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ダコ・ジャパン株式会社www.dako.jp

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FLEX RTUを使用して愛知県がんセンター中央病院

村上 善子谷田部 恭

はじめに近年、病理診断や基礎医学研究における免疫組織化学の重要性は増す一方で、当院でも日々の染色枚数は増加の一途である。免疫組織化学の精度は、診断の精度に関わる重要な課題である。当院では、従来用いられていた ABC法に代わり、近年急速に普及したポリマー法を導入するにあたって、高感度が得られるとされるDakoの EnVision FLEX法を選択した。それと同時に自動免疫染色装置ダコ Autostainer Link 48(以下ASLink 48)および前処理装置ダコ PT Link(以下 PTLink)を購入しており、両者を用いて良好な染色結果を得ている。今回、日本で新しく発売された調製・希釈済み一次抗体であるDako FLEX RTUを試したので、その結果について述べる。

FLEX RTUFLEX RTUは、EnVision FLEX法および ASLink 48/

PTLinkに対して最適濃度で希釈済みの一次抗体である。ほとんどの種類の FLEX RTUが、PTLinkを用いて Target

Retrieval Solution, High pH(Dakoが市販する高 pH系抗原賦活液)で熱処理(97℃、20分)し、FLEXあるいはリンカーを使用する FLEX+法で施行するように至適化されている。前処理装置である PTLinkでは熱処理の過程で脱パラフィンも施行することができる。FLEX RTU購入後の実際の手順としては、抗体の調製や賦活化の設定を行うことなくボトルをそのまま ASLink 48に装填し、検体ごとの染色プロトコールを登録する際には最初から ASLink 48に登録されているプロトコールを選択して、賦活化をスタートさせるだけでよく、大変簡便で時間の短縮につながる。ま

長所および短所最大の長所は、すでに述べたように簡便でありながら高い感度が得られる点である。ABC法にかわりポリマー法が導入されたことにより、免疫染色の感度があがり、今まで使用していた抗体濃度では濃すぎることがある。その場合、一次抗体の濃度を再検討する必要があるが、FLEX

RTUを使用すればそれらの労力は必要なく時間と労力の節約になる。試薬はバーコードで管理されているため、使用期限が過ぎると自動的に使えなくなってしまい、劣化した抗体を誤って使用してしまうという心配はない。その一方で、多くの一次抗体では FLEX RTUを使用しなくても、FLEX法さらには FLEX+法を用いて染色すれば、安定した感度が得られるものもある。また、使用頻度が低い抗体では、多くの無駄がでてしまう恐れや、未希釈の一次抗体を使用するよりも1テストあたりの価格が高価となることなど考慮すべき問題もあり、こうした点についてはメーカー側にも対応を検討していただく必要がある。しか

し、忙しい日常診療の場においておびただしい数の抗体の精度管理には大変な手間がかかり、困難である場合がある。そのため染色性が難しくかつ診断を左右するような重要な一次抗体には FLEX RTUを試してみて、精度を高めることは時には必要かと感じた。FLEX RTUの検出系であるEnVisionTM FLEXは、マウス一次抗体およびウサギ一次抗体での免疫組織染色のみ対応しているため、ヤギ一次抗体に関しては適応がない点は留意が必要である。当院でもそのような抗体については ABC法で施行せざるをえないのが現状である。

最後に至適濃度に希釈済みの FLEX RTUは、ダコ Autostainer

Link 48/ダコ PT Linkに特化した一次抗体である。賦活化および一次抗体濃度等の条件設定の手間が省け、簡便に安定した精度管理が行えると考える。

Customer Testimonial

表 1 当院従来法と FLEX RTUとの染色方法および比較結果のまとめ

一次抗体 PLAP α1-antitrypsin TTF-1 synaptophysin CDX2

当院 RTU 当院 RTU 当院 RTU 当院 RTU 当院 RTU

賦活化 イムノセイバー

HighpH

trypsinHighpH

HighpH

HighpH

HighpH

HighpH

pH9HighpH

検出系 ABC FLEX ABC FLEX FLEX+ FLEX+ FLEX+ FLEX FLEX+ FLEX

結 果 < < = > =

た、FLEX RTUはあらかじめ ASLink 48専用ボトルに入って市販されており、抗体情報が登録されたバーコードも本体に貼り付けられているため、ASLink 48のワークステーションで液量の一元的管理ができることに加え、入力ミスによる過誤も回避できる。

実際の使用結果例実際に 5種類の一次抗体について FLEX RTUによる染色を行い、当院で通常施行している染色法と比較した(表1)。① Placental alkaline phosphatase(PLAP)は、胚細胞腫の診断において重要な一次抗体である。ウサギポリクローナル抗体にて ABC法を用いて施行した当院の従来法ではバックグランドが強くでていた。精巣のセミノーマで

今回の染色においては FLEX RTUに比し、当院での染色がより感度が高いという結果が得られた。部位によってはFLEX RTUで染色性がやや不良であった (写真④)。⑤ CDX2は、主に腸管上皮に発現している転写制御因子であり、腸上皮由来の腫瘍であることを証明するために用いられる抗体である。肺における大腸癌の転移巣での比較検討では、FLEX RTUと当院の従来法とで大きな差はみられなかった(写真⑤)。以上をまとめると、synaptophysinでは当院染色結果の方が感度が高かったものの、以前より条件設定に苦慮していた PLAPやα1‐antitrypsinは、FLEX RTUにより染色分別能があがった。このことからは、このようなホルモン活性物質や蛋白分解酵素の FLEX RTUによる染色は良好であることがうかがえる。一方、TTF-1および CDX2に関しては当院の従来法と FLEX RTUで両者とも良好で、差異は認められなかった。

の FLEX RTUを用いた染色では腫瘍細胞においてのみ陽性所見がみられ、腫瘍が進展していない精細管では陰性であり、より特異的であることがわかる(写真①)。②α1‐antitrypsin は、膵臓の solid-pseudpapillary

tumorで陽性となることが知られている。過染色である当院の ABC法に比し、FLEX RTUを使用した FLEX法ではバックグランドが減少している(写真②)。③ TTF-1は、肺の II型肺胞上皮細胞、クララ細胞、甲状腺の濾胞上皮細胞に発現がみられるタンパクで、肺癌、甲状腺癌の診断においては欠かせない一次抗体である。肺硬化性血管腫と甲状腺髄様癌で染色を施行したが、当院の染色法と FLEX RTUとの結果で大きな差異は認められなかった(写真③)。④ Synaptophysinは、神経細胞や神経内分泌細胞の細胞質に発現がみられ、カルチノイドの診断に欠かせない抗体である。当院では、以前よりウサギモノクローナル抗体を用いて FLEX+法で染色しており、良好な結果を得ている。

① 精巣セミノーマにおける Placental alkaline phosphatase(PLAP)

FLEX RTUを用いた FLEX法 当院で希釈した抗体(ウサギモノクローナル)を用いた ABC法

H.E染色

H.E染色

FLEX RTUを用いた FLEX法 当院で希釈した抗体(Dako)を用いた ABC法

② Solid-psuedpapillary tumorにおける α1‐antitrypsin ⑤ 肺の大腸癌転移巣における CDX2

FLEX RTUを用いた染色ではバックグランドが減少し、腫瘍が進展していない精細管では陰性(矢印)であり、より特異的である。

FLEX RTUを使用した FLEX法では ABC法に比しバックグランドが減少している。

③ 硬化性血管腫と甲状腺髄様癌における TTF-1

④ 大腸カルチノイドにおける Synaptophysin

硬化性血管腫 H.E染色

甲状腺髄様癌 H.E染色

FLEX RTUを用いた FLEX法

FLEX RTUを用いた FLEX法

硬化性血管腫 FLEX RTUを用いた FLEX+法

甲状腺髄様癌 FLEX RTUを用いた FLEX+法

当院で希釈した抗体(ウサギモノクローナル)を用いた FLEX+法

当院で希釈した抗体(Dako)を用いた FLEX+法

硬化性血管腫 当院で希釈した抗体(Dako)を用いた FLEX+法

甲状腺髄様癌 当院で希釈した抗体(Dako)を用いた FLEX+法

当院の染色法と FLEX RTUともに染色結果は良好で、大きな差異は認められない。

ウサギモノクローナル抗体を用いて FLEX+法で染色した当院の染色が優れていた。FLEX RTUにおいては、写真右下(矢印)の染色性がやや不良である。

当院の染色法と FLEX RTUで大きな差異は認めらない。

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