産業用ヒートポンプ 活用ガイド - 日本エレクトロ …...electro heat pump...

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ELECTRO HEAT PUMP Renewable Heat Energy efficiency Low carbonization 産業用ヒートポンプ 活用ガイド 一般社団法人 日本エレクトロヒートセンター

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Page 1: 産業用ヒートポンプ 活用ガイド - 日本エレクトロ …...ELECTRO HEAT PUMP Renewable Heat Energy efficiency Low carbonization 産業用ヒートポンプ 活用ガイド

E L E C T R O H E A T P U M P

R e n e w a b l e H e a t

E n e r g y e f f i c i e n c y

L o w c a r b o n i z a t i o n

産業用ヒートポンプ活用ガイド

一般社団法人 日本エレクトロヒートセンター2017.3

発行 一般社団法人 日本エレクトロヒートセンター    監修 一般社団法人 日本エレクトロヒートセンター ヒートポンプ技術部会〒103-0011 東京都中央区日本橋大伝馬町13-7 日本橋大富ビル6F TEL.03-5642-1733 www.jeh-center.org

本冊子は、グリーン基準に適合した印刷資材を使用し、グリーンプリンティング認定工場で印刷しています。

Page 2: 産業用ヒートポンプ 活用ガイド - 日本エレクトロ …...ELECTRO HEAT PUMP Renewable Heat Energy efficiency Low carbonization 産業用ヒートポンプ 活用ガイド

1

凝縮器

経済成長1.7%/年

■空気の熱は再生可能エネルギー

■高温化が進むヒートポンプ~加熱工程にも使えます~

「グローバルな競争」「地球環境への貢献」「労働人口の減少」「IoTの進展」等、日本を取り巻く状況や産業構造が大きく変化する中、日本の工場は、生産性と省エネ性を両立した、より「コンパクト」で「フレキシブル」な工場へと変革することが求められています。工場のエネルギー供給システムも、それに伴って変革が求められており、より生産機器と密着したフレキシビリティの高い供給方式へシフトする必要があります。産業用ヒートポンプの活用は、これまで捨てていた低温廃熱のリサイクル利用が可能となり、また、生産機器と近接した分散配置が可能となることから、よりスマートでフレキシブルなエネルギー供給が実現できます。

再生可能エネルギーというと、太陽光や風力というイメージがありますが、実はヒートポンプは太陽で温められた空気等を利用することから、再生可能エネルギーを取り出す技術に分類されています。日本国内では「エネルギー供給構造高度化法」で、空気の熱を再生可能エネルギー源と位置づけており、EUでは、すでに再エネ導入実績の約5%はヒートポンプが占めています。

EUが対象としている再生可能エネルギー源太陽、水力、風力、ヒートポンプ、地熱、海洋、バイオマス、バイオ燃料、バイオガス

熱を捨てない工場へ

ヒートポンプは「空調用」「冷凍・冷却用」というイメージがありますが、高温の加熱用途に使えるヒートポンプが続々と商品化されています。100℃以下の高温水はもちろんのこと、最近では160℃程度の蒸気が生成できるヒートポンプもあり、洗浄、加熱、保温、殺菌、乾燥、蒸留、濃縮といった様々な生産プロセスに適用可能です。

■産業分野でのヒートポンプの代表的な使い方廃熱回収利用 工場から多く排出される低温廃熱を利用冷温同時供給 冷却と加熱を同時に行う工程がある場合に有効な

利用方法空気熱源利用 空気を熱源とする利用方法

加熱対象との近接設置が容易

産業用ヒートポンプが工場のエネルギー供給を変革します!

工場利用の場合にはさらなるメリット

次世代の省エネを担う産業用ヒートポンプ

日本の省エネ政策と産業用ヒートポンプへの期待資源エネルギー庁の長期需給見通しでは、2030年に約5,030万kl、2013年度比で約▲13%の省エネルギーを実施することとしています。この数字は実に石油危機後と同レベルのエネルギー効率改善を目指したものとなっています。その中で産業用ヒートポンプは、有力な達成手段の一つとして位置づけられており、加温・乾燥といった用途だけでも産業部門の約1割弱に寄与することを期待されています。

■産業用ヒートポンプに期待される省エネ可能性(一財)ヒートポンプ・蓄熱センターの試算によると、産業用ヒートポンプの導入による省エネ可能量は、2030年には約330万kl(原油換算)に達すると見通しており、100℃以上の高温用や工場空調用も含めると約760万klと省エネ可能量はさらに高まる結果となっています。また、COP21の約束草案では、温室効果ガスの排出量は2030年度に2013年度比▲26%の水準にすることとしており、電源の非化石化によりさらに低炭素化効果が見込まれるヒートポンプの活躍が期待されています。

2030年

2008年 2010年 2011年

2020年2013年(基準)

万kl750

500

250

0

産業部門のヒートポンプの省エネ可能量

高温用

工場用空調

乾燥用 産業用ヒートポンプ

産業用ヒートポンプの適用範囲拡大

加温用

高温用

工場用空調

乾燥用加温用

-414万kl

-764万kl

-332万kl

165℃▶

0

100

200

TJ300

20142013201220112010200920092007200620052004

EUにおけるヒートポンプの再エネ導入利用量推移

※ヒートポンプ・蓄熱センターの試算であり、資源エネルギー庁の試算と条件が異なります。※省エネ可能量は、2013年度ベースを基準としています。※欧州委員会公表のFact Sheetより作成

7597

121148

178208

231266

289 310343

百万kl400

300

200

100

0

※資源エネルギー庁 「長期エネルギー需給見通し関連資料 H27.7」より作成

低炭素工業炉 290.6万kl

産業用モータ166万kl

空調用50℃程度

高温水ヒートポンプ《加熱・殺菌・乾燥・洗浄 等》

蒸気・熱風ヒートポンプ《殺菌・乾燥・蒸留・濃縮 等》

蒸気ヒートポンプ《殺菌・乾燥・蒸留・濃縮 等》

産業用照明108万kl

産業部門の削減量合計1,042万kl

エネルギー需要(最終エネルギー消費ベース) 産業部門の最終エネルギー消費削減寄与分内訳

電力25%

熱ガソリン都市ガス等75%

電力28%

熱ガソリン都市ガス等72%

2013年度(実績)

2030年度(省エネ対策後)

産業部門の8.4%削減が期待されている

326百万kl361百万kl

徹底した省エネ-5,030万kl

120℃▶

90℃▶

70℃▶

50℃▶

産業用ヒートポンプ(加温・乾燥用)

87.9万kl

④膨張弁で冷媒の圧力を下げる①蒸発器で外気から熱を奪う (外気と冷媒を熱交換)

②冷媒を圧縮して 温度を上げる ③凝縮器で室内空気に熱を与える

 (高温冷媒と室内空気を熱交換)

加熱採熱凝縮器

冷媒

膨張弁(低温⬅高温)

高温水ヒートポンプ《加熱・乾燥・洗浄 等》

再エネ導入実績の約5%

蒸発器

凝縮器

蒸発器

凝縮器

圧縮機

膨張弁

5+1=6

45℃

22℃

-5℃

熱を放出

0℃ 60℃

-10℃ 25℃

5熱を吸収

0℃

屋内屋外

水廃温水冷水冷却水

・チラー・コンプレッサー地下水河川水地中熱

■ヒートポンプの優れた省エネ性ヒートポンプは特別なものではなく、身近にある「エアコン」「冷蔵庫」「エコキュート」など、すべてヒートポンプの原理を使っています。その原理は、新たに化石燃料を使うのではなく、空気や廃熱などの既存のエネルギーを吸収し、冷媒などを利用して有効な形態に変換することで利用する仕組みです。投入するエネルギーは冷媒の圧力を変えるのに必要な僅かな電力のみで、少ない投入エネルギーで数倍の加熱が可能となります。

少ない投入エネルギーで数倍(2~8倍)の加熱が可能<加熱エネルギー=吸収エネルギー+投入エネルギー>

基本構成は、2つの「熱交換器(蒸発器、凝縮器)」と「圧縮機」「膨張弁」の4つで構成されます。※ヒートポンプのエネルギー効率を表す指標としてCOP(成績係数)があります。COP=加熱能力÷消費エネルギー

【エネルギー効率が6の場合】5の大気の熱✚1の電力➡6の熱エネルギー

家庭用エアコン暖房の例

ヒートポンプ(低温➡高温)

圧縮機

電力

冷媒(気体)冷媒(液体)熱

加熱物空気

給気→熱風・乾燥物・加熱物

液体高温水加圧水給湯溶液薬液蒸気

蒸発器

熱源空気大気廃気

僅かなエネルギーで低温エネルギーを高温エネルギーに再生

様々な熱源(廃温水、地下水、冷却水、空気、廃気等)が利用可能

熱を奪う(=冷却)と、熱を与える(=加熱)が、同時に可能

⬅使えなくなった低温廃熱を再利用可能

⬅様々な未利用熱の回収が可能

⬅1台のヒートポンプで冷熱と温熱の同時供給が可能

C O N T E N T Sエネルギー供給システムの革新

多様なラインナップ

業種別適用用途

効果的な導入計画のポイント

用途別設計ポイント

廃熱回収のポイントと注意点

蒸気の有効利用率について

産業用ヒートポンプ導入事例

3

5

6

7

11

16

17

18

1 2

Page 3: 産業用ヒートポンプ 活用ガイド - 日本エレクトロ …...ELECTRO HEAT PUMP Renewable Heat Energy efficiency Low carbonization 産業用ヒートポンプ 活用ガイド

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凝縮器

経済成長1.7%/年

■空気の熱は再生可能エネルギー

■高温化が進むヒートポンプ~加熱工程にも使えます~

「グローバルな競争」「地球環境への貢献」「労働人口の減少」「IoTの進展」等、日本を取り巻く状況や産業構造が大きく変化する中、日本の工場は、生産性と省エネ性を両立した、より「コンパクト」で「フレキシブル」な工場へと変革することが求められています。工場のエネルギー供給システムも、それに伴って変革が求められており、より生産機器と密着したフレキシビリティの高い供給方式へシフトする必要があります。産業用ヒートポンプの活用は、これまで捨てていた低温廃熱のリサイクル利用が可能となり、また、生産機器と近接した分散配置が可能となることから、よりスマートでフレキシブルなエネルギー供給が実現できます。

再生可能エネルギーというと、太陽光や風力というイメージがありますが、実はヒートポンプは太陽で温められた空気等を利用することから、再生可能エネルギーを取り出す技術に分類されています。日本国内では「エネルギー供給構造高度化法」で、空気の熱を再生可能エネルギー源と位置づけており、EUでは、すでに再エネ導入実績の約5%はヒートポンプが占めています。

EUが対象としている再生可能エネルギー源太陽、水力、風力、ヒートポンプ、地熱、海洋、バイオマス、バイオ燃料、バイオガス

熱を捨てない工場へ

ヒートポンプは「空調用」「冷凍・冷却用」というイメージがありますが、高温の加熱用途に使えるヒートポンプが続々と商品化されています。100℃以下の高温水はもちろんのこと、最近では160℃程度の蒸気が生成できるヒートポンプもあり、洗浄、加熱、保温、殺菌、乾燥、蒸留、濃縮といった様々な生産プロセスに適用可能です。

■産業分野でのヒートポンプの代表的な使い方廃熱回収利用 工場から多く排出される低温廃熱を利用冷温同時供給 冷却と加熱を同時に行う工程がある場合に有効な

利用方法空気熱源利用 空気を熱源とする利用方法

加熱対象との近接設置が容易

産業用ヒートポンプが工場のエネルギー供給を変革します!

工場利用の場合にはさらなるメリット

次世代の省エネを担う産業用ヒートポンプ

日本の省エネ政策と産業用ヒートポンプへの期待資源エネルギー庁の長期需給見通しでは、2030年に約5,030万kl、2013年度比で約▲13%の省エネルギーを実施することとしています。この数字は実に石油危機後と同レベルのエネルギー効率改善を目指したものとなっています。その中で産業用ヒートポンプは、有力な達成手段の一つとして位置づけられており、加温・乾燥といった用途だけでも産業部門の約1割弱に寄与することを期待されています。

■産業用ヒートポンプに期待される省エネ可能性(一財)ヒートポンプ・蓄熱センターの試算によると、産業用ヒートポンプの導入による省エネ可能量は、2030年には約330万kl(原油換算)に達すると見通しており、100℃以上の高温用や工場空調用も含めると約760万klと省エネ可能量はさらに高まる結果となっています。また、COP21の約束草案では、温室効果ガスの排出量は2030年度に2013年度比▲26%の水準にすることとしており、電源の非化石化によりさらに低炭素化効果が見込まれるヒートポンプの活躍が期待されています。

2030年

2008年 2010年 2011年

2020年2013年(基準)

万kl750

500

250

0

産業部門のヒートポンプの省エネ可能量

高温用

工場用空調

乾燥用 産業用ヒートポンプ

産業用ヒートポンプの適用範囲拡大

加温用

高温用

工場用空調

乾燥用加温用

-414万kl

-764万kl

-332万kl

165℃▶

0

100

200

TJ300

20142013201220112010200920092007200620052004

EUにおけるヒートポンプの再エネ導入利用量推移

※ヒートポンプ・蓄熱センターの試算であり、資源エネルギー庁の試算と条件が異なります。※省エネ可能量は、2013年度ベースを基準としています。※欧州委員会公表のFact Sheetより作成

7597

121148

178208

231266

289 310343

百万kl400

300

200

100

0

※資源エネルギー庁 「長期エネルギー需給見通し関連資料 H27.7」より作成

低炭素工業炉 290.6万kl

産業用モータ166万kl

空調用50℃程度

高温水ヒートポンプ《加熱・殺菌・乾燥・洗浄 等》

蒸気・熱風ヒートポンプ《殺菌・乾燥・蒸留・濃縮 等》

蒸気ヒートポンプ《殺菌・乾燥・蒸留・濃縮 等》

産業用照明108万kl

産業部門の削減量合計1,042万kl

エネルギー需要(最終エネルギー消費ベース) 産業部門の最終エネルギー消費削減寄与分内訳

電力25%

熱ガソリン都市ガス等75%

電力28%

熱ガソリン都市ガス等72%

2013年度(実績)

2030年度(省エネ対策後)

産業部門の8.4%削減が期待されている

326百万kl361百万kl

徹底した省エネ-5,030万kl

120℃▶

90℃▶

70℃▶

50℃▶

産業用ヒートポンプ(加温・乾燥用)

87.9万kl

④膨張弁で冷媒の圧力を下げる①蒸発器で外気から熱を奪う (外気と冷媒を熱交換)

②冷媒を圧縮して 温度を上げる ③凝縮器で室内空気に熱を与える

 (高温冷媒と室内空気を熱交換)

加熱採熱凝縮器

冷媒

膨張弁(低温⬅高温)

高温水ヒートポンプ《加熱・乾燥・洗浄 等》

再エネ導入実績の約5%

蒸発器

凝縮器

蒸発器

凝縮器

圧縮機

膨張弁

5+1=6

45℃

22℃

-5℃

熱を放出

0℃ 60℃

-10℃ 25℃

5熱を吸収

0℃

屋内屋外

水廃温水冷水冷却水

・チラー・コンプレッサー地下水河川水地中熱

■ヒートポンプの優れた省エネ性ヒートポンプは特別なものではなく、身近にある「エアコン」「冷蔵庫」「エコキュート」など、すべてヒートポンプの原理を使っています。その原理は、新たに化石燃料を使うのではなく、空気や廃熱などの既存のエネルギーを吸収し、冷媒などを利用して有効な形態に変換することで利用する仕組みです。投入するエネルギーは冷媒の圧力を変えるのに必要な僅かな電力のみで、少ない投入エネルギーで数倍の加熱が可能となります。

少ない投入エネルギーで数倍(2~8倍)の加熱が可能<加熱エネルギー=吸収エネルギー+投入エネルギー>

基本構成は、2つの「熱交換器(蒸発器、凝縮器)」と「圧縮機」「膨張弁」の4つで構成されます。※ヒートポンプのエネルギー効率を表す指標としてCOP(成績係数)があります。COP=加熱能力÷消費エネルギー

【エネルギー効率が6の場合】5の大気の熱✚1の電力➡6の熱エネルギー

家庭用エアコン暖房の例

ヒートポンプ(低温➡高温)

圧縮機

電力

冷媒(気体)冷媒(液体)熱

加熱物空気

給気→熱風・乾燥物・加熱物

液体高温水加圧水給湯溶液薬液蒸気

蒸発器

熱源空気大気廃気

僅かなエネルギーで低温エネルギーを高温エネルギーに再生

様々な熱源(廃温水、地下水、冷却水、空気、廃気等)が利用可能

熱を奪う(=冷却)と、熱を与える(=加熱)が、同時に可能

⬅使えなくなった低温廃熱を再利用可能

⬅様々な未利用熱の回収が可能

⬅1台のヒートポンプで冷熱と温熱の同時供給が可能

C O N T E N T Sエネルギー供給システムの革新

多様なラインナップ

業種別適用用途

効果的な導入計画のポイント

用途別設計ポイント

廃熱回収のポイントと注意点

蒸気の有効利用率について

産業用ヒートポンプ導入事例

3

5

6

7

11

16

17

18

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冷水

温水 温水

冷水

洗浄▶ 洗浄▶

防錆

80℃80℃

洗浄▶ 洗浄▶

防錆

80℃ 80℃

貯湯タンク

熱交換器 熱交換器

空冷チラー ヒートポンプ

ヒートポンプ

ヒートポンプ

給水 給水ドレン蒸気ボイラー

廃温水廃温風

出口温度180℃ 洗浄

(60℃)

貯湯タンク

廃温水 廃気・空気

エネルギー棟

蒸気ボイラー

大量の低温廃熱の放出工場でエネルギーを使っている限り、なんらかの形態で廃熱は必ず発生します。そのエネルギー量は投入エネルギーとほぼ同じ。温度は低いが膨大なエネルギーを現状は捨てています。

蒸気供給ロスの発生蒸気は大変使いやすいエネルギーですが、使用状況の計測が難しいという問題があります。このため、投入した燃料の内、どこでどれだけロスが発生しているか、また、どれだけ有効に利用されているかを定量的に認識している工場は、あまり多くないのではないでしょうか。実測では、蒸気の有効利用率は約半分と言われており、半分はロス分として放出されています。

一律の供給温度生産プロセスは乾燥、殺菌、洗浄など、様々な用途で様々な温度を使っています。現状の蒸気供給では、この様々な温度に対して一律の温度で供給しています。

加熱と冷却の重複供給生産プロセスには「加熱」と「冷却」が両方存在する工程が多くあります。このエネルギー的に全く逆のプロセスに無駄を感じている人は多いはずです。

蒸気は大変使いやすいエネルギーですが、使用状況の計測が難しいという問題があります。このため、投入した燃料の内、どこでどれだけロスが発生しているか、また、どれだけ有効に利用されているかを定量的に認識している工場は、あまり多くないのではないでしょうか。実測では、蒸気の有効利用率は約半分と言われており、半分はロス分として放出されています。

生産プロセスは乾燥、殺菌、洗浄など、様々な用途で様々な温度を使っています。現状の蒸気供給では、この様々な温度に対して一律の温度で供給しています。

実測では、蒸気の有効利用率は約半分と言われており、半分はロス分として放出されています。

課題1|大量の低温廃熱

課題1|大量の低温廃熱

課題3|供 給 温 度

課題2|蒸気ロス(配管ロス)

課題2|蒸気ロス(ボイラーロス)

ヒートポンプを利用すると、これまで捨てていた低温廃熱に少しのエネルギーを加えるだけで、高温に再生することができます。これまでのように加熱のために新たに化石燃料を燃やす必要がなくなります。

蒸気の有効利用率は約50%

▼従来(ヒートポンプ導入前)▼ ▼ヒートポンプ導入後▼

廃熱の再利用|低温廃熱をリサイクル利用

ヒートポンプを生産装置に近接して設置することで、これまで発生していた配管ロスが削減できます。また、生産プロセスの稼働に合わせて、熱を供給できるため、より効率的な加熱ができます。ヒートポンプは容量のラインナップが豊富なため、生産機器に合わせた分散配置が容易にできます。

分散配置/分散供給|蒸気ロスの削減

ヒートポンプを使うと、1台の機器、1つの投入エネルギーで加熱と冷却を同時に行えます。「加熱」と「冷却」が近接している場合には、特に効果的です。

冷温同時供給|熱供給の合理化

個々のプロセスの温度が異なるのに、一律の温度、しかも化石燃料を燃焼して発生した高温を供給するのは熱利用面で無駄が多いと言えます。ヒートポンプを使うと、そのプロセスに合った温度で供給できます。

分散配置/分散供給|個々のプロセスに合わせた熱供給

ヒートポンプによるエネルギー供給システムの革新

工場における熱供給の課題とは?

ボイラーにより加熱された蒸気を利用箇所に搬送➡

搬送ロス:大(ボイラーロス、配管ロス、ドレンロス)

ヒートポンプによる分散供給 利用箇所への近接配置➡

搬送ロス:小

温水と冷水を別々に供給 温水と冷水を1台で供給➡冷温同時供給

高温熱のカスケード利用 低温廃熱をリサイクル利用➡必要な温度を供給

工場では、様々なエネルギーを投入し、変換して使っています。多くの工場では「エネルギー棟」等で、「燃料」「電気」を「蒸気」「冷水」等に変換し、配管を通じて生産プロセスへ供給する「集中供給」方式を採用しています。特に蒸気は使いやすさから、多くの工場で利用されています。このような現状のエネルギー供給について考えた場合、以下の課題がクローズアップされます。

蒸気トラップ放熱

放熱

蒸気 蒸気蒸気エクセルギーロスの発生

ボイラー

冷却塔

殺 菌

冷 却

廃水処理

乾 燥

洗 浄

加 熱

冷凍機

コンプレッサー

エネルギー棟

生産プロセス

ヒートポンプによる課題解決

ヒートポンプによる課題解決

ヒートポンプによる課題解決

ヒートポンプによる課題解決

そのエネルギー量は投入エネルギーとほぼ同じ。温度は低いが膨大なエネルギーを現状は捨てています。そのエネルギー量は投入エネルギーとほぼ同じ。温度は低いが膨大なエネルギーを現状は捨てています。

投入エネルギー≒廃熱エネルギー課題1

課題2

課題3

課題4

これからの熱供給

課題4|加熱と冷却の重複供給

大量の低温廃熱を放出

廃温水廃温風

新たに燃料を燃やさない 高温に再生

低温廃熱をリサイクル利用

熱を捨てない

蒸気ボイラー

蒸気ボイラー

ヒートポンプヒートポンプ

廃温水

殺菌(80℃)

洗浄(60℃)

乾燥(120℃)殺菌

(80℃)

乾燥(120℃)

洗浄(60℃)

乾燥(120℃)

製品原料 洗浄(60℃)

乾燥(120℃)

廃温風

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冷水

温水 温水

冷水

洗浄▶ 洗浄▶

防錆

80℃80℃

洗浄▶ 洗浄▶

防錆

80℃ 80℃

貯湯タンク

熱交換器 熱交換器

空冷チラー ヒートポンプ

ヒートポンプ

ヒートポンプ

給水 給水ドレン蒸気ボイラー

廃温水廃温風

出口温度180℃ 洗浄

(60℃)

貯湯タンク

廃温水 廃気・空気

エネルギー棟

蒸気ボイラー

大量の低温廃熱の放出工場でエネルギーを使っている限り、なんらかの形態で廃熱は必ず発生します。そのエネルギー量は投入エネルギーとほぼ同じ。温度は低いが膨大なエネルギーを現状は捨てています。

蒸気供給ロスの発生蒸気は大変使いやすいエネルギーですが、使用状況の計測が難しいという問題があります。このため、投入した燃料の内、どこでどれだけロスが発生しているか、また、どれだけ有効に利用されているかを定量的に認識している工場は、あまり多くないのではないでしょうか。実測では、蒸気の有効利用率は約半分と言われており、半分はロス分として放出されています。

一律の供給温度生産プロセスは乾燥、殺菌、洗浄など、様々な用途で様々な温度を使っています。現状の蒸気供給では、この様々な温度に対して一律の温度で供給しています。

加熱と冷却の重複供給生産プロセスには「加熱」と「冷却」が両方存在する工程が多くあります。このエネルギー的に全く逆のプロセスに無駄を感じている人は多いはずです。

蒸気は大変使いやすいエネルギーですが、使用状況の計測が難しいという問題があります。このため、投入した燃料の内、どこでどれだけロスが発生しているか、また、どれだけ有効に利用されているかを定量的に認識している工場は、あまり多くないのではないでしょうか。実測では、蒸気の有効利用率は約半分と言われており、半分はロス分として放出されています。

生産プロセスは乾燥、殺菌、洗浄など、様々な用途で様々な温度を使っています。現状の蒸気供給では、この様々な温度に対して一律の温度で供給しています。

実測では、蒸気の有効利用率は約半分と言われており、半分はロス分として放出されています。

課題1|大量の低温廃熱

課題1|大量の低温廃熱

課題3|供 給 温 度

課題2|蒸気ロス(配管ロス)

課題2|蒸気ロス(ボイラーロス)

ヒートポンプを利用すると、これまで捨てていた低温廃熱に少しのエネルギーを加えるだけで、高温に再生することができます。これまでのように加熱のために新たに化石燃料を燃やす必要がなくなります。

蒸気の有効利用率は約50%

▼従来(ヒートポンプ導入前)▼ ▼ヒートポンプ導入後▼

廃熱の再利用|低温廃熱をリサイクル利用

ヒートポンプを生産装置に近接して設置することで、これまで発生していた配管ロスが削減できます。また、生産プロセスの稼働に合わせて、熱を供給できるため、より効率的な加熱ができます。ヒートポンプは容量のラインナップが豊富なため、生産機器に合わせた分散配置が容易にできます。

分散配置/分散供給|蒸気ロスの削減

ヒートポンプを使うと、1台の機器、1つの投入エネルギーで加熱と冷却を同時に行えます。「加熱」と「冷却」が近接している場合には、特に効果的です。

冷温同時供給|熱供給の合理化

個々のプロセスの温度が異なるのに、一律の温度、しかも化石燃料を燃焼して発生した高温を供給するのは熱利用面で無駄が多いと言えます。ヒートポンプを使うと、そのプロセスに合った温度で供給できます。

分散配置/分散供給|個々のプロセスに合わせた熱供給

ヒートポンプによるエネルギー供給システムの革新

工場における熱供給の課題とは?

ボイラーにより加熱された蒸気を利用箇所に搬送➡

搬送ロス:大(ボイラーロス、配管ロス、ドレンロス)

ヒートポンプによる分散供給 利用箇所への近接配置➡

搬送ロス:小

温水と冷水を別々に供給 温水と冷水を1台で供給➡冷温同時供給

高温熱のカスケード利用 低温廃熱をリサイクル利用➡必要な温度を供給

工場では、様々なエネルギーを投入し、変換して使っています。多くの工場では「エネルギー棟」等で、「燃料」「電気」を「蒸気」「冷水」等に変換し、配管を通じて生産プロセスへ供給する「集中供給」方式を採用しています。特に蒸気は使いやすさから、多くの工場で利用されています。このような現状のエネルギー供給について考えた場合、以下の課題がクローズアップされます。

蒸気トラップ放熱

放熱

蒸気 蒸気蒸気エクセルギーロスの発生

ボイラー

冷却塔

殺 菌

冷 却

廃水処理

乾 燥

洗 浄

加 熱

冷凍機

コンプレッサー

エネルギー棟

生産プロセス

ヒートポンプによる課題解決

ヒートポンプによる課題解決

ヒートポンプによる課題解決

ヒートポンプによる課題解決

そのエネルギー量は投入エネルギーとほぼ同じ。温度は低いが膨大なエネルギーを現状は捨てています。そのエネルギー量は投入エネルギーとほぼ同じ。温度は低いが膨大なエネルギーを現状は捨てています。

投入エネルギー≒廃熱エネルギー課題1

課題2

課題3

課題4

これからの熱供給

課題4|加熱と冷却の重複供給

大量の低温廃熱を放出

廃温水廃温風

新たに燃料を燃やさない 高温に再生

低温廃熱をリサイクル利用

熱を捨てない

蒸気ボイラー

蒸気ボイラー

ヒートポンプヒートポンプ

廃温水

殺菌(80℃)

洗浄(60℃)

乾燥(120℃)殺菌

(80℃)

乾燥(120℃)

洗浄(60℃)

乾燥(120℃)

製品原料 洗浄(60℃)

乾燥(120℃)

廃温風

3 4

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東芝キヤリア 前川製作所 神戸製鋼所 三菱重工サーマルシステムズ

三菱重工冷熱

東芝キヤリア

三菱電機 日立アプライアンス日立アプライアンス

ササクラ 木村化工機

洗浄・給湯

サイエンスecoマルチHPWW-F

0

25

50

75

100

125

150

175

80

70

60

50

40

90

100

120

110

130

140

175

加熱温度﹇℃﹈

帯﹇℃﹈

加熱能力[kW]

加熱温度﹇℃﹈

加熱能力[kW]

25

50

75

100

125 150 175

200 300 400 500 600

産業用ヒートポンプは、すでに様々な業種の様々な用途に実適用されています。

産業用ヒートポンプの多様なラインナップ 産業用ヒートポンプの業種別適用用途

《 水熱源ヒートポンプ 》

《 空気熱源ヒートポンプ 》

2010 504030 7060 80 100

50 100 150

神戸製鋼所HEM-3WAY

東芝キヤリアCAONS700

東芝キヤリアCAONS140

東芝キヤリアCAONS45

三菱電機ホットウォーターHPP160

三菱電機ホットウォーターHPP250

前川製作所unimoAW

日立アプライアンス業務用エコキュート

前川製作所unimoAWW

ダイキン工業MEGA・Q

サイエンスecoマルチHPWSR

三菱電機水熱源HP

三菱電機ブライン熱源HPMDI

BLACK BOX

東芝キヤリア熱回収SFMC

神戸製鋼所HEM-HR75S

三菱重工冷熱エコウォーム

神戸製鋼所HEM-HR-TB

三菱重工サーマルシステムズETW-L

神戸製鋼所SGH165

ゼネラルヒートポンプ工業高温型水冷式HPZQH-120W

神戸製鋼所HEMⅡ-HR

神戸製鋼所SGH120

東芝キヤリア熱回収CAONS

前川製作所unimoWW

前川製作所熱風HP

エコシロッコ

サイエンスecoマルチHPAW-F

三菱電機ホットウォーターHP P500

ゼネラルヒートポンプ工業洗浄工程用HP

三菱電機サニーパックQ

ECO神戸製鋼所HEM-90A

窯業ゴム・プラスチック

印刷紙・パルプ

食品化学医薬

機械/電気機械電子デバイス

塗装前処理

塗装乾燥

蒸留/濃縮/乾燥

蒸留

殺菌 フ

ィルム接着乾燥

紙の乾燥

原料保温

洗浄

純水加温

メッキ槽加温

変圧器コイル乾燥

溶解

溶解

ゆで麺

廃水処理

印刷乾燥

発砲スチロール乾燥

ガラス洗浄

◎廃熱回収(廃温水、冷却廃熱等)や冷温同時供給が可能◎熱交換性能が良いのでコンパクト◎より高いCOPが期待できる

◎無尽蔵の空気エネルギーが利用可能◎設置場所に制約が少ないためエンジニアリングがしやすい◎配管工事が少ないため工事費が低廉

熱風ヒートポンプ:主に乾燥に利用

蒸気ヒートポンプ:主に蒸留、濃縮に利用

蒸気圧縮式ヒートポンプ(MVR):廃蒸気を再圧縮利用

高温水ヒートポンプ:主に洗浄、殺菌、加熱、保温、乾燥に利用

ヒートポンプにはエネルギーの元となる熱源が必要ですが、産業用ヒートポンプは様々な熱源が利用できるように豊富なラインナップが揃っています。熱源別に大きく分けると、水を熱源とする「水熱源ヒートポンプ」と、空気を熱源とする「空気熱源ヒートポンプ」に分類されます。

サイエンスecoマルチHPWHC

ecoマルチHPWHC

富士電機蒸気発生HP

神戸製鋼所HEM-HR90

空気熱源ヒートポンプの特長水熱源ヒートポンプの特長

東芝キヤリアCAONS140L

昭和鉄工業務用エコキュートSSHP-30B

代替フロン冷媒:■CO2冷媒:■水熱源/空気熱源兼用タイプ:

【図の見方】

製品写真

バーの横位置は「加熱能力」上下の範囲は「加熱温度範囲」を示します

写真のプロット点は「加熱能力算出温度」を示します

ダイキン工業

MDI ゼネラルヒートポンプ工業サイエンス 昭和鉄工

三菱重工サーマルシステムズQ-ton

日立アプライアンス業務用エコキュート

神戸製鋼所

三菱重工サーマルシステムズ

富士電機

前川製作所

神戸製鋼所 前川製作所

三菱重工サーマルシステムズ熱Pu-ton

※※※

※加熱能力はいずれも30kW

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東芝キヤリア 前川製作所 神戸製鋼所 三菱重工サーマルシステムズ

三菱重工冷熱

東芝キヤリア

三菱電機 日立アプライアンス日立アプライアンス

ササクラ 木村化工機

洗浄・給湯

サイエンスecoマルチHPWW-F

0

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110

130

140

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加熱温度﹇℃﹈

帯﹇℃﹈

加熱能力[kW]

加熱温度﹇℃﹈

加熱能力[kW]

25

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125 150 175

200 300 400 500 600

産業用ヒートポンプは、すでに様々な業種の様々な用途に実適用されています。

産業用ヒートポンプの多様なラインナップ 産業用ヒートポンプの業種別適用用途

《 水熱源ヒートポンプ 》

《 空気熱源ヒートポンプ 》

2010 504030 7060 80 100

50 100 150

神戸製鋼所HEM-3WAY

東芝キヤリアCAONS700

東芝キヤリアCAONS140

東芝キヤリアCAONS45

三菱電機ホットウォーターHPP160

三菱電機ホットウォーターHPP250

前川製作所unimoAW

日立アプライアンス業務用エコキュート

前川製作所unimoAWW

ダイキン工業MEGA・Q

サイエンスecoマルチHPWSR

三菱電機水熱源HP

三菱電機ブライン熱源HPMDI

BLACK BOX

東芝キヤリア熱回収SFMC

神戸製鋼所HEM-HR75S

三菱重工冷熱エコウォーム

神戸製鋼所HEM-HR-TB

三菱重工サーマルシステムズETW-L

神戸製鋼所SGH165

ゼネラルヒートポンプ工業高温型水冷式HPZQH-120W

神戸製鋼所HEMⅡ-HR

神戸製鋼所SGH120

東芝キヤリア熱回収CAONS

前川製作所unimoWW

前川製作所熱風HP

エコシロッコ

サイエンスecoマルチHPAW-F

三菱電機ホットウォーターHP P500

ゼネラルヒートポンプ工業洗浄工程用HP

三菱電機サニーパックQ

ECO神戸製鋼所HEM-90A

窯業ゴム・プラスチック

印刷紙・パルプ

食品化学医薬

機械/電気機械電子デバイス

塗装前処理

塗装乾燥

蒸留/濃縮/乾燥

蒸留

殺菌 フ

ィルム接着乾燥

紙の乾燥

原料保温

洗浄

純水加温

メッキ槽加温

変圧器コイル乾燥

溶解

溶解

ゆで麺

廃水処理

印刷乾燥

発砲スチロール乾燥

ガラス洗浄

◎廃熱回収(廃温水、冷却廃熱等)や冷温同時供給が可能◎熱交換性能が良いのでコンパクト◎より高いCOPが期待できる

◎無尽蔵の空気エネルギーが利用可能◎設置場所に制約が少ないためエンジニアリングがしやすい◎配管工事が少ないため工事費が低廉

熱風ヒートポンプ:主に乾燥に利用

蒸気ヒートポンプ:主に蒸留、濃縮に利用

蒸気圧縮式ヒートポンプ(MVR):廃蒸気を再圧縮利用

高温水ヒートポンプ:主に洗浄、殺菌、加熱、保温、乾燥に利用

ヒートポンプにはエネルギーの元となる熱源が必要ですが、産業用ヒートポンプは様々な熱源が利用できるように豊富なラインナップが揃っています。熱源別に大きく分けると、水を熱源とする「水熱源ヒートポンプ」と、空気を熱源とする「空気熱源ヒートポンプ」に分類されます。

サイエンスecoマルチHPWHC

ecoマルチHPWHC

富士電機蒸気発生HP

神戸製鋼所HEM-HR90

空気熱源ヒートポンプの特長水熱源ヒートポンプの特長

東芝キヤリアCAONS140L

昭和鉄工業務用エコキュートSSHP-30B

代替フロン冷媒:■CO2冷媒:■水熱源/空気熱源兼用タイプ:

【図の見方】

製品写真

バーの横位置は「加熱能力」上下の範囲は「加熱温度範囲」を示します

写真のプロット点は「加熱能力算出温度」を示します

ダイキン工業

MDI ゼネラルヒートポンプ工業サイエンス 昭和鉄工

三菱重工サーマルシステムズQ-ton

日立アプライアンス業務用エコキュート

神戸製鋼所

三菱重工サーマルシステムズ

富士電機

前川製作所

神戸製鋼所 前川製作所

三菱重工サーマルシステムズ熱Pu-ton

※※※

※加熱能力はいずれも30kW

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冷温同時廃 熱

空 気

効果的な導入計画のポイント 効果的な導入計画のポイント廃熱回収システムヒートポンプは高効率な機器ですが、省エネ性と経済性を両立した、より効果的な導入を図るためには、システム全体で最適な導入方法を考える必要があります。

まずは工場のエネルギー利用状況を確認し、下記のような効率改善が期待できる箇所から優先的に導入することが大切です。 □加熱温度:低温利用で蒸気加熱しているプロセスはないか?□配管長:蒸気配管の末端で蒸気を利用していないか?□冷温同時:冷熱と温熱を同時利用しているプロセスはないか?□低温廃熱:環境温度より高い廃熱を大量に捨てていないか?□固定ロス:負荷率の低い状態でボイラーを使っていないか?□メンテナンス:ボイラーメンテナンスや夜間運転(有資格者など)で苦労していないか?

上記の確認結果を参考に、具体的な加熱対象を選定します。選定にあたっては、以下の条件を参照に加熱対象を抽出します。●温度:主として100℃以下の加熱工程を優先●用途:主な用途としては、洗浄、給湯、加熱・保温、殺菌、乾燥など●プロセス:自己廃熱の発生プロセス、冷温同時プロセスなど●加熱方式:一過式加熱か循環式加熱かの確認(加熱方式によってヒートポンプの機種選定が変わります:p12)

具体的な加熱対象について、必要な加熱容量を検討します。実際に加熱量が計測されていれば良いのですが、そうでない場合(新設なども含め)は、既存のデータで推定することになります。●日間、季節間で負荷変動があるのが一般的なので、「日間、季節間の負荷特性」「ピーク負荷」「合計負荷」を把握します。また生産計画によって影響がある場合は、その条件も加味して検討します。●実測データが無い場合は、①既存のお客様データからの想定、②生産機器やワークの放熱量・比熱からの推定、③必要により一部実測を行いながら算出します。●保温用途などでは、立上り時にピーク負荷が発生する場合が多いので注意する必要があります。

加熱に必要な熱源「冷温同時」「廃熱」「空気」の選定を行います。●冷熱と温熱を同時に使う工程では、まずは冷温同時供給を優先的に検討します。●廃熱がある場合は、①加熱対象との廃熱源の距離、②廃熱温度と加熱温度差、③熱量と熱バランス、を検討します。このプロセスについては廃熱回収の場合も、冷温同時供給の場合も同様です。●加熱量と廃熱量、または冷熱と温熱のバランスが取れない部分は、既設の熱源を利用するなど、ハイブリッド加熱の検討を行います。●廃熱が無い場合は、空気熱源ヒートポンプの利用を検討します。

上記までの検討を行ったあと、ヒートポンプの機種・容量選定と全体システム構成を考えることになりますが、負荷特性、既設工場実態、環境性の優先度などによって、容量選定、システム構成は変化してきます。いくつかの案を試算してみて、最終的なシステムを決定することになります。●加熱負荷の変動が大きい、または負荷予測困難な場合:ベース負荷をヒートポンプとし、残りの負荷は他熱源併用によるハイブリッド加熱にするのが一般的です。

 ヒートポンプの容量を大きくすると環境性は向上しますが、回収年数は低下するため、どの程度の回収年数にするかによってシステム構成が変化します。●既設設備の更新などの場合:まずは既設容量をベースに検討を進めることになります。●昼間のみの加熱利用の場合:夜間電力を活用することによって、経済性を高める可能性があるため、蓄熱することも選択肢の一つとなります。

▼導入計画の検討フロー▼

STEP 1エネルギー利用状況の

把握

STEP 2加熱対象の選定

STEP 3加熱容量の検討

STEP 4熱源選定と

熱バランス検討

STEP 5ヒートポンプの機種・容量選定

と全体システム構成の

検討

導入計画のポイント3エンジニアリング費用を

抑える産業用ヒートポンプの場合、エンジニアリング費用(補機、工事費)のウェイトが大きく、半分以上であるため、計画当初からその点を念頭に置く必要があります。

導入計画のポイント1高いCOP(エネルギー効率)で

使う加熱温度と熱源温度の差が大きいほどCOPは低下するため、COP3以上を目安として、温度差を極力小さくする。

導入計画のポイント2ヒートポンプの稼働時間を

確保する稼働時間は回収年数に直結するため、対象工程選定時や仕様検討時には、稼働時間の確保を考慮する必要があります。(早期回収目安:4000時間以上)

廃熱回収システムのヒートポンプ容量の考え方は、一般的には加熱側と廃熱側の熱バランスが取れている容量を基本に考えます。廃熱をなるべく多く回収するためにヒートポンプ容量を大きくすると、環境性は高まりますが、経済性(投資回収年数)とはトレードオフの関係となり、どちらを優先するかの判断となります。

廃熱源が廃水の場合:腐食性(塩素イオン濃度など)やダスト、スケールの付着性がないか。廃熱源が廃気の場合:廃水の場合と同様ですが、特に結露して腐食性が高まる場合があるので

廃熱回収温度に注意が必要となります。

廃熱回収システムの導入ポイントとしては、良質な廃熱源の有無が最も重要なポイントとなります。具体的には加熱対象と廃熱源の①温度差が小さいこと、②距離が近いこと、③熱量と熱バランスが整合していることが重要となります。

【廃熱量】 【加熱量】

【自己廃熱の利用】

【機器冷却廃熱の利用】

廃熱

廃水処理、洗浄廃水、乾燥廃気 など

コンプレッサー、チラー、切削機、熱処理装置 など

冷却塔 など

廃熱回収システムの例

加熱加熱プロセス

加熱プロセス

ヒートポンプ

廃気

廃気

機器冷却水

冷却水

熱回収

【加熱】

【廃熱】 夏期

冬期

中間期

加熱プロセス

ヒートポンプ

ヒートポンプ

冷却設備

機 器

コンプレッサー

冷却塔

バッファタンク

加熱廃熱源

2. 機器冷却廃熱を利用コンプレッサー、チラー、切削機、熱処理装置など、機械装置の冷却として廃棄される熱を利用することも大いに有効です。一般的には図の通り、冷却塔で冷却する前の冷却水を利用します。この場合、冷却水温度が冷却塔で冷却する場合より下がることにより、機器効率が向上する効果もあります。一方、冷却水温度が下がり過ぎて結露の問題を生じる場合もあり、機器側の温度条件の確認が重要となります。また、チラーなど季節間で廃熱に差が生じる場合は、熱バランスの確認は特に重要です。

1. 自己廃熱を利用廃熱源として最も利用しやすいのは同一プロセスの自己廃熱の利用です。自己廃熱の場合、温度差が小さく、距離が近く、量とバランスがマッチしていることから、廃熱源として最も効果的となります。一方、自己廃熱だけでは熱量が必ず不足するため、ほとんどの場合、加熱側はハイブリッド加熱となるパターンが一般的です。

良質な廃熱源としては、まずは以下の2点があげられます。

ポイント3|熱量と熱バランスが整合しているか

ポイント1|温度差が小さいか

ポイント2|距離が近いか

熱バランスの確認

どの廃熱を利用するか?

ヒートポンプ容量の考え方

廃熱回収システムの注意点

導 入 計 画 の 考 え 方

7 8

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冷温同時廃 熱

空 気

効果的な導入計画のポイント 効果的な導入計画のポイント廃熱回収システムヒートポンプは高効率な機器ですが、省エネ性と経済性を両立した、より効果的な導入を図るためには、システム全体で最適な導入方法を考える必要があります。

まずは工場のエネルギー利用状況を確認し、下記のような効率改善が期待できる箇所から優先的に導入することが大切です。 □加熱温度:低温利用で蒸気加熱しているプロセスはないか?□配管長:蒸気配管の末端で蒸気を利用していないか?□冷温同時:冷熱と温熱を同時利用しているプロセスはないか?□低温廃熱:環境温度より高い廃熱を大量に捨てていないか?□固定ロス:負荷率の低い状態でボイラーを使っていないか?□メンテナンス:ボイラーメンテナンスや夜間運転(有資格者など)で苦労していないか?

上記の確認結果を参考に、具体的な加熱対象を選定します。選定にあたっては、以下の条件を参照に加熱対象を抽出します。●温度:主として100℃以下の加熱工程を優先●用途:主な用途としては、洗浄、給湯、加熱・保温、殺菌、乾燥など●プロセス:自己廃熱の発生プロセス、冷温同時プロセスなど●加熱方式:一過式加熱か循環式加熱かの確認(加熱方式によってヒートポンプの機種選定が変わります:p12)

具体的な加熱対象について、必要な加熱容量を検討します。実際に加熱量が計測されていれば良いのですが、そうでない場合(新設なども含め)は、既存のデータで推定することになります。●日間、季節間で負荷変動があるのが一般的なので、「日間、季節間の負荷特性」「ピーク負荷」「合計負荷」を把握します。また生産計画によって影響がある場合は、その条件も加味して検討します。●実測データが無い場合は、①既存のお客様データからの想定、②生産機器やワークの放熱量・比熱からの推定、③必要により一部実測を行いながら算出します。●保温用途などでは、立上り時にピーク負荷が発生する場合が多いので注意する必要があります。

加熱に必要な熱源「冷温同時」「廃熱」「空気」の選定を行います。●冷熱と温熱を同時に使う工程では、まずは冷温同時供給を優先的に検討します。●廃熱がある場合は、①加熱対象との廃熱源の距離、②廃熱温度と加熱温度差、③熱量と熱バランス、を検討します。このプロセスについては廃熱回収の場合も、冷温同時供給の場合も同様です。●加熱量と廃熱量、または冷熱と温熱のバランスが取れない部分は、既設の熱源を利用するなど、ハイブリッド加熱の検討を行います。●廃熱が無い場合は、空気熱源ヒートポンプの利用を検討します。

上記までの検討を行ったあと、ヒートポンプの機種・容量選定と全体システム構成を考えることになりますが、負荷特性、既設工場実態、環境性の優先度などによって、容量選定、システム構成は変化してきます。いくつかの案を試算してみて、最終的なシステムを決定することになります。●加熱負荷の変動が大きい、または負荷予測困難な場合:ベース負荷をヒートポンプとし、残りの負荷は他熱源併用によるハイブリッド加熱にするのが一般的です。

 ヒートポンプの容量を大きくすると環境性は向上しますが、回収年数は低下するため、どの程度の回収年数にするかによってシステム構成が変化します。●既設設備の更新などの場合:まずは既設容量をベースに検討を進めることになります。●昼間のみの加熱利用の場合:夜間電力を活用することによって、経済性を高める可能性があるため、蓄熱することも選択肢の一つとなります。

▼導入計画の検討フロー▼

STEP 1エネルギー利用状況の

把握

STEP 2加熱対象の選定

STEP 3加熱容量の検討

STEP 4熱源選定と

熱バランス検討

STEP 5ヒートポンプの機種・容量選定

と全体システム構成の

検討

導入計画のポイント3エンジニアリング費用を

抑える産業用ヒートポンプの場合、エンジニアリング費用(補機、工事費)のウェイトが大きく、半分以上であるため、計画当初からその点を念頭に置く必要があります。

導入計画のポイント1高いCOP(エネルギー効率)で

使う加熱温度と熱源温度の差が大きいほどCOPは低下するため、COP3以上を目安として、温度差を極力小さくする。

導入計画のポイント2ヒートポンプの稼働時間を

確保する稼働時間は回収年数に直結するため、対象工程選定時や仕様検討時には、稼働時間の確保を考慮する必要があります。(早期回収目安:4000時間以上)

廃熱回収システムのヒートポンプ容量の考え方は、一般的には加熱側と廃熱側の熱バランスが取れている容量を基本に考えます。廃熱をなるべく多く回収するためにヒートポンプ容量を大きくすると、環境性は高まりますが、経済性(投資回収年数)とはトレードオフの関係となり、どちらを優先するかの判断となります。

廃熱源が廃水の場合:腐食性(塩素イオン濃度など)やダスト、スケールの付着性がないか。廃熱源が廃気の場合:廃水の場合と同様ですが、特に結露して腐食性が高まる場合があるので

廃熱回収温度に注意が必要となります。

廃熱回収システムの導入ポイントとしては、良質な廃熱源の有無が最も重要なポイントとなります。具体的には加熱対象と廃熱源の①温度差が小さいこと、②距離が近いこと、③熱量と熱バランスが整合していることが重要となります。

【廃熱量】 【加熱量】

【自己廃熱の利用】

【機器冷却廃熱の利用】

廃熱

廃水処理、洗浄廃水、乾燥廃気 など

コンプレッサー、チラー、切削機、熱処理装置 など

冷却塔 など

廃熱回収システムの例

加熱加熱プロセス

加熱プロセス

ヒートポンプ

廃気

廃気

機器冷却水

冷却水

熱回収

【加熱】

【廃熱】 夏期

冬期

中間期

加熱プロセス

ヒートポンプ

ヒートポンプ

冷却設備

機 器

コンプレッサー

冷却塔

バッファタンク

加熱廃熱源

2. 機器冷却廃熱を利用コンプレッサー、チラー、切削機、熱処理装置など、機械装置の冷却として廃棄される熱を利用することも大いに有効です。一般的には図の通り、冷却塔で冷却する前の冷却水を利用します。この場合、冷却水温度が冷却塔で冷却する場合より下がることにより、機器効率が向上する効果もあります。一方、冷却水温度が下がり過ぎて結露の問題を生じる場合もあり、機器側の温度条件の確認が重要となります。また、チラーなど季節間で廃熱に差が生じる場合は、熱バランスの確認は特に重要です。

1. 自己廃熱を利用廃熱源として最も利用しやすいのは同一プロセスの自己廃熱の利用です。自己廃熱の場合、温度差が小さく、距離が近く、量とバランスがマッチしていることから、廃熱源として最も効果的となります。一方、自己廃熱だけでは熱量が必ず不足するため、ほとんどの場合、加熱側はハイブリッド加熱となるパターンが一般的です。

良質な廃熱源としては、まずは以下の2点があげられます。

ポイント3|熱量と熱バランスが整合しているか

ポイント1|温度差が小さいか

ポイント2|距離が近いか

熱バランスの確認

どの廃熱を利用するか?

ヒートポンプ容量の考え方

廃熱回収システムの注意点

導 入 計 画 の 考 え 方

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加熱プロセス

冷却プロセス

冷温同時ヒートポンプ

加熱プロセスヒートポンプ

ヒートポンプ

既設チラー

他の加熱方式

ヒートポンプ

他の加熱方式

既設チラー

他の加熱方式

加熱プロセス

加熱プロセス

加熱プロセス

加熱プロセス

冷却プロセス

加熱プロセス冷却プロセス

蓄熱槽(温水)冷却プロセス 冷温同時

ヒートポンプ

水蓄熱槽氷蓄熱槽(冷水)

ヒートポンプ廃気

廃気

氷蓄熱槽外観(日本BAC製)

22 23 0 1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 13 14 15 16 17 18 19 20 21時刻[時]

蓄熱槽による冷温バランス調整事例変動が大きい負荷の場合、「蓄熱槽」を使って冷温バランスを確保することが有効です。特に氷蓄熱槽は、限りなく0℃に近い冷水を安定して取り出すことができ、急速な冷却ができることから、食品工場(乳製品、豆腐など)で多く採用されています。エネルギー管理上は、ピーク負荷抑制など電力平準化にも寄与することができます。

温熱(ボイラーなど)と冷熱(チラーなど)を両方使っている工場では、冷温同時供給システムの導入が非常に有効です。特に加熱と冷却が連続している工程がある場合には、熱バランスが調整しやすく、効果的な導入が期待できます。

基本的には廃熱回収システムと同様ですが、温熱と冷熱のバランスをとることがさらに重要となり、通常は蓄熱槽を使うか、ハイブリッド化してバランス調整を行います。

ハイブリッドシステムは構成をヒートポンプと他の加熱方式(蒸気、電気ヒータなど)を組み合わせて利用する方式です。オールヒートポンプに比べ環境性には劣りますが、経済性では効果が大きく現実的なシステム構成と言えます。

ベストミックス◎省エネ性の高いヒートポンプをベース利用◎変動負荷を瞬発力のある他方式

COP向上◎ヒートポンプでCOPの高い温度まで加熱し、 他方式でさらに昇温

負荷変動吸収◎立上り時など大きな変動負荷を 他方式でバックアップ

既設設備の有効活用◎既設チラーの更新など、一部を冷温同時ヒートポンプに変更

トラブル時のバックアップ◎負荷が予測できない場合◎万が一のバックアップ利用

ヒートポンプ 他の加熱方式

蒸気、電気ヒータ空気熱源ヒートポンプ など

トラブル発生

熱風80℃

熱風120℃

外気20℃

80℃

80℃ 120℃

80℃

ヒートポンプ

他の加熱方式(蒸気、電気ヒータ)

加熱負荷

変動負荷

ベース負荷

0 6 12 18

他の加熱方式

効果的な導入計画のポイントハイブリッドシステム効果的な導入計画のポイント冷温同時供給システム

1. 蓄熱槽を使う大量に温水や冷水を使用している工程では、蓄熱槽を使って冷温バランスを調整するのが有効です。蓄熱槽を使うことによって、さらに以下のメリットが期待できます。

ハイブリッドシステムは主としてヒートポンプと他の加熱方式を並列で使う方式と直列で使う方式があります。

1.並列方式主に容量の最適分担を図るもので、ベースをヒートポンプ、変動部分を他加熱方式が担います。

2. 直列方式主に温度の最適分担を図るもので、低温部をヒートポンプ、高温部を他加熱方式が担います。

【直列方式】ヒートポンプでは加熱温度が不足する場合 など

【並列方式】負荷変動が大きい場合、容量が予測できない場合 など

2. ハイブリッド化して使う加熱側、冷却側、どちらか一方を優先し、他方をボイラーの給水予熱やチラーの予冷に使うなど、ハイブリッド化してバランスをとる方法が効果的です。特に既設設備(ボイラー、チラーなど)がある場合は、既設設備を有効利用した更新計画など、現実的な選択手段として活用されます。

●負荷変動を安定化できる ●ヒートポンプが効率的に運転でき、機器容量が最小化できる ●夜間電力の活用などエネルギーコスト的にメリットがある (昼間負荷の場合)

給水

予熱

予冷

給水

【加熱側をボイラーの給水予熱にする場合】

【冷却側をチラーの予冷にする場合】

導 入 計 画 の 考 え 方 ハイブリッドシステムとは?

ハイブリッドシステムの2つの基本パターン

ハイブリッド加熱の主な適用メリット

冷温バランスを調整するには

加熱

温度をプラス

負荷変動を吸収

冷却

適用温度領域が広がる

投資回収年数が向上する

ボイラーバッファタンク

チラー

チラー

冷却塔

冷温同時ヒートポンプ

冷温同時ヒートポンプ

※ハイブリッド加熱システムの一部方式は、特許が取得されているものがあります。

冷却負荷

放熱量追掛運転熱量蓄熱量冷却負荷

夜間時間帯の有効利用

シフト

●負荷平準化●ヒートポンプ容量の最小化

【氷蓄熱槽による負荷調整例】

23時

9 10

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加熱プロセス

冷却プロセス

冷温同時ヒートポンプ

加熱プロセスヒートポンプ

ヒートポンプ

既設チラー

他の加熱方式

ヒートポンプ

他の加熱方式

既設チラー

他の加熱方式

加熱プロセス

加熱プロセス

加熱プロセス

加熱プロセス

冷却プロセス

加熱プロセス冷却プロセス

蓄熱槽(温水)冷却プロセス 冷温同時

ヒートポンプ

水蓄熱槽氷蓄熱槽(冷水)

ヒートポンプ廃気

廃気

氷蓄熱槽外観(日本BAC製)

22 23 0 1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 13 14 15 16 17 18 19 20 21時刻[時]

蓄熱槽による冷温バランス調整事例変動が大きい負荷の場合、「蓄熱槽」を使って冷温バランスを確保することが有効です。特に氷蓄熱槽は、限りなく0℃に近い冷水を安定して取り出すことができ、急速な冷却ができることから、食品工場(乳製品、豆腐など)で多く採用されています。エネルギー管理上は、ピーク負荷抑制など電力平準化にも寄与することができます。

温熱(ボイラーなど)と冷熱(チラーなど)を両方使っている工場では、冷温同時供給システムの導入が非常に有効です。特に加熱と冷却が連続している工程がある場合には、熱バランスが調整しやすく、効果的な導入が期待できます。

基本的には廃熱回収システムと同様ですが、温熱と冷熱のバランスをとることがさらに重要となり、通常は蓄熱槽を使うか、ハイブリッド化してバランス調整を行います。

ハイブリッドシステムは構成をヒートポンプと他の加熱方式(蒸気、電気ヒータなど)を組み合わせて利用する方式です。オールヒートポンプに比べ環境性には劣りますが、経済性では効果が大きく現実的なシステム構成と言えます。

ベストミックス◎省エネ性の高いヒートポンプをベース利用◎変動負荷を瞬発力のある他方式

COP向上◎ヒートポンプでCOPの高い温度まで加熱し、 他方式でさらに昇温

負荷変動吸収◎立上り時など大きな変動負荷を 他方式でバックアップ

既設設備の有効活用◎既設チラーの更新など、一部を冷温同時ヒートポンプに変更

トラブル時のバックアップ◎負荷が予測できない場合◎万が一のバックアップ利用

ヒートポンプ 他の加熱方式

蒸気、電気ヒータ空気熱源ヒートポンプ など

トラブル発生

熱風80℃

熱風120℃

外気20℃

80℃

80℃ 120℃

80℃

ヒートポンプ

他の加熱方式(蒸気、電気ヒータ)

加熱負荷

変動負荷

ベース負荷

0 6 12 18

他の加熱方式

効果的な導入計画のポイントハイブリッドシステム効果的な導入計画のポイント冷温同時供給システム

1. 蓄熱槽を使う大量に温水や冷水を使用している工程では、蓄熱槽を使って冷温バランスを調整するのが有効です。蓄熱槽を使うことによって、さらに以下のメリットが期待できます。

ハイブリッドシステムは主としてヒートポンプと他の加熱方式を並列で使う方式と直列で使う方式があります。

1.並列方式主に容量の最適分担を図るもので、ベースをヒートポンプ、変動部分を他加熱方式が担います。

2. 直列方式主に温度の最適分担を図るもので、低温部をヒートポンプ、高温部を他加熱方式が担います。

【直列方式】ヒートポンプでは加熱温度が不足する場合 など

【並列方式】負荷変動が大きい場合、容量が予測できない場合 など

2. ハイブリッド化して使う加熱側、冷却側、どちらか一方を優先し、他方をボイラーの給水予熱やチラーの予冷に使うなど、ハイブリッド化してバランスをとる方法が効果的です。特に既設設備(ボイラー、チラーなど)がある場合は、既設設備を有効利用した更新計画など、現実的な選択手段として活用されます。

●負荷変動を安定化できる ●ヒートポンプが効率的に運転でき、機器容量が最小化できる ●夜間電力の活用などエネルギーコスト的にメリットがある (昼間負荷の場合)

給水

予熱

予冷

給水

【加熱側をボイラーの給水予熱にする場合】

【冷却側をチラーの予冷にする場合】

導 入 計 画 の 考 え 方 ハイブリッドシステムとは?

ハイブリッドシステムの2つの基本パターン

ハイブリッド加熱の主な適用メリット

冷温バランスを調整するには

加熱

温度をプラス

負荷変動を吸収

冷却

適用温度領域が広がる

投資回収年数が向上する

ボイラーバッファタンク

チラー

チラー

冷却塔

冷温同時ヒートポンプ

冷温同時ヒートポンプ

※ハイブリッド加熱システムの一部方式は、特許が取得されているものがあります。

冷却負荷

放熱量追掛運転熱量蓄熱量冷却負荷

夜間時間帯の有効利用

シフト

●負荷平準化●ヒートポンプ容量の最小化

【氷蓄熱槽による負荷調整例】

23時

9 10

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【洗浄機構成例(シャワー方式)】

洗 浄 槽

【間接加温方式】

60℃

65℃

65℃

15℃

ヒートポンプ

ヒートポンプ

循環式加温

洗浄槽

貯湯タンク

洗浄槽

洗浄槽

洗浄槽

バッファタンク 熱交換器

ヒートポンプ

【間接加温(プレートコイル)方式】

バッファタンク プレートコイル

ヒートポンプ

【直接加温方式】

ヒートポンプ

給水

シャワー

カラン

一過式加温

ヒートポンプの保温用途としては、塗装前の表面処理である脱脂、湯洗、化成槽の保温や、食品材料の保温などに多く利用されています。「加熱方式」は、加温槽やワークからの放熱分を補う保温(主に循環加温)であり、導入形態の特徴としては、ヒートポンプを加熱対象(洗浄槽など)に近接して設置し、蒸気供給ロスや設置工事費の削減を図る場合が多く見られます。また、空気熱源ヒートポンプが屋内に設置される場合は、ヒートポンプから発生する冷風によって作業環境の改善や空調負荷の低減効果も期待されています。設計ポイントとして、「必要加熱容量の算定」 「加熱方式の選択」 「ヒートポンプ容量・台数の選定」について紹介します。

主な保温・加温用途

◎塗装前処理(脱脂、湯洗、防錆、化成)◎各種部品洗浄◎メッキ槽保温◎食品材料の保温◎チョコレートの湯煎

導入検討を行う場合は、まずは加熱対象の必要加熱容量について算定することが必要となりますが、実測データがない場合は、ある程度の推定も含め加熱容量を算定する必要があります。洗浄槽の場合を例に、いくつかの算定方法について紹介します。

①加熱対象のドレン量からの算定方法加熱に使用している蒸気圧力[MPa]、ドレン量[L/h]、ドレン温度[℃]がわかる場合には以下の方法で算定ができます。【計算式】 必要加熱能力[kW]=(供給蒸気のエンタルピー[MJ/kg]ードレンのエンタルピー[MJ/kg])×ドレン量÷3.6×安全率

◎補給水がある場合には注意(補給水負荷が大きい場合あり)。◎仕上げ洗浄は純水を利用する場合あり。 純水の場合SUS品でも腐食の可能性あり。

用 途:荒洗浄または仕上げ洗浄、低温殺菌 等温度帯:40~70℃方 式:シャワー方式・漬け洗い

湯 洗

◎洗浄液はアルカリ系が多い(pH8以上)ため、 できればSUSを使用すること。◎pH6以下ではSUSでも腐食の可能性が大きいため、 間接加熱方式とします。

用 途:洗浄 等温度帯:40~70℃方 式:シャワー方式・漬け洗い

脱 脂

◎析出(詰り)傾向が高いので、直接加熱は不可です。温水による間接加熱が多い温度帯:35~55℃化 成

◎析出(詰り)傾向が高いことと同時に腐食の傾向がありますので、 間接加熱方式とします。

強酸が多い(pH3程度)樹脂熱交換器やチタン熱交換器の採用が多いメ ッ キ

②ポンプ循環流量からの算定方法洗浄液の往還温度差[℃]、ポンプ循環流量[L/min]が分かる場合【計算式】 必要加熱能力[kW]=洗浄液の往還温度差×ポンプ循環流量×60分÷860×安全率

※洗浄槽の放熱を加味していないので、加算する必要があります。

③ワーク負荷からの算定方法ワーク1単位の重量[kg/サイクル]:A、処理時間[秒/サイクル]:B、ワーク比熱[kJ/kg℃]:C、周囲温度[℃]:D、洗浄液温度[℃]:E が分かる場合【計算式】 1時間当たりの処理量[kg]=A×60秒÷B×60分

必要加熱能力[kW]=(E-D)×処理量×C÷3600×安全率※洗浄槽の放熱を加味していないので、加算する必要があります。ワークの吊り具やパレットの熱量も考慮が必要な場合があります。

④現行熱源で操業中の槽内温度低下からの算定方法現行熱源での加熱停止温度[℃]:A、同左加熱開始温度[℃]:B、停止から開始までの時間[分]:C、タンク容量[L]:D が分かる場合【計算式】 必要加熱能力[kW]=(A-B)×D×60分÷C÷860×安全率

ヒートポンプによる加熱方式としては、熱交換器を介して加熱を行う「間接加温方式」と、溶液を直接ヒートポンプで加温する「直接加温方式」があります。 熱交換器を介するとヒートポンプ出口温度を5~10℃高くする必要があり、また、ポンプ動力なども必要となるため、加熱効率、付帯設備コスト、設置スペース面で、直接加温が有利となりますが、まずは、溶液の種類によって、直接加温の適用可否を判断する必要があります(下表参照)。また、熱交換器を加温槽内に設置可能な場合は、設置スペース、経済性で有利となる場合があり、選択肢の一つとなります。いずれにしても、加熱方式の選択は、既設洗浄設備との協調が重要となります。

ヒートポンプ容量・台数を選定する場合、操業前の立上げ時と生産稼働時では条件が大きく異なり、立上条件で台数選定すると、使用台数が増える傾向になります。 従って、手順としては次の流れで選定します。

❶ライン稼働時の負荷を算出(必要加熱能力より求めた数値)⬇❷季節により負荷を想定し、冬期のみ必要台数が極端に多い場合などはハイブリッド方式の採用を考慮する。⬇❸選んだ台数での立上想定時間を算出。立上時間が許容範囲外の場合は、立上負荷に見合った台数を選定するか、ハイブリッド方式の採用を検討する(この場合、冬期のみが達成できないケースが多い)。

各ケースで経済性や省エネ性等の比較を行い、最終的な容量・台数を選定します。

ヒートポンプ容量・台数の選定

ヒートポンプの2つの加熱方式

用 途 概要・特徴 注意点・ポイント

・ワーク重量・比熱・処理時間

・ポンプ循環流量・洗浄液温度(往) ・タンク容量

・洗浄液温度(還)

洗浄槽

ワーク

現行加熱熱源(蒸気、電気ヒータなど)

ヒートポンプの加熱方式は、保温用途などに使われる「循環式加温」と、洗浄用途などに使われる「一過式加温」の2つの方式があります。ヒートポンプは冷媒の種類によって、得意な加熱方式が異なるため、機種選定の際には注意が必要です。■循環式加温保温用途のように少ない温度幅で加温する方式◎洗浄槽の加温、保温 ◎食品原料の保温▶フロン系冷媒が得意■一過式加温給湯用途のように給水などを大温度差で昇温する方式◎給湯 ◎洗浄▶CO2冷媒が得意(エコキュートが代表)▶フロン系冷媒でも可能

加熱能力﹇kW﹈ ヒートポンプ1台

ヒートポンプ2台

ヒートポンプ3台

必要加熱能力

春 夏 秋 冬

用途別設計ポイント保温・加熱用途

ライン上部の架台に設置したヒートポンプユニット

空気熱源ヒートポンプの例

■導入事例ヤマハ発動機株式会社 袋井南工場さまエンジン部品の表面処理ラインにヒートポンプ加温システムを導入〔ものづくりに電気vol.3 p29〕

加 熱 方 式 の 検 討

必要加熱容量 の 算定

11 12

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【洗浄機構成例(シャワー方式)】

洗 浄 槽

【間接加温方式】

60℃

65℃

65℃

15℃

ヒートポンプ

ヒートポンプ

循環式加温

洗浄槽

貯湯タンク

洗浄槽

洗浄槽

洗浄槽

バッファタンク 熱交換器

ヒートポンプ

【間接加温(プレートコイル)方式】

バッファタンク プレートコイル

ヒートポンプ

【直接加温方式】

ヒートポンプ

給水

シャワー

カラン

一過式加温

ヒートポンプの保温用途としては、塗装前の表面処理である脱脂、湯洗、化成槽の保温や、食品材料の保温などに多く利用されています。「加熱方式」は、加温槽やワークからの放熱分を補う保温(主に循環加温)であり、導入形態の特徴としては、ヒートポンプを加熱対象(洗浄槽など)に近接して設置し、蒸気供給ロスや設置工事費の削減を図る場合が多く見られます。また、空気熱源ヒートポンプが屋内に設置される場合は、ヒートポンプから発生する冷風によって作業環境の改善や空調負荷の低減効果も期待されています。設計ポイントとして、「必要加熱容量の算定」 「加熱方式の選択」 「ヒートポンプ容量・台数の選定」について紹介します。

主な保温・加温用途

◎塗装前処理(脱脂、湯洗、防錆、化成)◎各種部品洗浄◎メッキ槽保温◎食品材料の保温◎チョコレートの湯煎

導入検討を行う場合は、まずは加熱対象の必要加熱容量について算定することが必要となりますが、実測データがない場合は、ある程度の推定も含め加熱容量を算定する必要があります。洗浄槽の場合を例に、いくつかの算定方法について紹介します。

①加熱対象のドレン量からの算定方法加熱に使用している蒸気圧力[MPa]、ドレン量[L/h]、ドレン温度[℃]がわかる場合には以下の方法で算定ができます。【計算式】 必要加熱能力[kW]=(供給蒸気のエンタルピー[MJ/kg]ードレンのエンタルピー[MJ/kg])×ドレン量÷3.6×安全率

◎補給水がある場合には注意(補給水負荷が大きい場合あり)。◎仕上げ洗浄は純水を利用する場合あり。 純水の場合SUS品でも腐食の可能性あり。

用 途:荒洗浄または仕上げ洗浄、低温殺菌 等温度帯:40~70℃方 式:シャワー方式・漬け洗い

湯 洗

◎洗浄液はアルカリ系が多い(pH8以上)ため、 できればSUSを使用すること。◎pH6以下ではSUSでも腐食の可能性が大きいため、 間接加熱方式とします。

用 途:洗浄 等温度帯:40~70℃方 式:シャワー方式・漬け洗い

脱 脂

◎析出(詰り)傾向が高いので、直接加熱は不可です。温水による間接加熱が多い温度帯:35~55℃化 成

◎析出(詰り)傾向が高いことと同時に腐食の傾向がありますので、 間接加熱方式とします。

強酸が多い(pH3程度)樹脂熱交換器やチタン熱交換器の採用が多いメ ッ キ

②ポンプ循環流量からの算定方法洗浄液の往還温度差[℃]、ポンプ循環流量[L/min]が分かる場合【計算式】 必要加熱能力[kW]=洗浄液の往還温度差×ポンプ循環流量×60分÷860×安全率

※洗浄槽の放熱を加味していないので、加算する必要があります。

③ワーク負荷からの算定方法ワーク1単位の重量[kg/サイクル]:A、処理時間[秒/サイクル]:B、ワーク比熱[kJ/kg℃]:C、周囲温度[℃]:D、洗浄液温度[℃]:E が分かる場合【計算式】 1時間当たりの処理量[kg]=A×60秒÷B×60分

必要加熱能力[kW]=(E-D)×処理量×C÷3600×安全率※洗浄槽の放熱を加味していないので、加算する必要があります。ワークの吊り具やパレットの熱量も考慮が必要な場合があります。

④現行熱源で操業中の槽内温度低下からの算定方法現行熱源での加熱停止温度[℃]:A、同左加熱開始温度[℃]:B、停止から開始までの時間[分]:C、タンク容量[L]:D が分かる場合【計算式】 必要加熱能力[kW]=(A-B)×D×60分÷C÷860×安全率

ヒートポンプによる加熱方式としては、熱交換器を介して加熱を行う「間接加温方式」と、溶液を直接ヒートポンプで加温する「直接加温方式」があります。 熱交換器を介するとヒートポンプ出口温度を5~10℃高くする必要があり、また、ポンプ動力なども必要となるため、加熱効率、付帯設備コスト、設置スペース面で、直接加温が有利となりますが、まずは、溶液の種類によって、直接加温の適用可否を判断する必要があります(下表参照)。また、熱交換器を加温槽内に設置可能な場合は、設置スペース、経済性で有利となる場合があり、選択肢の一つとなります。いずれにしても、加熱方式の選択は、既設洗浄設備との協調が重要となります。

ヒートポンプ容量・台数を選定する場合、操業前の立上げ時と生産稼働時では条件が大きく異なり、立上条件で台数選定すると、使用台数が増える傾向になります。 従って、手順としては次の流れで選定します。

❶ライン稼働時の負荷を算出(必要加熱能力より求めた数値)⬇❷季節により負荷を想定し、冬期のみ必要台数が極端に多い場合などはハイブリッド方式の採用を考慮する。⬇❸選んだ台数での立上想定時間を算出。立上時間が許容範囲外の場合は、立上負荷に見合った台数を選定するか、ハイブリッド方式の採用を検討する(この場合、冬期のみが達成できないケースが多い)。

各ケースで経済性や省エネ性等の比較を行い、最終的な容量・台数を選定します。

ヒートポンプ容量・台数の選定

ヒートポンプの2つの加熱方式

用 途 概要・特徴 注意点・ポイント

・ワーク重量・比熱・処理時間

・ポンプ循環流量・洗浄液温度(往) ・タンク容量

・洗浄液温度(還)

洗浄槽

ワーク

現行加熱熱源(蒸気、電気ヒータなど)

ヒートポンプの加熱方式は、保温用途などに使われる「循環式加温」と、洗浄用途などに使われる「一過式加温」の2つの方式があります。ヒートポンプは冷媒の種類によって、得意な加熱方式が異なるため、機種選定の際には注意が必要です。■循環式加温保温用途のように少ない温度幅で加温する方式◎洗浄槽の加温、保温 ◎食品原料の保温▶フロン系冷媒が得意■一過式加温給湯用途のように給水などを大温度差で昇温する方式◎給湯 ◎洗浄▶CO2冷媒が得意(エコキュートが代表)▶フロン系冷媒でも可能

加熱能力﹇kW﹈ ヒートポンプ1台

ヒートポンプ2台

ヒートポンプ3台

必要加熱能力

春 夏 秋 冬

用途別設計ポイント保温・加熱用途

ライン上部の架台に設置したヒートポンプユニット

空気熱源ヒートポンプの例

■導入事例ヤマハ発動機株式会社 袋井南工場さまエンジン部品の表面処理ラインにヒートポンプ加温システムを導入〔ものづくりに電気vol.3 p29〕

加 熱 方 式 の 検 討

必要加熱容量 の 算定

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【 給湯バランスイメージ(ゆで麺工程の場合) 】[ℓ]16000

14000

12000

10000

8000

6000

4000

2000

22時

23時

1時

0時

2時

3時

4時

5時

6時

7時

8時

9時

10時

11時

12時

13時

14時

15時

16時

17時

18時

19時

20時

21時

0

22 23 211512時刻[時]9630 1 2 4 5 7 8 10 11 13 14 16 17 19 2018 22 23 211512

時刻[時]9630 1 2 4 5 7 8 10 11 13 14 16 17 19 2018 22 23 211512

時刻[時]9630 1 2 4 5 7 8 10 11 13 14 16 17 19 2018

【 夜間貯湯方式 】 【 ベース運転方式 】 【 ハイブリッド給湯方式 】

給湯使用量給湯製造量

残湯量

用途別設計ポイント洗浄・給湯・殺菌用途 用途別設計ポイント乾燥用途洗浄、給湯、殺菌用途はヒートポンプの導入が進んでいる用途の一つで、食品製造業をはじめ、機械関連、電子デバイス等、多くの分野で導入されています。加熱温度としては、食品製造業では仕込み用の給湯や殺菌を目的とする80℃以上での高温利用と、洗浄などに45~65℃で使用するケースが多く、機械部品の洗浄などでは60~70℃といった比較的低い温度で利用されています。加熱方式としては給湯利用を中心に一過式が多く、設計ポイントとしては、業務用の給湯利用と類似している点が多くあります。給湯利用時のシステム構成・容量選定の考え方等について紹介します。

主な洗浄、給湯、殺菌用途

◎CIP洗浄(リンス水)◎食品製造装置の洗浄・殺菌◎飲料製造装置の洗浄・殺菌◎自動車部品洗浄(ブレーキディスク)◎純水、超純水の加温◎調理器具洗浄、調理用温水

燃焼式給湯システムとヒートポンプ式給湯システムの設計手法の違い燃焼式とヒートポンプ式では設計手法が大きく異なり、燃焼式の容量選定が時間最大給湯負荷(ピーク負荷)をベースに設計されるのに対し、ヒートポンプ式は日給湯負荷と時刻別給湯負荷からヒートポンプ容量や貯湯タンク容量が選定されます(下図参照)。

【計算式】 必要ヒートポンプ容量[kW]=日給湯負荷[kWh/日]÷ヒートポンプ運転時間[h]

負荷特性とシステム構成ヒートポンプ式による最適なシステム構成は負荷特性によって大きく異なり、主に負荷の発生する時間帯と負荷変動の大きさで選択されます。●負荷の発生する時間が昼間が主となる場合:「夜間貯湯方式」を考慮し、それ以外は「ベース運転方式」となります。●日間、季節間の負荷変動が大きい場合:負荷を全量ヒートポンプで対応するとなるとヒートポンプの稼働時間が低下し、貯湯タンクからの放熱量が増加するなど経済性が悪化するため、変動負荷の場合はボイラーとの「ハイブリッド給湯方式」を考慮することになります。

《システム構成検討時のポイント》●給湯負荷の正確な把握負荷特性でシステム構成が大きく影響を受けるため、正確な負荷想定が重要となります。負荷想定が難しい場合は、最初からハイブリッド給湯を選択します。●適切なヒートポンプ容量と貯湯タンク容量の選定ヒートポンプ容量を大きくすると環境性やランニングコストは向上しますが、イニシャルコストが大きくなり、設備稼働率の低下を招きます。ハイブリッド給湯とする場合は、年間最大給湯負荷(一般的には冬場)ではなく、稼働時間を確保できるポイントで容量選択をすることが重要となります。また、貯湯タンク容量を過大に選定すると、低負荷時の放熱ロス増大の要因となります。

給湯利用時のシステム構成・容量選定の考え方と留意点

STEP 1給湯負荷の想定◎日給湯負荷◎時刻別給湯負荷◎最大給湯負荷 等

STEP 2システム構成の選択夜間貯湯方式ベース運転方式ハイブリッド給湯方式

STEP 3ヒートポンプ容量貯湯タンク容量

の選定◎給湯バランス図の作成◎設置スペースの有無◎最大負荷日での検証 等

洗 浄

▼検討フロー▼

給湯負荷

ヒートポンプ運転

さし湯さし湯

温水張り込み 昼休み

※日給湯負荷=時刻別給湯負荷の合計(青色の合計)

他熱源

13

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【 給湯バランスイメージ(ゆで麺工程の場合) 】[ℓ]16000

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10000

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23時

1時

0時

2時

3時

4時

5時

6時

7時

8時

9時

10時

11時

12時

13時

14時

15時

16時

17時

18時

19時

20時

21時

0 アンデックス製 乾燥炉外観

循環加温ヒートポンプ

高温水ヒートポンプ

OA 0℃RA 70℃

SA 70~75℃ EA 70℃88℃

チャンバー

熱交換器

乾燥炉

22 23 211512時刻[時]9630 1 2 4 5 7 8 10 11 13 14 16 17 19 2018 22 23 211512

時刻[時]9630 1 2 4 5 7 8 10 11 13 14 16 17 19 2018 22 23 211512

時刻[時]9630 1 2 4 5 7 8 10 11 13 14 16 17 19 2018

【 夜間貯湯方式 】 【 ベース運転方式 】 【 ハイブリッド給湯方式 】

給湯使用量給湯製造量

残湯量

用途別設計ポイント洗浄・給湯・殺菌用途 用途別設計ポイント乾燥用途洗浄、給湯、殺菌用途はヒートポンプの導入が進んでいる用途の一つで、食品製造業をはじめ、機械関連、電子デバイス等、多くの分野で導入されています。加熱温度としては、食品製造業では仕込み用の給湯や殺菌を目的とする80℃以上での高温利用と、洗浄などに45~65℃で使用するケースが多く、機械部品の洗浄などでは60~70℃といった比較的低い温度で利用されています。加熱方式としては給湯利用を中心に一過式が多く、設計ポイントとしては、業務用の給湯利用と類似している点が多くあります。給湯利用時のシステム構成・容量選定の考え方等について紹介します。

主な洗浄、給湯、殺菌用途

◎CIP洗浄(リンス水)◎食品製造装置の洗浄・殺菌◎飲料製造装置の洗浄・殺菌◎自動車部品洗浄(ブレーキディスク)◎純水、超純水の加温◎調理器具洗浄、調理用温水

乾燥用に利用されるヒートポンプとしては、120℃までの熱風が出せる熱風ヒートポンプや、90℃までの温水が供給できる高温水ヒートポンプが多く用いられており、高温水ヒートポンプは加熱温度帯ごとに多くのラインナップが商品化されています。乾燥用途としては、主に100℃未満の温度での用途が多く、塗装乾燥、食品乾燥、ラミネート乾燥などに多くの適用事例があります。100℃以上の事例もありますが、その場合はある程度の温度までヒートポンプで昇温し、それ以上の加熱は他熱源で対応するハイブリッド加熱となるケースが多くなります。これは、ヒートポンプをよりエネルギー効率の高い範囲で運転することで、システム全体として省エネ性を高める工夫です。代表例として、塗装乾燥用途の設計ポイントについて紹介します。

強制乾燥炉へのヒートポンプ採用事例として、アンデックス㈱山波工場(尾道市)の板金塗装ラインに設置された乾燥炉(乾燥温度70℃)を例に説明します。

乾燥炉の加熱負荷には立上げ負荷と乾燥時の負荷があります。立上げ負荷は、乾燥炉の筐体、床、乾燥炉内の空気を昇温させる負荷で、炉内を乾燥温度まで昇温する際に発生します。乾燥時の負荷には、炉体・ダクトの放熱、対象ワーク・パレット・台車等の昇温、換気負荷等があります。一般に乾燥時の負荷より立上げ負荷が大きくなりますが、ヒートポンプは無人運転やタイマー運転が可能であるため、立上げ時間を通常よりやや長い時間に設定することにより、乾燥時の負荷とのバランスを取ることができます。強制乾燥炉は温風を循環させますが、炉内の溶剤の濃度を一定以下に保つように外気を取り入れて換気します。乾燥炉からの還気(RA)と外気(OA)とを混合し、温水・空気熱交換器で昇温して乾燥炉に給気(SA)します。乾燥炉から一部空気を排気(EA)するため、循環風量SA=RA+OAであり、還気風量RA=SA-EAとなります。温水熱交換器(HEX)では乾燥炉の加熱負荷分の昇温をしますが、上記エアフローとすることにより、熱交換器手前の空気温度を下げることができ、温水との温度差を確保することができるため、熱交換器を最小容量に選定することができます。導入に当たっては、給水の水質を事前に測定し、日本冷凍空調工業会が定めた冷凍空調用水質ガイドライン(JRA GL-02-1994)に準拠し、温水温度によって低位中温水系(20℃を超え60℃以下)、または高位中温水系(60℃を超え90℃以下)の補給水の水質を満足することを確認するとともにメーカーと十分に調整を行います。また、運用にあたっては同ガイドラインの循環水の水質基準を参考に、定期的なブローや水質調整薬剤の使用を検討することも重要です。

主な乾燥用途

◎塗装乾燥(樹脂塗装)◎印刷乾燥◎ドライラミネート◎食品乾燥◎染色乾燥◎変圧器コイル乾燥

ヒートポンプが適用されている塗装工程

◎表面処理(脱脂、湯洗、化成 等)◎スプレー塗装(塗装ブース空調)◎塗装乾燥(強制乾燥)◎電着塗装(電着槽冷却)◎焼付塗装(フラッシュオフ工程)

ウレタン樹脂系塗料

ラッカー、ビニル樹脂系塗料

ウレタン系樹脂塗料

エポキシ系樹脂塗料

アミノアルキッド系のメラミン焼付け塗料

アクリル系焼付け塗料

アニオン電着塗料(アクリル)

カチオン電着塗料(エポキシ)

自 然 乾 燥

強 制 乾 燥

焼付け乾燥

樹 脂 塗 装

焼付け塗装

電 着 塗 装

塗装ラインには図のように多くのヒートポンプが適用されていますが、このうち塗装乾燥工程では、乾燥温度が40~80℃と比較的低い強制乾燥にヒートポンプの活用が期待されています。乾燥は大きく分けると塗料を希釈する水や溶剤を長時間かけて蒸発させる自然乾燥と、塗料を

150℃前後の高温で重合させ短時間で硬化させる焼付け塗装がありますが、樹脂系塗料では中間的な温度帯で塗料の乾燥を促進させる強制乾燥が用いられており、乾燥温度は多くの場合40~80℃と、ヒートポンプの適用が可能となっています。現在市販されているヒートポンプ温水出口温度の上限は、空調用で55℃、温水用で60~75℃、高温水用で80~90℃となっており、乾燥温度に応じたヒートポンプを採用することができます。強制乾燥炉の用途としては家具・楽器等の木工製品、樹脂製品、自動車下塗り塗装、航空機・列車・建機の塗装等があります。

塗装乾燥とヒートポンプの適用方法

強制乾燥への適用事例

燃焼式給湯システムとヒートポンプ式給湯システムの設計手法の違い燃焼式とヒートポンプ式では設計手法が大きく異なり、燃焼式の容量選定が時間最大給湯負荷(ピーク負荷)をベースに設計されるのに対し、ヒートポンプ式は日給湯負荷と時刻別給湯負荷からヒートポンプ容量や貯湯タンク容量が選定されます(下図参照)。

【計算式】 必要ヒートポンプ容量[kW]=日給湯負荷[kWh/日]÷ヒートポンプ運転時間[h]

負荷特性とシステム構成ヒートポンプ式による最適なシステム構成は負荷特性によって大きく異なり、主に負荷の発生する時間帯と負荷変動の大きさで選択されます。●負荷の発生する時間が昼間が主となる場合:「夜間貯湯方式」を考慮し、それ以外は「ベース運転方式」となります。●日間、季節間の負荷変動が大きい場合:負荷を全量ヒートポンプで対応するとなるとヒートポンプの稼働時間が低下し、貯湯タンクからの放熱量が増加するなど経済性が悪化するため、変動負荷の場合はボイラーとの「ハイブリッド給湯方式」を考慮することになります。

《システム構成検討時のポイント》●給湯負荷の正確な把握負荷特性でシステム構成が大きく影響を受けるため、正確な負荷想定が重要となります。負荷想定が難しい場合は、最初からハイブリッド給湯を選択します。●適切なヒートポンプ容量と貯湯タンク容量の選定ヒートポンプ容量を大きくすると環境性やランニングコストは向上しますが、イニシャルコストが大きくなり、設備稼働率の低下を招きます。ハイブリッド給湯とする場合は、年間最大給湯負荷(一般的には冬場)ではなく、稼働時間を確保できるポイントで容量選択をすることが重要となります。また、貯湯タンク容量を過大に選定すると、低負荷時の放熱ロス増大の要因となります。

乾燥方法 塗 料(例) 乾燥温度 乾燥時間塗装方法(例)

給湯利用時のシステム構成・容量選定の考え方と留意点

常温 数時間~数日

1~数時間

20~30分

常温~80℃(MAX120℃)

110~160℃

140~180℃

150~180℃

ヒートポンプ適用温度

ハイブリッド加熱適用温度(ヒートポンプ   +他熱源)

表面処理

塗装乾燥

ドライラミネートの事例

STEP 1給湯負荷の想定◎日給湯負荷◎時刻別給湯負荷◎最大給湯負荷 等

STEP 2システム構成の選択夜間貯湯方式ベース運転方式ハイブリッド給湯方式

STEP 3ヒートポンプ容量貯湯タンク容量

の選定◎給湯バランス図の作成◎設置スペースの有無◎最大負荷日での検証 等

洗 浄

▼検討フロー▼

給湯負荷

ヒートポンプ運転

さし湯さし湯

温水張り込み 昼休み

※日給湯負荷=時刻別給湯負荷の合計(青色の合計)

【 強制乾燥用途のシステム構成 】

他熱源

13 14

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膨張弁

圧縮機

【蒸気ヒートポンプの場合】

蒸気 加熱

廃熱

生産プロセス(蒸発器等)

【MVR(蒸気圧縮式)の場合】※廃熱を熱交換する間接式もある

加熱

廃熱(廃蒸気)

ヒートポンプ

再圧縮蒸気

冷媒 生産プロセス(蒸発器等)

排ガス入口排ガス入口排ガス入口

用途別設計ポイント濃縮・蒸留用途 廃熱回収のポイントと注意点廃熱源と熱交換器の選択ヒートポンプを有効に機能させるためには、いかに上手に廃熱を活用するかが重要なポイントになります。そのためには、まずは、工場から排出されている廃熱が何処にあるかを把握し、その廃熱に合った適切な熱交換方式を選択することが重要です。熱交換器の選択にあたっては、廃熱源の「温度」「流量」「流体の性状」「スケール固着の有無」「腐食性」「工場・設備の状況」など、いくつかの判断要素があります。 以下、廃温水、廃ガスからの熱回収の注意点を紹介します。

廃熱の発生箇所(例)

◎排水処理設備(温水) ◎冷却塔の戻り温水 ◎洗浄後の温水 ◎乾燥炉、熱処理炉からの排気◎ボイラー排ガス、ドレン、ブロー水◎食品調理後の排温水、排気

排水中には、髪の毛、食物残渣、砂、有機物などの多種多様なスケールが混在しており、廃熱回収では熱交換器の閉塞に最も注意が必要です。また、熱交換器は運転中にスケール分の付着により性能低下が起きるので、定期的な開放点検・洗浄が必要となります。とはい

え洗浄の頻度は極力少なく、かつメンテナンスがしやすいタイプの熱交換器を選定する事が大切です。《 熱交換器の機種選定 》工場で広く使用されている熱交換器としては「プレート式」「シェル&チューブ式(多管式)」「スパイラル式」の3種がありますが、各々の機種には一長一短があるため、表に記載の特徴と得意用途をご参考下さい。

廃温水からの熱回収の注意点

沸点上昇と圧縮温度の選定

燃焼排ガス中には、腐食成分であるNOx、SOxが含まれている場合があります。これらの成分を含むガスを冷却して熱回収を行った場合、結露水中に硝酸、硫酸が発生し金属を腐食させることがあり、酸露点問題となっています。一方で酸露点を通過して徹底的に熱回収を行うと莫大な潜熱を得ることができ、メリットが多いのも事実です。

酸腐食のリスクがある場合、絶対に腐食させてはいけない現場なのか?、それとも投資回収メリットがあれば、多少腐食リスクがあってもメンテナンスで対応できればいいのかという考え方で、廃熱回収の選択は大きく異なります。そもそも熱交換器は絶対壊れない構造というものはありませんが、腐食リスクはその考え方で材質選定に選択肢がでるため多くの可能性があるのも事実です。都市ガス、LPガスの燃焼排ガス中にもNOxがあり、微小ではありますがSOxも含まれています。従って長期的にみるとSUS316でも孔食リスクは存在することになります。しかし燃焼時に多くの水分も発生するために、潜熱が大量に回収できることがメリットとなります。一方、A重油では、大量のSOxが含まれており、水分は都市ガスの半分以下であるため潜熱メリットは少ないものとなります。A重油廃ガスでは、SUS316だけでなく腐食に強いと言われているチタンでも腐食してしまう事例があるため、

廃熱回収をする場合には都市ガスやLPガスに燃料転換以後に検討することが妥当と言えます。これらの排ガスを熱回収する熱交換器は、極力スキマ腐食を防止するために、カシメ構造のフィンチューブは避ける必要があります。さらには、排ガスの抵抗が大きくなると動力を必要としてしまうため、低圧力損失設計を行うことも大切です。しかし低圧力損失設計と高効率化は相反することになる場合があるため、気体を相手にする排ガス熱回収熱交換器は、難しい設計環境といえます。チューブタイプの熱交換器は全般的に圧力損失が大きくなる傾向であるため、最近では排ガス専用設計のプレート式熱交換器も登場し、低圧力損失と高効率の両立、モジュール構造での簡単な交換対応も可能となるアイテムが登場しています。

廃ガスからの熱回収の注意点

MVR検討の際には、原液の性状を十分に把握し、それに対応した装置を計画することが重要です。主に、以下の5つの点に注意をして計画します。 ⑴スケーリング(汚れ) 汚れはメンテナンス性に関係します。汚れる要因であるスケール成分とその濃度を把握し、薬剤で除去可能かなど、予め薬液洗浄の効果を確認しておく必要があります。 ⑵材 質 選 定 加熱装置ですので、材質選定は最も重要なポイントといえます。腐食しないよう溶質やその濃度に応じて、適切な材質を選定します(特に酸性の低沸点物など)。 ⑶発 泡 性 泡立ちが激しい液の場合は、原液成分を含んだ泡が蒸気と共に移行してしまうため、泡を制する機構を設ける必要があります。 ⑷沸 点 上 昇 溶液の濃度が上がると沸点が上昇するため、沸点上昇度を把握することは圧縮機の選定に重要な圧縮温度を把握するキーポイントになります。 ⑸蒸留水水質 蒸留によって生成される水の水質は、原液成分に依存するので、水の回収、放流といった目的に適合するかどうかは事前に確認しておく必要があります。これらのポイントを押さえるため、サンプル液を用いた試験を実施し事前に確認します。

MVR検討の5つポイント

MVRは圧縮することによって昇温する装置ですので、沸点上昇の把握と圧縮温度の選定は、設計上最も重要な要素になります。沸点上昇と圧縮温度の関係は通常以下となります。

【各温度の関係】 圧縮温度=沸点上昇+加熱温度差ΔT沸点上昇は溶液濃度の上昇につれて右肩上がりに高くなります。沸点上昇が低いほど圧縮に必要な温度差は小さくなり、消費電力が小さくなります。従って、沸点上昇が小さいほど省エネ性に優れた装置導入が期待されます。一方、加熱温度差を大きくすると、消費電力は大きくなりますが加熱ヒータの伝熱面積は小さくすることができ、両者の関係を踏まえて最適な設計ポイントを決めることになります。また、圧縮温度によって最適な圧縮機も異なります。

プレート式熱交換器

スパイラル式熱交換器

シェル&チューブ式(多管式)熱交換器

分 類 特 徴

◎切削油等の排水処理

◎高沸点有機溶剤回収(NMP、DMSO、MEA等):リチウムイオン電池、液晶、半導体◎排水減溶化◎各種濃縮:塩、調味料、液糖、お茶、

牛乳、発酵液、エキス◎ビールの煮沸◎アルコールの蒸留◎高沸点有機溶剤回収:化学品、膜製造◎バイオエタノールの蒸留◎苛性ソーダ濃縮◎脱硫排水処理◎ホウ素・ヨウ素の回収◎汚泥減溶化

自 動 車・機 械

電 子 デ バ イ ス

食 品

医薬・化学・石油

資源・エネルギー

MVRの適用事例

得意とする廃熱回収用途

スパイラル式熱交換器

排ガス用プレート式熱交換器

濃縮、蒸留、減容化などに使われるヒートポンプには2つのタイプがあります。一つは廃熱と冷媒を熱交換し、冷媒を介して蒸気を作るタイプの「蒸気ヒートポンプ」と、もう一つは廃蒸気を圧縮機で直接再圧縮して昇温する「MVR(Mechanical Vapor Recompression)」と呼ばれるタイプです。「蒸気ヒートポンプ」の場合は、高温ヒートポンプとシステム構成が類似していることから、適用方法も似ており、より高温の廃熱を使って蒸気を生成するヒートポンプです。それに対して「MVR」は、冷媒を介さないで直接蒸気を圧縮するため効率は良くなりますが、直接取り扱う上での課題もあり、適用の考え方が大幅に異なります。どちらが良いかはケースバイケースとなります。以下、 MVR適用の考え方について紹介します。

スケーリング(汚れ)

材質選定

発泡性沸点上昇

蒸留水水質サンプルテスト

類似液実績での評価

圧縮機を複数台つなぐ●消費動力UP●イニシャルコストUP

高圧縮タイプの圧縮機●消費動力UP

最も省エネ性に優れる高効率な範囲

典型的な沸点上昇グラフ

省エネ性向上

苛性ソーダ濃縮塩の濃縮

etc.糖液の濃縮お茶・エキスの濃縮

クーラント・離型剤排水濃縮

【処理液濃度と沸点上昇の関係】

16℃0℃

沸点上昇

伝熱面積

[m2]

消費電力

[kW]

20℃

0℃処理液濃度

圧縮温度差[℃]

晶析装置乾燥装置

etc.

伝熱面積

最適設計ポイント

消費電力

【圧縮温度差と伝熱面積の関係※】

圧縮機

※出典:松尾、中西(2016),「MVRの概要」、エレクトロヒート No.209

安価で高効率かつコンパクト。流間が狭いため、固形物汚れが詰まりやすく、排水、スラリー液などには不適。きょう雑物の無い流体には適する。24時間工場等での安定運転の為に予備機を設置し、交互に切替え運転を行うケースがある。プレートは分解可能タイプがあり、清掃・点検が可能であるが、大型になるとメンテナンスも複雑になる。イニシャルコストは廉価であるが、汚れ対策のメンテナンス費が嵩む場合がある。

歴史が古くプレート式が日本市場に本格参入するまで主役的な存在。プレート式のような高効率とはならないが、多数の管を用いた形状から、メンテナンスが容易であり、高圧設計、肉厚腐食代設計、安定した性能を維持することが可能であることから、現在でも多くの石油・化学プラントで採用されている。プレート式と比較すると効率的には劣るが、大流量で安定性が特徴。

排水系や閉塞を起こしやすい流体を扱う場合に用いることで、高効率で長期間安定運転が可能となる。多管式に比べて小型設計。伝熱板の隙間をらせん状に流れるので、流体中の汚れを掻き上げながら旋回し汚れを除去する「自己洗浄作用」が働く。予備機の設置が不要となる場合もあり、メンテナンス頻度も少なく済むため、ランニングコストの大幅な低減が可能。

◎食品プラントの廃熱回収

◎空調、化学プラントの清浄な流体からの熱回収

◎下水汚泥、工場排水など汚れの激しい流体からの熱回収

◎化学、製紙、繊維など各種工程の汚れた流体からの熱回収

◎石油、化学、製紙、食品、医薬などほぼ全てのプラントに採用されている

監修:MDI株式会社、株式会社クロセ15 16

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廃熱(廃蒸気)

排ガス入口排ガス入口排ガス入口

廃熱回収のポイントと注意点廃熱源と熱交換器の選択ヒートポンプを有効に機能させるためには、いかに上手に廃熱を活用するかが重要なポイントになります。そのためには、まずは、工場から排出されている廃熱が何処にあるかを把握し、その廃熱に合った適切な熱交換方式を選択することが重要です。熱交換器の選択にあたっては、廃熱源の「温度」「流量」「流体の性状」「スケール固着の有無」「腐食性」「工場・設備の状況」など、いくつかの判断要素があります。 以下、廃温水、廃ガスからの熱回収の注意点を紹介します。

廃熱の発生箇所(例)

◎排水処理設備(温水) ◎冷却塔の戻り温水 ◎洗浄後の温水 ◎乾燥炉、熱処理炉からの排気◎ボイラー排ガス、ドレン、ブロー水◎食品調理後の排温水、排気

排水中には、髪の毛、食物残渣、砂、有機物などの多種多様なスケールが混在しており、廃熱回収では熱交換器の閉塞に最も注意が必要です。また、熱交換器は運転中にスケール分の付着により性能低下が起きるので、定期的な開放点検・洗浄が必要となります。とはい

え洗浄の頻度は極力少なく、かつメンテナンスがしやすいタイプの熱交換器を選定する事が大切です。《 熱交換器の機種選定 》工場で広く使用されている熱交換器としては「プレート式」「シェル&チューブ式(多管式)」「スパイラル式」の3種がありますが、各々の機種には一長一短があるため、表に記載の特徴と得意用途をご参考下さい。

廃温水からの熱回収の注意点

燃焼排ガス中には、腐食成分であるNOx、SOxが含まれている場合があります。これらの成分を含むガスを冷却して熱回収を行った場合、結露水中に硝酸、硫酸が発生し金属を腐食させることがあり、酸露点問題となっています。一方で酸露点を通過して徹底的に熱回収を行うと莫大な潜熱を得ることができ、メリットが多いのも事実です。

酸腐食のリスクがある場合、絶対に腐食させてはいけない現場なのか?、それとも投資回収メリットがあれば、多少腐食リスクがあってもメンテナンスで対応できればいいのかという考え方で、廃熱回収の選択は大きく異なります。そもそも熱交換器は絶対壊れない構造というものはありませんが、腐食リスクはその考え方で材質選定に選択肢がでるため多くの可能性があるのも事実です。都市ガス、LPガスの燃焼排ガス中にもNOxがあり、微小ではありますがSOxも含まれています。従って長期的にみるとSUS316でも孔食リスクは存在することになります。しかし燃焼時に多くの水分も発生するために、潜熱が大量に回収できることがメリットとなります。一方、A重油では、大量のSOxが含まれており、水分は都市ガスの半分以下であるため潜熱メリットは少ないものとなります。A重油廃ガスでは、SUS316だけでなく腐食に強いと言われているチタンでも腐食してしまう事例があるため、

廃熱回収をする場合には都市ガスやLPガスに燃料転換以後に検討することが妥当と言えます。これらの排ガスを熱回収する熱交換器は、極力スキマ腐食を防止するために、カシメ構造のフィンチューブは避ける必要があります。さらには、排ガスの抵抗が大きくなると動力を必要としてしまうため、低圧力損失設計を行うことも大切です。しかし低圧力損失設計と高効率化は相反することになる場合があるため、気体を相手にする排ガス熱回収熱交換器は、難しい設計環境といえます。チューブタイプの熱交換器は全般的に圧力損失が大きくなる傾向であるため、最近では排ガス専用設計のプレート式熱交換器も登場し、低圧力損失と高効率の両立、モジュール構造での簡単な交換対応も可能となるアイテムが登場しています。

廃ガスからの熱回収の注意点

プレート式熱交換器

スパイラル式熱交換器

シェル&チューブ式(多管式)熱交換器

分 類 特 徴 得意とする廃熱回収用途

スパイラル式熱交換器

排ガス用プレート式熱交換器

安価で高効率かつコンパクト。流間が狭いため、固形物汚れが詰まりやすく、排水、スラリー液などには不適。きょう雑物の無い流体には適する。24時間工場等での安定運転の為に予備機を設置し、交互に切替え運転を行うケースがある。プレートは分解可能タイプがあり、清掃・点検が可能であるが、大型になるとメンテナンスも複雑になる。イニシャルコストは廉価であるが、汚れ対策のメンテナンス費が嵩む場合がある。

歴史が古くプレート式が日本市場に本格参入するまで主役的な存在。プレート式のような高効率とはならないが、多数の管を用いた形状から、メンテナンスが容易であり、高圧設計、肉厚腐食代設計、安定した性能を維持することが可能であることから、現在でも多くの石油・化学プラントで採用されている。プレート式と比較すると効率的には劣るが、大流量で安定性が特徴。

排水系や閉塞を起こしやすい流体を扱う場合に用いることで、高効率で長期間安定運転が可能となる。多管式に比べて小型設計。伝熱板の隙間をらせん状に流れるので、流体中の汚れを掻き上げながら旋回し汚れを除去する「自己洗浄作用」が働く。予備機の設置が不要となる場合もあり、メンテナンス頻度も少なく済むため、ランニングコストの大幅な低減が可能。

◎食品プラントの廃熱回収

◎空調、化学プラントの清浄な流体からの熱回収

◎下水汚泥、工場排水など汚れの激しい流体からの熱回収

◎化学、製紙、繊維など各種工程の汚れた流体からの熱回収

◎石油、化学、製紙、食品、医薬などほぼ全てのプラントに採用されている

監修:MDI株式会社、株式会社クロセ 16

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負荷設備

ボイラー

給水 燃料投入 ボイラー出口 熱消費前 熱消費後 排水

100%

50%

0%

蒸気の有効利用54%

給水

燃料

産業用ヒートポンプ導入事例「ものづくりに電気」掲載事例一覧

機械輸送用機械

電気機械電子デバイス

食品飲料

窯業ゴム・プラスチック

什器

化学医薬

印刷紙・パルプ

洗浄・殺菌・給湯 加温・保温 乾 燥 蒸留・濃縮

工場の省エネルギーを進めるためには、エネルギー供給のどこで損失が発生しているかを見える化する必要があります。蒸気の場合、供給ロスは主に「ボイラー」「蒸気配管」「負荷設備」で発生します。

蒸気の有効利用率について

❶排ガスロス、 ❷缶体からの放熱、 ❸ボイラーブロー水によるロス 等※これ以外にも、ボイラー起動時等に発生するプレパージ、ポストパージといったロスがあります。

蒸気供給ロスの主な発生要因

「蒸気有効利用率の実測データ」は、燃料を投入してから蒸気として利用されるまでの蒸気供給ロスを実測したデータ(29カ所の平均値)です。◎蒸気の有効利用率は平均54%であり、 投入したエネルギーの約半分はロスとなっていることがわかります。◎配管ロスについては、配管長の影響が大きいのですが、特に、配管が長い工場では、 投入したエネルギーの3割程度しか利用されていない例もあります。

蒸 気 有 効 利 用 率 の実測データ

蒸気エネルギー利用の実例

ボイラー部

❹蒸気配管表面からの放熱、 ❺ドレントラップ不良による蒸気漏洩❻バルブやフランジ部からの放熱や蒸気漏洩 等蒸気配管部

❼蒸気利用後のドレンロス 等※これ以外にも、生産設備本体からの放熱があります。

負荷設備部

❶+❷+❸➡ボイラーロス10%

❹+❺+❻➡配管ロス26%

90%

64%

10%❼➡ドレンロス10%

❶排ガスロス❷缶体放熱

❸ボイラーブロー❺ドレントラップからの 蒸気漏洩

蒸気配管ロス

❼ドレン排水

❻バルブ、フランジからの 放熱、蒸気漏洩

❹配管放熱

【 蒸気有効利用率の実測データ 】

用 途業 種

※公開されているデータから当センターで作成

ブレーキディスクの湯洗浅間技研工業㈱〔vol.5〕

部品洗浄用超純水の給水加温KOA㈱ 西山工場〔vol.3〕

電池材料製造用温水㈱田中化学研究所 福井工場〔vol.3〕

ビール製造装置の洗浄、殺菌サッポロビール㈱ 九州日田工場〔vol.2〕

CIP洗浄用温水の製造高崎森永㈱ 第一工場〔vol.3〕

アイス菓子製造機械の洗浄用温水北陸メイトー乳業㈱ 白山工場〔vol.3〕

CIP洗浄用温水の製造メルシャン㈱ 藤沢工場〔vol.4〕

調理器具洗浄用、調理用温水㈱フレッシュダイナー山形工場〔vol.4〕

洗浄用温水/フリーザーの予冷日東ベスト㈱ 山形工場〔vol.5〕

自動車部品洗浄液の加温アイシン・エィ・ダブリュ㈱ 蒲郡工場〔vol.2〕

エンジン部品の表面処理(湯洗、脱脂、化成)ヤマハ発動機㈱ 袋井南工場〔vol.3〕

半導体ウエハ洗浄の温純水加温ルネサスセミコンダクタ九州・山口㈱熊本川尻工場〔vol.4〕

塗装前処理の薬液加温(脱脂、化成)㈱岡村製作所 中井事業所〔vol.4〕

塗装前処理の洗浄用温水㈱岡村製作所 富士事業所〔vol.5〕

嫌気性廃水処理設備の加温カルビー㈱ 新宇都宮工場〔vol.3〕

循環水システムの加温サントリープロダクツ㈱高砂工場〔vol.3〕

プリン原料の保温信州ミルクランド㈱〔vol.5〕

麺の茹で工程用温水田村製麺㈲〔産業用HP事例集〕

チョコレートクリームの加温ブルボン㈱ 長岡工場〔日刊工掲載〕

塗装乾燥ブースAPCエアロスペシャルティ㈱ 各務原工場〔vol.5〕

大型塗装乾燥炉アンデックス㈱ 山波工場〔vol.5〕

変圧器ケースの電着塗装乾燥㈱南電気製作所〔vol.2〕

変圧器コイルの乾燥㈱高岳製作所 生産本部〔vol.3〕

抄紙機の乾燥工程(フラッシュ蒸気の圧縮)日本製紙クレシア㈱開成工場〔vol.4〕

プラスチックフィルムのドライラミネート乾燥須田産業㈱ 竜洋工場〔vol.3〕

プラスチックフィルムのドライラミネート乾燥北上産業㈱〔vol.5〕

ゼリービンズの乾燥春日井製菓㈱〔エレクトロヒート No.199〕

バイオエタノールの蒸留北海道バイオエタノール㈱十勝清水工場〔vol.4〕

塩の濃縮室戸海洋深層水㈱〔vol.5〕

※平成19年度省エネルギー優秀事例全国大会の事例から

燃焼ロス25.4%

投入エネルギー100%

スチームトラップ・ドレンロス等21.0%

配管ロス等27.0%

熱有効利用26.6%熱有効利用26.6%

●:廃熱利用  ●:冷温同時  ●:空気熱源

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産業用ヒートポンプ導入事例「ものづくりに電気」掲載事例一覧

機械輸送用機械

電気機械電子デバイス

食品飲料

窯業ゴム・プラスチック什器

化学医薬

印刷紙・パルプ

洗浄・殺菌・給湯 加温・保温 乾 燥 蒸留・濃縮

❶排ガスロス、 ❷缶体からの放熱、 ❸ボイラーブロー水によるロス 等※これ以外にも、ボイラー起動時等に発生するプレパージ、ポストパージといったロスがあります。

❹蒸気配管表面からの放熱、 ❺ドレントラップ不良による蒸気漏洩❻バルブやフランジ部からの放熱や蒸気漏洩 等

❼蒸気利用後のドレンロス 等※これ以外にも、生産設備本体からの放熱があります。

用 途業 種

ブレーキディスクの湯洗浅間技研工業㈱〔vol.5〕

部品洗浄用超純水の給水加温KOA㈱ 西山工場〔vol.3〕

電池材料製造用温水㈱田中化学研究所 福井工場〔vol.3〕

ビール製造装置の洗浄、殺菌サッポロビール㈱ 九州日田工場〔vol.2〕

CIP洗浄用温水の製造高崎森永㈱ 第一工場〔vol.3〕

アイス菓子製造機械の洗浄用温水北陸メイトー乳業㈱ 白山工場〔vol.3〕

CIP洗浄用温水の製造メルシャン㈱ 藤沢工場〔vol.4〕

調理器具洗浄用、調理用温水㈱フレッシュダイナー山形工場〔vol.4〕

洗浄用温水/フリーザーの予冷日東ベスト㈱ 山形工場〔vol.5〕

自動車部品洗浄液の加温アイシン・エィ・ダブリュ㈱ 蒲郡工場〔vol.2〕

エンジン部品の表面処理(湯洗、脱脂、化成)ヤマハ発動機㈱ 袋井南工場〔vol.3〕

半導体ウエハ洗浄の温純水加温ルネサスセミコンダクタ九州・山口㈱熊本川尻工場〔vol.4〕

塗装前処理の薬液加温(脱脂、化成)㈱岡村製作所 中井事業所〔vol.4〕

塗装前処理の洗浄用温水㈱岡村製作所 富士事業所〔vol.5〕

嫌気性廃水処理設備の加温カルビー㈱ 新宇都宮工場〔vol.3〕

循環水システムの加温サントリープロダクツ㈱高砂工場〔vol.3〕

プリン原料の保温信州ミルクランド㈱〔vol.5〕

麺の茹で工程用温水田村製麺㈲〔産業用HP事例集〕

チョコレートクリームの加温ブルボン㈱ 長岡工場〔日刊工掲載〕

塗装乾燥ブースAPCエアロスペシャルティ㈱ 各務原工場〔vol.5〕

大型塗装乾燥炉アンデックス㈱ 山波工場〔vol.5〕

変圧器ケースの電着塗装乾燥㈱南電気製作所〔vol.2〕

変圧器コイルの乾燥㈱高岳製作所 生産本部〔vol.3〕

抄紙機の乾燥工程(フラッシュ蒸気の圧縮)日本製紙クレシア㈱開成工場〔vol.4〕

プラスチックフィルムのドライラミネート乾燥須田産業㈱ 竜洋工場〔vol.3〕

プラスチックフィルムのドライラミネート乾燥北上産業㈱〔vol.5〕

ゼリービンズの乾燥春日井製菓㈱〔エレクトロヒート No.199〕

バイオエタノールの蒸留北海道バイオエタノール㈱十勝清水工場〔vol.4〕

塩の濃縮室戸海洋深層水㈱〔vol.5〕

:空気熱源:冷温同時:廃熱利用

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Page 20: 産業用ヒートポンプ 活用ガイド - 日本エレクトロ …...ELECTRO HEAT PUMP Renewable Heat Energy efficiency Low carbonization 産業用ヒートポンプ 活用ガイド

発行 一般社団法人 日本エレクトロヒートセンター監修 一般社団法人 日本エレクトロヒートセンター ヒートポンプ技術部会〒103-0011 東京都中央区日本橋大伝馬町13-7 日本橋大富ビル6F TEL.03-5642-1733 FAX.03-5642-1734

2017.3

http://www.jeh-center.org/JEHC