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鱈|JUJU

日系ペルー人移民について

宇都宮大学国際学部スエヨシ・アナ

20年前、太平洋の反対側の遠いところから話

は始まりました……

過去15年の間に、日本ではさまざまな変化が

ありました。バブル経済の崩壊は労働市場と金融

市場に影響を与え、貧困層と富裕層のギャップは

大きくなりました。グローバリゼーションといわ

れる中、日本で見られる主な変化は外国人数の継

続的な増加です。

これまで日本で稀だった光景(=外国人がいる

こと)が都会か田舎力、に拘らず、日本のいたると

ころの光景として当たり前になってきました。特

に、ラテンアメリカからの労働者と彼らの家族は、

ある都市に集中している場合もありますが、特定

の都道府県に関係なくいたるところで見られるよ

うになってきました。

専門分野では「出稼ぎ」として知られる日系ラ

テンアメリカ人が日本に働くためにやってくる理

効果」としてはたらいています。しかし、この土

台にあるのはラテンアメリカ人の経済的な理由で

あり、それが、ラテンアメリカの労働者を`押し

出し''ています。

日系ラテンアメリカ人の中でも、ブラジル人と

ペルー人の移民をとりあげてみましょう。

法務省によれば、、日本には30万人以上のブラ

ジル人とほぼ6万人のペルー人がおり、外国人の

グループとしては3番目と4番目に大きいグルー

プにそれぞれなっています。これはブラジル、ペ

ルー以外のラテンアメリカ諸国から日本にやって

きた人たちのグループを圧倒しています。

両国からの移民は多くの共通した点をもってい

ますが、鮴ペルーからの移民のケースには「押し出(

し効果」としてはたらいている大きな,要因がいく

つかあり、それは注目に値します。

1990年代のはじめ、ペルーは経済・社会的な

最悪の危機に直面していました。ハイパーインフ

レーション、失業、大規模な一時解雇、脆弱なイ

ンフラ、深刻な社会的不平等、基本的な保健医療

や教育、福祉の提供やテロリスト・ゲリラグルー

プの脅威に対する安全確保などの基本的な機能を

果たせない政府などです。これらの問題の深刻さ

を強調するこどは重要なので、ここで若干の数字

を紹介します。

由が書か

洋をまた

す)」(押

れてある文献はたくさんあります。 太平

(押「プッシュいで二つの相反する力、

す)」(押し出し効果)と「プル(引く)」(引き込

み効果)が作用しています。押し出しているのが

ラテンアメリカで、引き込んでいるのが日本です。

日本人が働きたくない所での労働力の需要、人口

の年齢構成の変化、出生率の減少、そして直接的

には1990年の出入国管理法の改正が「引き込み

“1”

Page 2: 日系ペルー人移民について - Utsunomiya University...1990年のインフレ率は7500%以上でした。したり、より好条件で働くだめの専より好条件で働くだめの専門職や技術を$

より好条件で働くだめの専門職や技術を$1990年のインフレ率は7500%以上でした。したり、より好条件で働くだめの専呈懇 。.「ロ]、

これによって賃金の購買力は即座に落ちました。阿身につil緋@して鱗帰剛ていま1992年の公共、民間部門の平均実質賃金は、5来た錨、げで、'自営業を蝋ぶとと

出ア

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年前の賃金の30~40%ぐらい分にまで減少しになり帰国した者もいます。しかし な

ました。1989年から1991年までの3年間は、人々はわずかです。大部分の人々は、今後、外国r□

年間平均3000件のテロリストの攻撃がありまし人の仕事の状況が良くなるという見通しがたと;え ̄ロ

た゜毎日少なくとも8件の攻撃があった計算にななくても日本に残ることを選んでいます。。,,蘂、

ります。2002年以降パルー鰯は成長し:繍提総些戸

ンアメリカ地域では最も経済状況の良い国の一つ

となっているようです。一方、テロリストの活動

は抑えられていま説6しかし、ペルー人の来日数

は年間平均1,000人のペースで続いています。

経済成長があり、政治的安定とテロリズムの抑

制がなされているのに、ペルー人はなぜ日本に来

続けているのでしょうか。経済成長の恩恵はペル

ー社会のすべての階層に行きわたっていないよう

です。経済的に最も脆弱なグループの人たちは昨

今の経済的繁栄の恩恵を受けていません。その反

対に、経済的繁栄はもともとあった深刻な不平等

をさらに悪化させています。その結果ペルーは移

民を送り出すことを続けているのです。彼らはア

ルゼンチンやチリ、もしくはアメリカやスペイン、

イタリア、日本などの先進国により良い未来を求

めてやってくるのです。

私の専門は、ペルーを中心としたラテンアメリ

カの経済・財政分析です。日系ペルー人を「押し

出す」本国の状況にも目を向けながら、在日ペル

ー人の生活状況や子どもたちの教育環境にも関心

を向け、研究を続けて行きたいと思っています。

日系ペルー人移民にはたらいている力をもう一

つ考えてみます。日系人のアルベルト・フジモリ

が大統領に立候補したこととその後の選挙が移民

を押し出す要因の一つとなりました。もし日系社

会の一員のフジモリが政策運営で失敗すれば、日

系以外の社会から日系人が攻撃されるかもしれな

い、という予感を日系ペルー人は持ったのです。

フジモリの政治参加はそのようにも日系人に受け

取られました。このような考えは第二次世界大戦.

の時の悲しい記憶によって強められたものです。

戦争時、日系人は強奪にあったり、財産を没収さ

れたりしました。このような経験が心理的に影響

を及ぼし、日系人の多くが自分達がテロリストの

主な標的'であると感じることになりました。そし

てこのことがフジモリが政権運営に失敗したらも

っと悪くなるという予感を生じさせたのです。実

際に、マイナスの反応が選挙の前後に日系人社会

にありました。

これまで述べてきたような要因が1989年から

1992年のわずか4年間に約3万人のペルー人、

特に日系ペルー人に太平洋を渡らせる決断をさせ

ました。このうちの何人かは貯金の目標額を達成