ｅスポーツとは

　

ｅスポーツとは「エレクトロニック・スポ

ーツ」の略で、広義には、電子機器を用いて行

う娯楽、競技を指す。スポーツというと体を

動かす運動をイメージしがちだが、工業社会

に生まれたモータースポーツと同様に情報社

会で生まれた新しいスポーツで、囲碁や将棋

のようなマインドスポーツの１種と捉えるこ

とができる。

　

ｅスポーツという言葉は様々なジャンルの

総称で、陸上競技に１００ｍ走や走り幅跳び、

砲丸投げなどといった個別の競技があるのと

同様にｅスポーツにも多くの競技が存在する

（左ページ表参照）。

　今、世界的に注目される「e スポーツ」。その市場規模や競技人口は毎年伸び続け、近い将来にオ

リンピック正式種目入りの可能性も取り沙汰されている。

　本特集では日本でも広がりを見せる e スポーツについて、これまでの歴史やスポーツとしての特

徴を探りつつ、日本各地での取り組みを紹介することを通じて、地域活性化の新たなコンテンツとし

ての可能性について考えてみたい。

ｅスポーツの特徴

ボーダーレス

　

年齢や性別による体力差や身体的なハンデ

ィキャップ、言語、国籍などの様々な壁を越

えて楽しむことができる。

新しい競技環境

　

通信環境とゲーム機さえあれば、いつでも、

新しいスポーツのカタチ～「eスポーツ」の展望を探る～

特集

2020.02 04

eスポーツの歴史

1980年代 世界中で数多くのコンピューターゲームが誕生し、各地で大会が開催されるようになった。

1990年代 日本では「ストリートファイター」をはじめとした格闘ゲームがブームに。欧米ではゲームプレイヤーの

プロ化が始まる。

2000年代 「eスポーツ 」という言葉が使われ始め、大規模な世界大会が開催されるように。

2006年 マカオで開催される第2回アジア室内競技大会においてeスポーツが正式種目として採用される。

2011年 日本eスポーツエージェンシー株式会社主催による日本初となるeスポーツの全国大会が開催される。

2015年 一般社団法人 日本eスポーツ協会（JeSPA）設立

一般社団法人e-sports促進機構設立

2016年 一般社団法人日本プロｅスポーツ連盟設立

※2017年2月一般社団法人日本ｅスポーツ連盟に名称変更

2018年 一般社団法人日本ｅスポーツ連合設立

ジャンル 概　要 主なタイトル

シューター銃などで撃ち合うシューティングゲーム。一人称視点で行う「FPS」、第三者視点で行う「TPS」に細分化される。

フォートナイト、コールオブデューティーなど

格闘ゲームキャラクターを操作して相手と戦うゲーム。日本製のタイトルが多く、日本人が多く活躍するジャンル。

ストリートファイター、大乱闘スマッシュブラザーズなど

パズルゲーム パズルの要素を中心とするゲーム。 ぷよぷよ、パズル&ドラゴンズなど

MOVA（マルチ・バトル・オンライン・アリーナ）

チームを組んで、相手の陣地を攻め落とすゲーム。 リーグオブレジェンド、Dota2など

DCG（デジタル・カード・ゲーム）データ化されたカードを用いてプレイするカードゲーム。

ハースストーン、シャドウバースなど

スポーツゲームサッカーや野球、レースなどのスポーツゲームで、初心者にもわかりやすく観戦しやすい。

ウイニングイレブン、グランツーリスモなど

RTS（リアル・タイム・ストラテジー）リアルタイムに行われる戦略ゲームで、指揮者としてキャラクターを操作する。

スタークラフト、ワークラフトなど

どこでも、誰とでも競技することができる。

また、競技会場の広さなどの制約も少なく、

小さな大会から大きな大会まで柔軟に開催す

ることができる。

多様な観戦環境

　

多くのスポーツと同様、観戦することもｅ

スポーツの楽しみ方のひとつだ。特にｅスポ

ーツはその性質上、インターネット配信との

親和性が高く、スキマ時間にスマートフォン

で観戦するなど、観戦者のニーズに合った手

段で気軽に楽しむことができる。加えて、観

戦者も情報を発信できるため、観戦するファ

ン同士の交流や自分が応援する選手と直接や

りとりできるなど、コミュニケーションの幅

が広い。

世界でのｅスポーツの現状

　

総務省が２０１７年に発表した調査による

と、ｅスポーツの市場規模は世界全体で

７００億円、視聴者数は３億３，５００万人

にのぼる。さらに市場は加速度的に成長して

おり、２０２１年には市場規模は１，７００

億、視聴者数は５億５，０００万人を超える

とされている。

eスポーツの主な競技（ジャンル ）

2020.0205

社団法人日本ｅスポーツ連盟が合併し一般社

団法人日本ｅスポーツ連合（ＪｅＳＵ）が設

立され、プロライセンスや賞金付き大会の枠

組みが整備された。

　

２０１９年には、茨城国体の文化プログラ

ムとして「全国都道府県対抗

ｅスポーツ選手

権

２０１９

ＩＢＡＲＡＫＩ」が開催され、地

方自治体主催による初のｅスポーツ全国大会

として大きな話題となった。大会にはサッカ

ーゲームの「ｅＦｏｏｔｂａｌｌ

ウイニング

イレブン

２０２０」、レースゲームの「グラ

ンツーリスモＳＰＯＲＴ」、パズルゲームの

　

２０１９年７月、人気ゲーム「フォートナ

イト」の運営元であるＥｐｉｃ

Ｇａｍｅｓが

主催する世界大会「Ｆｏｒｔｎｉｔｅ

Ｗｏｒ

ｌｄ

Ｃｕｐ」が開催された。世界各地で開催

されたオンライントーナメントの参加者は

４，０００万人を超えるとされ、予選を勝ち

抜いた各国の選手がアメリカのニューヨーク

州に集結した。驚くべきはその賞金額で、ソ

ロ部門、デュオ部門の優勝者にはそれぞれ

３００万ドル（約３億３，０００万円）、大会

の賞金総額は３，０００万ドル（約33億円）

を超えた。会場には世界中から約２万人のフ

ァンが訪れ、試合のライブ配信視聴者数は

２３０万に達した。

「ぷよぷよｅスポーツ」の３タイトルを採用。

全国各地で実施された予選大会への参加者総

数は約１５，０００人、つくば国際会議場で

行われた本選には予選を勝ち抜いた約６００

人が集結し、熱戦を繰り広げた。

　

民間によるｅスポーツへの取り組みも活発

だ。２０１８年５月、岡山駅前商店街では新

たな顧客層を取り込むため、アーケードでの

イベントにｅスポーツを取り入れた。当日は

プロ選手と一般の方との対戦会などで大いに

盛り上がり、継続的なイベントに発展してい

る。他にも同商店街は、岡山県ｅスポーツ連 全国都道府県対抗 ｅスポーツ選手権 2019 IBARAKIの競技風景

日本におけるｅスポーツの広がり

　

世界的にみると出遅れていた日本のｅスポ

ーツは２０１８年、大きく発展した。２０１７

年に３億７，０００万円だった市場規模は、

48億３，０００万円と実に10倍以上の伸びを

見せたほか、各種メディアで報道される機会

も増加したことなどから、社会的な認知も大

きく進んだ。同年、日本におけるｅスポーツ

３団体、一般社団法人日本ｅスポーツ協会、

一般社団法人ｅ―ｓｐｏｒｔｓ促進機構、一般

2020.02 06

ぷよぷよｅスポーツin上毛新聞社 ランキングポイント大会

岡山駅前商店街のイベントの様子

｢全 国 都 道 府 県 対 抗 e ス ポ ー ツ 選 手 権 2019 IBARAKI｣の群馬県予選

　

最近「ｅスポーツ」という言葉を目にす

る機会が増えて、広く世間に知られる言葉

となりました。流行語大賞２０１８でトッ

プテン入りし、茨城国体の文化プログラム

で実施された頃から、全国的に広まると思

っていましたが、想像以上のスピードで認

知されてきている状況です。

　

その要因としては、年齢、性別や障がい

などにかかわらず一緒に参加できることで

す。また、言葉や地域、文化の壁を超えて

参加できることから、ｅスポーツを通じて

地域経済の活性化を期待することができま

す。多くの人達がかかわることで、観光・

教育・福祉や医療等といった様々な業界へ

の波及・連携を持てるのです。

　

群馬県ｅスポーツ連合は、ｅスポーツを

介して、多くの人達が集まり、活動するお

手伝いを考えています。その具体的な取り

組みとして、ｅスポーツ競技大会の企画・

運営や講習会の開催、県内のｅスポーツ選

手の発掘や育成及び競技力の向上を目指し

て活動していきます。

　

群馬県が日本を代表するｅスポーツのモ

デルケースとなることを目指し、群馬県か

ら国内・海外へ広く発信させ、地域に貢献

していきたいと考えています。

ビジネスチャンスとしてのｅスポーツ

　

ｅスポーツが普及することは、ゲーム業界

やグッズ関連事業、イベント設営業界など地

元の観光産業や新しいビジネス展開につなが

るなどの波及効果が期待できる。

　

また、ｅスポーツの競技年齢は比較的若い。

若年層をターゲットとする企業や、デジタル

に親しんだ若手を採用したい企業にとって、

ｅスポーツの大会やイベントへ関与していく

ことは、大きなチャンスとなり得る。

　

さらには、従来のイベントでは呼び込めな

かった新たな属性の人々を外から集客するこ

とで、地域の活性化にも期待が持てる。

合と連携しながら地場の企業と一緒にｅスポ

ーツの勉強会や様々なイベントを開催してい

る。

COMMENT 群馬県でのeスポーツの現状

　群馬県内でも、ｅスポーツは盛

り上がりを見せており、大小様々

な大会が開催されている。

　こうした活動を支援すべく、

2019年５月に群馬県ｅスポーツ

連合が発足し、各種大会運営や選

手の活動を支援している。群馬県eスポーツ連合会長 平方 亨

2020.0207

ｅスポーツにつながるコミュニティづくり

　

ｅスポーツの盛り上がりを一過性で終わら

せず地域の活性化につなげていくためには、

大規模な大会の誘致だけでなく、地域のゲー

ム好きが集まる小規模なコミュニティを根付

かせていくことも重要だ。

　

実はｅスポーツが広く認知される以前から

行われている「ＬＡＮパーティ」というイベ

ントがある。ＬＡＮパーティとは参加者が自

身のゲーム機やパソコンを持ち寄り、思い思

いにゲームを楽しむイベント。元々はパソコ

ンゲームが主流の海外の文化であり、家庭用

ゲーム機が中心の日本ではなじみの薄いイベ

ントだったが、ネットワ

ーク対応ゲームの普及な

どにより徐々に広がって

きた。最近では２０１９

年に、大分県別府市が大

分県ｅスポーツ連合と共

催で「別府おんせんＬＡ

Ｎ」を開催して話題とな

った。

　

前橋でも前掲の群馬県

ｅスポーツ連合が主催す

る「ＬＡＮらん♪群馬」

が開催されるなど、徐々にではあるが着実に

地域に根付いてきている。

　

そうしたコミュニティのなかからｅスポー

ツの選手やチームが育ち、地域がその活動を

応援していくサイクルを作ることが、ｅスポ

ーツの普及、そして地域の活性化につながっ

ていく第一歩ではないか。

前橋におけるｅスポーツの可能性

　

前橋市は２０１８年５月に「前橋５Ｇ等Ｉ

ＣＴ利活用検討推進協議会」を起ち上げ、高

速、大容量、多数接続を実現する第５世代移

動通信技術「５Ｇ」の環境整備を進めている。

ｅスポーツ大会の開催にあたって通信環境は

重要なポイントだ。特に大人数が同時接続す

る場合など、大会中に通信が不安定になるな

どのトラブルが珍しくない。５Ｇによって通

信環境が安定すれば運営コストの削減にもつ

ながり、大会開催のハードルを下げることが

できる。

　

また、当所が進めるまちづくりのテーマ「Ｇ

ＲＥＥＮ

&

ＲＥＬＡＸ構想」には「森の中の

まちをつくる」というコンセプトがある。緑

に囲まれた中で最新のデジタルコンテンツを

楽しむという体験もおもしろい。そこにＩＴ

関連企業やクリエイティブな人材が集まり、

既存企業や市民と交流することで新たな産業

が生まれる原動力となり、さらには文化や教

育、福祉などに新しい価値を創造し、より良

い地域社会となることが期待できる。他にも、

例えば物語の舞台として赤城山が登場するア

ニメ「頭イニシャル

文字Ｄ」などの既存のコンテンツと

ｅスポーツを絡めていくなど観光面でも様々

な展開が考えられる。

　

ｅスポーツは地域にとってこれまでにない

新しい形のコンテンツであり、今ある地域資

源と掛け合わせていくことで新たな可能性が

見えてくる。そこに地方創生のヒントがある

かもしれない。

参加者は思い思いにゲームを楽しんでいる

群馬県eスポーツ連合主催のLANパーティの様子

2020.02 08