首長国連邦:扶養者のビザ申請に対するeVisionのオンラインシステムの使用義務/30日間のオンアライバル・ビザでのオーバーステイへの罰金/扶養者への健康保険加入義務/ドバイでのミッション労働許可(Mission WorkPermit)の更新不可

► 間接税/GCC VAT:2018年のGCC VATの導入の公表/GCCにおけるVAT導入に対しての準備

► イラク・クルディスタン自治政府:生産物分与契約における石油・ガス企業に対する新税務監査と支払手続き

中東・北アフリカ地域(MENA)

4. 地域・国別アップデート

全文をご覧になるにはこちらからPDFをダウンロードください。

全文をご覧になるにはこちらからPDFをダウンロードください。

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新日白租税条約

2016年10月12日に署名された新日白租税条約は、双方の国内における批准手続きが完了後30日で発効する見込みです。

法人税率が現在の33.99%から段階的に20%へ

2016年10月現在、年末から2017年初頭の法制化に向け審議中です。2017年度は27%、2018年度は24%、2019年度は20%と法人税率が逓減(てい

げん)する見込みです。一方でこれまでベルギーの実効税率を低下させていた税制にも大きな変更が予定されています。具体的には、NID(みなし利子控除)制度の廃

止、繰越欠損金の一部利用制限、加速償却の廃止など、これまで存在していた多くの優遇税制が廃止・改訂される見込みです。

移転価格文書の作成がついに義務化

これまで移転価格文書作成義務がなかったベルギーですが、2016年1月1日以降

の開始事業年度より、一定の基準に該当する場合は移転価格文書の作成と提出が義務化されます。具体的には、以下の通りです。

マスターファイル、ローカルファイルの作成・提出義務化

多国籍企業傘下のベルギーのグループ会社が、前年度の法定財務諸表(単体ベース)において以下の基準に一つでも該当する場合は、マスターファイルとローカルファイルの作成を要求されます。

► 売上高・財務収益合計が5,000万ユーロ以上(非経常的なものを除く)

► 総資産が10億ユーロ以上

► 年間平均従業員数が100人以上(フルタイム勤務者)

マスターファイル

事業年度終了後12カ月以内にベルギー税務当局に提出しなければなりません。2016年1月1日以降の開始事業年度から適用見込みです。通常は究極の親会社で作成されると思われますが、提出はベルギー子会社が実施します。

ローカルファイル

事業年度の税務申告書と同時に提出する必要があり、こちらも2016年1月1日以

降の開始事業年度から適用見込みです。こちらは作成・提出共にベルギー子会社が主体となって実施します。

CbC Reporting

グループ連結売上高が7億5,000万ユーロを超える多国籍企業の究極親会社がベルギーの税務上の居住者の場合、ベルギー税務当局へCbCRフォームを事業年度終了後12カ月以内に提出しなければなりません。日系企業は上記条件に該当しないため、日本親会社が日本の税務当局にCbCRを提出するだけで足ります。しかしながら以下の追加条件に留意が必要です。

ベルギー子会社がCbCRフォームを提出しなければならないケース

► 究極親会社が、その税務上の居住者の国においてCbCRの提出を義務付けられていない。

► 究極親会社が、その税務上の居住者の国においてCbCRの提出を義務付けられているが、ベルギー税務当局にCbCRが諸事情により共有されない(システム障害含む)。

その他

CbCR、マスターファイル、ローカルファイルの提出義務を遵守できなかった場合、2回目以降に1,250ユーロからEUR 2万5,000ユーロの罰金が科されます。当該義務を遵守しない場合、税務調査の対象となる恐れがあります。

ベルギー

4. 地域・国別アップデート l ベルギー

条約の概要はJapan Tax Alert (日本語)をご参照ください。

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欧州ニュースレター l November 2016 Issue 12

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2015年金融行政活動レポート

金融当局は、2015年金融行政活動レポートを公表しました。以下興味深い点を挙

げます。

全体的な税金徴収額

2015年の全税金の徴収額は、6,702億1,600チェコ・コルナで、前年度比おおむね5%増となり、中でも法人税が最も増加しました。この金額は、少なくとも直近10年間の中で最大の徴収金額となっています。合計5,484億7,700万チェコ・コルナを徴収した2010年以降継続的な増加を示しています。

先見的な税務調査行動および税務監査

2015年は調査行動および税務監査に特徴が見受けられた年でした。税務当局は、

「会社数が多いことを理由とした比較的税務調査を回避しやすい大都市の税務署による地方管轄税務署への権限委任」、「業務量が多く、十分な税務調査ができていないプラハ地区を地方税務署員が支援」といった数々の国家レベルの監査および調査の取組みを率先して実行しました。税務署は「臨時従業員の雇用(マンパワーの確保)」、「広告サービスコスト検証への注力(後述)」、「(売上認識を遅らせ、VAT免税点への到達を遅らせることによる)VAT登録の遅延行為検証への注力」といった他の取組みも率先して開始しました。

移転価格には特に注目をしています。2015年は移転価格監査に今まで以上に焦点を当てており、また、この傾向は2016年も継続するつもりである、と税務当局は

言及しています。特に、関連当事者間で移転価格が合意された方法を(税務署による)バインド評価する制度を使用することによって、税務調査を避けることを推奨しています。

税務当局は、管轄内で優遇税制、すなわちタックスヘイブンを利用している会社との関係や取引を標的とした調査を実施したことも明確に言及していました。当該業務により、おおよそ5,000万チェコ・コルナの追加的な税額が評価されました。

2015年、疑義を解消するために開始、終結した手続数は、前年比で合計24,062にまで増加しました。事例の半分(49.8%)において、税務当局が主張した税金債務の変更がありました。これは、合計110億7,200万チェコ・コルナにも及び、前年比65%増となっています。

税務監査により、合計157億2,100万チェコ・コルナの追加の税額が評価され、前年比63.5%増となっています。事例の86.9%において、税務当局は追加的にVATを評価しています。

起訴

当該活動レポートでは、税務当局は、脱税に関する犯罪容疑で起訴したいくつかの事例を公表しています。

列挙された事例は、主にサプライチェーン不正に関係したものとなっています。仕入サイドから生ずるInput VATに関するVAT控除の資格を主張する一方、サプライチェーンの最終取引部分で、売上サイドから生ずるOutput VATに関して、他のEU加盟国に製品を供給することで享受できるVAT免税の資格を証明できていないこと(インボイスのみでは本件の立証として十分ではありません)を挙げています。

チェコ

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すなわち、税務当局としては、上記の証明ができない場合、実際はOutput VATを支払う必要のある国内取引であるにもかかわらず、他のEU加盟国との取引を偽装し、Output VATの支払いをしなかった不正と考えていることに注意する必要があります。

他の事例としては、架空費用が挙げられています。例えば、派遣会社からの非常に多額の請求コスト、不特定の仲介および広告サービスコストが挙げられています。税務当局は、架空のサービス供給は、会社が税金債務を減少させるためだけの目的で実施されているという疑念を抱いているということに留意を要します。

情報の交換

税務当局は、管轄内で優遇税制を利用する会社の多くの取引をレビューしたため、請求に応じてまたは税務当局自身の率先した取組みに基づき、2015年の金融当局レベルで直接税に関する1,098もの連絡のやり取りが行われたことに驚きはありません。VATに関しては、合計8,948もの連絡のやり取りが行われ、一日当たり25のペースとなっています。

2015年9月、チェコとアメリカの税務当局は、外国口座税務コンプライアンス法(FATCA)協定の下で、他国の税務居住者の所得に関して、金融機関からの情報

の初めての配信を受けました。その後、両者はこの情報を交換し、チェコはチェコ税務居住者所得の約7,000事例の情報を入手しました。

4. 地域・国別アップデート l チェコ

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欧州ニュースレター l November 2016 Issue 12

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フランス法人税関連の動向

法人税率の変更

フランス法人税では基本税率の33.33%に加え次の付加税が時限的に課されています。

► 社会保険補填税:法人税額が76万3千ユーロ以上の企業に対して法人税額の3.3%

► 特別付加税:売上高が2億5千万ユーロ超の企業に対して法人税額の10.7%総資産が10億ユーロ以上

このうち、特別付加税は2016年12月31日以降終了する事業年度から適用されなく

なるため、以降の税率は社会保険補填税がかかる場合とそうでない標準税率の場合のいずれかになり、将来の事業計画や税効果会計に用いる税率が減額されます。

社会保険補填税が掛かる場合の税率計算:34.43% (=33.33% x (1+3.3%))

なお、政府は年度末の財政法可決に向けて、すでに導入されている中小企業向けの軽減税率制度の範囲について2017年度から大幅に拡大することを提案しており、年度末の可決状況いかんでは上記の2パターン以外のケースを考慮しなければならなくなります。

► 現行の中小企業向軽減税率制度:年間売上が763万ユーロ未満で少なくとも75%が個人あるいは年間売上が763万ユーロ未満の法人に所有される場合、38,120ユーロまでの課税所得への税率が15%となる。

► 提案されている制度

► 売上高(763万ユーロ未満):課税所得3万8,200ユーロまで15%、3万8,200~7万5,000ユーロまで28%、7万5,000ユーロ超には33.33%

► 売上高(763万ユーロ以上5000万ユーロ未満):7万5,000ユーロまで28%、7万5,000ユーロ超には33.33%

► 売上高(5,000万ユーロ以上):33.33%の通常税率のみ適用

さらに、2018年以降の段階的適用についても言及されています。

► 2018年:売上高に関係なく課税所得50万ユーロまで28%

► 2019年:売上高10億ユーロ未満の企業には一律28%

► 2020年:すべての企業に一律28%

フランス

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資本参加免税および連結納税制度での配当金課税の変更

5%以上所有の会社からの配当金については95%が免税となり5%相当のみの課税となる優遇税制がありますが、欧州司法裁判所の決定を受け、2016年1月1日以降開始する事業年度より次のように変更されます。

新しい制度

フランス連結納税グループ内およびEU域内の連結グループ要件(フランスに所在している場合に適用される)を満たしている会社からの配当については1%相当を課

税 所得として認識する(=連結納税グループ内の配当も従来のように完全に相殺されない)。

結果として、前者の配当は従来は相殺され0%課税であったのが1%と不利となり、後者について従来は5%課税であったのが1%と有利となります。全体として有利不利はその割合によって異なります。

上記以外の場合は従来の95%免税(=5%相当課税)は維持されます。

労働法改正法について

改正労働法が8月9日公布(8月10日より発効)されました。

2008年の金融危機の影響から脱しきれず依然10%を越える高い失業率が続いて

いるのは、従業員への手厚い労働モデルがその最大の原因と考えられています。事態改善に向け、労働時間規制の緩和、企業が労働者を解雇しやすくするなど硬直的な労働規制の弾力化を目指す法案(通称「エルコムリ法案」)が今年3月24日

エルコムリ労働相から提出されました。それに対して、フランス各地で発生したデモによる社会紛争および政治的対立が起こりましたが、マニュエル・バルス首相は法案の審議過程において、議会の決議なく法案を通過させることのできる憲法49条3項に基づく強行手段を3度行使し、改正法を7月21日に国会を通過させました。

新しい労働法は、多岐にわたる分野で改正が行われていますが、主な改正点は次の通りです。

► 最大労働時間(日/週)の延長を可能とする措置

► 週35時間を超える超過勤務手当てを各企業の労使協定により基準より低く設定することを可能(最低10%)とする措置

► 経済的理由による従業員解雇を可能にする事象の拡大

なお、本法律の具体的な適用のために130を超える政令(デクレ)が年末まにで

公布される予定となっていますが、政令の内容をより労働者に有利なものにしようと引き続き社会紛争が継続して起こっています。

4. 地域・国別アップデート l フランス

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新日独租税条約

2015年12月17日に署名された新日独租税条約は、双方の国内における批准手続きが完了し、その発効までに批准書の交換を残すのみとなりました(2016年9月19日現在)。新日独租税条約は、批准書の交換後30日で発効、2017年1月1日か

ら適用される見込みです。新日独租税条約における重要な改正内容は以下の通りです。

► 税務上透明な企業体(Fiscally transparent entity or arrangement)コンセプトの導入(第1条)

► 個人以外の双方居住者について租税条約上の居住性を決定するタイブレークルール(第4条)

► 恒久的施設に帰属する所得の決定に関するOECD承認アプローチ(AOA)の導入(第7条)

► 配当、利子、およびロイヤルティの源泉所得税減免(第10、11、12条)

► 一定の株式譲渡に係るキャピタルゲインの源泉地国課税(第13条)

► 特典を受ける権利を判定するための客観基準および主要目的基準(第21条)

► 相互協議手続きにおける強制仲裁(第24条)

また、上記の法人課税の分野に加えて、個人課税の分野でも日系企業にとって重要な改正が盛り込まれています。

給与所得(第14条)

いわゆる183日ルールにおける滞在日数の計算期間が、現行の暦年に代わって、課税年度中の勤務開始日または終了日から起算される12カ月の期間になります。

役員報酬(第15条)

現行租税条約では、監査役会および管理委員会の構成員に加えて取締役会(執行機関)の構成員も第15条(現行第16条)の対象となる役員に含まれることが明記さ

れていますが、新日独租税条約のドイツ語条文においては「または執行機関の構成員」部分が削除されており、交換公文等を通じた明確化が行われない限り、取締役に対する役員報酬の取扱いについて運用上の不確実性が生じる可能性があります。

退職年金その他これに類する給付(第17条)

現行の租税条約は、源泉国の課税権を認めていません(居住地基準)が、新日独租税条約では、源泉国の課税権が認められています。従って、退職年金は源泉国の国内法に基づく源泉課税に服することになります。

二重課税の除去(第22条)

ドイツ側では、これまで所得免除方式が採用されていた役員報酬および退職年金について、外国税額方式が採用されることになります。また、利子および使用料については源泉国の課税権が認められていないことから居住国側での(外国税額控除等の)二重課税の排除措置は不要となります。

ドイツ

上記の詳細についてはJapan Tax Alertをご覧ください。

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BEPS行動13の国内法への導入

ドイツ連邦閣議は2016年7月13日に「EU行政協力指令の改正ならびに利益の節減および移転に対するその他の措置の実施のための法律(Gesetz zur Umsetzung derÄnderung der EU-Amtshilferichtlinie und von weiteren Maßnahmen gegenGewinnkürzungen und –verlagerungen)」の政府案を決議し、法的手続きを開始しました。

法案の主要項目は、BEPS行動計画13に基づく、移転価格文書の拡大ならびに非開示の国別報告書 (Country by Country Reportings –CbCR)の導入です。財務省案と比較すると以下の2点が大きく異なっています。

► マスターファイルおよびローカルファイルの作成に関する法的体系化を規定する租税通則法第90条第3項(政府案)は、2017年1月1日以降開始する事業年度からの適用開始となります。財務省案では2016年1月1日以降開始する事業年度からの適用開始とされていました。

► 国別報告書の作成に際しては、財務省案で想定されていた「売上高およびその他の収益」項目に代わって、(a)関係者との取引による売上高およびその他の収益、(b)第三者との取引による売上高およびその他の収益、ならびに(c)両者の合計額という3項目から構成されます。財務省案ではこの詳細表示については法律の根拠セクションでのみ言及されていました。立法手続きは2016年末までに完了する見込みです。

トリーティ・オーバーライド条項を合憲とする連邦憲法裁判所決定

連邦憲法裁判所は2015年12月15日付決定において、租税条約上の規定を国内

法により実質無効化する、いわゆるトリーティ・オーバーライド条項が合憲であるとの見解を示しました。国際条約、すなわち租税条約は、条約締結後に成立する、租税条約に矛盾する連邦法を通じて排除することが可能であるというのが、連邦憲法裁判所の見解です。

脱税認定リスクを回避するための税務上のコンプライアンス・マネージメント・システムの構築

納税者は網羅的で正確な税務申告書を遅滞なく提出する義務を負いますが、修正申告が必要となった場合に、(故意または過失によらない間違いを是正するための)単純な修正申告で十分なのか、あるいは脱税認定に伴う刑事訴追からの免責を目的とする自主申告開示が必要となるのかという議論があります。連邦財務省は2016年5月23日に公表した通達において、税務上のコンプライアンス・マネージメ

ント・システムが構築されている場合には、納税者側に故意または過失がなかったことの判断材料となるとの見解を示しました。従って、脱税認定リスクおよび刑事訴追リスクの回避のための対応策の一つとして、税務上のコンプライアンス・マネージメント・システムの構築が必要となってきます。

財務省案の詳細は、Global Tax Alertをご覧ください。

連邦憲法裁判所決定の概要については、German Tax & Legal Quarterly(9ページ)をご覧ください。

通達の概要については、German Tax & Legal Quarterly(8ページ)をご覧ください。

4. 地域・国別アップデート l ドイツ

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欧州ニュースレター l November 2016 Issue 12

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請求書要件を満たさない請求書の修正に伴う前段階VAT控除のタイミング

前段階VAT控除・還付は、ドイツVAT法に規定される記載要件を満たす請求書を受

領していることが条件となりますので、必須記載事項に遺漏や誤記がある場合、前段階VATの控除は認められません。ただし、請求書の訂正が行われた場合には、前段階VATを控除することができます。請求書の訂正に伴う前段階VAT控除のタイ

ミングについて、当初の(遺漏または誤記のある)請求書発行時点に遡及しての前段階VAT控除が可能なのか、あるいは、修正請求書の受領時点で始めて控除が可

能なのかといった点について、ドイツの財政裁判所および税務当局はこれまで後者の見解を示していました。これに対して、欧州司法裁判所は2016年9月15日に、請

求書の訂正の遡及効果を認める判決を下しました。欧州司法裁判所の結果を受け、当初控除が否認された前段階VAT額について、請求書が発行された課税年度と訂正が行われた課税年度との間に相当の期間(課税年度=暦年終了後15カ月目以

降)が経過している場合には、還付利息が発生することになります。あるいは、税務調査における過去の前段階VAT控除否認に伴う支払利息が発生した場合には、

請求書の訂正により、支払利息の還付が可能となります。納税者は判例と同様の事案において、欧州司法裁判所判決を根拠とした前段階VATの遡及控除が可能となります。

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2017年からの従業員モビリティに関する税制優遇措置

ハンガリー中央部から西部地域にわたる会社が抱える雇用の困難性を軽減・解消するため、ハンガリー国内において相対的に失業率の高い東部地域の者にハンガリー中央部から西部地域への移動を促すために個人所得税の観点から税務上の優遇措置を与え、また、ハンガリー中央部から西部地域にわたる会社にも法人所得税の観点から税務上の優遇措置を与えることによって、雇用のマッチングを図ることを目的として、以下のような改正が2017年1月1日よりなされます。

個人所得税法の附則1において、雇用者から提供される住宅手当の一定部分が免税となるという新たな法的権利を加えています。仮に、法定の条件が満たされた場合、モビリティー住宅補助の月次免税可能金額は、最初の24カ月は最低賃金の40%、次の24カ月は最低賃金の25%、それ以降は、最低賃金の15%が上限となります。法人所得税の課税所得から二重控除できる対象ともなります。

プライベートカー通勤の実費精算に関する個人所得税免税部分は、1km当たり9ハンガリー・フォリントから15ハンガリー・フォリントに増加します。

法人所得税の課税所得から二重控除できる対象として、従業員宿泊施設の設立費、維持費、運営費等がありますが、宿泊施設が複数の部屋からなる場合には、1部屋につき1従業員という基準が採用されます。

ハンガリー

4. 地域・国別アップデート l ハンガリー

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2017年度タックスプラン(税制改正案)

2016年9月20日、2017年度タックスプラン(税制改正案)が発表されました。今回

のタックスプランは、税制の簡素化と租税回避が基本的なコンセプトになっています。租税回避に関してオランダ政府は、ATA(反租税回避)指令の履行についての法案をコンサルテーション目的で、2017年後半に提出する予定です。今後、議会承認を

経て法制化されるので、審議の過程で修正される可能性があります。主な項目は以下の通りです。

COOPに関する源泉税の取扱い

国際税務のストラクチャーにおいてCOOPが使用されることがありますが、参加構成員の持分が5%以上である場合には、源泉義務が課されることになります。法案提出後、コンサルテーションを経て、遅くとも2018年1月1日から施行する予定のようです。

法人税の軽減

20%の軽減税率が適用される所得を変更する予定です。現在は20万ユーロまでの所得に対して適用されていますが、2018年には25万ユーロ、2020年には30万ユーロ、そして2021年には35万ユーロに引き上げられる予定です。その後、法人税率の引下げが検討されることになります。

VAT還付手続きの簡素化

滞留債権のVAT還付手続きが簡素化される予定です。この場合の滞留期間ですが、支払期間から起算して1年以内に、その全額または一部が入金されないケースです。

配当支払調書の発行遅れ

現在、配当支払調書の提出義務に違反する会社は、5,278ユーロの罰金が科され

ていますが、法人税非課税法人が配当を行うような場合にも、配当支払調書の提出が求められるようになります。これに違反するときは、上記と同じ5,278ユーロの罰金が科されます。

イノベーションボックス課税

適格研究開発の結果取得した無形資産による利益については、特定の場合、当該所得の80%を控除して課税することになっています。従って、この場合の実行税率は5%となります。OECDのBEPS行動報告書を受け、イノベーションボックス課税の

適用を受けるには、適格研究開発証明の入手とパテントの取得が必要とされます。また、課税所得の計算において、「ネクサスアプローチ」が適用されることになる予定です。これは、全体の支出に占める適格支出の割合に応じて、対象となる課税所得を計算する方法です。従って、イノベーションボックスの適用対象が厳しくなること、課税所得の計算方法が変更されることに留意する必要があります。移行措置に関しては、2016年7月1日以前については、現行規定が適用されることになりますが、2021年7月1日をもって移行措置が終了する予定です。

賃金税の源泉徴収義務

外国法人からの出向者に関する、賃金税の源泉徴収義務は当該外国法人にありますが、新規定ではオランダのグループ会社に当該源泉徴収義務を引き継がせることが認められるなど、緩和的な取扱いになる予定です。

オランダ

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利子控除規定の改正

法人税法10aでは、関連者からの借入利子控除に関する規定がされていますが、その範囲が「cooperating group」に拡大される予定です。ただし、その定義に関しては明確にされていませんが、JVなどが該当する可能性があります。また、法人税法15aでは、連結納税を利用した買収目的の借入利子について規定されています

が、取得会社の単体利益までしか損金算入を認めない方向で改正される予定です。また、移行措置が設定される予定です。

配当源泉税

法人税の課税法人は、受取配当源泉税と法人税を相殺することが認められる予定です。法人税非課税法人の場合は、配当源泉税の還付申請を行うことができます。

日本国籍者の就労許可が再び必要に

現在、日本国籍者について、オランダにおける法定最低賃金を満たしていれば就労許可なしでの就労が可能です(3カ月以上の滞在については滞在許可が必要)。2017年1月1日以降の申請について、就労許可の取得が再び必要となります。

現在、就労許可を取得せずにオランダで就労している方については、現行の滞在許可有効期限まで現状のまま就労可能です。ただし2017年1月1日以降に延長申請を行う際は通常の非EU国籍者と同様のオランダにおける就労要件を満たす必要があり ます。

詳細はこちら(pdf、英語)をご覧ください。

4. 地域・国別アップデート l オランダ

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ポーランド 主な税務改正等

ポーランド税制において、重要な改定が予定されており、その中のいくつかは2016年1月1日から施行されています。さらに、ある領域(特にキャッシュプーリング)に

おいて、裁判所のアプローチも変化してきています。主な変更は以下の通りです。

► 配当免税の制限(2016年1月1日からポーランドで施行されているEU親子会社指令への濫用防止導入)

配当をする主な理由もしくは主な理由の一つが免税の便益を享受することであり、また経済的実態を反映していないような契約や取引、法的行為、またはアレンジメントに関連付けられる場合には、インバウンド配当のための国内免税と共にアウトバウンド配当に関する源泉税免除が適用されません。

取るべきアクションとして、特に近い将来に配当が予定されている場合、既存の持株構造(理論的根拠および実体)のチェックが必要です。

► 移転価格(BEPS行動計画13に対応する変更)

2017年から、ポーランドでは、マスターファイル、ローカルファイル、そして、国別

報告書のフォーマットからなる移転価格文書の作成が義務付けられ、移転価格文書(換言すると、ローカルファイル)および関連当事者との取引や事象における要約レポート(CIT-TPフォーム)を作成したことを確認する陳述書を税務当局に提出することも義務付けられました。

なお、究極親会社がポーランドに所在し、かつ連結財務諸表を作成しており、その連結売上高が7億5,000万ユーロを超過し、ポーランド国外に子会社もしくは支店を通じたオペレーションを実施している場合、2016年1月1日から、すでに国別報告書の作成が強制されています。

取るべきアクションとして、移転価格文書準備と共に正当化された根拠を持ち合わせた適切な移転価格ポリシーの開発への益々の注力が必要になります。

► 2016年7月1日からの税務目的の標準監査ファイル

2016年7月1日以降、納税者は、いわゆる税務目的の標準監査ファイル(SAF-T)

を使用することにより、税務当局にデータを提供することを義務付けられています。まず、大規模会社(年間従業員数が250人を超える会社、または、年間売上高5,000万ユーロかつ総資産が4,300万ユーロを超過する会社)に対して、SAF-Tの提出を義務付けました。重要なことは、SAF-Tが税務当局へデータを送る標

準フォームとなるということです。この要求は、税務調査に影響するのみならず、(税務データの収集を主な目的とした事前調査の運用の場合等の)税務調査が開始されていない納税者に対して伝達されるさまざまな要求に対しても適用されると考えられます。

中小規模会社に関しては、2018年6月末まで選択可能となっており、その後強制適用となります。ただし、中小規模会社における月次のSAF-T_VATへの移行義務は2017年1月1日となります。可能であれば、事前に税務リスクを認識するために、税務当局が適用するであろう手法や判断基準を使用しながら、SAF-Tとして潜在的に開示するべきデータの分析の実施をすることが望まれます。

取るべきアクションとして、SAF-Tで要求されるデータの生成能力の確保が必要となります。

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► 銀行課税

2016年1月、ポーランド大統領は、2016年2月1日から施行されるポーランドに

おける銀行税の導入に関する法案にサインをしました。新法は、選択された金融機関(国内銀行、消費者金融、保険会社、外国銀行や保険会社の支店)の資産に銀行税を課しています。課税所得は、一定額(国内銀行、外国銀行や保険会社の支店の場合、40億ポーランド・ズウォティ等)を超過する総資産金額であり、

自己基金およびポーランド国債の金額を含む、法案に列挙された金額は減額できます。銀行税は月次での支払いとなっており(納税者により提出される自己評価申告)、翌月の25日が期限です。なお、銀行税はポーランド法人税における損金とは扱われません。

取るべきアクションとして、銀行、保険および消費者金融提供者は、自身のビジネスにおける銀行税のインパクトを評価するとともに、現状の手続きで法変更に対して有効に対応できるのか否か、そして、既存のシステムが必要なデータを生成できるのか否かを考慮する必要があります。

► 一般濫用防止規定

2016年6月14日、一般濫用防止規定(GAAR)を含むポーランド税務法典の改正を導入する法案が官報の中で公布、公布後30日後となる2016年7月15日より施行されました。GAARは、ポーランドにおける納税を逃れるための人為的な

法的アレンジメントの生成および使用を防止することを目的とするもので、ポーランド税法の中で非常に重要な変更となっています。

法令は、租税回避を主に、税務上の便益の享受、税法の条項の目的に反する環境を可能にするために実行される行為と定義付けており、また、仮に形態が真正のものでない場合、租税回避は税務上の便益の享受をもたらすべきではないと言及しています。

► 小売税

ポーランドにおける前年秋の選挙で与党となった法と正義党は、小売税をアナウンスし、2016年8月1日に官報の中で、小売税が公布され、2016年9月1日より施行されました。

小売税は小売業に課せられます。課税所得は、月次1,700万ポーランド・ズウォティを超過する収益金額となっており、累進的な二つの税率により計算されます。1億7,000万ポーランド・ズウォティ以下の課税所得には0.8%、1億7,000万ポーランド・ズウォティを超過する部分の課税所得には1.4%の税率が適用されます。小売税は、大型小売チェーンが月次で支払うことになります。

ところが、小売税がEU補助金ルールに違反する、小規模売上会社に(その競争相手に比して)選択優位性を与えている好意とみなされる可能性があるため、2016年9月19日にEUが当該小売税に関する深度ある調査を開始しています。このことを受けて、ポーランド国内では、2016年10月19日に2016年の年末ま

での(申告の義務は引き続きありますが)小売税の徴収の中止が官報に公表されました。さらに、2016年10月14日には、小売税の改正法案が出されており、2016年11月には法案が可決される可能性があります。この法案の中では、小売税は2018年1月1日以降導入される、とされています。

4. 地域・国別アップデート l ポーランド

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► 新法人税

金融庁は、広範囲にわたる法人税改正計画をアナウンスしています。改正は、特に以下を対象としています。

► 資本準備金勘定に割り当てられる現物出資に関する税務の新しいルール

► 株式交換取引におけるビジネス実体の要求事項に関する新しい濫用防止規定

► 利子・ロイヤリティ指令の下で支払われる利子・ロイヤリティの源泉税軽減目的の実質享受者の要求事項の明確化

► ポーランドにおける非居住者の限定的な税務債務の範囲を明確化するためのポーランド内で稼得された所得の定義

► 小規模納税者および新規設立会社へのより低い税率の適用(19%に替えて15%)

2016年9月22日、ポーランド大統領は当該法案にサインをし、9月27日の官報で、公布されました。なお、当該法人税改正は、2017年1月1日に施行の見込みとなっています。

► 過少資本税制の対象となるキャッシュプーリング利息

キャッシュプーリングにより支払われる利息の税務処理に関して、キャッシュプーリング・アレンジメントへのポーランド管理裁判所のアプローチが変更されています。最近のルーリング(税務問題の税務当局への事前確認)によると、過少資本税制の利息の損金制限はキャッシュプーリングから生じる支払利息にも適用されることとなっています。

取るべきアクションとして、キャッシュプーリング・システムに参加しているポーランド子会社は、過少資本税制の状況を分析することが必要です。特に2015年1月1日以降適用されており、たいていの関連当事者が対象となる過少資本制限が著しく拡大している新過少資本税制を考慮することが肝要です。

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のれんを含む無形固定資産の償却方法の改正

2015年7月に改正された監査法により、2016年1月1日以降開始事業年度の無形固定資産における償却方法が変更されています。

従来のスペイン会計基準では、無形固定資産は耐用年数の有限、無限による分類があり、耐用年数が有限の無形固定資産はその年数で償却を行い、耐用年数が無限の無形固定資産(のれんを含む)は非償却とされていました。また、スペイン法人税法においては耐用年数が有限の無形固定資産はその年数で償却を行い、耐用年数が無限の無形固定資産は20年で償却(年5%)するとされていました。

今回の改正で、スペイン会計基準上はすべての無形固定資産は有限の耐用年数を保有するとの前提に立ち、原則として耐用年数に応じた償却を行うこととなります。ただし、耐用年数が信頼性をもって測定できない場合には、10年で償却(年10%)

を行います。また、スペイン法人税法においても会計基準と同様に、無形固定資産はその耐用年数に応じて償却を行うと変更されました。耐用年数が信頼性をもって測定できない場合については20年(年5%)を上限に償却するとされています。

のれんの償却は、従来においては会計上は非償却、税務上は20年償却が一般的な方法でしたが、今回の改正に伴い、会計上は10年償却、税務上は20年償却が

一般的な方法になります。なお会計と税務の償却年数の違いによる償却額の差は繰延税金資産として認識します。

法人税法関連の改正

最近のスペイン法人税法の改正のうち、在スペイン日系企業に関連があるものとして以下が挙げられます。これらの改正はすでに施行済みです。

時効期限の変更

スペイン一般税制における税務調査対象期限は4年ですが、2015年の改正により

会社が損失あるいは税額控除を計上している年度については税務調査対象期限が10年と変更されました。

また、従来は時効期限を過ぎた年度については税務調査の対象外でしたが、改正により時効期限を過ぎている年度の取引が時効期限を過ぎていない年度の数字に影響する場合には調査の対象となります。これにより税務当局は時効期限を過ぎた年度の取引についても場合によっては精査を行うことが可能となっています。

税務調査の調査実施期間の延長

税務調査の調査実施期間は12カ月でしたが、18カ月に延長され、連結納税グループに属している場合や法廷監査対象会社の場合は27カ月に延長されています。

スペイン

詳細はTax Alert(英語、PDF)をご覧ください。

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4. 地域・国別アップデート l ポーランド

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欧州ニュースレター l November 2016 Issue 12

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英国2016年度財政法

2016年度財政法が、2016年9月15日の女王裁可により、立法化されました。英国

法人税率のさらなる引下げ、英国における税務戦略の公表義務、将来における公

開国別報告(public CbCR)義務につながり得る関連法規など、日本企業にとって重

要な関連性を有する新たな諸規則・義務が数多く含まれています。

英国法人税率の引下げ

2016年度財政法により、英国法人税の対象となる多くの企業に適用される主な法人

税率は、現行の20%から、2017年4月1日以後は19%に、さらに、2020年4月1日

以後は17%にまで引き下げられることになります。

この法人税率の追加的な1%の引下げは、Business Tax Roadmapにおいて強調

されているように、政府の継続的な政策方針である税率の引下げに沿うものであり、

英国における投資を促進し、英国がG20において最低税率を維持することを

意図しています。

実質的な制定日(IFRSおよびUK GAAPに準拠する場合)、または制定日(US

GAAPに準拠する場合)以降に終了する会計期間については、繰延税金資産の取崩し

が予想される時期に応じて、異なる税率で繰延税金資産を計算する必要があります。

今回の財政法では制定されていませんが、追加的に提案されている改正案として、

欠損金控除の制限(500万英ポンドを超える英国課税所得の50%まで)、および

グループリリーフ規定の制限緩和が挙げられます。これらの改正案は、現在、コンサ

ルテーションの手続き中ではありますが、2017年において導入される場合には、将来

の納税予測および繰延税金の計算についても検討が必要となります。

また、英国法人税率の19%/17%への引下げは、(現行の)日本のタックスヘイヴン

対策税制(外国子会社合算税制、以下「CFCルール」)の適用関係に対する影響が

考えられます。日本企業は、英国子会社の日本のCFCルールに関するポジションを

考慮すると同時に、日本のCFCルールの改正の動向を注視する必要があります。

税務戦略

2016年度財政法の中で、大企業に対し、英国における税務戦略の公表を義務化す

ることが定められ、女王裁可以後に開始する会計期間を対象として適用されます。

この義務は、英国における売上高が2億英ポンド超または総資産額が20億英ポンド

超のすべての企業に対して適用されます。また、こうした英国内のしきい値を超えない

企業も、全世界の総収入額が7億5,000万ユーロを超え、国別報告書の提出が義務

付けられる場合には適用対象となります。従って、小規模な英国事業を有する日本の

大企業も、この義務の適用対象となります。

公表すべき税務戦略には、以下の事項を含める必要があります。

► 英国での課税に係るリスクマネジメントおよびガバナンスの仕組みに対する英国

グループ会社のアプローチ

► 英国グループ会社のタックスプランニングに対する姿勢(英国での課税に影響

する範囲内で)

► 英国グループ会社が許容できる英国での課税に係るリスクレベル

► 英国歳入関税庁(HMRC)への対応方針

税務戦略は、毎年見直す必要があり、事業の複雑性に応じて詳細を適宜記載しな

ければなりません。

英国

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Country Name Telephone E-mail

BelgiumKiyohiro Nakamura中村 精潤

+32 2 774 6079 [email protected]

CzechRepublic

Shinichi Masuda増田 晋一

+48 510 201 350 [email protected]

FranceHitoshi Endo遠藤 仁

+33 1 46 93 62 18 [email protected]

Germany

Kenji Umeda梅田 健二

Miki Matsumoto松本 美紀

+49 211 9352 13461

+49 211 9352 10535

[email protected]

[email protected]

HungaryShinichi Masuda増田 晋一

+48 510 201 350 [email protected]

IndiaHiroshi Matsuda松田 博司

+91 80 6727 5209 [email protected]

ItalyTakahiro Kitte切手 崇博

+39 2 80669230 [email protected]

NetherlandsHideki Tominaga富永 英樹

+31 88 4071723 [email protected]

PolandShinichi Masuda増田 晋一

+48 510 201 350 [email protected]

RussiaYuko Matsumoto Fite松本 ファイト 裕子

+7 495 755 9759 [email protected]

SpainYoshinori Wakizaki脇崎 喜範

+34 93 366 67 30 [email protected]

TurkeyYoichiro Takagi髙木 陽一郎

+90 212 408 4900 [email protected]

United Arab Emirates

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UnitedKingdom

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Zonne Takahashi 高橋 存根(新日本有限責任監査法人新興国コンサルティング)

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