2011/1/13 - asahikawa medical university · 生きる意味への問い 死への恐怖...

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2011/1/13 1 あさひかわ緩和ケア講座 あさひかわ緩和ケア講座 2010 2010 あさひかわ緩和ケア講座 あさひかわ緩和ケア講座 2010 2010 あさひかわ緩和ケア講座 2010 第7講 看護ケア 看護ケアⅠ (疼痛便秘・呼難) (疼痛便秘・呼難) あさひかわ緩和ケア講座 あさひかわ緩和ケア講座 2010 2010 あさひかわ緩和ケア講座 あさひかわ緩和ケア講座 2010 2010 旭川医科大学病院 緩和ケア診療部 緩和ケア認定看護師 笹田 豊枝 あさひかわ緩和ケア講座 あさひかわ緩和ケア講座 2010 2010 痛みの閾値を上げるケア 痛みの閾値を上げるケア 痛み 他の身体症状 日常生活の支障 身体的な苦痛 社会的な苦痛 全人的苦痛( 全人的苦痛(Total pain Total painDame Cicely Saunders Dame Cicely Saunders 精神的な苦痛 あさひかわ緩和ケア講座 あさひかわ緩和ケア講座 2010 2010 全人的苦痛 不安・怒り いらだち うつ状態 経済的な問題 仕事上の問題 家庭内の問題 生きる意味への問い 死への恐怖 自責の念 スピリチュアルな苦痛 1. 1. どこが?(部位) どこが?(部位) 2. 2. どんなふうに?(性質) どんなふうに?(性質) 3 どのくらい?(強さ) どのくらい?(強さ) 痛みの評価のkey component あさひかわ緩和ケア講座 あさひかわ緩和ケア講座 2010 2010 3. 3. どのくらい?(強さ) どのくらい?(強さ) 4. 4. 何が困る?(痛みの影響) 何が困る?(痛みの影響) 5. 5. 何が痛みを修飾している? 何が痛みを修飾している? 6. 6. 痛みの治療の副作用は? 痛みの治療の副作用は? 痛みの閾値とは? 痛みの閾値とは? 痛みの感じやすさをいう 痛みを感じる最小の刺激レル(程度) あさひかわ緩和ケア講座 あさひかわ緩和ケア講座 2010 2010 痛みを感じる最小の刺激レ ル(程度) 痛みの閾値が下がる 痛みを 痛みの閾値が上がる 痛みを

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2011/1/13

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あさひかわ緩和ケア講座あさひかわ緩和ケア講座 20102010あさひかわ緩和ケア講座あさひかわ緩和ケア講座 20102010

あさひかわ緩和ケア講座 2010

第第77講講 看護ケア看護ケアⅠⅠ(疼痛・便秘・呼吸困難)(疼痛・便秘・呼吸困難)

あさひかわ緩和ケア講座あさひかわ緩和ケア講座 20102010あさひかわ緩和ケア講座あさひかわ緩和ケア講座 20102010

(疼痛 便秘 吸 難)(疼痛 便秘 吸 難)

旭川医科大学病院

緩和ケア診療部 緩和ケア認定看護師

笹田 豊枝

あさひかわ緩和ケア講座あさひかわ緩和ケア講座 20102010

痛みの閾値を上げるケア痛みの閾値を上げるケア

痛み他の身体症状

日常生活の支障

身体的な苦痛

社会的な苦痛

全人的苦痛(全人的苦痛(Total painTotal pain))Dame Cicely SaundersDame Cicely Saunders

精神的な苦痛

あさひかわ緩和ケア講座あさひかわ緩和ケア講座 20102010

全人的苦痛不安・怒りいらだちうつ状態

経済的な問題仕事上の問題家庭内の問題

生きる意味への問い死への恐怖自責の念

スピリチュアルな苦痛

1.1. どこが?(部位)どこが?(部位)2.2. どんなふうに?(性質)どんなふうに?(性質)33 どのくらい?(強さ)どのくらい?(強さ)

痛みの評価のkey component

あさひかわ緩和ケア講座あさひかわ緩和ケア講座 20102010

3.3. どのくらい?(強さ)どのくらい?(強さ)4.4. 何が困る?(痛みの影響)何が困る?(痛みの影響)5.5. 何が痛みを修飾している?何が痛みを修飾している?

6.6. 痛みの治療の副作用は?痛みの治療の副作用は?

痛みの閾値とは?痛みの閾値とは?

痛みの感じやすさをいう痛みを感じる 小の刺激レベル(程度)

あさひかわ緩和ケア講座あさひかわ緩和ケア講座 20102010

痛みを感じる 小の刺激レ ル(程度)

痛みの閾値が下がる→ 痛みを

痛みの閾値が上がる→ 痛みを

2011/1/13

2

痛みの感じ方を増強する因子痛みの感じ方を増強する因子(痛みの閾値を下げる因子)(痛みの閾値を下げる因子)

痛みの感じ方を増強する因子痛みの感じ方を増強する因子(痛みの閾値を下げる因子)(痛みの閾値を下げる因子)

不眠、疲労、不安、悲しみ、怒り、抑うつ、倦不眠、疲労、不安、悲しみ、怒り、抑うつ、倦怠感、孤独感、過去の痛みの体験、社会的怠感、孤独感、過去の痛みの体験、社会的地位の喪失、痛みの原因が不明地位の喪失、痛みの原因が不明

痛みを修飾する因子

あさひかわ緩和ケア講座あさひかわ緩和ケア講座 20102010

痛みの感じ方を軽減する因子痛みの感じ方を軽減する因子(痛みの閾値を上げる因子)(痛みの閾値を上げる因子)

痛みの感じ方を軽減する因子痛みの感じ方を軽減する因子(痛みの閾値を上げる因子)(痛みの閾値を上げる因子)

十分な睡眠、不安の解消、他症状の緩和、十分な睡眠、不安の解消、他症状の緩和、理解、ふれあい、創造的活動、過去の痛み理解、ふれあい、創造的活動、過去の痛みからの回復体験、痛みの原因が明白からの回復体験、痛みの原因が明白

**疼痛マネジメントに役立つ重要なケアである

痛みの閾値を上げるケア痛みの閾値を上げるケア

痛 値 げ

あさひかわ緩和ケア講座あさひかわ緩和ケア講座 20102010

8文献3より引用一部改変

痛みの閾値を上げるケア患者を支えるコミュニケーションマッサージポジショニング(体位調整)罨法(温罨法、冷罨法)

一人の人間として尊重する

『人として遇すること』

痛みの閾値を上げるケア

1、日常性の維持

あさひかわ緩和ケア講座あさひかわ緩和ケア講座 20102010

『人として遇すること』

できる限り普段と同じような生活ができるようにする

【例】散歩をして大好きなコーヒーを飲む

馴染みの写真や置物を持ってきても良い

9 文献2より引用一部改変

痛みの閾値を上げるケア

2、側にいること(presence)

あさひかわ緩和ケア講座あさひかわ緩和ケア講座 20102010

DoingからBeingへ

意識的・意図的に意識的・意図的に患者の側にいることの

意義は大きい

10

文献2より引用一部改変

ケアリング

患者の側にいること(presence)

*************

あさひかわ緩和ケア講座あさひかわ緩和ケア講座 20102010

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分かちあい

観察

傾聴

なぐさめ

付き添うこと

コミュニケーョン

共感

カウンセリング

触れること

希望

教育

元気づけること

支え

文献2より引用一部改変

一種の感覚遮断の手段

聴覚 視覚 触覚など 痛覚 外 意識を集

痛みの閾値を上げるケア

3、気分転換(注意転換法)

あさひかわ緩和ケア講座あさひかわ緩和ケア講座 20102010

聴覚、視覚、触覚など、痛覚以外に意識を集

中させることにより痛みの感覚から自己を遮

断する方法

テレビを観る、読書、会話、散歩、リハビリ、

ユーモア、笑い等文献2より引用一部改変

2011/1/13

3

深呼吸法

痛みの閾値を上げるケア

4、リラクセーション

あさひかわ緩和ケア講座あさひかわ緩和ケア講座 20102010

深呼吸法

漸進的筋肉置換法

平和で穏やかな過去のことを想起する

イメージ法など

文献2より引用一部改変

痛みの閾値を上げるケア

音楽は、情動と感情を司る大脳辺縁系に

影響し、精神生理学的反応を生じさせる

5、音楽療法

あさひかわ緩和ケア講座あさひかわ緩和ケア講座 20102010

文献2より引用一部改変

影響し、精神生理学的反応を生じさせる

その場の雰囲気を変える

患者の気分転換になる

痛みのために心を閉ざしている時の一種の

風穴としての作用がある

芳香成分を含む精油を吸入・入浴・マッサージなどによって体内に吸収→不安や緊張を緩和

6、アロマテラピー療法

痛みの閾値を上げるケア

あさひかわ緩和ケア講座あさひかわ緩和ケア講座 20102010

エビデンスレベルはB(行うよう勧められる)

-日本緩和医療学会:がん補完代替医療ガイドライン第1版-

実施前には必ず、患者の希望の有無を確認

実施に当たっては、専門家の指導のもとで行うのが望ましい

文献3より引用一部改変

患者を支えるコミュニケーション

援助者になるためには

1、安心(守秘)

あさひかわ緩和ケア講座あさひかわ緩和ケア講座 20102010

2、軽蔑されない

3、いつも援助者になってくれる

4、わかってもらえる

文献3より引用一部改変

看護師とがん患者のコミュニケーションのための留意点

励まし、説教、説得、説明は無効なことが多いと知っておくこと

不安、抑うつ、という抽象的な情緒に共感しようと思わないこと

あさひかわ緩和ケア講座あさひかわ緩和ケア講座 20102010

2010 JPOS研修セミナー資料より引用一部改変

ようと思わないこと

患者の日常生活、人生を知ること

言語化を丁寧にすること

会話が言葉のキャッチボールになっているかどうかを、心がけること

両価感情の概念を知っておくこと

附録:両価感情(アンビバレンス)

両価感情とは、重要他者に向けられる、相反する感情

患者は医師に対して信頼と同時に不信を

あさひかわ緩和ケア講座あさひかわ緩和ケア講座 20102010

抱いていることが多いことを知っておくことが重要

信頼している医師であるほど、裏切られることを恐れて本音が言えなくなることは珍しくない

2010JPOS研修セミナーより引用一部改変

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4

両価感情が正常で普遍的なものであることをチーム全体が認識しておく

医療者への両価感情(ことに陰性感情)を聴く

患者と医師の関係性確立への助言を行う

附録:医療者(医師)に対する両価感情への対処

あさひかわ緩和ケア講座あさひかわ緩和ケア講座 20102010

→先生はきちんと説明してくれましたか?

→先生に言いたいことがきちんと言えましたか?

医療者への批判的発言に対して、迎合しない。患者の身になってただ聴くことが重要

同様に、防衛的にならないこと。説教は逆効果

チームアプローチが必要になる 2010JPOS研修セミナーより引用一部改変

マッサージ

マッサージとは、軟部組織に対して、手指でさする、揉む、圧迫するなどの刺激を与

あさひかわ緩和ケア講座あさひかわ緩和ケア講座 20102010

えること

マッサージのエビデンス痛みの閾値の上昇、関節可動域の改善、筋肉の緊張緩和、血行やリンパドレナージの改善、リラクセーション効果がある・Gatlin CG et al:When medication is not enough:nonpharma‐

マッサージ

あさひかわ緩和ケア講座あさひかわ緩和ケア講座 20102010

Gatlin CG et al:When medication is not enough:nonpharmacologic management of pain,Clin J Oncol Nurs 2007

・Casslileth BR et al:Massage therapy for symptom control:Outcome study at a major canser center.J Pain Symptom Manage 2004

複数の無作為試験で(RCT)では、10~50分間のマッサージにより、直後の痛みのスコアが有意に下がったという報告がある

マッサージによるリスクは少ないが、リンパ節切除を行った患者、リンパ節転移のある患者、下肢に血栓症や塞栓症のある患者では、患側へのマッサージは行うべきではない

マッサージ

あさひかわ緩和ケア講座あさひかわ緩和ケア講座 20102010

側へのマッサ ジは行うべきではない

骨転移、出血傾向のある患者では強い圧迫や叩打は避ける

マッサージを通して患者とのスキンシップやコミュニケーションを図ることができる

ポジショニング(体位調整)

体位調整は、褥瘡予防だけではなく、安楽の保持、循環や知覚・筋肉・認知を刺激する

あさひかわ緩和ケア講座あさひかわ緩和ケア講座 20102010

激する

痛みが悪化する動作がわかっていれば、その前にレスキューを適宜使用する個々の患者が好む体位を把握する

クッション、枕、バスタオル、スポンジなどを用

ポジショニング(体位調整):コツ

あさひかわ緩和ケア講座あさひかわ緩和ケア講座 20102010

クッ 、枕、 タ 、 な を用いる

体動で痛みが悪化する場合、複数のスタッフで愛護的に身体を動かす

患者に痛みのある部位を把握していること、それに配慮しながら行うことを事前に伝えてから実施する(恐怖感の低減)

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5

• ホットパックや蒸しタオル、温熱毛布などで温めて症状を緩和する方法

罨法:温罨法

温罨法(加温)

あさひかわ緩和ケア講座あさひかわ緩和ケア講座 20102010

痛み 筋緊張

痛みの減弱(?)

関節拘縮

・筋肉の弾力性増加・関節拘縮軽減

・皮膚の血行改善、血管拡張・組織の酸素・栄養供給促進

文献3より引用一部改変

• 冷罨法は、コールドパックやアイス枕で冷やすことで症状を緩和する方法

罨法:冷罨法

冷罨法(冷却)代謝・酸素消費・腫脹・

発痛物質・乳酸の減少酵素活動破壊

あさひかわ緩和ケア講座あさひかわ緩和ケア講座 20102010

文献3より引用一部改変

炎症物質産生炎症血管拡張、透過性亢進 脹

発熱発赤腫脹

痛み痛みの減弱(?)

の破壊

痛みの閾値を上げるケアの症例

がん、骨転移(腰椎1、2、3)

A氏 老年女性

あさひかわ緩和ケア講座あさひかわ緩和ケア講座 20102010

がん、骨転移(腰椎1、2、3)病名・予後告知ありⅩ+4年 再発抗がん治療が奏功せず中止フェンタ二ルパッチを16.8mgに増量するが痛みが増強し緩和ケアチームに紹介がある

痛み他の身体症状

日常生活の支障

身体的な苦痛

社会的な苦痛

全人的苦痛(全人的苦痛(Total painTotal pain))Dame Cicely SaundersDame Cicely Saunders

精神的な苦痛

あさひかわ緩和ケア講座あさひかわ緩和ケア講座 20102010

全人的苦痛不安・怒りいらだちうつ状態

経済的な問題仕事上の問題家庭内の問題

生きる意味への問い死への恐怖自責の念

スピリチュアルな苦痛

骨転移による体動時痛が主である

安静に臥床していれば持続痛はない

寝返りは痛い

5分と座っていられない

身体的な苦痛

あさひかわ緩和ケア講座あさひかわ緩和ケア講座 20102010

モルヒネの持続皮下注射(PCA)にオピオイドローテーション体動前のレスキューの指導緩和的放射線治療神経ブロックコルセット歩行器使用、車いすへの移動などリハビリベッドへの移動動作の前にベッドの高さを調節

社会的な苦痛

フェンタニルパッチは高額

年金で暮らしている

同居している夫は軽度の認知症

あさひかわ緩和ケア講座あさひかわ緩和ケア講座 20102010

モルヒネ(安価)へのローテーションMSWの紹介(限度額適用申請、高額療養費の紹介、家族間の意向調整、療養調整)キーとなる娘さんへのケア

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精神的な苦痛

夜間になると眠れない抑うつ状態夜間せん妄

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手芸が趣味であったため、病院でもできることを話し、道具を家族にもってきてもらう→袋や帽子を作成アロマテラピーを好む。娘さんとともに精油を混ぜたオイルで下肢のマッサージをする

睡眠のリズムを整えるロゼレムTM(メラトニンアゴニスト)が処方され、与薬

スピリチュアルな苦痛

生きていても家族に迷惑をかける役に立てないなら早く死にたい家には帰りたいが・・・・動けないなら無理

あさひかわ緩和ケア講座あさひかわ緩和ケア講座 20102010

時に、 DoingよりもBeing を意図的に行う

ライフレビューに耳を傾けた

医師、看護師ともに、A氏の『退院して家で過ごしたいが家族に迷惑をかけるのは辛い』という心の揺れに寄り添った

A氏は、歩行器を使ってトイレへ歩けるようになったら家へ帰りたいと医師、看護師に希望を話すようにな た

その後の経過

あさひかわ緩和ケア講座あさひかわ緩和ケア講座 20102010

を話すようになった退院に向けて準備→レンタルの電動ベッドや訪問看護など導入退院→自宅療養→緩和ケア病床入院→永眠

あさひかわ緩和ケア講座あさひかわ緩和ケア講座 20102010

便秘のケア便秘のケア

便秘とは、一般的に排便回数や量の減少(3~4日以上排便がないなど)とされているが明確な定義はない

便秘便秘

あさひかわ緩和ケア講座あさひかわ緩和ケア講座 20102010

るが明確な定義はない

排便習慣は個人差が大きいため、これまでの習慣に比べて回数減少、苦痛を伴う場合便秘とみなす

がん患者の多くにみられる

進行がん患者の約50%、末期がん患者の

がん患者の便秘がん患者の便秘

あさひかわ緩和ケア講座あさひかわ緩和ケア講座 20102010

75%にみられる

便秘は、食欲不振、悪心・嘔吐、腹痛、不眠など、他の症状を伴うことがあり、生活の質を低下させる要因のひとつ

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腸閉塞との鑑別

補正が可能な高カルシウム血症、低カリウム血症 甲状腺機能低下症 糖尿病の影響を

がん患者の便秘がん患者の便秘

あさひかわ緩和ケア講座あさひかわ緩和ケア講座 20102010

血症、甲状腺機能低下症、糖尿病の影響を除外することが必要→医師にフィードバック

薬物療法が主体になることが多いが、その効果を高めるためにも非薬物療法を並行して行う

便秘の観察とアセスメント便秘の観察とアセスメント

あさひかわ緩和ケア講座あさひかわ緩和ケア講座 20102010

触れる 視る 聴く

便秘の観察とアセスメント便秘の観察とアセスメント

排便回数、排便量、便の性状、排ガスの有無

腹部の状態(腸蠕動、腹部膨満、便の触知)

排便時の不快感、痛み、残便感の有無

腹部X線やCT

食事

あさひかわ緩和ケア講座あさひかわ緩和ケア講座 20102010

食事摂取量とその内容、水分摂取量

下剤の使用状況

排便に影響する薬剤の使用状況

排泄時の状況

活動状況(ベッド外活動があるか、麻痺の有無など)

排便に対する患者の考え、思い、精神状態

便秘の看護介入のポイント便秘の看護介入のポイント

下剤の内服方法の説明

食事内容や摂取方法の工夫

水分摂取

あさひかわ緩和ケア講座あさひかわ緩和ケア講座 20102010

水分摂取

排便習慣

腸蠕動促進への援助

腹圧を高めるような工夫

適度な運動

便秘の看護介入のポイント便秘の看護介入のポイント

下剤の内服方法の説明

食事内容や摂取方法の工夫

水分摂取

あさひかわ緩和ケア講座あさひかわ緩和ケア講座 20102010

水分摂取

排便習慣

腸蠕動促進への援助

腹圧を高めるような工夫

適度な運動

オピオイド内服時の便秘

オピオイドによる便秘の機序

大腸蠕動運動の抑制

水分が吸収されて便が硬くなる

あさひかわ緩和ケア講座あさひかわ緩和ケア講座 20102010

耐性がつかない・・・便秘の戦略が必要

肛門括約筋の緊張

オピオイド さらに蠕動

運動が低下する

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下剤調節のポイント

下剤の種類(製品名)

主な効果 ポイント

便の硬さの調節

浸透圧性下剤・ラクツロース®・マグミット®

便を軟らかくする

硬い時は増やす、緩い時は減らす、ということを指導し患者自身が

あさひかわ緩和ケア講座あさひかわ緩和ケア講座 20102010

など 調節できるようにする

腸の運動の調節

刺激性下剤・プルゼニド®・アローゼン®・ラキソベロン®

など

腸蠕動を亢進させる

一日の排便量、排便間隔によって調節する普通~軟便が*2~3日に1回はでることを

目標に調節する(*患者自身と具体的に話し合う)

便秘の看護介入のポイント便秘の看護介入のポイント

下剤の内服方法の説明

食事内容や摂取方法の工夫

水分摂取

あさひかわ緩和ケア講座あさひかわ緩和ケア講座 20102010

水分摂取

排便習慣

腸蠕動促進への援助

腹圧を高めるような工夫

適度な運動

温罨法

マッサージ:「の」の字

つぼの刺激:便秘点、大腸愈など

腸蠕動促進への援助

あさひかわ緩和ケア講座あさひかわ緩和ケア講座 20102010

臍より1横指左、そこから3横指下が便秘点

第4、第5腰

椎棘突起の間の外側2横指のところが大腸愈

文献9より引用・改変

あさひかわ緩和ケア講座あさひかわ緩和ケア講座 20102010

呼吸困難のケア呼吸困難のケア

呼吸困難の定義「呼吸時の不快な感覚」という主観的な症状

呼吸不全の定義

呼吸困難の定義

あさひかわ緩和ケア講座あさひかわ緩和ケア講座 20102010

「酸素分圧(PaO2)≦60Torr」という客観的な病態

呼吸困難

呼吸不全

なぜ「きく」ことが大切か1、呼吸困難は主観的な症状→本人にしかわからない

2、症状の他者評価は自己評価とは異なる

3、「息苦しい」という表現だけが呼吸困難ではない

呼吸困難の訴えをきく

あさひかわ緩和ケア講座あさひかわ緩和ケア講座 20102010

3、 息苦しい」という表現だけが呼吸困難ではない

例:息が吸えない、息が吐ききれない

空気が薄い、空気が足りない、胸が重い

切ない、身のおきどころがない

患者の訴えをきくこと(言語的・非言語的)が

マネジメントの第一歩

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呼吸困難のマネジメントのアルゴリズム

呼吸困難の訴え

治療可能低酸素 モルヒネ 抗不安薬 ステロイド

NO NO

あさひかわ緩和ケア講座あさひかわ緩和ケア講座 20102010

治療可能な原因?

低酸素 モルヒネ 抗不安薬 ステロイド

原因治療 酸素療法

非薬物療法

YesYes

(American Society of Clinical Oncology Curriculum  algorism 改編)

呼吸困難の非薬物療法

呼吸困難の治療を 初の段階から支えていくのが非薬物療法

あさひかわ緩和ケア講座あさひかわ緩和ケア講座 20102010

非薬物療法

①環境の整備

②呼吸理学療法

③精神面のケア

環境調整環境調整

•• 低温低温、、気流気流((外気外気、、うちわうちわ、、扇風機扇風機))

•• 酸素をしながら動酸素をしながら動ける部屋の整備ける部屋の整備、、

ナ スコ ルナ スコ ル 薬を薬を

酸素の使用酸素の使用

•• 酸素療法の使用酸素療法の使用法を指導し不快法を指導し不快感に対処感に対処

•• 酸素吸入中は乾酸素吸入中は乾

呼吸困難の非薬物療法:①環境の整備

あさひかわ緩和ケア講座あさひかわ緩和ケア講座 20102010

•• ナースコールナースコール・・薬を薬を手元に手元に

姿勢の工夫姿勢の工夫

•• 起座位起座位

•• 機能している肺を機能している肺を上にする上にする

燥するので燥するので、、いついつでも水分を取れるでも水分を取れるようにするようにする

適応(全身状態が比較的良好で、予後予測2~3カ月以上)について検討し、口すぼめ

呼吸困難の非薬物療法:②呼吸理学療法

あさひかわ緩和ケア講座あさひかわ緩和ケア講座 20102010

呼吸や、腹式呼吸を指導するリラックス効果もあるただし、呼吸困難が強い場合は、かえって呼吸困難を助長させることにつながりかねないので、無理をしない

呼吸リハビリテーション呼吸リハビリテーション

酸素療法

薬物療法

人工呼吸療法

呼吸理学療法

栄養管理

あさひかわ緩和ケア講座あさひかわ緩和ケア講座 20102010

排痰法

呼吸介助法

胸郭可動域訓練

呼吸筋訓練

日常生活援助

リラクセーション

呼吸法訓練

リラクセーションとは

呼吸補助筋群のマッサージ

頚部、背部のマッサージはお手軽にできかつ効果がある呼吸補助筋群の緊張を低下呼吸パターンを改善

あさひかわ緩和ケア講座あさひかわ緩和ケア講座 20102010

呼吸パタ ンを改善

菱形筋

僧帽筋

大胸筋

胸鎖乳突筋

斜角筋

脊柱起立筋腰方形筋

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リラクセーションの方法

楽な体位(ポジショニング)

①前傾姿勢で上肢を支持すると頚部の吸

なぜ起座呼吸で呼吸困難が改善するのか??

あさひかわ緩和ケア講座あさひかわ緩和ケア講座 20102010

気補助筋の吸気運動が有効に働く②前傾坐位により腹圧が上昇し、横隔膜

の機能が改善する③臥位に比べ静脈還流が減少し、肺うっ

血が減少する

呼吸訓練

口すぼめ呼吸

口をすぼめて、息をゆっくり呼出することにより 細気管支に圧を与え 気道の閉塞を改善

あさひかわ緩和ケア講座あさひかわ緩和ケア講座 20102010

り、細気管支に圧を与え、気道の閉塞を改善する呼吸法

日常生活における呼吸法

「1.2」で息を吸い「3.4.5.6」で吐く

呼吸訓練

口すぼめ呼吸が呼吸をらくにするメカニズム

普通の呼吸

肺胞

あさひかわ緩和ケア講座あさひかわ緩和ケア講座 20102010

普通の呼吸

口すぼめ呼吸

つぶされる細気管支

口すぼめによって細気管支に圧がかかるので、

容易につぶされない

よかった~

文献9より引用一部改変

呼吸困難に伴う不安、恐怖を理解し、

患者への関心を寄せ、可能な限りそばに付

呼吸困難の非薬物療法:③精神面のケア:③精神面のケア

あさひかわ緩和ケア講座あさひかわ緩和ケア講座 20102010

患者 の関心を寄せ、可能な限りそばに付き添う

頓用の抗不安薬の使用

睡眠の確保

リラックス・気分転換

X+2年がん、多発肺転移、多発リンパ節転移、

呼吸困難ケア呼吸困難ケアのの症例症例

C氏男性C氏男性

あさひかわ緩和ケア講座あさひかわ緩和ケア講座 20102010

多発肝転移増大

倦怠感と呼吸困難感が増強し入院

労作時息切れがあるが、SPO290%代後半

薬物療法:①モルヒネの持続注入に変更

②抗不安薬の使用で眠りを確保

非薬物療法:

呼吸困難ケア呼吸困難ケアの症例の症例::C氏の入院時のケアC氏の入院時のケア

あさひかわ緩和ケア講座あさひかわ緩和ケア講座 20102010

非薬物療法:

①うちわであおぐ、部屋の換気、酸素療法、清潔

はストレッチャー入浴実施

②妻や看護師が傍にいることを望み、背部、頸部

の呼吸補助筋のマッサージを実施

③パニックコントロールの口すぼめ呼吸説明

2011/1/13

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がん性リンパ管症輸液減量(500ml/日以下)、ステロイド使用口腔乾燥への対処:口腔ケア 保湿

呼吸呼吸困難のケアの困難のケアの症例:症例:C氏のがん性リンパ管症で増悪時のケアC氏のがん性リンパ管症で増悪時のケア

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口腔乾燥への対処:口腔ケア、保湿持続的鎮静:呼吸困難のコントロール困難となり

医療チームで鎮静の適応を検討本人より眠らせてほしいと希望があり、家族の承諾もあったため実施翌日永眠

Take Home Message!Take Home Message!

薬物療法以外の疼痛マネジメントに有効なケアは、日常的に自然と看護師が行っているものが多い

ビデ ベ 高 疼痛緩和技術は

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エビデンスレベルの高い疼痛緩和技術はほとんどないのが現状

個々の患者に合わせて心地よいと思うケアを提供することが痛みの閾値を上げ、緩和することに役立つため、意識的、意図的に行う

Take Home Message!Take Home Message!

便秘は、がん患者の多くに見られ、生活の質を低下させる要因の一つである

便秘は、排便の有無を観察するのみではなく、便秘を包括的にアセスメントし、薬物療法と非薬物

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秘を包括 ア 、薬物療法 非薬物療法を並行し、症状を緩和することが重要

呼吸困難は、がんの種類や病期を問わず頻度が高く、また も緩和困難な症状の一つである

呼吸困難は、患者の主観的な症状である。不安や死の恐怖につながりやすいため訴えをきき、十分な説明と保証を与えることが重要である

参考文献参考文献1.恒藤 暁・内布敦子(編):系統看護学講座 別巻10 緩和ケア.20082.高橋 美賀子(編):がん患者のペインマネジメント.日本看護協会出版会

20073. 林 章敏他(編):がん性疼痛ケア完全ガイド.照林社.20104.城ヶ端初子(編):やさしい看護理論②ケアとケアリング.MCメディカ出

版.20075.平成22年度 日本サイコオンコロジー学会(JPOS) 研修セミナー 看護

師のためのがん患者とのコミュニケーション・スキル・トレーニング・セミナー

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師のためのがん患者との ミ ケ ション スキル トレ ング セミナ

6.OPTIM 「緩和ケア普及のための地域プロジェクト」(厚生労働省研究 がん対策のための戦略研究):http://gankanwa.jp/tools/pro/index2.html

7.小山富美子他(編):今日からできる疼痛ケア.がん看護1・2月増刊号.南江堂.2010

8.川村三希子他:症状マネジメント~疼痛以外の患者の訴えに看護師ができること~.がん看護3・4月号.南江堂.2010

9.寺澤捷年他:JJNブックス 絵でみる指圧・マッサージ.医学書院.2009

10.並木昭義(監):呼吸理学療法の第一歩.南江堂.2006

11.田中桂子(監修):がん患者の呼吸困難マネジメント.照林社.2004.