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慈恵ICU勉強会2016年5月31日研修医 新井宏和
JAMA.2016;315(5):480-488
Introduction
▶COPDはICU入室患者の基礎疾患として頻度が高いAmJRespir Crit CareMed.2007;176(6):532-555.
▶NPPVはCOPD患者の挿管管理を減らし、予後を改善させてきたが、重症度次第では挿管管理が避
けられない時もあるBMJ.2003;326(7382):185
Lancet.2000;355(9219):1931-1935.
▶代謝性アルカローシスはICU患者にしばしば起こり、利尿薬やglucocorticoidの使用、嘔吐、permissivehypercapniaにより惹起される
CritRevClinLabSci.1999;36(5):497-510.
▶Weaning中の人工呼吸器管理下のCOPD患者では、呼吸性アシドーシス+代償性代謝性アルカローシスとなる頻度が高い
IntensiveCareMed.2010;36(5):859-863.
▶代謝性アルカローシスは呼吸中枢の抑制・心拍出量の低下・酸化モグロビンの分離を促進・低K血症・低P血症をおこす可能性がある
Crit CareMed.1980;8(12):725-728.ActaAnaesthesiolScand.1983;27(3):252-254
IntensiveCareMed.1982;8(6):269-274Chest.2003;124(2):490-493.
▶方法:retrospectiveanalysis、2 ICUs(アメリカ)、2001-2008に入室した全患者のうち、以下を満たす
・滞在が24時間以上・15歳以上・代謝性アルカローシスなし(serumbicarbonate<28mEq/lまたはpH<7.35)
・CO2貯留なし(PaCO2<45mmHg)
ICU滞在期間中にserumbicarbonate値の上昇を認めた群とそうでない群の2群に振り分け検討▶結果:N=18982 (ICU全患者=23529)
代謝性アルカローシス進行群⇒人工呼吸器期間↑
▶acetazolamideは代謝性アルカローシスを合併する人工呼吸器管理下のCOPD患者へ、呼吸促進のために使用されてきた
Eur Respir J.1998;12(6):1242-1247
下図:『標準薬理学 第4版』医学書院より
HCO3-の喪失pH低下
Chemoreceptor刺激呼吸促進
※Preliminarystudy▶方法:Case-control study、ICU患者(フランス、大学病院)、挿管管理下、mixedmetabolicalkalosisを伴うCOPD患者
(Serumbicarbonate>26mEql/Lかつ動脈血pH≧7.38の場合に投与)acetazolamide500mg/day投与 VS投与なし:血液ガス所見・weaning期間・抜管成功率を比較
▶結果:投与26人,投与なし26人(n=52)
▶weaning期間, 抜管成功率に有意差なし。PaCO2値の有意な変化もなし(p=0.71)
ただし、500mg/dayより高容量投与での呼吸促進効果に検討の余地あり
▶方法:後ろ向き観察研究、フランス、ICU、COPDを有し要挿管管理の急性呼吸不全患者
:weaning中にacetazolamideを投与された患者を検討:各治療者の裁量で、血液ガス所見を評価し
Acetazolamide250mgor500mgor1000mg/day投与24時間後のserumbicarbonate濃度を検討集まった患者データをもとに容量反応曲線を作成
▶結果:n=68
▶容量依存性に効果発現▶ fulosemide投与下では効果減弱
これまで高容量でのacetazolamideの効果を検証する研究はなかったそこで今回のRCT↓
JAMA.2016;315(5):480-488
Methods
【Objective】COPD既往のある重症患者で、代謝性アルカローシスを生じている患者へのアセタゾラミド1000-2000mg/dayの投与は、mechanicalventilation期間を短くできるかどうかを評価する
【Design】▶多施設共同ランダム化並行群比較試験
▶期間:2011年10月~2014年7月
▶実施施設:フランスの15施設のICU
▶サンプル:人工呼吸器管理(24時間以上)を要するCOPD患者694人
【Inclusioncriteria】
▶ 18歳以上▶COPDの既往あり(診断基準:AmericanThoracicSocietycriteria)▶気管挿管や気管切開の管理が必要
▶発症から24時間以内に評価
▶喫煙歴、慢性咳嗽などの症状、理学的所見、画像、
スパイロメトリー、血液ガスの所見、など
【Exclusion criteria】▶司法後見人あり▶フランスの健康保険システムに所属していない▶妊娠▶嚢胞性繊維症▶気管支拡張症▶アセタゾラミド、サルファ剤にアレルギーあり▶アセタゾラミド投与禁忌▶他の研究に参加▶蘇生不能と評価
【StudyInterventions】
▶Acetazolamide500mg(loopdiuretics併用患者は1000mg)1日2度投与群と、プラセボ(生理食塩水10ml)投与群にランダム割り付け
▶ICU入室後、48時間以内に介入、最大28日間まで観察▶Serumbicarbonate>26mEql/Lかつ動脈血pH≧7.35の場合に投与
▶AM7-8時での血液ガス所見で判断▶患者・ICU医療スタッフに対して盲検化▶その他病態へは一般的なガイドラインに基づき対応
(acetazolamide以外の利尿薬も適宜使用)
◎Weaningの開始基準•原因であった病態の制御良好•鎮静なしでGCS>12•気道分泌物が過多でないor有効な咳反射あり•体温38.5度以下•循環動態安定• ジスキネジアやジストニアなし• ヘモグロビン8g/dl以上•呼吸数35/min以下• PEEP≦8mmHg未満• FiO2が50%未満• P/F比150mmHg以上
▶SBT:1時間のT-pieceを用いた酸素投与
◎SBTクリア基準•呼吸数35/min以下• P/F比150mmHg以上• PaCO2増加が10mmHg未満• pH低下が0.1未満•循環動態安定•精神状態安定•頻回の気管吸引が必要でない•上気道閉塞なし
◎抜管に関して
・再挿管予防を目的にNPPVを使用(使用基準なく各治療者の判断で)
・抜管後48時間、再挿管がなければ離脱に成功と評価
・気管切開の導入やweaning困難な患者への対応は各治療者の裁量で
◎再挿管やNPPV使用の基準•精神状態の変化(激昂や抑うつ)•頻呼吸35回以上•頻脈、血圧異常、不整脈の出現•気道分泌物の排泄困難や上気道閉塞• FiO2>50%でも、PaCO2増加が10mmHg以上、pH低下が0.1以上、PaO2が60未満、SpO2が90%未満
【Study Outcomes】Primary Outcome挿管管理期間
Secondary Outcomes血液ガス所見の変化、人工呼吸器パラメーターの変化、
weaning期間、SBTの回数、予期せぬ抜管や人工呼吸器関連肺炎の頻度、
抜管後のNPPVの使用、weaning成功率、ICU滞在期間、ICU死亡率
【StatisticalAnalysis】▶Preliminarystudyよりサンプルサイズを算出した
▶プラセボグループの人工呼吸器期間が12日と推定▶両群の間で15%の相対的リスク減少をgoalとした▶検出力:80%、有意水準:両側5%
⇒サンプルサイズ:380人
【StatisticalAnalysis】
▶解析:intentiontotreat
▶計算方法:theKaplan-Meiermethod
▶定性分析:Χ2検定あるいはFishcher exact検定
▶ハザード比算出:Coxmodel
▶統計ソフト:SAS softwareversion9.4(SASinstituteInc)
▶382人が割り付けへ
Result
▶acetazolamide群188人 VSplacebo群194人▶投薬対象:acetazolamide群131人、placebo群149人
【患者背景①】
Mechanicalventilationを要した原因は肺炎・気管支炎が6割、左心不全が2割
【患者背景②】
▶呼吸性アシドーシスの代謝性代償を認めた
※1日ごとの変化量
※weaning開始から抜管まで
▶Hazard Ratioはいづれも有意な上昇認めず
▶臨床的にはloopdiureticsやcorticosteroidsの使用がない患者群や
puremetabolicalkalosisiのある患者群に有効であった可能性
※Eventsは患者群の中で実際にmechanicalVentilationを終了できた患者数
▶ HazardRatioはいづれも有意な上昇認めず
※Eventsは患者群の中で実際にmechanicalVentilationを終了できた患者数
Discussion-有意差なしの結果について
▶serumbicarbonate減少による呼吸促進作用を示すデータは認めず
▶もともとのゴール:挿管期間12日間から15%減も、実際の結果:7日間から10%減も、臨床的には劣らない程の意義があるのではないか
▶人工呼吸器管理期間に関して、両群の差は16時間(約10%)であったので、統計学有意差がでなかったのは、検出力不足に過ぎないのでは
Discussion-薬理学の観点から
▶呼吸促進を引き起こすのに十分なacetazolamideの容量は確定されていないのが現状
Int JCrit Illn Inj Sci.2015;5(1):3-8
▶炭酸脱水素酵素にもアイソザイムがあり、II・IV・XIIIへの選択的阻害は呼吸促進を引き起こすとされるが、acetazolamideは選択性が弱い
Crit Care.2012;16(4):318
▶II・IV・XIIIへより選択的に阻害作用をもつ薬剤の使用が、今後は重要でないか
Discussion-acetazolamideの弊害
▶挿管者の割合に関して、約2週間後の時点で両群は拮抗し始め、3週目にはほぼ同等の成績となった
▶acetazolamideはやはり多少は呼吸促進作用があり、呼吸筋への負荷が大きくなっていったことが
結果に現れたか
Limitation▶大半の患者は混合性の代謝性アルカローシスでかつ、
軽微な代謝性アルカローシスであった
▶人工呼吸器での管理期間やICUでの予後に対して、より影響力のある他因子の可能性(例:年齢、
airflow制限、長期ステロイド使用、横隔膜萎縮、など)
批判的吟味
サンプルに関して
▶普段は治療対象とならない軽微なアルカローシス
患者が多い
⇒よりアルカローシスの進行した患者群を投与対象と
できなかったか
▶割り付けまでできた症例数は約3年間かけても382人であった⇒アルカローシスの進行した患者のみで十分な症例数
を確保することはより困難ではある
研究デザインに関して
▶効果的な薬理作用が担保できる容量が不明、
PaCO2の有意な減少は認めず、一方で重大な合併症も起きなかった
⇒より高容量での投与で効果をみても
よかったのではないか
▶病態(肺炎や心不全)やCOPD重症度ごとの解析はなし⇒病態や重症度に応じて有効性を検討する
解析があってもよいのでは
結果解釈に関して
▶16時間抜管が早まり、ICU退出も2日ほど早くなったとの結果
⇒著者の主張通り臨床的意義は完全に否定できない
▶挿管者の割合に関して、約2週間後の時点で両群は拮抗し始め、3週目にはほぼ同等の成績となっている⇒acetazolamideの2週間以上の継続投与は推奨されない可能性
Conclusion
▶アセタゾラミド投与群とプラセボ投与群の間では
侵襲的人工呼吸器管理の期間に関して、
統計学的有意差なし
▶両群の差は臨床的には有意な差であると考える
▶本研究は検出力不足にすぎなかった可能性あり
私見
▶結果としてprimaryoutcomeに有意差は出なかったが、著者の主張通り、acetazolamideに見過ごせない有益性があるという意見に賛同する
▶研修医である自身としは、acetazolamide投与のexperienceが少なく、かつ明確なevidenceも示されていないという状況では、積極的な投与を考えづらい
▶今後は各病態ごとへの有効性を検証する研究が望まれる
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