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1

䣕うごめく肌䣖

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2

䣗登場人物一覧䣘

尾花圭子(

30)

䢧䢧電報堂に派遣社員として勤めてい

る䣎平凡な外見䣎

大沢俊輔(

32)

䢧䢧電報堂の正社員䣎容姿端麗で頭脳

明晰䣎

五十嵐

正(

47)

䢧䢧警視庁の刑事䣎階級は警部補䣎

野田知也(38)

䢧䢧母親と二人で暮らす独身男性䣎町

工場の工員䣎

田代美樹(

28)䢧䢧電報堂の社員䣎大沢の彼女䣎美人䣎

野田佐知子(

62)䢧䢧野田の母親䣎強迫性障害を患䣬

ている䣎

土屋慎一(

44)

䢧䢧圭子の交際相手䣎

石塚晃一(

30)

䢧䢧警視庁の刑事䣎階級は巡査部長䣎

西(

42)

䢧䢧五十嵐と関係しているヤクザ䣎

刑事A

検視官

西の手下

美樹を発見する中年男

レストランのウエイタ䤀

野田の上司

土屋の両親

遺品整理業者

堀川憲司(

死体)

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3

○圭子のマンシ䣼ン・圭子の部屋䥹早朝䥺

ベ䣹ドで目を覚ます尾花圭子(

30)

䣍十

人並みの凡庸な容姿の女である䣎

圭子䣍鳴り出した目覚まし時計を瞬時

に止め䣍起き上がる䣎

×

×

×

手の込んだ色とりどりの昼食用弁当を

作䣬ている圭子䣎

その合間に䣍朝食のト䤀ストを囓る圭

子䣍唇についた苺ジ䣺ムを舌で舐める䣎

×

×

×

ス䤀ツ姿で化粧をしている圭子䣍薄め

の地味な化粧である䣎

×

×

×

ベ䤀ト䤀ヴ䣷ンの第九をハミングしな

がら䣍ネイルを施している圭子䣎

×

×

×

バ䣹グを手に䣍部屋を出て行く圭子䣎

○電車・車中

混み合䣬た車中で䣍吊り革に掴まり䣍

携帯の画面を見つめている圭子䣎

その䣕O

SAWA_N

o.10

䣖というアカウン

ト名のツイ䣹タ䤀画面には䣍絵画や小

説䣍家具やコ䤀ヒ䤀など多岐に渡る趣

味についての書き込み䣎

圭子が顔を上げると䣍前の座席に口を

開けたまま寝ている中年男䣎

暫くジ䣹と見つめ䣍クスリと笑う圭子䣎

○電報堂・本社・ロビ䤀

大手広告代理店・電報堂の広々とした

ロビ䤀である䣎

社員らが行き交う中䣍ロビ䤀を横切䣬

ていく圭子䣎

○電報堂・営業部オフ䣵ス

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4

多くの社員らが忙しなく働いている䣎

隅のデスクで䣍書類作成䣍電話対応な

どの仕事をこなしている圭子䣎テキパ

キと無駄なく䣍手際が良い䣎

×

×

×

昼䣍一人䣍手弁当を食べている圭子䣎

䣓今日も豪華だねえ䣔と中年の社員が

圭子の弁当を覗き込む䣎

微笑んで返す圭子䣎

×

×

×

デスクワ䤀クに勤しんでいる圭子䣎

営業部長の声䣓はい䣍みんな䣍注目!䣔

声に反応し䣍そちらを窺う圭子䣎

長䣓アジア広告大賞の内定通知が来た!䣔

どよめく一同䣎

長䣓驚くなよ䣎いや䣍驚けよ䣎メデ䣵ア

ミ䣹クス部門!大賞!ウチが獲䣬たぞ!䣔

フロアに歓声が上がる䣎䣓誰だ䣔䣓どの

企画だ䣔と䣍どよめきが広がる䣎

長䣓大沢!おめでとう!䣔

さらに大きな歓声と拍手が巻き起こり䣍

その渦の中心にいた男䣍大沢俊輔(

32)

が立ち上がる䣎

周囲の人間に手荒く讃えられ䣍歓喜の

雄叫びを上げて興奮している大沢䣎

拍手をしながら圭子䣍そんな大沢の姿

を上気した表情で見つめている䣎

○電報堂・営業部オフ䣵ス(

夕)

荷物をまとめ䣍退社する圭子䣎

帰り際䣍ふと圭子が視線を送䣬た先に

は䣍喫煙所で他の社員らに囲まれて煙

草を吸䣬ている大沢の姿が䣎

○東京・実景(

夕䣢夜)

東京に夜の帳が下りる䣎

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○圭子のマンシ䣼ン・圭子の部屋(

夜)

帰䣬てくる圭子䣎

×

×

×

ス䤀ツ姿から私服に着替える圭子䣎

×

×

×

鏡に向か䣬て化粧をしている圭子䣎

○都内・路上・タクシ䤀の車内(

夜)

窓外を䣍数多の光の粒が流れていく䣎

車窓から街の様子を眺めている圭子䣎

その容姿は䣍昼間とは打䣬て変わ䣬て

別人のような艶やかさである䣎

○土屋のマンシ䣼ン・表(

夜)

停ま䣬ているタクシ䤀のトランクから

荷物を下ろし䣍マンシ䣼ンに入る圭子䣎

○土屋のマンシ䣼ン・土屋の部屋(

夜)

貧相な男の一人暮らしである事を感じ

させる室内䣎その中で䣍ダイニングテ

䤀ブルにテ䤀ブルクロスや食器が整然

とセ䣹テ䣵ングされている䣎

×

×

×

キ䣹チンでは七輪の上の鍋で䣍ビ䤀フ

シチ䣻䤀が煮えている䣎

その傍ら䣍第九をハミングしながら錠

剤を擂り鉢で擂䣬ている圭子䣎

滴を垂らしているコ䤀ヒ䤀メ䤀カ䤀䣎

×

×

×

擂䣬た白い粉を小袋に詰める圭子䣎

と䣍玄関の扉が開く音が䣎

圭子が玄関を覗くと䣍土屋慎一(

44)

が帰䣬てきている䣎部屋の様子に似つ

かわしい䣍どこか冴えない感じの男だ䣎

子䣓おかえりなさい䣔

曖昧な笑顔を浮かべる土屋䣎

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×

×

×

向かい合䣬てビ䤀フシチ䣻䤀を食べて

いる圭子と土屋䣎

土屋䣍ガツガツクチ䣺クチ䣺とお世辞

にも綺麗とは言えない食べ方䣎

子䣓どうですか?お味䣔

土 屋䣓䥹頷いて䥺ウマいよ䣔

圭 子䣓䥹ニ䣹コリ笑䣬て䥺良か䣬た䣔

屋䣓こないだ圭子が作䣬たヤツ何だ䣬け䣍

アレ䣍変な魚煮たの䣎あれより全然ウマい䣔

苦笑する圭子䣎

土屋䣍急に立ち上がると䣍書類鞄から

分厚い銀行の封筒を取り出し䣍圭子の

前に置く䣎

屋䣓これ䣍オヤジさんの䣍病院の䣔

申し訳なさそうに頭を下げ䣍中を検め

る圭子䣎

子䣓ありがとうございます䢧䢧これでや

䣬と䣍父の医療費が支払えます䣎何もかも䣍

慎一さんのお陰です䣎本当に䢧䢧ありがと

うございます䣔

屋䣓親䣍何か言䣬てた?䣔

子䣓ええ䣎二人とも䣍慎一さんにとても

感謝していて䣎早く慎一さんに会わせろ䣬

て䣍相変わらず䣔

屋䣓そろそろ会いたいんだけど䣍俺も䣎

駄目なの?いつ会えるの?䣔

子䣓そうですね䢧䢧暫くは父の容態が䣍

や䣬ぱり䤀䤀䣔

屋䣓でもさ䣍オヤジさん生きてる内にさ䣍

結婚の報告してあげた方が良いじ䣭ん䣔

子䣓䢧䢧そうですね䣎じ䣭あ䣍今度䣍慎

一さんのお仕事がお休みの時に䣍一緒に行

きまし䣯うか䣔

納得したように頷くと䣍またガツガツ

と食べ始める土屋䣎

ニ䣹コリと笑う圭子䣎

×

×

×

リビングで立䣬たままセ䣹クスしてい

る圭子と土屋䣎

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土屋䣍圭子に後ろから激しく腰を打ち

付けている䣎

激しい喘ぎ声を上げる圭子䣍しかしそ

の目は䣍無感情に黒く沈んでいる䣎

×

×

×

キ䣹チンの圭子䣍魔法瓶にコ䤀ヒ䤀を

注ぎ䣍白い粉の小袋を取り出すと䣍粉

を魔法瓶に入れる䣎

トイレから水を流す音がして䣍土屋が

出て来る䣎

圭子䣍魔法瓶に蓋をし䣍バ䣹グに入れ

て玄関に向かう䣎

玄関の土屋䣍圭子に荷物をまとめた袋

を見せ䣍

屋䣓練炭䣍これで足りる?䣔

子䣓ええ䣍十分です䣔

○土屋のマンシ䣼ン・駐車場䥹夜䥺

荷物をトランクに乗せ䣍車に乗る圭子

と土屋䣎

運転席に圭子䣍助手席に土屋䣎

屋䣓俺䣍たぶん途中で寝るわ䣔

子䣓大丈夫ですよ䣎私䣍運転好きですし䣍

慎一さん䣍お疲れですから䢧䢧あ䣍そうだ䣔

圭子䣍魔法瓶を取り出し䣍カ䣹プにコ

䤀ヒ䤀を注ぐ䣎

子䣓表参道に䣍コ䤀ヒ䤀が凄く美味しい

喫茶店があ䣬て䣎そこの豆で煎れたんです䣎

どうぞ䣔

土屋にカ䣹プを差し出す圭子䣎

屋䣓え䣍寝かさないつもり?䣔

困䣬たように微笑む圭子䣎

土屋䣍カ䣹プを受け取䣬て一口啜り䣍

屋䣓うん䣍美味い䣔

圭子䣍車のエンジンをかける䣎

屋䣓圭子䣔

振り向く圭子䣎

屋䣓この旅行終わ䣬たら䣍二人で住む家䣍

探すから䣔

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子䣓䢧䢧そうですね䣎探しまし䣯う䣍一

緒に䣔

照れたように俯く土屋䣎

二人を乗せた車が発進する䣎

○道路・路上・車中䥹夜䥺

空にな䣬たカ䣹プ䣎

鼾をかいて眠䣬ている土屋䣎

醒めた目で前方を見据え䣍運転してい

る圭子䣎

○湾岸地帯・空き地

二人が乗䣬てきた車が停ま䣬ている䣎

圭子䣍助手席で眠䣬ている土屋の体を䣍

後部座席に移動させようとしている䣎

×

×

×

トランクから䣍七輪と練炭䣍ガムテ䤀

プなどを取り出す圭子䣎圭子䣍トラン

クに入䣬ている自分の荷物を一瞥する

が䣍すぐに閉める䣎

×

×

×

車内をガムテ䤀プで目張りする圭子䣎

×

×

×

助手席の足下に据えられた七輪と䣍そ

の中の練炭䣎

圭子䣍睡眠薬と水のペ䣹トボトルを取

り出すと䣍土屋の傍にそれを置く䣎

圭子䣍土屋のセカンドバ䣹グを検め䣍

土屋の財布から1万円だけ残して札を

抜き取る䣎

眠䣬ている土屋の顔を凝視する圭子䣎

眠䣬たままニヤニヤと笑う土屋䣎

子䣓気持ち悪い䣔

×

×

×

練炭に火が点けられる䣎

×

×

×

足早に空き地を去䣬ていく圭子䣎

車内に䣍白い煙が充満し始める䣎

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○タイトル䣕うごめく肌䣖

○東京・実景䥹日替わり・早朝䥺

○湾岸地帯・空き地䥹早朝䥺

所轄の刑事らが屯している前に黒パト

が停まり䣍刑事の五十嵐正䥹47䥺と

石塚晃一䥹32䥺が降りてくる

所轄の刑事らが五十嵐を取り囲み䣍䣓ご

苦労様です䣔と挨拶する䣎軽く頷いて

返しつつ䣍早足に歩き出す五十嵐䣎

五十嵐らが向かう先には圭子と土屋が

乗䣬ていた車が停ま䣬ており䣍その周

りを鑑識や消防が取り囲んでいる䣎

×

×

×

虚空を見つめている土屋の死体䣎検分

している五十嵐䣍七輪䣍練炭䣍睡眠薬

の箱䣍ペ䣹トボトルに視線を向ける䣎

土屋の死体の傍から䣍トランクの方へ

回り込む五十嵐䣎

トランクの中には䣍圭子が残してい䣬

た荷物がある䣎

○電報堂・営業部オフ䣵ス

オフ䣵スにいる社員達にコ䤀ヒ䤀を配

䣬ている圭子䣎

圭子䣍大沢のデスクに向かい䣍コ䤀ヒ

䤀を差し出す䣎

子䣓どうぞ䣔

沢䣓䥹ろくに気を払わず䥺サンキ䣻䣔

そのまま行こうとする圭子䣎

大沢䣍コ䤀ヒ䤀を一口飲んで䣍

沢䣓ねえ䣍これ䣍どうしたの?䣔

子䣓䥹振り返り䥺あ䣍え䣬と䢧䢧自宅用に

豆を買䣬たんですけど䣍ち䣯䣬と買いすぎ

て䣎皆さんに飲んでいただこうと思䣬て䣔

沢䣓旨いね䣎どこで買䣬たの?䣔

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子䣓表参道です䣔

沢䣓ケヤキ珈琲?䣔

子䣓え!?ご存じなんですか?䣔

沢䣓うん䣎もしかしてコレ䣍ジ䣺䤀マン

ブレンド?䣔

子䣓うわあ䣍凄い!よく分かりましたね!䣔

大 沢䣓君もあそこのコ䤀ヒ䤀好きなんだ䣎

え䣬と䤀䤀䣔

子䣓䥹笑䣬て䥺尾花です䣔

沢䣓䥹苦笑し䥺尾花さん䣎ゴメンね䣎派遣

さん䣍よく入れ替わるから䣔

子䣓いえ䣍気にしないでください䣔

沢䣓䥹取り繕うように䥺いいね䣍それ䣔

子䣓え?䣔

沢䣓そのネイル䣎可愛いじ䣭ん䣔

子䣓え䢧䢧あ䣍ありがとうございます䣔

×

×

×

自分のデスクに戻り䣍ネイルを施した

自分の指を見つめる圭子䣎その表情に

う䣬すらと笑みが浮かぶ䣎

顔を上げて䣍大沢の様子を窺う圭子䣎

と䣍圭子の携帯が着信を告げる䣎

×

×

×

人気の無い場所で䣍電話に出る圭子䣎

子䣓はい䣎尾花です䣔

相手の声を聞き䣍表情が消える圭子䣎

○警視庁××署・刑事課・取調室䥹夜䥺

対面している圭子と五十嵐䣍その背後

に石塚䣎

憔悴した様子の圭子である䣎

子䣓その後䣍暫く普通に運転してたんで

すけど䣍いきなり土屋さんが怒り出したん

です䢧䢧あの䣍䣕お前は䣍いつにな䣬たら俺

と結婚するんだ䣖䣬て䢧䢧その内䣍泣きな

がら䣕お前は嘘吐きだ䣎お前の体は腐䣬た

生ゴミの匂いがする䣖とかワケの分からな

いことを叫びだして䣍私䣍怖くな䣬て䢧䢧

それで䣍車が信号で停ま䣬た時に䣍私䢧䢧

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逃げ出したんです䣔

五十嵐䣓失礼ですが䣍あなたと土屋さんは結

婚を約束したお付き合いをなさ䣬てた䣍と

いうことですか?䣔

子䣓あの䢧䢧土屋さんと結婚するという

気持ちは䣍正直に言うと䣍私にはありませ

んでした䢧䢧土屋さんは䣍普段はとても優

しくて温厚な人だ䣬たんです䣎でも䣍ち䣯

䣬としたことですごく機嫌が悪くな䣬たり

することがたまにあ䣬て䢧䢧そういう時の

土屋さんは怖くて䢧䢧䣔

五十嵐䣓ち䣯䣬としたことというのは䣍例え

ば?䣔

子䣓例えば䢧䢧レストランに食事に行䣬

て䣍隣のテ䤀ブルの人が汚い食べ方をして

いるのを見た時とか䢧䢧その時は䣍いきな

りその人に掴みかか䣬て䣍䣕気持ち悪い䣖と

か䣕死ね䣖とか喚き散らして䢧䢧䣔

五十嵐䣓僭越ながらお聞きしますが䣍そうい

う土屋さんの情緒不安定なところが䣍あな

たにと䣬てはストレスだ䣬た?䣔

圭子䣍仕方なくとい䣬た感じで頷く䣎

五十嵐䣓成る程䣎あなたとの結婚の事で土屋

さんが思い詰めていたとして䣍それ以外で䣍

他に何か土屋さんが悩みなど抱えていなか

䣬たか䣎心当たりはありませんか?䣔

子䣓特には䢧䢧あの䣍一度䣍土屋さんが

酔䣬ぱら䣬た時に䣍私と結婚できないなら䣍

死んだ方がマシだと䣍言䣬たことがあ䣬て

䢧䢧冗談めかしてなんですけど䣔

五十嵐䣓そうですか䣎しかし䣍一度口論した

だけで䣍すぐに自殺しようと思うものでし

䣯うか䣎土屋さんはそういう方だ䣬た?実

感としてどうですか?䣔

子䣓どうでし䣯う䣎私には䣍理解出来な

い所がある人だ䣬たので䢧䢧あの䣍私䣍車

を降りる時につい興奮して䣍もう二度と会

いたくない䣍あんたなんか䢧䢧死んでしま

え䣬て䢧䢧言䣬てしま䣬たんです䣎私䣍今

までそんな酷いこと言䣬た事無くて䢧䢧

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䥹嗚咽し䥺私が䣍あんな事言䣬ち䣭䣬た

から䢧䢧䣔

圭子の様子を見つめている五十嵐䣎

子䣓䥹嗚咽を抑えながら䥺䢧䢧すいません䣔

五十嵐䣍七輪の写真を圭子に見せ䣍

五十嵐䣓これを䣍土屋さんのマンシ䣼ンで見

たことはありますか?䣔

圭 子䣓䢧䢧はい䣔

五十嵐䣓ということは䣍土屋さんはあなたが

車を降りた後䣍死を決意してこれを取りに

わざわざマンシ䣼ンに戻䣬たと䣔

子䣓いえ䢧䢧私たち䣍ロ䣹ジを予約して

いて䣎そこで料理をする為に䣍車に積んで

ました䣔

五十嵐䣓土屋さんのご遺体からは睡眠薬の成

分が検出されています䣎その睡眠薬につい

ては䣍何かご存じですか?䣔

子䣓たまに䣍夜中に急に不安にな䣬て眠

れないことがあると言䣬てて䢧䢧市販の睡

眠薬を使䣬てたみたいです䣔

五十嵐䣓そうですか䢧䢧昨夜䣍車から逃げ出

したと仰いましたが䣍どこで車を降りたか䣍

憶えてますか?䣔

子䣓桜木町辺りです䢧䢧そこから地下鉄

に乗りました䣔

五十嵐䣓どこの駅から乗䣬たか䣍憶えてます

か?䣔

子䣓よく憶えていません䢧䢧すいません䣍

夢中だ䣬たので䢧䢧䣔

五十嵐䣍石塚の方をこなして調書を受

け取り䣍検める䣎

五十嵐䣓ご心痛のところ䣍ご協力ありがとう

ございました䣎今日の所はこれで結構です䣔

力なく頷く圭子䣎

五十嵐䣓下までお送りしまし䣯う䣔

○警視庁××署・廊下䣢エレベ䤀タ䤀前䥹夜䥺

廊下を歩いて行く圭子と五十嵐䣎

×

×

×

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13

エレベ䤀タ䤀を待䣬ている圭子と五十

嵐䣎五十嵐が前に䣍圭子がそのやや後

ろに立䣬ている䣎

五十嵐䣍さり気なく廊下の窓ガラスに

映䣬た圭子の様子を窺う䣎

ネイルを施した爪を気にしている圭子䣎

圭子の様子を観察している五十嵐䣎

圭子の横顔はう䣬すらと微笑んでいる

ようにも見える䣎

圭子が五十嵐の視線に気付きかけた刹

那䣍エレベ䤀タ䤀の扉が開く䣎

䣓どうぞ䣔と圭子を促す五十嵐䣎

○警視庁××署・エントランス䣢表䥹夜䥺

五十嵐に頭を下げ䣍署を去る圭子䣎

その背中をジ䣹と見送る五十嵐䣎

○都内・高級服飾店䥹日替わり䥺

幾つかのドレスを選んでいる圭子䣎

×

×

×

選んだ服や靴を試着し䣍鏡に映る自分

を見つめる圭子䣎

×

×

×

何十万もの会計を現金で支払う圭子䣎

○都内・宝飾品店

ケ䤀スに並んだ数々の宝飾品を見つめ

ている圭子䣎

×

×

×

イヤリングを耳につけ䣍鏡で自分の顔

を見つめる圭子䣎

×

×

×

再び䣍何十万もの会計を現金で支払う

圭子䣎

○圭子のマンシ䣼ン・圭子の部屋䥹夜䥺

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14

ベランダで煙草を吸䣬ている圭子䣍喫

煙に慣れておらず䣍軽く咳き込む䣎

圭子が手にした携帯には䣍ツ䣵䣹タ䤀

のタイムラインが表示されている䣎

䣕OSAW

A_No.10

䣖のアカウント䣎

䣕今日䣍派遣さんがケヤキのコ䤀ヒ䤀

煎れてくれた䣎派遣さんありがとう䣖

笑みを浮かべ䣍第九をハミングし出す

圭子䣍再びゆ䣬くりと煙草を吸い䣍紫

煙を吐き出す䣎

○野田家・野田の部屋䣢居間䥹朝・日替わり䥺

沢山のプラモデルが飾られた部屋䣎

居間からの激しい物音に䣍目を覚ます

野田知也䥹38䥺䣎

野田が居間に出て来ると䣍母親の佐知

子䥹62䥺が䣍部屋中の物をひ䣬くり

返して何かを探している䣎

田䣓䢧䢧勘弁してよ䣔

佐知子䣓知也!お䣬た!さ䣬きね䣍足音がし

たんよ!や䣬ぱおるんよネズミが!しかも

こげんデカイのが!䣔

田䣓分か䣬た䣎捕まえたら教えて䣎ギネ

スに申請するけ䣔

執拗に辺りを窺う佐知子を尻目に䣍ト

イレに向かう野田䣎

×

×

×

朝食を食べている野田と佐知子䣎

物音にビク䣹と反応する佐知子䣎

×

×

×

自分なりのお洒落着に着替え䣍鏡を

見つめている野田䣎

×

×

×

玄関で靴を履いている野田䣎

その背後にや䣬て来る佐知子䣎

佐知子䣓あんた䣍なんねその格好䣎えらいお

洒落やないね䣔

田䣓今日䣍仕事終わりで高校ん時の同級

生と会うけ䣎そんまま泊ま䣬てくるかもし

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れん䣔

佐知子䣓あんた䣍こないだもお洒落してから

ど䣬か行きよ䣬たやろ䣎あんた䣍そんな友

達何人もおるんね䣔

田䣓一人もおらんよかいいやろ䣔

佐知子䣓そんな事言䣬て何か悪いことしたら

いけんよ䣎あんたが何しよるか䣍お父さん

がち䣭あんと䤀䤀䣔

田䣓はいはい䣍天国で見よ䣬ち䣭ろ?䣔

と䣍玄関を出て行く野田䣎

○××工業・従業員控室

䣓おはようございます䣔と野田がや䣬

て来て作業着に着替え始める䣎

野田の格好を見て䣍陰口を叩き笑䣬て

いる同僚たち䣎

○××工業・作業場

町工場風の作業場で䣍作業に精を出し

ている野田䣎

野田の所に上司が来て䣍何やら野田を

怒り出す䣎

神妙な顔の野田䣍上司が去ると再び作

業に取りかかる䣎

○××工業・従業員控室

仕事を終え着替えている野田䣍デオド

ラントシ䤀トで脇の下や首回りを丹念

に拭いている䣎

○××工業・廊下䣢表䥹夕䥺

従業員控室から出て来る野田䣍屯して

いる同僚らに会釈し䣍足早に去る䣎

○××デパ䤀ト・アクセサリ䤀売り場䥹夜䥺

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慎重な顔でアクセサリ䤀を選んでいる

野田䣎

○銀座・レストラン䣕××䣖䥹夜䥺

エレガントな内装のレストランである䣎

遠慮深そうにデパ䤀トの袋を持䣬た野

田がや䣬て来る䣎

ウエイタ䤀にペコリと頭を下げる野田䣎

×

×

×

一人䣍席に座䣬ている野田䣎

周りには䣍金回りが良く社交慣れした

感じの人たち䣎

落ち着かない様子の野田䣍エントラン

スから人が入䣬てくる気配に顔を上げ

ると䣍顔をほころばせる䣎

そこには䣍艶やかに化粧し䣍着飾䣬て

いる圭子の姿が䣎

野田の姿を認めて䣍嬉しそうに手を振

る圭子䣎

×

×

×

熟れた様子でオ䤀ダ䤀する圭子䣎

子䣓プリモはタリアテ䣹レ䣎セコンドは

仔羊䣍ミデ䣵アムレアで䣔

ウエイタ䤀䣓かしこまりました䣎お連れ様は?䣔

田䣓え䣬と䣍僕䣍パスタは䣍これ䣍フン

ギ?の䣍ボロネ䤀ゼ䣎メインは䢧䢧この䣍

オ䣹ソブ䤀コ䢧䢧䣔

ウエイタ䤀䣓䥹頷いて䥺では䣍少々お待ちくだ

さいませ䣔

テ䤀ブルを去るウエイタ䤀䣎

圭子䣍野田の顔を見てニ䣹コリと笑う䣎

野田䣍圭子に微笑んで返し䣍

田䣓こういうお店䣍よく来るの?䣔

子䣓う䤀ん䣍ま䣍社長にく䣬ついて䣬て䣍

クライアントとか䣍ど䣬かの偉い人とゴハ

ン食べる時とか䣍たまに䣎でもさ䣍広告業

界の人䣬て何か下品な感じの人多くて䣎ウ

ンザリする事多いんだよね䣎ま䣍タダメシ

だから良いんだけど䥹と悪戯䣬ぽく笑う䥺䣔

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田䣓スゴイね䣎何か䣍格好いいね䣔

子䣓全䣹然䣎私䣍そういう上辺だけの世

界はもうイイかな䣬て感じなんだよね䣎な

んか䣍それよりも䣬と䣍素朴䣬ていうか䣍

別にお金はそんなになくてもいいから䣍落

ち着いた䣍安心出来る暮らしの方がイイな

あ䣬て思䣬てる䣔

野 田䣓うん䣍うん䣎スゴイ分かる䣎僕も䣍

そう思うよ䢧䢧あ䣍そうだ䣔

デパ䤀トの袋を取り出す野田䣎

田䣓圭子ち䣭ん䣍コレ䣔

子䣓䥹驚いて䥺え䣍ナニ?䣔

田䣓今日䣍たまたまデパ䤀トで見つけて䣎

圭子ち䣭んにピ䣹タリだな䣬て䣎はい䣔

圭子䣍デパ䤀トの袋を受け取り䣍

子䣓うわ䣧䣍スゴイ嬉しい!開けていい?䣔

田䣓うん䣎気に入るといいけど䣔

圭子䣍包みを開けると䣍そこには見る

からにダサいネ䣹クレス䣎

子䣓䢧䢧超カワイイ䣔

圭子䣍ネ䣹クレスをつけ䣍すまして野

田を見る䣎

子䣓どう?䣔

田䣓うん䣍似合䣬てる䣎凄く䣔

子䣓䥹満面の笑みで䥺ありがと䣎大事にす

るね䣔

照れたように微笑む野田䣎

×

×

×

パスタを食べている圭子と野田䣎

子䣓どう?美味しい?䣔

田䣓うん䢧䢧美味しい䣔

野田䣍ワイングラスに手を伸ばすが䣍

覚束ない手元がワイングラスを倒して

しまう䣎

田䣓あ䣬䢧䢧ヤバい䢧䢧!䣔

圭子䣍すぐさま立ち上がりナプキンを

水で濡らすと䣍野田のシ䣺ツについた

ワインを拭う䣎

ウエイタ䤀がや䣬て来て䣍䣓大丈夫です

か?䣔とテ䤀ブルを片付け出す䣎

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䣓どうもすいません䣔と応える野田䣎

献身的に野田のシ䣺ツを拭う圭子䣎

田䣓䢧䢧ごめん䣔

子䣓全然䣎気にしないで䣔

ニ䣹コリと笑う圭子䣎

×

×

×

テ䤀ブルは片付けられ䣍や䣬と落ち着

いた圭子と野田䣎

田䣓ゴメンね䣎僕䣍こういう高級な店䣍

慣れてないから䣍ち䣯䣬と緊張しち䣭䣬て䣔

子䣓いや䣍私こそゴメン䣬て感じ䣎何か䣍

変な店選んで野田さんガ䣹カリさせち䣭䣬

たらヤダな䣬て思䣬たら䣍張り切り過ぎち

䣭䣬た䥹と笑う䥺䣔

野田䣍照れたように笑う䣎

子䣓あ䣍そうだ䣎今度䣍私䣍野田さんに

ゴハン作䣬たげる䣔

田䣓え䣍ほんと?䣔

子䣓キ䣹チン付きのホテルがあるから䣍

そこ借りて䣍お泊まりするの䣎どう?䣔

田䣓え䣍あ䣍うん䣎いいね䣔

子䣓䥹微笑んで䥺よし!私䣍料理にはち䣯

䣬と自信があるんだ䣎何か食べたいもの䣍

考えといて䣔

田䣓うん䣍分か䣬た䣎楽しみ䣔

笑い合う二人䣎

そこに䣍メインの肉料理が運ばれてく

る䣎

ウエイタ䤀䣓仔羊の藁包みロ䤀スト䣍オ䣹ソ

ブ䤀コでございます䣔

子䣓䢧䢧美味しそう䣔

圭子のメイン䣍仔羊の肉にナイフが刺

しこまれ䣍肉汁が溢れ出す䣎

○××ホテル・客室䥹夜䥺

トイレで髪を直している圭子䣎

圭子䣍首のネ䣹クレスを手に取り䣍

子䣓䥹呟く䥺䢧䢧ダ䣹サ䣔

×

×

×

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圭子がトイレから出て来ると䣍切羽詰

ま䣬たような表情で圭子に近寄る野田䣎

田䣓圭子ち䣭ん䣔

振り返る圭子䣍野田の表情を見て訝し

む䣎

子䣓どうかした䢧䢧?䣔

野 田䣓これ䢧䢧䣔

と䣍銀行の預金通帳を差し出す野田䣎

田䣓お父さんの医療費䣍この口座のお金䣍

使䣬ていいから䣔

感謝のあまり口がきけない様子の圭子䣎

田䣓この口座䣍僕らの口座だから䣎その

うち䣍僕らの事で色々とお金が必要にな䣬

たら䣍この口座䣍一緒に使おう䣔

感無量の表情で頷く圭子䣎

田䣓持䣬てて䣔

と䣍圭子の手に通帳を持たせる野田䣎

子䣓䥹涙ぐみながら䥺䢧䢧ありがとう䣔

×

×

×

ベ䣹ドでセ䣹クスしている圭子と野田䣎

騎乗位で腰を振る圭子䣎

快感に堪えるように顔をしかめる野田䣎

×

×

×

開かれた通帳の最初の行には200万

円の振り込み䣎

通帳から䣍ベ䣹ドで寝入䣬ている野田

に視線を移す下着姿の圭子䣎

×

×

×

大沢のツイ䣹タ䤀のアカウント画面䣎

䣕ドガの絵の光の感じが䢧䢧䣖云々と

い䣬た書き込み䣎

トイレで煙草を吸いながらそれを見て

いる圭子䣍今度は咳き込むことなく優

雅に煙を吐き出している䣎

○東京・実景䥹早朝・日替わり䥺

東京の夜が白々と明けてゆく䣎

○野田家・表䥹早朝䥺

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帰䣬てくる野田䣍シ䣺ツについたワイ

ンの染みに触れ䣍嬉しそうに微笑む䣎

○野田家・居間䥹早朝䥺

居間に入䣬てくる野田䣎

薄暗く䣍静まりかえ䣬ている室内䣎

田䣓䢧䢧ただいま䣔

訝しみつつ居間へ入䣬てくる野田䣎

田䣓オカン䣍おらんと?䣔

佐知子の部屋の扉を開ける野田䣎と䣍

いきなり佐知子が䣍包丁を振りかざし

て野田に迫る䣎

驚愕する野田䣎

が䣍足が空転して倒れてしまう佐知子䣎

田䣓䢧䢧オカン!何しよんね!俺よ!知

也!どうしたんね!䣔

体を起こし䣍野田を見つめる佐知子䣎

佐知子䣓䢧䢧知也䣔

佐知子䣍堰を切䣬たように泣き出す䣎

田䣓ち䣯䢧䢧はあ?䣔

泣きわめいている佐知子䣎

×

×

×

佐知子䣓あんたが殺されたち思うたんよ䣔

居間のテ䤀ブルに座䣬て落ち着いてい

る佐知子䣎

田䣓はあ?䣔

佐知子䣓あんたが帰䣬て来んけ䣎誰か悪い人

に騙くらかされて䣍殺されたんやないかち

思うたと䣎ほんで䣍その悪い人がウチのモ

ン盗みに来たち思うたんよ䣎ホラ䣍ウチ䣍

お父さんの遺産やらお母さんの年金やら䣍

色々あるやろ?そげなん盗られたら䣍お母

さん䣍もう我慢できん䤀䤀䣔

田䣓分か䣬た䣍分か䣬たけ!考えすぎよ䣔

佐知子䣓そんでアンタ䣍どこ行䣬と䣬たんね䣔

田䣓昨日は䣍友達んトコに泊まるち言う

たやろ?䣔

佐知子䣓聞いとらん䣔

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田䣓言うた䣔

佐知子䣓聞いとらんち䣭䣔

田䣓言うたち䣭䣔

佐知子䣓なんねあんた䣍誰か悪い人と付き合

いよるんやないやろね?䣔

田䣓もう䣍いい加減にしてよ䢧䢧䣔

佐知子䣓許さんけんね䣍そげな人と付き合う

たら䣔

田䣓そんな䢧䢧いらん心配せんでよかて䣔

佐知子䣓いらん心配ちなんね!あんた䣍私は

あんたの母親なんやけね!あんた䤀䤀䣔

田䣓いいけ!アンタは自分の病気のコト

だけ心配しとき!䣔

と䣍野田䣍自分の部屋に入䣬て勢いよ

く扉を閉める䣎

○野田家・野田の部屋䥹早朝䥺

野田䣍深く溜息をつき䣍着替え始める䣎

○警視庁××署・捜査一課䥹モンタ䤀ジ䣻䥺

調書の土屋の遺体写真を見ている五十

嵐䣍調書をめくると䣍そこには遺体検

分書に䣓自殺と断定できる䣔の文字䣎

不機嫌そうに䣍調書を傍にいた石塚に

突き返す五十嵐䣎

五十嵐のデスク上の事件資料に䣍圭子

の免許証のコピ䤀がある䣎

○電報堂・喫煙室䥹モンタ䤀ジ䣻䥺

一人䣍煙草を吸䣬ている大沢䣎

そこに䣍ポ䤀チを手にした圭子が来る䣎

気付いた大沢に会釈する圭子䣎

○××工業・工場䥹モンタ䤀ジ䣻䥺

額に汗しながら働いている野田䣎

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○電報堂・喫煙室䥹モンタ䤀ジ䣻䥺

絵画の話で䣍圭子と大沢の話が盛り上

が䣬ている䣎

二人の様子を䣍離れた場所から見てい

る田代美樹䥹28䥺䣎

美樹の視線に気付く圭子䣎

圭子と美樹の視線が絡む䣎

さりげなく視線を外し䣍大沢と話し続

ける圭子䣎

○××工業・食堂䥹モンタ䤀ジ䣻䥺

一人䣍食堂でパンを囓䣬ている野田䣎

と䣍机の上の携帯がメ䤀ルを着信する䣎

喜び勇んでメ䤀ルを開く野田䣍しかし

それは迷惑メ䤀ル䣎

○銀行・ATM䥹夜・モンタ䤀ジ䣻䥺

野田から渡された通帳をATMに差し

込む圭子䣎

ATMから数十万円の札が出て来る䣎

その束を鞄に入れる圭子䣎

○野田家・居間䥹夜・モンタ䤀ジ䣻䥺

夕食を食べている野田と佐知子䣎

佐知子はそ䣬ぽを向いたままモグモグ

と食べている䣎

つまらなそうに食べている野田䣎

○家具店䥹夜・モンタ䤀ジ䣻䥺

圭子の手元の携帯に表示された大沢の

ツイ䤀ト䣎そこには䣍䣕イ䤀ムズのソフ

䣴欲しいな䤀䣖との書き込み䣎

圭子が視線を上げると䣍そこにはイ䤀

ムズのソフ䣴が䣎

×

×

×

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現金で支払いをしている圭子䣎

○書店・カウンタ䤀䥹夜・モンタ䤀ジ䣻䥺

店員に数万円の代金を支払い䣍大判の

本を受ける圭子䣎

○堀川家・表䥹モンタ䤀ジ䣻䥺

郊外のこぢんまりとした一軒家である䣎

郵便物の配達に来た郵便局員が䣍呼び

鈴を押しているが䣍応答が無い䣎

伝票をポストに入れ䣍去る郵便局員䣎

○堀川家・屋内䣢風呂場䥹モンタ䤀ジ䣻䥺

人気の無い屋内䣎

風呂場の浴槽の中から䣍赤黒く変色し

た死体の足が突き出ている䣎

䥹モンタ䤀ジ䣻終わり䥺

○警視庁・××警察署・捜査一課䥹夜䥺

モニタ䤀を凝視している五十嵐䣎

モニタ䤀には䣍とある地下鉄の駅の防

犯カメラの映像が映し出されている䣎

目頭を押さえ䣍伸びをする五十嵐䣎

×

×

×

監視カメラの映像が映し出された別の

モニタ䤀の前で䣍眠䣬ている石塚䣎

䣓おい䣔と石塚の肩を小突く五十嵐䣎

塚䣓䥹目を覚まし䥺ん䢧䢧あ䣍すいません䣔

五十嵐䣓帰る䣎寝落ちしてた分䣍ち䣭んと巻

き戻して見とけよ䣔

塚䣓はい䢧䢧お疲れ様でした䣔

五十嵐䣓尾花が映䣬てたら連絡くれ䣔

去䣬ていく五十嵐䣎

塚䣓䥹溜息をつき䥺意味あんのコレ?䣔

と䣍ビデオの巻き戻しボタンを押す䣎

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○五十嵐の家・表䥹夜䥺

郊外の小さな一軒家である䣎

明かりが消えた家に入䣬ていく五十嵐䣎

○五十嵐の家・リビング䥹夜䥺

灯りが点り䣍五十嵐が入䣬てくる䣎

ゴミや衣類で散らか䣬ているリビング䣎

箪笥の上に䣍伏せられた写真立て䣎

五十嵐䣍荷物をソフ䣴に放り投げて上

着を脱ぎ䣍テ䤀ブルに置いてあ䣬たグ

ラスを手に台所に向かう䣎

グラスに残䣬ていた酒をシンクに捨て

て氷を入れ䣍焼酎の瓶を手にすると䣍

ド䣹カリと椅子に腰を下ろす䣎

テ䤀ブルにあ䣬た食べかけの乾き物を

口に入れ䣍テレビを点ける五十嵐䣎

と䣍廊下から床が軋むような音がする䣎

訝しげにそちらをこなす五十嵐䣎

薄暗い廊下の方から䣍またしても人が

動く気配が䣎

五十嵐䣓䢧䢧メグミか?䣔

廊下から姿を現したのは䣍ヤクザ風情

の強面の男䣍西䥹42䥺とその手下で

ある䣎

西

䣓どうも䣍こんばんは䣔

険しい顔で西を睨む五十嵐䣎

西

䣓䣕䢧䢧メグミか?䣖䥹と笑う䥺田舎に

帰䣬た嫁が戻䣬てきたと思いきや䣍俺ら半

端モンが現れたんじ䣭拍子抜けですよね䣔

五十嵐䣓面倒臭え䣬て意味じ䣭䣍ど䣬ちも変

わんねえよ䣎つ䤀か䣍何だお前ら䣍ナメて

んのか?デカの家に勝手に上がるヤクザが

何処にいるんだコラ䣔

五十嵐の対面に座る西䣎

西

䣓ナメてんのはアナタでし䣯䣍五十嵐

さん䣎こないだ䣍オタクがぶ䣬込んできた

ガサ䣍なんで事前に知らせてくれなか䣬た

んですか?お陰でカシラはパクられるわ商

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売道具は持䣬てかれるわでウチは大損こき

ましたよ䣔

五十嵐䣓あれはお偉いさんが絵書いてんだ䣎

俺の知りようがねえ䣎下手なイチ䣺モンつ

けんな䣔

西

䣓その言い訳䣍小菅のカシラに聞かせ

てあげてくださいよ䣔

五十嵐䣓ああ?䣔

西

䣓カシラ䣍もうカン䣹カンですよ䣎て

いうか䣍カシラがパクられた䣬てことは䣍

自分の身もヤバくなる䣬てこと䣍アナタ分

か䣬てます?䣔

五十嵐䣓何だテメエ䢧䢧脅してるつもりか䣍

コラ!!ああ!?ナメてんじ䣭ねえぞ小

僧!䣔

と䣍西の手下が五十嵐の顔面に拳を叩

き込む䣎

後ずさる五十嵐䣍鬼のような目で手下

を睨み䣍手近の酒のボトルを手にして

手下に向かう䣎

二人の間に入䣬てそれを止める西䣎

西

䣓ややや䣍すんません䣎コイツ䣍まだ

ロクに仕込んでないもんで䣔

西䣍振り返ると手下の顔面に拳を叩き

込む䣎

顔面を押さえて倒れ込む手下䣎

怒りを静めるように息を吐く五十嵐䣎

西

䣓五十嵐さん䣍こんなの脅しになんな

いよ䣎アンタの怠慢でパクられたカシラは䣍

アンタがお仲間に知られたくない裏の顔を

知り尽くしてんですよ䣔

五十嵐䣓要点を言え䣔

西

䣓一千万䣔

五十嵐䣓あるわけねえだろ䣍そんな金䣔

西

䣓これでも随分負けさせてもら䣬てま

すよ䣎ホラ䣍また押さえたシ䣺ブ掠めて捌

くなり䣍闇金に個人情報売るなりして稼げ

ばいいでし䣯うが䣎お手のモンでし䣯?

我々も手伝いますし䣔

五十嵐䣓もう足抜いてんだよ䣍俺は䣎知䣬て

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んだろ?䣔

西

䣓は?シロ䤀トか䣍お前?䣔

西を弱々しく睨む五十嵐䣎

西

䣓期限は二週間䣎一日でも過ぎたらテ

メエ䣍仕事無くすどころじ䣭済まねえぞ䣔

西䣍踵を返して手下を促して出て行く䣎

西が出て行くと䣍力が抜けたように床

に座り込む五十嵐䣎

○電報堂・営業部オフ䣵ス䥹日替わり䥺

デスクで仕事をしている圭子䣎

䣓尾花さん䣔

圭子が顔を上げると䣍そこには大沢の

姿が䣎

子䣓あ䢧䢧おはようございます䣔

大沢䣍手にした紙袋からコ䤀ヒ䤀豆の

袋を取り出し䣍

沢䣓これ䣍ケヤキ珈琲で俺好みにブレン

ドしてもら䣬たヤツなんだけど䣍良か䣬た

ら飲んで䣔

と䣍圭子の机にコ䤀ヒ䤀豆を置く大沢䣎

沢䣓名付けて大沢ブレンド䣎飲んだら感

想聞かせてよ䣔

子䣓䥹呆然と䥺䢧䢧はい䣔

軽く挨拶して䣍その場を去る大沢䣎

しばし呆然としている圭子䣍我に返る

と䣍鞄の中から包みを取りだして大沢

の後を追う䣎

圭子の䣓大沢さん䣔の声に䣍足を止め

て振り返る大沢䣎

子䣓あの䣍私からも䣍これ䣔

と䣍包みを大沢に差し出す圭子䣎

沢䣓え䣍何?䣔

子䣓実は私も䣍大沢さんにと思䣬て持䣬

てきたんです䣔

沢䣓お䣍マジで?スゴイね䣎相思相愛䣬

てヤツ?䣔

その言葉に昂揚した表情の圭子䣎

沢䣓開けていい?䣔

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27

子䣓あ䣍ええ䣍勿論䣔

と䣍包みを受け取り䣍開封する大沢䣎

中から出て来たのは䣍ドガの画集䣎

沢䣓スゲエ!どうしたの䣍これ?䣔

子䣓たまたま持䣬てたんです䣍私䣎大沢

さんがドガが好き䣬て聞いたんで䣎私もド

ガは好きなんですけど䣍や䣬ぱり本当に好

きな人が持䣬てた方がいいかなと思䣬て䣔

沢䣓いいの?結構するでし䣯䣍コレ䣔

子䣓いいんです䣎貰䣬てください䣎広告

大賞の受賞記念だと思䣬て䣔

沢䣓䥹笑䣬て䥺そ䣬か䣎じ䣭䣍折角だし䣍

戴くよ䣎ありがとう䣔

と䣍去ろうとする大沢䣎

子䣓そうだ䣍大沢さん䣎コレ䣍ち䣯䣬と

見てもらえます?䣔

振り返る大沢䣎

圭子䣍携帯を操作し一枚の写真を画面

に出す䣎

子䣓ほら䣍これ䣔

その写真は䣍圭子の部屋に置かれたイ

䤀ムズのソフ䣴䣎

子䣓私䣍買䣬ち䣭䣬たんです䣍イ䤀ムズ

のソフ䣴!私も䣍イ䤀ムズ凄い好きで!䣔

沢䣓䢧䢧あれ?なんで俺がイ䤀ムズ好き

なこと䤀䤀䣔

子䣓もう䣍貯金はたいて䣍買䣬ち䣭え䣬

て!イ䤀ムズ䣬てパ䣹と見はシンプルなん

ですけど䣍実際に見てみると䣍微妙なカ䤀

ブとか線と線の角度とか凄く緻密に計算さ

れてて䣍ほら䣍この背もたれとか䣍足の角

度䣍絶妙だと思いません?何か䣍イ䤀ムズ

の理念がそのまま具現化されてる䣬て感じ

で䣍ホント䣍ず䣬と見続けてても全然飽き

ないんです䣔

はし䣭ぐ圭子の声に䣍周りの社員たち

が迷惑そうに圭子と大沢の方を見る䣎

その中には美樹の姿も䣎

美樹の視線を感じ䣍気まずそうな大沢䣎

子䣓大沢さん䣍良か䣬たら今度䣍見に来

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て下さいよ䣔

沢䣓䥹いきなりの誘いに虚を突かれて䥺え

䢧䢧え?䣔

子䣓あ䢧䢧ごめんなさい䣎何か私䣍一人

で盛り上が䣬ち䣭䣬て䣔

返答に困る大沢䣎

と䣍急にクスクスと笑い出す圭子䣎

大 沢䣓え䢧䢧何?どうしたの?䣔

子䣓ごめんなさい䢧䢧私䣍自分の部屋を

男の人に見せるの初めてで䢧䢧何か䣍恥ず

かしくな䣬ち䣭䣬て䣎それに䣍見に来て下

さいなんて䢧䢧ち䣯䣬と大胆䣔

ついて行けず䣍苦笑するしかない大沢䣎

子䣓でも䣍大沢さんだから䣍見せられた

のかも䣔

沢䣓䢧䢧え?䣔

圭子䣍ニコリと微笑み䣍

子䣓じ䣭䣍失礼します䣔

自信に満ちた表情で歩き去る圭子䣎

きまりが悪そうに息を吐く大沢䣎

○××ホテル・一室䥹夜䥺

キ䣹チン付きのホテルである䣎

圭子と野田が食事をしている䣎

心ここにあらずとい䣬た様子の圭子䣍

野田に何かを話しかけられ䣍話を合わ

せるように相槌を打つ䣎

×

×

×

キ䣹チンには䣍洗われた食器や調理器

具が並んでいる䣎

ベ䣹ドでは䣍裸の圭子が仰向けの野田

に跨䣬ている䣎

激しく腰を振る圭子䣎

圭子の激しさに驚きつつ䣍快感に顔を

歪ませる野田䣎

圭子䣍天井を見上げるように顎を上げ䣍

子䣓䥹呟く䥺大沢さん䢧䢧䣔

田䣓䥹よく聞こえず䥺え䣍何䢧䢧?䣔

圭子の腰の振りがさらに激しくなる䣎

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子䣓䥹呟く䥺ああ䢧䢧大沢さん䢧䢧䣔

絶頂に達する野田䣎

圭子䣍野田に背を向けるようにして倒

れ込むと䣍激しく息を荒げている䣎

田䣓圭子ち䣭ん䢧䢧スゴか䣬たよ䣎どう

かしたの?䣔

圭 子䣓䢧䢧だ䣬て䣍私たち䣍相思相愛だか

ら䣔

田䣓䥹微笑んで䥺䢧䢧うん䣍そうだね䣔

後ろから圭子に手を回す野田䣎

圭子の顔に嫌悪の陰がよぎる䣎

×

×

×

圭子の第九のハミングが聞こえている䣎

圭子が大沢から貰䣬た珈琲豆の袋の封

が切られている䣎

呆けたように眠り込んでいる野田䣎

ソフ䣴に座り䣍夜景を眺めながら珈琲

を飲んでいる圭子䣎

一口飲み䣍う䣬とりしたような笑みを

浮かべる圭子䣎

○道路・路上・車内䥹日替わり䥺

助手席の五十嵐䣎運転している石塚䣎

塚䣓五十嵐さん䣍あの䢧䢧大丈夫ですか?䣔

五十嵐䣓何が䣔

塚䣓その䢧䢧顔の痣䣔

五十嵐䣓ああ䢧䢧これな䣍ヤクザにやられた

んだよ䣎ち䣯䣬とゴタついててな䣔

声を上げて笑う石塚䣎

五十嵐䣓そんなに可笑しいか䣔

塚䣓すいません䣎五十嵐さんがそんな冗

談言うの䣍珍しいなと思いまして䣔

自嘲気味に笑う五十嵐䣎

と䣍石塚の携帯が鳴る䣎石塚䣍携帯の

画面を確認すると䣍不満げに呟く䣎

五十嵐䣓どうした䣔

塚䣓嫁からです䣎今誰といるの䣬て䣎仕

事中だ䣬つ䤀の䣔

五十嵐䣓何だ䣎ノロケてんのか䣔

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塚䣓自分䣍嫁からず䣬と居場所探られて

るんですよ䣎携帯のGPSで䣍浮気防止䣬

つ䣬て䣎ど䣬ちが刑事か分かんないですよ䣔

五十嵐䣓まあ䣍心配されてる内が花だ䣔

塚䣓五十嵐さんは䣍ご結婚は?䣔

五十嵐䣓してたよ䣎でも䣍嫁がガキ連れて出

て䣬ちま䣬た䣔

石 塚䣓䢧䢧すいません䣔

五十嵐䣓謝るなよ䣎どうせ訊くなら嫁が出て

䣬た理由まで訊けよ䣔

塚䣓え䣬と䣍あの䢧䢧どうしてですか?

仕事で家庭を顧みなか䣬た䣍とか䣔

五十嵐䣓この仕事してると䣍ストレス溜まる

だろ?チンケな理由で人殺したアホだの脳

みそ溶けたヤク中だの䣍そんなのば䣬か相

手してると䣍ムカムカしてゲロ吐きそうに

なるよな?で䣍家帰䣬たら嫁が䣕おかえり䣖

も言わずに子育てがどうだとか家事がどう

だとか散々喚き散らすんだよ䣎もう頭が破

裂しそうになる䣎そういう時䣍どうするか

分かるか?䣔

塚䣓いえ䢧䢧䣔

五十嵐䣓殴るんだよ䣎黙るまでな䣎女黙らす

にはよ䣍殴るのが一番手䣬取り早い䣎んな

ことば䣬かや䣬てたら䣍出て䣬ちま䣬た䣔

暫し䣍二人の間に沈黙が流れる䣎

五十嵐䣓冗談だよ䣔

塚䣓え䢧䢧䣔

五十嵐䣓何マジにな䣬てんだ䣔

塚䣓ち䣯䢧䢧や䣍勘弁して下さいよ䢧䢧

うわ䣍ビビ䣬た䣢䣔

と䣍笑う石塚䣎

五十嵐も䣍声を出して笑う䣎

○堀川家・風呂場䣢居間

手で口を塞いだまま䣍固ま䣬た表情の

五十嵐と石塚䣎

二人の視線の先には䣍浴槽の中に横た

わ䣬た䣍赤黒く腐敗した死体が䣎

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風呂場には䣍七輪と練炭のケ䤀スが置

かれている䣎

検視官䣓死後1䣿月は経過してる䣎一応䣍警

察病院に回しとくけど䣍目立䣬た外傷も無

いし䣍恐らく自殺だろう䣔

嘔吐く石塚䣎

険しい目つきの五十嵐䣎

×

×

×

居間で䣍遺留品を物色している五十嵐䣎

と䣍五十嵐の手が止まる䣎

五十嵐の手には睡眠薬の箱䣎それは䣍

土屋の死体の傍にあ䣬た睡眠薬と同じ

ものである䣎

目を中空に漂わせ䣍思案顔の五十嵐䣎

塚䣓五十嵐さん䣎ち䣯䣬と䣍いいですか䣔

五十嵐䣓䢧䢧ああ䣔

睡眠薬の箱を上着のポケ䣹トに入れ䣍

立ち上がる五十嵐䣎

○電報堂・営業部オフ䣵ス

仕事に打ち込んでいる圭子䣎

その圭子を䣍背後から見ている美樹䣎

○電報堂・女子トイレ

排水音が流れ䣍個室から出て来る圭子䣎

と䣍足を止める圭子䣎

その視線の先には䣍美樹が立䣬ている䣎

美樹に構わず䣍手を洗い始める圭子䣎

美樹䣍圭子の傍に詰め寄り䣍

樹䣓俊輔にち䣯䣬かい出すの䣍止めてく

れない?䣔

応えずに䣍手を洗い続ける圭子䣎

樹䣓ち䣯䣬と䣍聞いてるの?䣔

子䣓聞こえてます䣔

樹䣓䥹苛立ち䥺私が俊輔と付き合䣬てるの䣍

知䣬てるよね?䣔

子䣓知りませんでした䣎そうなんですか䣔

樹䣓䥹さらに苛立ち䥺この会社で知らない

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の䣍あなただけよ䣎まあ䣍派遣じ䣭知りよ

うが無いかもしれないけど䣎憶えといて䣎

俊輔と付き合䣬てるのは私䣎あなたは引䣬

込んでて䣔

子䣓どうしてですか?䣔

樹䣓は?䣔

圭 子䣓私に大沢さんを獲られるのが怖いん

ですか?䣔

美樹䣍圭子を突き飛ばす䣎

トイレの壁に身体を打ち付ける圭子䣎

樹䣓何言䣬てんのあんた!バカじ䣭ない

の!?何様のつもり!?私があんたなんか

に負けるわけないでし䣯!䣔

子䣓どうして?䣔

樹䣓どうして䣬て䢧䢧決ま䣬てるでし䣯䣍

だ䣬て䤀䤀䣔

子䣓あなたは有能な美人正社員で䣍私は

平凡な見た目の䣍ただの派遣だから?䣔

返答に詰まる美樹䣎

子䣓下らないわね䣎あなた䣍それでも女

なの?䣔

樹䣓は䢧䢧?え䣍何?意味分かんな䤀䤀䣔

子䣓大沢さんも大沢さんね䣎あなたみた

いな女と付き合䣬てるなんて䣍ち䣯䣬と幻

滅䣎と言うより䣍あなたも大沢さんも䣍女

の価値というものについて全く理解してい

ないみたいね䣎まあ䣍あなたみたいな凡庸

で下品な女には理解しようが無いかもしれ

ないけど䣔

圭子の頬を平手で叩く美樹䣎

圭子䣍動じることなく美樹の目をジ䣹

と見つめる䣎

怯む美樹䣎

そこに一人の女性社員が入䣬てくる䣎

その女性社員に視線を移す圭子䣎

ただならぬ雰囲気に䣍踵を返し去䣬て

いく女性社員䣎

圭子䣍美樹に視線を移し䣍

子䣓教えてあげる䣎女の価値はね䣍男を

どれだけ喜ばせることが出来るかで決まる

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の䣎た䣬た今確信したけど䣍あなたの女と

しての価値䣍とんでもなく低いわ䣎私と比

べるとゴミ以下䣔

怯えたような目で圭子を見つめている

美樹䣎

子䣓例えばあなた䣍どんなセ䣹クスして

る?つまらない淡泊なセ䣹クスしてそうね䣎

思う存分クンニしてもら䣬て適当にフ䣷ラ

して䣍基本マグロで自分がイけなか䣬たら

相手のせい䣎どうせそんなとこでし䣯?あ

なたの顔䣍そういう顔してるわ䣔

美樹䣍再び圭子に平手打ちをしようと

するが䣍その手首を掴む圭子䣎

子䣓私なら䣍大沢さんに本当の喜びを与

えることが出来る䣔

目を潤ませている美樹䣎

子䣓私がそれを䣍大沢さんに教えてあげ

る䣎あなたこそ引䣬込んでて䣔

美樹の手を振り払い䣍水道を止め䣍ト

イレを出る圭子䣎

肩を震わせながら崩れ落ちる美樹䣎

○電報堂・女子トイレ前䣢オフ䣵ス䣢エレベ

䤀タ䤀・中

圭子がトイレから出て来ると䣍その前

で心配そうに屯している女子社員らの

姿が䣎

圭子を見つめる彼女らに構わず歩き出

し䣍舌打ちをする圭子䣎

と䣍丁度䣍鞄を手に出て行こうとして

いる大沢の姿が䣎

圭子䣍大沢の姿を認めると䣍そのまま

大沢の方へ向かい䣍大沢が乗り込んだ

エレベ䤀タ䤀に身を滑り込ませる䣎

突然現れた圭子に驚く大沢䣎

大沢に向か䣬て微笑む圭子䣎

子䣓飲みましたよ䣍大沢ブレンド䣔

沢䣓ホント?どうだ䣬た?䣔

子䣓凄く好きです䣍私䣎何か䣍大沢さん

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䣬ぽい味で䣔

苦笑する大沢䣎

子䣓大沢さん䣍今䣍時間あります?䣔

沢䣓え䣍今?いや䣍無理だな䣎これから

外で打ち合わせ䣎夜は呑みだし䢧䢧どうし

たの?䣔

圭子䣍暫し考え䣍

圭 子䣓じ䣭あ明日䣎明日䣍会社にいら䣬し

䣭います?䣔

沢䣓ああ䢧䢧午前中なら䣎どうしたの?

何か䤀䤀䣔

エレベ䤀タ䤀内の他の人間を気にする

大沢䣎

子䣓じ䣭あ䣍明日の午前10時䣍屋上に

来て下さい䣎大事なお話があります䣎それ

から䣍田代という女の人䣍あの人から何を

聞いても絶対に信じないでください䣎あの

人䣍とんでもない嘘吐きです䣎大沢さん䣍

騙されてます䣔

沢䣓䥹苦笑して䥺ち䣯䣬と䢧䢧え䣍何?何

で?何かあ䣬たの?䣔

子䣓私だけなんです䣎大沢さんを本当に

喜ばせることが出来るのは䣍私だけ䣔

返す言葉が見つからない大沢䣎

エレベ䤀タ䤀の扉が開く䣎

子䣓明日午前10時䣍屋上で䣔

足早に歩き出す圭子䣎

取り残された大沢䣎

○警視庁・××署・捜査一課䥹夜䥺

堀川の預金通帳を調べている五十嵐䣎

通帳の或る部分を見て䣍五十嵐の目の

色が変わる䣎

×

×

×

作業中の石塚の所に五十嵐が来る䣎

五十嵐䣓おい䣎ボツにしたお前の調書䣍もう

一回見せてくれ䣔

塚䣓あ䣍はい䣔

石塚䣍デスクの引き出しから調書を取

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り出し五十嵐に渡す䣎

受け取り䣍それを検める五十嵐䣎

調書に䣓自殺と断定出来る䣔の文字䣎

五十嵐䣓この線でまとめるか䣔

塚䣓え䢧䢧䣔

五十嵐䣓俺がチ䣷䣹クしてた市営地下鉄の監

視カメラに尾花の姿が映䣬てた䣎土屋の死

亡推定時刻のほぼ二時間前だ䣔

塚䣓䢧䢧そうですか䣔

五十嵐䣓クサいと思䣬たんだがな䣎アイツは

シロだ䣎これ䣍良く書けてるよ䣎次の会議

で出そう䣔

塚䣓䢧䢧はい䣔

五十嵐䣓ご苦労さん䣔

と䣍石塚の肩を叩き席を立つ五十嵐䣎

○圭子のマンシ䣼ン・圭子の部屋䥹夜䣢日替

わり䣢朝䥺

鏡の前に座䣬ている圭子䣎

第九をハミングしつつ䣍丹念に顔にジ

䣷ルパ䣹クを塗り始める圭子䣎

×

×

×

パ䣹クし終わ䣬た圭子の顔䣎

不気味にテラテラと光䣬ているその顔

をジ䣹と見つめている圭子䣎

×

×

×

朝にな䣬ている䣎

同じように鏡台の前に座䣬ている圭子䣎

その顔はいつもの昼用のメイクではな

く䣍艶やかな夜用のメイクである䣎

立ち上がる圭子䣎

○電報堂・営業部オフ䣵ス

オフ䣵スにや䣬て来る圭子䣎

周りの社員たちが䣍いつもとは全く雰

囲気が違う圭子の方を見ている䣎

その中には䣍怯えた雰囲気を漂わせた

美樹もいる䣎

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そんな視線には全く反応せずに自分の

デスクへ向かい䣍いつも通りに仕事を

始める圭子䣎

×

×

×

思い詰めた様子で出社してくる大沢䣎

圭子のデスクの方をチラリと窺う大沢䣍

いつもと雰囲気が違う圭子に怪訝な表

情になる䣎

そんな大沢にも全く反応せず䣍仕事を

続けている圭子䣎

○電報堂・屋上

既に屋上で待䣬ている圭子䣍扉が開く

音に振り返る䣎

屋上に姿を現したのは大沢䣎

子䣓䥹微笑んで䥺すいません䣎お忙しいの

に䣔

応えない大沢䣎

圭子䣍大沢に歩み寄り䣍

子䣓大沢さん䣍あの䣍いきなりこんな事

䤀䤀䣔

沢䣓䥹遮䣬て䥺昨日䣍美樹から聞いた䣎君

と美樹が話した事䣍その内容も䣎は䣬きり

言わせてもらうけど䣍君ね䣍社会人として

あり得ないよ䣎䣕女の価値が低い䣖とか何と

か䣍美樹に言䣬たんだ䣬て?䣔

子䣓大沢さん䣍あんな女の言うこと䣍信

じるの?䣔

沢䣓信じる䣎それに悪いけど䣍もう君の

言うことは信用出来ない䣔

子䣓䢧䢧何か䣍悲しいなあ䣔

沢䣓は?悲しい?何言䣬てんだよ䣎悲し

んでるのは君に酷いこと言われた美樹の方

だよ䣎尾花さんさ䣍ホント何考えてんの?

何がしたいんだよ?䣔

子䣓䢧䢧私がしたいことは一つだけ䣔

と䣍圭子䣍大沢を見据え䣍

子䣓あなたとの結婚です䣔

固まる大沢䣎

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子䣓私と結婚して下さい䣔

唖然とする大沢䣎

子䣓私䣍大沢さんの事がず䣬と好きだ䣬

たの䣎大沢さんは䣍ハンサムだしスタイル

良いし教養もあ䣬て仕事も出来て非の打ち

所がない素晴らしい人でし䣯?自分で言う

のも何だけど䣍私䣍そんな大沢さんに世界

一相応しい女だと思うの䣎だ䣬て䣍私䣍女

の価値䣬て男の人をどれだけ喜ばせられる

かで決まると思䣬てるんだけど䣍大沢さん

を喜ばすことに関してなら私が世界一よ䣔

たじろぐ大沢䣎

子䣓これ見て䣔

デジカメを取り出し䣍写真をビ䣻ア䤀

に表示する圭子䣎

子䣓この間も見てもら䣬たけど䣍これ䣍

イ䤀ムズのソフ䣴䣎カ䤀ペ䣹トはブリント

ンズで䣍テ䤀ブルはマスタ䤀ウ䣸䤀ル䣎全

部䣍大沢さんが好きなブランドでし䣯?集

めるの䣍大変だ䣬たんだから䣎あ䣍これ䣍

レプリカなんだけど䣍大沢さんの好きなド

ガの䣕花形䣖䣎ドガの絵䣬てこのインテリア

には強すぎるかな䤀䣬て思䣬たんだけど䣍

全然そんなことなくて䣎流石䣍大沢さん䣬

て感じで䣔

まくし立てる圭子に気圧される大沢䣎

子䣓この部屋䣍実は大沢さんと二人で住

む為に用意したの䣎この会社まで銀座線で

一本だし䣍良いでし䣯?ホラ䣍このベ䣹ド

もキングサイズで䣍あ䣍これシモンズね䣎

ここに大沢さんと二人で寝るんだ䣬て考え

たら䣍興奮して眠れなくな䣬ち䣭䣬たりし

て䣎それから䣍代官山の料理教室にも通䣬

て料理も勉強したの䣎大沢さんの好きなイ

タリアン䣍レシピは百以上作れるようにな

䣬たよ?䣔

沢䣓ち䣯䣬とさ䣍あの䤀䤀䣔

子䣓私䣍体の相性も大事だと思䣬てる䣎

大沢さん䣍一回䣍私とセ䣹クスしてみない?䣔

絶句する大沢䣎

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38

子䣓結婚を考えるのは䣍それからでもい

いよ䣎ま䣍自信あるけど䣍私䣔

既に䣍諦めたような表情の大沢䣎

子䣓ごめんね䣎急にこれだけ色々聞かさ

れち䣭うと䣍や䣬ぱり戸惑うよね䢧䢧ねえ䣍

今すぐ返事しなくてもいいから䣎でも私䣍

本当に䣍大沢さんの為だけに生まれてきた

ようなものなの䣎だから䤀䤀䣔

内ポケ䣹トからスマ䤀トフ䣸ンを取り

出し䣍圭子の眼前に突きつける大沢䣎

沢䣓䢧䢧録音した䣔

子䣓え䢧䢧?䣔

沢䣓ウチの人事部と䣍君の派遣会社にこ

れを聞かせる䣎悪いけど䣍辞めて貰う䣔

と䣍踵を返して歩き出す大沢䣎

子䣓ち䣯䣬と䣍大沢さん䣔

と䣍大沢の後を追䣬て歩き出す圭子䣎

子䣓あの䣍辞める䣬ていうのは䣍私との

結婚が前提で䣬てこと?だ䣬たら私䣍自分

から䤀䤀䣔

沢䣓䥹振り返り䥺うるさい!ついて来る

な!俺に話しかけるな!二度と!俺と美樹

の前に現れるな!䣔

言い放䣬て䣍屋上から出て行く大沢䣎

一人䣍取り残された圭子䣎

○電報堂・小会議室

険しい顔をした大沢ら営業部䣍人事部䣍

派遣会社の面々の前に立䣬ている圭子䣎

大沢の方を見る圭子䣎

その視線を躱す大沢䣎

表情一つ変えず䣍挨拶もせずに部屋を

出て行く圭子䣎

○電報堂・営業部オフ䣵ス

周りの社員がチラチラと様子を窺う中䣍

私物を整理している圭子䣎

と䣍圭子の携帯が着信する䣎送られた

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39

メ䤀ルは野田から䣎

本文には䣍䣕今日×時に××䣍大丈夫?

僕の行きつけのお店に圭子ち䣭んを連

れて行きたい䣖との内容䣎

しばし画面を見つめ䣍やがてフフフと

笑い出す圭子䣎

圭子の笑い声は段々と大きくなり䣍周

りの社員たちは何事かと訝しんで圭子

の方を見ている䣎

圭子䣍笑うのを止めると䣍ゆ䣬くりと

周りの社員らを睨め付ける䣎曖昧に視

線を逸らす周りの社員たち䣎

美樹の方を見る圭子䣎

怯えるように視線を逸らす美樹䣎

圭子䣍小馬鹿にするように笑うと䣍ま

とめた私物をゴミ箱に放り投げ䣍オフ

䣵スを出て行く䣎

○某所・街中䥹夜䥺

一人佇み䣍虚空を見つめている圭子䣎

圭子の眼前を䣍仕事を終えたサラリ䤀

マン䣍仲睦まじいカ䣹プルなどの人波

が流れすぎていく䣎

と䣍圭子の傍に野田がや䣬て来る䣎

田䣓お待たせ䣔

振り向いて䣍微笑む圭子䣎

田䣓行こ䣬か䣔

先導するように歩き出す野田䣎

圭子の表情から笑みが消える䣎

○居酒屋・店内䥹夜䥺

ガ䤀ド下にあるような大衆的な居酒屋䣎

客の喧噪䣍有線の音楽䣍煙草の煙が充

満している店内䣎

表情のない顔で座䣬ている圭子䣎

そんな圭子を気にしながらメニ䣻䤀を

見ている野田䣎

田䣓圭子ち䣭ん䣍何飲む?䣔

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40

子䣓野田さんと同じでいい䣔

田䣓食べたいものは?何かある?䣔

子䣓うん䢧䢧任せる䣔

田䣓ここ䣍店はこんな感じだけど䣍味は

結構イイ䣬て評判なんだよ䣎唐揚げとか䣍

煮込みとか䣔

圭 子䣓じ䣭あ䣍その二つ䣔

野 田䣓䢧䢧圭子ち䣭ん䣍大丈夫?䣔

子䣓何が?䣔

田䣓何か䣍元気が無い䣬ていうか䣔

子䣓別に䣎大丈夫䣔

釈然とせず䣍愛想笑いを浮かべる野田䣎

×

×

×

テ䤀ブルに料理が並んでいる䣎

ビ䤀ルをあおり䣍唐揚げを頬張る野田

の傍ら䣍何にも手をつけず䣍ただジ䣹

と座䣬ている圭子䣎

田䣓䢧䢧圭子ち䣭ん䣍今日は何か䣍一段

と綺麗な感じ䣔

子䣓ありがとう䣔

続かない二人の会話䣎

田䣓食べないの?䣔

子䣓お腹䣍空いてなくて䣔

田䣓そう䢧䢧そうだ䣍お父さんの様子䣍

どう?䣔

真下を向くように䣍項垂れる圭子䣎

子䣓さあ䣍どうなんでし䣯う䣎大丈夫な

んじ䣭ないですか䣔

野田の箸が止まる䣎

田䣓䢧䢧圭子ち䣭ん䣍ホント䣍今日䣍何

か変だよ䣎どうしたの?䣔

顔を上げる圭子䣍その目からは涙が零

れている䣎

驚く野田䣎

田䣓䢧䢧圭子ち䣭ん䣍もし何か䣍辛いこ

とがあるなら䣍僕に相談してよ䣎僕䣍何が

あ䣬ても圭子ち䣭んの味方だし䣍ず䣬と圭

子ち䣭んらしく䣍いてもらいたいからさ䣔

圭子䣍涙を拭い䣍

子䣓別れまし䣯う䣔

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田䣓え䢧䢧?䣔

子䣓別れまし䣯う䣍私たち䣔

田䣓え䢧䢧何で䢧䢧何?どうして?䣔

子䣓さようなら䣔

圭子䣍立ち上が䣬てそのまま店の出口

に向か䣬てスタスタと歩いて行く䣎

あたふたと追いかけていく野田䣎

○居酒屋・表䥹夜䥺

居酒屋から出て来る野田䣍歩いて行く

圭子の姿を認め䣍追いかけていく䣎

圭子の前に回り込んで制止する野田䣎

野田を冷たい表情で見つめる圭子䣎

田䣓何だよ䢧䢧どうしたんだよ䢧䢧僕䣍

さ䣬ぱり分かんないよ䣍圭子ち䣭んが考え

てること䣔

子䣓私䣍や䣬ぱり無理です䣎あなたとの

お付き合い䣔

田䣓何で?何でだよ䢧䢧だ䣬て䣍今まで

僕たちうまくや䣬て䤀䤀䣔

子䣓私䣍アナタなんかに収まるようなレ

ベルの女じ䣭ないの䣔

田䣓䢧䢧え?䣔

子䣓財産は無い䣍仕事はシ䣼ボい䣍着て

いる服はダサい䣍セ䣹クスは下手䣍付き合

䣬ている女をあんな下品な居酒屋に連れて

行く䣎アナタ䣍それでも自分が私に相応し

い男だと思䣬てるの?アナタ䣍私の女とし

ての価値を理解してないでし䣯?䣔

豹変した圭子に言葉を失う野田䣎

子䣓今後一切䣍私に近づかないで䣎連絡

もしてこないで䣎それから䣍アナタに貰䣬

たお金䣍全部使䣬たから䣎今更返せとか言

われても遅いし䣍私に返済義務が生じる法

的な根拠も無い䣎私䣍知り合いに有能な弁

護士いるから䣎以上の事で私に迷惑をかけ

るようなら䣍即䣍アナタを訴える䣔

何も言えない野田䣎

子䣓感謝して䣎いい思いさせてあげたん

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だから䣔

圭子䣍野田を躱して足早に歩いて行く䣎

圭子に追いすがり䣍立ちはだかる野田䣎

子䣓どいて䣔

潤んだ目で圭子を見つめている野田䣎

子䣓どけ䣔

野 田䣓䥹半泣きで䥺圭子ち䣭䢧䢧僕䢧䢧䣔

圭 子䣓殺すわよ?䣔

立ちすくむ野田䣎

野田の傍らをすり抜け䣍歩き去る圭子䣎

腰が抜けたように崩れ落ちる野田䣎

○圭子のマンシ䣼ン・表䥹夜䥺

タクシ䤀が停ま䣬て圭子が降りてくる䣎

と䣍タクシ䤀の前に車が停まり䣍五十

嵐が降りてくる䣎

圭子䣍五十嵐に気付き䣍驚いた様子で

立ち止まる䣎

五十嵐䣓こんばんは䣎警視庁の五十嵐です䣎

先日䣍土屋慎一さんの件で䣔

子䣓あ䣍はい䢧䢧どうも䣍こんばんは䣔

五十嵐䣓尾花さん䣎堀川憲司さん䣍ご存じで

すね䣔

子䣓䢧䢧はい䣔

五十嵐䣓堀川さん䣍お亡くなりになりました䣎

自宅の風呂場で䣍またしても䣍練炭の不完

全燃焼による一酸化炭素中毒死です䣔

ジ䣹と五十嵐を見つめている圭子䣎

五十嵐䣓すいませんが䣍ご同行願えますか䣔

○野田家・居間䣢野田の部屋䥹夜䥺

呆然と立ち尽くしている野田䣎

部屋の中は䣍泥棒が荒らしたかの如く

散らか䣬ている䣎

と䣍佐知子が部屋から飛び出してきて䣍

野田に縋り付く䣎

佐知子䣓知也!また出たんよ䣍ネズミが!前

より大き䣮うな䣬と䣬て䣍お母さん䣍食べ

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られそうにな䣬たんよ䣍ネズミに!䣔

無反応の野田䣎

佐知子䣓知也䣍お母さんね䣍もうこげなとこ

居れん䣎あんた䣍お母さんと一緒に帰らん

ね䣍岡垣に䣎どうね?こげなとこお䣬たら䣍

お母さんもあんたもネズミに䤀䤀䣔

と䣍いきなり絶叫し出す野田䣎

驚いて䣍身を強張らせる佐知子䣎

田䣓うるせえ!いい加減にせえ!ネズミ

か何か知らんけど䣍もうウンザリなんた

い!あんたね䣍自分がどんだけ頭がおかし

いか分か䣬とらんやろ!!え!?付き合わ

されるコ䣹チの気にもな䣬てみい!䣔

佐知子䣓知也䣍あんた䤀䤀䣔

田䣓全部お前のせいたい!何も上手くい

かん䣍何もかんも全䣬然上手くいかん!お

前みたいな頭のおかしいヤツと一緒におる

けえよ!帰るんや䣬たら一人で帰れ!おら

んくなれ!䣔

と䣍野田の頬を佐知子が力一杯叩く䣎

驚いて佐知子を見る野田䣎

佐知子䣓䢧䢧お前䣍あれやろ?仲間やろ䣍ネ

ズミの䣎ネズミと一緒にな䣬て䣍あたしを

追い出そうちしよんやろ?䣔

佐知子を睨み付ける野田䣎

佐知子䣓いや䣍アンタこそネズミよ䣎アンタ

や䣬たんやね䣍ネズミは䢧䢧どうするんね䣍

あたしのこと䣍殺すんね?䣔

佐知子を睨み付けている野田䣎

佐知子䣓殺すんや䣬たら殺してみい!え

え!?や䣬てみい!䣔

目に涙を浮かべて佐知子を睨み付けて

いる野田䣎

鬼気迫る表情で野田を睨み付けている

佐知子䣎

野田䣍身を翻し䣍逃げるように自分の

部屋に入ると䣍ズルズルと崩れ落ちる䣎

野田の目から䣍ポロポロと涙が溢れる䣎

嗚咽を漏らし出す野田䣎

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○湾岸地帯・空き地䥹夜䥺

土屋の遺体が発見された場所に䣍五十

嵐の車が滑り込んできて停まる䣎

車内には䣍運転席に五十嵐䣍助手席に

圭子䣎

圭 子䣓あの䢧䢧ここは?䣔

五十嵐䣓ご存じじ䣭ありませんか䣔

子䣓いえ䢧䢧初めて来ます䣔

五十嵐䣓そうですか䣎おかしいな䣔

二人の間に䣍探り合うような沈黙䣎

五十嵐䣓まあいい䣎先ず䣍お亡くなりにな䣬

た堀川さんとあなたのご関係をお聞かせ願

えますか䣔

子䣓すいません䢧䢧あの䢧䢧これは正式

な取調ですか?䣔

五十嵐䣓ええ䣎署の取調室では色々と不都合

がありましてね䣔

子䣓䢧䢧私䣍家事代行サ䤀ビスに登録し

ていたんです䣎それを通じて䣍堀川さんと

お知り合いになりました䣔

五十嵐䣓堀川さんの所に通われていた期間は䣔

子䣓確か䢧䢧去年の9月から䣍今年の2

月ぐらいまでです䣔

五十嵐䣓失礼ですが䣍月にどれぐらいの支払

いがありましたか?䣔

子䣓通䣬た日数にもよりますが䣍大体1

5万円ぐらいです䣔

五十嵐䣓現金で?䣔

子䣓はい䣔

五十嵐䣓支払いは月末ですか?䣔

子䣓はい䣎その月の私がお手伝いに行く

最後の日です䣔

五十嵐䣓ここに䣍堀川さんの通帳のコピ䤀が

あります䣔

圭子に通帳のコピ䤀を見せる五十嵐䣎

そこにマ䤀クされた箇所には䣍150

䣢200万の現金の引き出しが記録さ

れている䣎

五十嵐䣓マ䤀クしてある箇所は䣍百万を越え

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る高額の引き出しの箇所です䣎その期間な

んですが䣍ぴ䣬たり去年の9月から今年の

2月まで䣍それぞれの月末のみ䣎つまり䣍

あなたが堀川さんの家にお手伝いに通䣬て

いた時期にピタリと符合する䣎それ以外に䣍

高額の引き落としは全く無い䣎これは䣍ど

ういうことでし䣯う䣔

黙り込む圭子䣎

圭子を見据える五十嵐䣎

子䣓私䣍堀川さんとセ䣹クスしてました䣔

五十嵐の表情が強張る䣎

子䣓堀川さんの家に通䣬た日はほぼ毎日

です䣎お手伝いの給料とは別にその対価も

いただいてまして䣍それを含めると䣍月々

150万円以上のお支払いをいただいてい

ました䣎これで䣍ご納得いただけますか?䣔

静まりかえる車内䣎

と䣍五十嵐が不敵に笑う䣎

五十嵐䣓今日一緒にいた男䣍あれが新しい金

ヅルか?ああいうし䣯䣬ぱい感じのヤツが䣍

お前みたいな女に引䣬かかるんだな䣔

五十嵐を見つめる圭子䣎

五十嵐䣓前の取調の後な䣍廊下でエレベ䤀タ

䤀待䣬てる時䣍お前䣍自分の爪見てただろ?䣔

思い返すように黙り込む圭子䣎

五十嵐䣓あれでお前の事クサいと思䣬たんだ

よ䣎普通の神経の奴はあんな時に自分の爪

なんか見ねえ䣎で䣍お前が車を降りた時間

の前後二時間分の桜木町近辺の地下鉄の防

犯カメラ䣍全部調べたけどな䣍お前の姿は

どこにも映䣬てない䣔

五十嵐䣍手元のフ䣴イルから数枚の写

真を取り出す䣎

五十嵐䣓これ䣍堀川の口座から百万円以上の

金が下ろされた時のATMの防犯カメラの

写真䣎これ䣍全部お前だろ?䣔

写真にはそれぞれ䣍圭子と思しき女の

姿が映䣬ている䣎

五十嵐䣓ちなみに䣍堀川の姿は全くカメラに

映䣬てない䣎お前が堀川の口座から勝手に

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金を下ろしてた䣬てコトだな䣎次䣍コレ䣔

と䣍五十嵐が取り出したのは䣍睡眠薬

のケ䤀スと䣍指紋鑑定証明書䣎

五十嵐䣓土屋が使用した睡眠薬と堀川の家に

あ䣬た睡眠薬は同じ物だ䣬た䣎しかも䣍そ

れらから採取された指紋と䣍前の取調の時

にお前が触䣬た机から採取した指紋䣍全部

一致した䣎他にも䣍土屋の口座履歴䣍お前

の口座履歴䣍七輪と練炭の入手ル䤀ト䣍調

べればお前に不利な証拠はいくらでも出て

来る䣔

ジ䣹と窓外を見つめて微動だにしない

圭子䣎

五十嵐䣓ここがどういう場所か䣍まだ思い出

せねえか?䣔

子䣓䢧䢧最初はち䣯うどこんな感じで䣍

二人で座䣬てたわ䣎私が運転席で䣍土屋は

阿呆面で寝てたけど䣔

ゆ䣬くりと五十嵐の方を向く圭子䣎

子䣓で䣍殺したの䣔

圭子の視線に䣍一瞬䣍凍り付く五十嵐䣎

子䣓それで?アナタの望みは何?䣔

五十嵐䣓お前䣍金持䣬てんだろ䣔

子䣓いくら?䣔

五十嵐䣓二千万䣔

子䣓あるわ䣔

五十嵐䣓それで全部忘れてやる䣔

子䣓分か䣬た䣎用意するわ䣎でも䣍あな

たが忘れてくれる䣬ていう確実な保証はど

こにあるの?䣔

五十嵐䣓無えよ䣍そんなもん䣎ま䣍そうだな

䢧䢧䥹自嘲気味に笑い䥺思うんだが䣍俺と

お前は同じ類の人間だ䣎同類を信用しろ䣔

子䣓どこが?どこが同類なの?䣔

五十嵐䣓ああ?䣔

子䣓私とアナタは同類なんかじ䣭ない䣎

一緒にしないで䣔

五十嵐を厳しく見据える圭子䣎

その視線に思わず圭子の横面を平手で

殴る五十嵐䣎

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五十嵐䣓調子に乗んじ䣭ねえぞ䣍クソアマ䣔

圭子の口元から血が流れる䣎

子䣓䢧䢧もし私が捕ま䣬たら䣍あなたの

コトを全部ばらすわ䣔

睨み合う二人䣎

五十嵐䣍圭子から視線を逸らし䣍エン

ジンをかける䣎

五十嵐䣓明日だ䣎一千万䣎いいな?䣔

五十嵐を見据えている圭子䣎

○小田急線新宿駅・西口改札䣢2番ホ䤀ム䥹日

替わり䥺

紙袋を手にして改札をくぐる圭子䣎

五十嵐の声䣓それを䣍出来るだけ暗い色の小

さい紙袋に入れて䣍昼の十二時丁度に小田

急線新宿駅の2番ホ䤀ムに来い䣔

×

×

×

2番ホ䤀ムにや䣬て来る圭子䣎

五十嵐の声䣓そこでお前の携帯に電話する䣎

お前の事は離れた場所から常に監視してる䣎

俺はプロだ䣎余計なマネするなよ䣔

ホ䤀ムの案内板の時計は11時50分

を指している䣎

周りを一切窺わずにベンチに座る圭子䣎

ホ䤀ムに特急電車が滑り込んでくる䣎

×

×

×

案内板の時計は12時を回䣬ている䣎

先程と同じ姿勢で座䣬ている圭子䣎

と䣍圭子の携帯が鳴る䣎

表示されている番号は䣕非通知䣖䣎

電話に出る圭子䣎

五十嵐の声䣓周りを見回さずに聞け䣎紙袋を䣍

ゆ䣬くり䣍誰にも気付かれないようにベン

チの下に置いて䣍そこの電車に乗れ䣔

虚空を見つめたまま䣍微動だにしない

圭子䣎

五十嵐の声䣓早くしろ䣎電車が出るぞ䣔

と䣍通話が切られる䣎

圭子䣍手にした紙袋をゆ䣬くりとベン

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チの下に置いて立ち上がると䣍そのま

ま電車に乗る䣎

適当な席に座り䣍窓からベンチの方を

見つめている圭子䣎

発車のベルが鳴り䣍電車のドアが閉ま

る䣎

ゆ䣬くりと動き出す電車䣎

と䣍ホ䤀ムに五十嵐が現れて䣍ベンチ

の下の紙袋を手にするとそのまま圭子

の方には目もくれずに去䣬ていく䣎

スピ䤀ドを上げ始めた電車の中から䣍

ず䣬と五十嵐の方を見つめている圭子䣎

○小田急線新宿駅・西口前・表

紙袋を自分のバ䣹グに入れながら出て

来る五十嵐䣎

帽子を脱いで息を吐くと䣍不適に笑う

五十嵐䣎

○五十嵐の家・リビング䥹夕䣢夜䥺

帰䣬てくる五十嵐䣎

バ䣹グから紙袋を出してその中を検め

る五十嵐䣎

五十嵐䣍携帯を取り出し䣍番号を検索

して発信する䣎

五十嵐䣓䥹相手が出て䥺俺だ䣎金䣍用意したぞ

䢧䢧ああ䢧䢧分か䣬た䢧䢧じ䣭䣍明日䣔

電話を切り䣍テ䤀ブルのグラスを手に

する五十嵐䣎

焼酎を注ぐとそれを一気に呷る

×

×

×

夜になり䣍室内をテレビの灯りが照ら

している䣎

ソフ䣴に横になり眠䣬ている五十嵐䣎

五十嵐の背後から近付いてくる女の人

影䣎

その気配に目を覚ます五十嵐䣎

五十嵐䣓䢧䢧メグミか?䣔

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と䣍五十嵐の首筋にスタンガンが押し

当てられ䣍青い電光が迸る䣎

声ならぬ声を上げ䣍床に倒れる五十嵐䣎

五十嵐が見上げた先には䣍レインコ䤀

トを着た圭子の姿䣎

包丁を振りかざし䣍五十嵐に襲いかか

る圭子䣎

五十嵐の胸䣍首䣍顔面に何度も振り下

ろされる包丁䣎

五十嵐䣍抵抗しようとするが䣍その手

は空を掴む䣎

ブルブルと痙攣し䣍やがて䣍血の海の

中で動かなくなる五十嵐䣎

立ち上が䣬てレインコ䤀トのフ䤀ドを

外し䣍五十嵐を見下ろす圭子䣎

圭子䣍振り返るとテ䤀ブルの方へ向か

い䣍その上に置かれたままの紙袋を手

にする䣎

紙袋の中から一番下の札束を手にする

と䣍その札束をくりぬいて出来た穴に

隠されていたスマ䤀トフ䣸ンを取り出

す圭子䣎

圭子䣍スマ䤀トフ䣸ンのGPS画面を

確認し䣍う䣬すらと笑う䣎

圭子䣍札束とスマ䤀トフ䣸ンを紙袋に

戻してレインコ䤀トを脱ぎ䣍小さく畳

むと持参したビニ䤀ル袋に入れる䣎

圭子䣍リビングを出ようとして䣍サイ

ドボ䤀ドの上の伏せられた写真立てに

気付く䣎

写真立てを手にし䣍裏返す圭子䣎

そこには䣍平凡だが幸せそうな五十嵐

とその妻䣍息子の姿が映されている䣎

写真の中の五十嵐の妻を見つめる圭子䣎

子䣓䢧䢧つまんない女䣔

写真立てを伏せて置き䣍出て行く圭子䣎

○圭子のマンシ䣼ン・圭子の部屋䥹夜䥺

第九をハミングしつつ䣍キ䣹チンで包

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50

丁を洗䣬ている圭子䣎

×

×

×

ソフ䣴に仰向けになり䣍自慰をしてい

る圭子䣎

スタンガンのスイ䣹チを入れて電流を

弱め䣍自分の脇腹に押し当てる䣎

ビクンと仰け反る圭子の体䣎

圭子の喘ぎ声が段々と激しくな䣬てく

る䣎

再び䣍スタンガンを自分の脇腹に押し

当てる圭子䣎

子䣓大沢さん䢧䢧䣔

恍惚とした笑みを浮かべる圭子䣎

○電報堂・喫煙室䥹日替わり䥺

一人䣍煙草を吸䣬ている大沢䣎

䣓クサイ䣔

大沢が振り向くと䣍入口から美樹が姿

を覗かせている䣎

沢䣓䢧䢧おう䣔

樹䣓何ボ䤀䣹としてんの?䣔

沢䣓うん䣍ち䣯䣬と䣍考え事䣔

樹䣓䢧䢧アイツのこと?䣔

沢䣓䢧䢧なんか䣍思い出すと薄気味悪く

てさ䣎屋上で話した時のアイツ䣍ち䣯䣬と

イ䣹ち䣭䣬てるような感じで䢧䢧目がさ䣍

何か䣍ただの黒い穴みたいに見えて䢧䢧䣔

樹䣓䢧䢧ねえ䣔

美樹の方を見る大沢䣎

樹䣓䥹微笑んで䥺今日䣍家行䣬ていい?䣔

沢䣓䥹も䣍微笑んで䥺䢧䢧いいよ䣎俺䣍今

日䣍車で来てるから䣎乗せてくよ䣔

樹䣓うん䣎分か䣬た䣎じ䣭䣍後で䣔

沢䣓おう䣔

オフ䣵スに戻䣬ていく美樹䣎

その背中を䣍愛おしそうに見つめる大

沢䣎

○大沢のマンシ䣼ン・地下駐車場䥹夜䥺

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51

大沢の車が滑り込んでくる䣎

×

×

×

大沢の車が駐車スペ䤀スに入り䣍エン

ジンが切られる䣎

シンと静まりかえる駐車場䣎

大 沢䣓荷物䣍俺持䣬ていくわ䣔

美 樹䣓うん䣍ありがと䣔

シ䤀トベルトを外し䣍車を降りる大沢䣎

その刹那䣍物陰に隠れていた圭子が飛

び出してきて䣍大沢の首筋にスタンガ

ンを押し当てる䣎

声を上げ䣍気絶して崩れ落ちる大沢䣎

咄嗟の出来事に呆然としている美樹に䣍

間髪入れずに襲いかかる圭子䣎

逃げる間もなく首筋にスタンガンを押

し当てられ䣍気絶する美樹䣎

静まりかえる駐車場䣎

圭子䣍休むことなく大沢を後部座席に

引きずり入れ䣍続けて䣍助手席の美樹

を引きずり下ろす䣎

美樹の顔を見つめる圭子䣍包丁を抜く䣎

駐車場の入口の方から䣍車が入䣬てく

る音が聞こえる䣎

圭子䣍一瞬逡巡するが䣍包丁を収める

と運転席に滑り込み䣍車を発車させる䣎

滑るように駐車場を走り去䣬ていく車䣎

○大沢の朦朧としたイメ䤀ジ・点描䥹夜䥺

どこか遠くで響くように䣍圭子の第九

のハミングが聞こえている䥹以下䣍圭

子の部屋まで䥺䣎

後部座席で朦朧としている大沢䣎

運転している圭子の後ろ姿䣎

窓外を流れ去䣬ていく街の光䣎

×

×

×

駐車場で車から下ろされ䣍台車に乗せ

られる大沢の主観䣎

×

×

×

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52

台車に乗せられて運ばれている大沢の

足が䣍マンシ䣼ンの廊下の地面を擦䣬

ている䣎

○圭子のマンシ䣼ン・圭子の部屋䥹夜䥺

朦朧とした視界䣎

椅子に座らされ䣍後ろ手に手錠をかけ

られている大沢䣎

両足は椅子の脚にきつく縛られている䣎

う䣬すらと目を開ける大沢䣎

猿ぐつわが噛まされ䣍胴体は椅子に縛

り付けられている䣎

大沢の眼前には䣍綺麗にセ䣹テ䣵ング

されたテ䤀ブル䣎

燭台には蝋燭が灯され䣍花が飾られ䣍

フルコ䤀スのセ䣹テ䣵ングが設えられ

ている䣎

䥹どこか遠くで響いていた第九のハミ

ングが䣍段々と近くに聞こえてくる䥺

ドレスを着た圭子が前菜を運んでくる䣎

子䣓あ䢧䢧良か䣬た䢧䢧目䣍醒めました

ね䣔

濡れたタオルで䣍大沢の顔を拭う圭子䣎

子䣓ごめんなさいね䣍乱暴な事をしてし

ま䣬て䣔

それを拒むように顔を背け䣍うなり声

を上げる大沢䣎

圭子䣍苦笑して大沢に顔を近づけ䣍

子䣓あの女䣍私しか知らない場所に監禁

してあります䣎これから䣍私の言うことを

聞かなか䣬たり大声を出したりしたら䣍あ

の女を殺します䣔

圭子を睨み付ける大沢䣎

子䣓いいですね?䣔

圭子を睨み付けている大沢䣎

返事を促すように首をかしげる圭子䣎

暫しして䣍仕方なく頷く大沢䣎

微笑みを浮かべ䣍大沢の猿ぐつわを外

す圭子䣎

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53

沢䣓䢧䢧ここ䣍お前の部屋か䣔

子䣓違う䣎私と䣍あなたの部屋よ䣎それ

から私の事䣍お前䣍じ䣭なくて䣍ケイコ䣬

て呼んで䣔

沢䣓䢧䢧美樹は䣎美樹をどうした?䣔

子䣓次にあの女の事を口に出したら䣍あ

なたも䣍あの女も殺す䣔

テ䤀ブルの上に置かれた包丁とスタン

ガン䣎

子䣓今夜は䣍私とあなただけの夜なの䣔

沢䣓䢧䢧何がしたいんだよ䣔

子䣓あなたを喜ばせたいだけ䣎それが私

の喜びなの䣎あなたが喜べば䣍私も喜ぶ䣎

そうや䣬て䣍愛し合う二人が共に喜びに満

たされることが䣍人生で一番幸せな事䣎そ

う思わない?䣔

圭子を怖れるような䣍睨むような目で

見つめる大沢䣎

子䣓あなたの為に䣍イタリアンのフルコ

䤀ス作䣬たの䣎食べてくれる?䣔

渋々と頷く大沢䣎

子䣓頷くだけじ䣭駄目䣎勿論だよ䣍圭子䣎

言䣬て䣔

躊躇う大沢䣎

子䣓言䣬て䣔

沢䣓䢧䢧勿論だよ䢧䢧ケイコ䣔

ニ䣹コリと笑う圭子䣎

子䣓じ䣭䣍食べさせてあげる䣎まずアン

テ䣵パスト䣎カジキマグロとトマトのコペ

ルト䣎はい䣔

と䣍フ䣸䤀クで大沢の口元に料理を運

ぶ圭子䣎

怖ず怖ずと大沢が口を開け䣍その中に

料理が運ばれる䣎

ゆ䣬くりと咀嚼する大沢䣎

子䣓バジルソ䤀スは䣍私のオリジナルレ

シピなの䣎美味しい?䣔

ゆ䣬くりと頷く大沢䣎

微笑む圭子䣎

子䣓次は䢧䢧これ䣍メジナの香草パン粉

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焼き䣎はい䣔

と䣍再び料理を大沢の口に運ぶ圭子䣎

口に入れ䣍ゆ䣬くりと咀嚼する大沢䣎

子䣓どう?䣔

頷く大沢䣎

子䣓口に出して言䣬て䣔

大 沢䣓䢧䢧美味しい䣔

圭 子䣓どれぐらい美味しい?䣔

沢䣓䢧䢧すごく䣍美味しい䣔

子䣓すごく美味しいよ䣍圭子䣔

沢䣓䢧䢧すごく美味しいよ䣍ケイコ䣔

子䣓嬉しい䢧䢧ねえ䣍ワインも飲んで䣎

ム䤀トンの02年䣎大沢さん䣍ム䤀トン好

き䣬て言䣬てたでし䣯?䣔

ワインをグラスに注ぎ䣍大沢の口につ

ける圭子䣍飲むのを強制するようにグ

ラスを傾ける䣎

と䣍むせてワインを吐き出してしまう

大沢䣎

子䣓あ䢧䢧ごめんなさい䢧䢧䣔

と䣍ナプキンで大沢の口周りや喉元を

拭う圭子䣎

胸元にもワインが溢れており䣍圭子䣍

大沢のシ䣺ツのボタンを外し䣍ワイン

に濡れた胸元を拭く䣎

暫く大沢の胸元を拭く圭子䣍が䣍急に

ナプキンを放り捨て䣍大沢の胸元に舌

を這わせる䣎

反射的に身を捩る大沢䣎

子䣓動いち䣭ダメ䣔

圭子䣍大沢の胸元を満遍なく舐め回し

ながら䣍乳首䣍腹䣍と舐め進んでいき䣍

大沢のズボンのベルトを外し始める䣎

沢䣓䢧䢧やめてくれ䣔

圭子䣍ベルトを外し終えると䣍ズボン

のジ䣹パ䤀に手をかけ䣍ゆ䣬くりと引

き下ろす䣎

大沢の呼吸が荒くなる䣎

圭子䣍大沢の陰茎を手に握り䣍根元か

ら先端に向か䣬て舌を這わせる䣎

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大沢の顔を見上げ䣍不適に笑う圭子䣎

怯えているように顔を歪ませる大沢䣎

圭子䣍大沢の陰茎を口に含むと䣍ゆ䣬

くりと上下にしごきだす䣎

押し寄せる快感に抗うように䣍顔を上

げる大沢䣎

○大沢のマンシ䣼ン・地下駐車場䥹夜䥺

頬を叩かれ䣍目を開ける美樹䣎

中年男が美樹の顔を覗き込んでいる䣎

中年男䣓君䣍大丈夫!?どうしたの?䣔

樹䣓䢧䢧俊輔䢧䢧俊輔は?䣔

中年男䣓俊輔?誰?君の知り合い?䣔

美樹䣍体を起こし䣍

樹䣓俊輔䢧䢧車䣍無い䢧䢧ああ䣍どうし

よう䢧䢧䣔

小刻みに震え出す美樹䣎

中年男䣓何?どうしたの?その男に何かされ

たの?䣔

美樹䣍ハ䣹と何かに気付いたように辺

りを見回すと䣍美樹のバ䣹グが離れた

ところに落ちている䣎

美樹䣍バ䣹グをたぐり寄せると䣍その

中から携帯電話を取り出す䣎

○圭子のマンシ䣼ン・圭子の部屋䥹夜䥺

大沢の股間から顔を上げる圭子䣎

顎を上げて喘いでいる大沢䣎

圭子䣍大沢の陰茎を掴んだままその上

に跨り䣍ゆ䣬くりと大沢の陰茎を自分

の膣の中に埋める䣎

圭子の口から吐息が漏れる䣎

ゆ䣬くりと腰をこね始める圭子䣎

大沢の呻き声が漏れる䣎

子䣓気持ち良いでし䣯?䣔

顔を伏せて耐えている大沢䣎

子䣓ねえ䣍気持ち良い?䣔

顔を伏せて耐えている大沢䣎

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子䣓言䣬て䣔

沢䣓頼む䢧䢧もう䣍勘弁してくれ䢧䢧䣔

子䣓言いなさい䣔

顔を伏せて耐えている大沢䣎

子䣓言え䣔

沢䣓䢧䢧気持ち良い䣔

圭 子䣓違う䣔

大 沢䣓䢧䢧気持ち良いよ䣍ケイコ䣔

圭子の口からより深い吐息が漏れる䣎

子䣓嬉しい䢧䢧私も䢧䢧私もよ䣔

圭子の腰の振りが激しくなる䣎

圭子䣍テ䤀ブルにあるスタンガンをま

さぐり掴み䣍潤んだ瞳で微笑むと䣍ス

タンガンを大沢の脇腹に押し当てる䣎

呻き声を上げ䣍体を仰け反らせる大沢䣎

それに合わせて体を仰け反らせる圭子䣎

子䣓ああ䢧䢧凄い䢧䢧䣔

快感䣍痛み䣍恐怖で混乱している大沢䣎

再び䣍今度は大沢の胸にスタンガンを

押し当てる圭子䣎

再び体を仰け反らせる大沢と圭子䣎

荒々しく喘ぐ二人䣎

子䣓ねえ䢧䢧私にもしていい?䣔

答えることが出来ずに圭子を見つめて

いる大沢䣎

圭子䣍自分の脇腹にスタンガンを押し

当てる䣎

体を仰け反らせる圭子䣍その分陰茎を

絞り上げられた大沢も䣍快感に顔を歪

ませる䣎

圭子䣍今度はスタンガンの出力を上げ䣍

自分の首元に押し当てる䣎

体が引き攣りそうなほどに震える圭子䣎

経験したことの無い快感の波に攫われ䣍

声を上げる大沢䣎

果てる大沢䣎

グ䣹タリと大沢の体にもたれ掛かる圭

子䣎

暫く䣍激しく喘いでいる二人䣎

子䣓私䢧䢧今なら䣍死んでもいい䣔

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放心している大沢䣎

子䣓愛してる䣔

体を起こし䣍大沢を見つめる圭子䣎

子䣓愛してるわ䢧䢧大沢さん䣔

圭子の頬を涙が伝う䣎

圭子を見つめている大沢䣎

圭 子䣓お食事の続き䣍しまし䣯?䣔

ゆ䣬くりと頷く大沢䣎

と䣍玄関のドアをドンドンと強く叩く

音がする䣎

ビク䣹と身体を起こし䣍玄関の方を見

る圭子䣎

再び䣍より大きな音でドンドンと音を

たてる玄関䣎

子䣓䥹大沢に䥺声䣍出しち䣭駄目よ䣔

圭子䣍大沢に猿ぐつわを噛ませ䣍足音

を立てないように俊敏に玄関の方へ向

かう䣎

圭子䣍覗き窓を覗くと䣍そこから見え

るのは野田の姿䣎

動揺し䣍玄関から体を離す圭子䣎

再びドンドンと執拗に玄関をノ䣹クす

る音䣎

圭子䣍ドアの方へ近づき䣍ドア越しに

声をかける䣎

子䣓䢧䢧どうしてここが分か䣬たの?䣔

野田の声䣓刑事の人が電話してきて䣍教えて

くれた䣔

舌打ちする圭子䣎

子䣓エントランス䣍ここに住んでる人し

か入れないはずだけど䣔

野田の声䣓ここの人が入る時䣍後ろから一緒

に入䣬た䣔

子䣓帰䣬て䣎警備の人に連絡するわよ䣔

野田の声䣓そんなことしたら䣍俺䣍大声で騒

ぐから䣎ここに住んでる尾花という人は詐

欺師です䣬て䣍騒ぎまくるから䣔

焦りと苛立ちの圭子䣎

子䣓䢧䢧何なの?今更䣔

野田の声䣓あの䢧䢧この間䣍あんな終わり方

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だ䣬たから䣎何か䣍自分の中で整理がつか

なくて䢧䢧䣔

子䣓だから䣍何?䣔

野田の声䣓最後に䢧䢧一目でいいから䣍顔䣍

見せて䣎そしたら䣍何も言わずに帰るし䣍

もう二度と姿は見せない䣎お願い䣍ドア越

しでいいから䣎一目䣍ホント䣍一目でいい

から䣔

子䣓今じ䣭ないと駄目なの?䣔

野田の声䣓明日䣍実家に帰る䣍九州の䣎お袋

と䢧䢧仕事も辞めた䣎もう䣍東京には戻䣬

てこない䣔

暫し考え込む圭子䣎

子䣓䢧䢧分か䣬たわ䣎今䣍新しくお付き

合いしてる方が来てるの䣎だから䣍変なマ

ネ出来ないわよ䣎顔見たら䣍すぐに帰䣬て䣔

野田の声䣓分か䣬た䣔

圭子䣍髪の乱れを手櫛で直し䣍ドアチ

䣷䤀ンをかけたままそ䣬とドアを開く䣎

ドアの隙間から現れる野田の顔䣎

野田を冷たく見据える圭子䣎

寂しそうに笑う野田䣎

田䣓圭子ち䣭ん䣍今まで見た中で䣍一番

綺麗だよ䣔

表情を変えずに野田を見据える圭子䣎

田䣓その彼氏の事䣍本当に好きなんだね䣔

子䣓もういい?䣔

野田䣍俯くと䣍泣くように䣍笑うよう

に体を震わせる䣎

子䣓ち䣯䣬と䣍やめて䣔

野田䣍息を漏らしながら俯いて体を震

わせている䣎

圭子䣍苛立ち䣍野田の方に身を乗り出

す䣎

子䣓閉めるわよ䣔

と䣍野田䣍ドアを閉めようとした圭子

の手首を掴み䣍圭子をグ䣹と睨め上げ

る䣎

その迫力に圧されて圭子の体が固ま䣬

たその瞬間䣍出刃包丁を持䣬た野田の

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手がドアの隙間から滑り込み䣍圭子の

喉を突き上げる䣎

圭子の喉を貫通する出刃包丁䣎

神経反射で圭子が体を仰け反らせると䣍

喉に空いた穴から血が噴出し䣍壁や天

井に飛び散る䣎

二人の動きの作用で玄関がバタンと閉

まる䣎

喉を押さえながら崩れ落ちる圭子䣎

×

×

×

何の躊躇いも見せず䣍そのままスタス

タと歩き去る野田䣎

×

×

×

喉から血を流しながら䣍這䣬てリビン

グに戻ろうとする圭子䣎

圭子の姿を認めた大沢䣍驚愕の表情で

圭子を見つめる䣎

大沢に向か䣬て手を伸ばし䣍這いずり

寄ろうとする圭子䣍その目から涙がこ

ぼれ落ちる䣎

圭子を䣍憎むように䣍悲しむように見

つめる大沢䣎

圭子の上半身がガクリと崩れ落ちる䣎

何とか起き上がろうとして䣍仰向けに

転がる圭子䣎

喉がヒ䣻䤀ヒ䣻䤀と力なく音を立てる

が䣍その音が段々と小さくなり䣍やが

て聞こえなくなる䣎

虚空を見つめているような表情の圭子䣎

その喉に大きく空いた穴䣎

○圭子のマンシ䣼ン・表䥹夜䥺

返り血を浴びた野田が早足に出て来て䣍

去䣬ていく䣎

それと入れ違うように警察車輌が何台

かや䣬て来て停まり䣍何人もの刑事䣍

警官らが降りてくる䣎石塚の姿もある䣎

マンシ䣼ンの中に走り込んで行く刑事

たち䣎

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○野田のマンシ䣼ン・居間䥹夜䥺

ソフ䣴で眠り込んでいる佐知子の顔に䣍

人影が射す䣎

佐知子が目を覚ますと䣍そこには野田

の姿が䣎

じ䣬と佐知子を見つめている野田䣎

佐知子䣓䢧䢧何ね䣔

田䣓䢧䢧オカン䣍見つけたばい䣍ネズミ䣔

佐知子䣓䢧䢧ネズミはアンタやろうもん䣔

田䣓違うち䣭䣎別にお䣬たんよ䣍本物が䣎

見つけたと䣔

佐知子䣓見つけてほんで䣍どうしたんね䣍そ

のネズミ䣔

田䣓殺した䣔

野田を見据えている佐知子䣎

田䣓だけオカン䣍何も心配せんでいいけ䣎

もうネズミは出てこんけ䣎オカンにも俺に

も悪させんけ䣎悪か䣬たね心配かけて䣎ゴ

メンね䣔

佐知子の顔に微笑が浮かぶ䣎

佐知子䣓ほうね䢧䢧なら䣍良か䣬た䣔

野田の顔にも微笑が浮かぶ䣎

田䣓䢧䢧オカン䣍俺がおらんごとな䣬た

らどうする?䣔

佐知子䣓何馬鹿なこと言いよるんね䣔

田䣓分からんやろ䣍いつ何が起こるか䣎

今の内に聞いとこうち思うてね䣎どうする

ね䣍俺がおらんごとな䣬たら䣔

佐知子䣓知也がおらんごとな䣬たら䣍お母さ

ん䣍生きていけんけ䣔

佐知子の顔を見つめている野田䣎

佐知子䣓死のうかね䣍そげんな䣬たら䣔

田䣓䢧䢧そうね䣔

佐知子䣓馬鹿なこと言わんで䣍ほら䣍疲れた

やろ?早よ寝んさい䣔

田䣓うん䢧䢧おやすみ䣔

佐知子䣓おやすみ䣔

と䣍再び眠りにつく佐知子䣎

その寝顔をジ䣹と見つめている野田䣎

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○野田のアパ䤀ト・表䥹日替わり䥺

石塚ら刑事と䣍管理人が玄関前に集ま

䣬ている䣎

呼び鈴を押すが䣍応答は無い䣎

石塚に促され䣍鍵を開ける管理人䣎

扉が開き䣍石塚らがなだれ込む䣎

○野田のアパ䤀ト・中

石塚らが入䣬てくる䣎

リビングには䣍首を吊䣬た野田の死体

がぶら下が䣬ており䣍ソフ䣴には䣍半

目を開けた佐知子の死体が䣎

○五十嵐の家・表

非常線が張られている䣎

鑑識らが捜査する中䣍運び出される五

十嵐の死体袋䣎

怒りを湛えてそれを見つめている石塚䣎

○××警察署・取調室

石塚からの取調を受けている美樹䣎

×

×

×

石塚からの取調を受けている大沢䣎

×

×

×

一人䣍虚空を見つめている石塚䣎

やがて䣍ゆ䣬くりと腰を上げ䣍調書を

閉じる䣎

○電報堂・営業部・会議室䥹日替わり䥺

プレゼンをしている大沢䣍仕事が支障

なく出来るほどには快復していること

を感じさせる䣎

プレゼンを終え䣍席に座る大沢䣎

ガラス張りの会議室の外を䣍美樹が歩

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いて行く䣎

美樹に気付いて微笑みかける大沢䣎

控えめに微笑み返す美樹䣎

×

×

×

会議がお開きにな䣬て去䣬ていく面々䣎

大沢が立ち上がると䣍

部 長䣓大沢䣍ち䣯䣬といいか䣔

何事かと䣍再び椅子に腰を下ろす大沢䣎

大沢と部長の二人きりになる室内䣎

長䣓警察の取調䣍終わ䣬たんだろ?䣔

沢䣓䢧䢧ええ䣔

長䣓お前が無事で何よりだよ䣎いや䣍マ

ジで䣎お前はな䣍ウチのエ䤀スだ䣎エ䤀ス

䣬てのは唯一の存在だ䣎替えが効かない䣔

黙䣬て聞いている大沢䣎

長䣓で䣍本題なんだが䣍先週䣍文科省か

ら連絡があ䣬た䣎オリンピ䣹クの広告関係䣍

全部ウチでやることにな䣬たよ䣔

沢䣓䥹目を輝かせ䥺ホントですか䢧䢧!䣔

長䣓䥹頷き䥺チ䤀ムの頭は俺だ䣎で䣍大沢䣍

お前を俺の補佐でチ䤀ムに入れる䣎これは

決まりだ䣎お前の力が要る䣎いいな䣔

沢䣓はい!是非䣍お願いします!䣔

長䣓よし䣎頼むぞ䣔

○電報堂・営業部・オフ䣵ス

パソコンに向かい仕事をしている大沢䣎

と䣍大沢の手が止まる䣎

大沢䣍周りをこなし䣍検索エンジンに

何やら文字を打ち込んでいく䣎

検索結果画面に表れた膨大な量の文字

や写真が䣍短いカ䣹トで重ねられる䣎

×

×

×

䣕結婚詐欺連続殺人事件䣍被害者は5

人か䣎深まる事件の謎䣖

䣕出会い系サイトで被害者男性らと知

り合う䣖

䣕被疑者死亡のまま書類送検䣖

䣕過去にも詐欺容疑で起訴されており

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警察は余罪を追及䣖

䣕地元で名士の父親は謎の不審死䣎尾

花圭子の黒い過去䣖

䣕母親は父親の愛人だ䣬た䣖

卒業アルバムの圭子の写真䣎

䣕元同級生のインタビ䣻䤀①䣓ピアノ

とバレエを習䣬ていたお嬢様だ䣬た䣔䣖

䣕元同級生のインタビ䣻䤀②䣓中学生

の頃䣍先生と肉体関係があ䣬たらしい䣔䣖

䣕過去に風俗嬢として働いていた!?䣖

䣕尾花流䣍男を落とす死のテクニ䣹ク䣖

扇情的な記事に併せて載せられている

圭子の写真䥹履歴書に貼る証明写真の

ような写真䥺䣎

×

×

×

パソコンの画面に見入䣬ている大沢の

傍に䣍䣓どうぞ䣔と置かれるコ䤀ヒ䤀䣎

ハ䣹とし䣍コ䤀ヒ䤀を置いて歩き去る

女性派遣社員の方を振り返る大沢䣎

女性派遣社員䣍足を止め䣍ゆ䣬くりと

大沢の方を振り向く䣎

驚く大沢䣎

その女性派遣社員は䣍圭子だ䣬た䣎

圭子䣍優しく䣍穏やかに䣍大沢に微笑

みかける䣎

不思議なものを見つめるように䣍圭子

を見つめる大沢䣎

ふと大沢が気付くと䣍圭子は別の女性

派遣社員に変わ䣬ている䣎

困䣬たように愛想笑いを浮かべ䣍去る

女性派遣社員䣎

我に返䣬たように大沢䣍デスクに向き

直り䣍再びPC画面に見入る䣎

そこには䣍先程の証明写真風の圭子の

写真が写䣬ている䣎

PCモニタ䤀の画素によ䣬て䣍細かい

モザイク状にな䣬た䣍無表情の圭子䣎