新人研修 ~ 膵癌chuo.kcho.jp/media/chuo/department/d040300/pdfs/2606121.pdf ·...
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膵臓
膵臓
十二指腸
胆嚢
膵尾部 膵体部
膵頭部
胆管
膵管
ファーター乳頭
長さ 約15cm
幅 3~5cm
厚さ 約 2cm
重量 約 70g オッジ筋
(十二指腸内容物が膵管 に逆流しないように圧を 調節している)
膵臓の構造と機能
膵腺房 膵酵素(アミラーゼ、リパーゼ、トリプシン)を分泌 食べ物を消化する
インスリン、グルカゴンを分泌 血糖を調節する
重炭酸塩を分泌 胃酸を中和する 主膵管
膵導管
ランゲルハンス島
外分泌
内分泌
0
10,000
20,000
30,000
40,000
50,000
60,000
70,000
80,000
女性(2004年)
0
10,000
20,000
30,000
40,000
50,000
60,000
70,000
80,000
男性(2004年)
部位別癌罹患数と死亡数
男性 (2004年)
罹患数 死亡数
女性 (2004年)
胃 肝臓
膵臓
胆嚢・胆管
大腸
直腸
結腸
肺 肝臓
膵臓
胆嚢・胆管
大腸
直腸
結腸
乳房
肺
国立がんセンターがん対策情報センター がん情報サービスganjoho.jp
(人)
胃
(人)
0
部位別 5年生存率
全部位 胃
結腸
肝臓
乳
子宮
膵臓
直腸
肺
卵巣
食道
前立腺
口腔・咽頭
胆嚢・胆管
80 20 40 60 0 100 (%)
1993~1996年 男女計
膵癌は5年生存率が極めて悪い
出典:がん研究助成金「地域がん登録」研究班、第3次対がん総合戦略研究事業「がん罹患・死亡傾向の実態把握の研究」班推計表
膵癌生存率の推移
膵癌登録2007
年代毎の生存率の推移(全症例、全部位、全Stage)
n MST 3年 5年
1981〜1990 9,969 5.2 6.4% 4.4%
1991〜2000 10,731 6.5 9.0% 6.3%
2001〜2004 3,784 10.2 11.7% —
累積生存率
0.0
1.0
0.9
0.8
0.7
0.6
0.5
0.4
0.3
0.2
0.1
0 12 24 36 48 60 72 84 96 108
生存期間(月)
2001〜2004
1981〜1990
1991〜2000
膵腫瘍の組織型分類 漿液性嚢胞腫瘍
粘液性嚢胞腫瘍
膵管内乳頭粘液性腫瘍
異型上皮および上皮内癌
浸潤性膵管癌
腺房細胞腫瘍
膵
腫
瘍
上皮性腫瘍
非上皮性腫瘍
外分泌腫瘍
併存腫瘍
分化方向の不明な上皮性腫瘍
分類不能
その他
11,819
0
11,023
307
8
111
44
326
27
328
229
16
10,336
87
膵癌登録委員会.膵癌全国登録調査報告(20年間の総括).膵臓,18: 97-169, 2003
膵癌の定義 膵管上皮由来の浸潤性膵管癌
膵癌の進展
①間質の線維化
②膵癌は膵内、膵外へと浸潤 リンパ管や静脈などの脈管浸潤→
リンパ節転移
神経周囲浸潤
周囲消化管(胃、十二指腸、大腸)浸潤
動脈、静脈、門脈へ浸潤
③遠隔転移 血行性転移: 肝臓、肺、骨
リンパ節転移
腹膜播種
進行度分類(膵癌取扱い規約第6版)
Stage I 腫瘍は2cm以下で膵臓の内部に限局し、リンパ節転移はない。
Stage II 腫瘍は2cm以下で膵内に限局しているが、1群リンパ節に転移がある。腫瘍は2cmを超えるが膵内にとどまり、リンパ節転移はない。
Stage III 腫瘍は膵臓の外へ少し出ているが周囲の大血管まで及んでおらず、リンパ節転移はないか、1群リンパ節までに転移が限られている。または、腫瘍は膵臓の内部にとどまっているが、2群リンパ節まで転移がある。
Stage IVa 腫瘍が周囲の大血管、他臓器まで及んでいる。
Stage IVb 膵臓から離れた臓器に転移。
病期(stage)の内訳
日本膵臓学会、膵癌登録報告2007
StageⅠ Stage Ⅱ StageⅢ Stage Ⅳa Stage Ⅳb
2001-2004
1999-2000
1981-1990
0% 20% 40% 60% 80% 100%
StageⅠ、Ⅱ、Ⅲで発見される割合は、最近になり少しずつ増加しているが、約80%以上が診断時すでにStageⅣの進行度となっている。
膵癌Stage別予後
膵癌登録委員会.膵癌全国登録調査報告(20年間の総括).膵臓,18: 97-169, 2003
StageⅠ,Ⅱの予後は他のStageに比べ良好である。
症例の最も多いStageⅣbの予後は非常に悪い
膵癌診断のアルゴリズム
臨床症状、膵酵素/腫瘍マーカー/危険因子、US
CT and/or MRI(MRCP)
EUS and/or ERCP and/or PET
診断確定 可能な限り病理診断を行うことが望ましい
細胞診・組織診(ERP, EUS, US, CT)
膵癌の自覚症状 • 自覚症状の種類や程度は、腫瘍の発生部位や大きさ、進展度などにより異なる。
• 膵癌の初発症状として最も頻度が高いのは腹痛、腰背部痛などの疼痛であり、最初は鈍痛であるが、腫瘍の進展とともに増強する。
• 膵頭部に癌が発生した場合には黄疸で発見されることも多い。
• その他、食思不振、全身倦怠、腹部膨満感などがよく認められる症状であるが、膵癌に特異的な症状はなく、症状が出た時には大半が進行癌になっている。
膵癌登録委員会.膵癌全国登録調査報告
(20年間の総括).膵臓,18: 97-169, 2003
膵癌初発症状
腹痛 32.0%
黄疸 18.1%
腰背部痛 6.3%
食思不振 6.0%
体重減少 4.0%
全身倦怠 4.0%
嘔吐 1.8%
腫瘤 0.8%
なし 7.4%
不明 13.2%
膵酵素の異常率・腫瘍マーカーの陽性率
膵酵素 異常値を有した症例数/有効回答数 %
アミラーゼ 608 / 2,420 25.2
リパーゼ 285 / 811 35.1
エラスターゼ1 686 / 1,447 47.4
合計 2,618 100.0
腫瘍マーカー 異常値を有した症例数/有効回答数 %
CA19-9 1,817 / 2,528 69.4
CEA 862 / 2,476 34.8
DUPAN-2 675 / 1,140 59.2
SPan-1 543 / 711 76.4
合計 2,618 100.0
日本膵臓学会、膵癌登録報告2007
内視鏡的逆行性胆道膵管造影 (ERCP:endoscopic retrograde cholangio-pancreatography)
ERCPとは,十二指腸内視鏡を用いてVater乳頭からカニューレを挿入し造影剤を入れることにより,膵管・胆管を造影する方法をいう。 膵管の狭窄・圧排・閉塞あるいは断裂・拡張像などにより,小さな膵癌などの腫瘍の存在診断に有用である。 合併症に胆道炎,急性膵炎などがある。
FDG-PET •腫瘍細胞ではブドウ糖の細胞膜輸送が正常細胞に比べ亢進していることを利用し、ブドウ糖類似物質であるFDGを腫瘍細胞に取り込ませ、細胞内に蓄積されたFDGの発生するγ線を捉えて画像化したものである。 •膵腫瘍の良悪性の鑑別に用いる。
• CT、MRIに比較して質的診断能は良好であるが、2cm以下の小膵癌に対する診断能の評価は定まっていない。
超音波内視鏡 (EUS) endoscopic ultrasonography
• EUSは消化管のガスの影響を受けることがほとんどないこともあり,感度86~100%,特異度58.3~97%,正診率93%と比較的良好な成績が報告されている。
• EUSは空間分解能が高いため,USやCTで腫瘍が描出されなくても, 腫瘍を直接描出可能な場合が多い。
•特に小膵癌では膵全体を高い空間分解能で観察可能なため,TS1の小膵癌の描出率はUS, CT, MRI,
PET-CTなどに比較しても最も描出率が高い.
• ラジアル型とコンベックス型があり、コンベックス型EUSは穿刺(EUS‐FNA)が可能である。
• ラジアル型はスコープ軸に対して垂直方向、コンベックス型は同一方向の超音波画像が得られる。
ラジアル型 コンベックス型
超音波内視鏡下穿刺術用スコープ
EUS細胞・組織診(EUS-FNA) 穿刺針
EUS‐FNAの膵腫瘤性病変に対する膵癌診断の感度は80~97%,特異度は82~100%である。
当院における膵癌の正診率は23/26(88%)である。 合併症は1.2~6.3%に発生しており,急性膵炎,誤嚥性肺炎,腹痛,消化管出血などを認めたが,重篤な合併症は認めていない。
cStage0, I, II, III cStageⅣa (局所進行)
cStageⅣb (遠隔転移、腹膜播種)
切除可能
化学放射線療法 外科切除 化学療法
補助療法
局所進行切除不能
膵癌治療のアルゴリズム
診断確定
転移(・再発)切除不能
膵頭十二指腸切除術 脾合併膵体尾部切除術 膵全摘術
外科的治療
1)膵切除術
適応条件:主要動脈浸潤がなく、遠隔転移のないStage Ⅰ~Ⅳaの膵癌
2)姑息手術
バイパス手術(胆管空腸吻合,胃空腸吻合など)
膵切除術は、治癒あるいは長期生存が期待できる唯一の治療法であり、遠隔転移を認めず、原発巣を完全に切除することが期待できる例に対する標準的な治療法となっている。
切除不能膵癌に対する治療法
1. 膵癌が局所にとどまっている
2. 近隣の主要血管や膵外神経叢に浸潤がある
化学放射線療法
適応条件:遠隔転移を認めない局所進行切除不能膵癌(Stage Ⅳa)
化学療法
適応条件:遠隔転移を認めない局所進行切除不能膵癌(StageⅣa) 遠隔転移などを有する進行性・再発切除不能膵癌(StageⅣb)
化学放射線療法 化学放射線療法を行う場合の標準的な併用化学療法は
フッ化ピリミジン系抗癌剤またはゲムシタビン塩酸塩である。
投与例
(膵癌診療ガイドライン2013年版)
薬 剤
5-FU
投 与 法
持続点滴
投 与 量
200mg/m2
投与間隔
放射線照射中連日投与
• ゲムシタビン塩酸塩(ジェムザール®)単剤治療
• ゲムシタビン塩酸塩+エルロチニブ塩酸塩(タルセバ®)併用治療
• S-1(ティーエスワン®)単剤治療 • FOLFIRINOX療法
が推奨される。
化学療法
塩酸ゲムシタビン(ジェムザール注)
代謝拮抗剤
作用機序: 細胞内でデオキシシチジンキナーゼによりリン酸化され、 二リン酸化物(dFdCDP)及び三リン酸化物(dFdCTP)になる。 dFdCTPはDNA鎖に取り込まれ、DNA合成を阻害する。 用法・容量:
3 コース
1日目 8日目 15日目
休薬
ゲムシタビン週1回1,000mg/m2 30分かけて点滴静注
1コース
2週 3週 1週 4週
2 コース
一般名 : エルロチニブ塩酸塩
標的 : EGFR(上皮増殖因子受容体)
タルセバ
タルセバとゲムシタビン併用療法
第1日 第8日 第15日 第22日 第29日 第36日 第43日 第50日
サイクル1(4週) サイクル2
・・・
100 mg/日 連日経口投与
・・・
2週 2コース
4週 3コース
休薬
TS-1 1日2回 朝夕服用
1コース
体表面積 初回基準量(テガフール相当量)
1.25m2未満 40mg/回
1.25m2以上 ~1.5m2未満 50mg/回
1.5m2以上 60mg/回
S-1は血中5-FU 濃度を上げて抗腫瘍効果を高め、付随して増大する消化器毒性を軽減する。
テガフール(Tegafur)・ギメラシル(Gimeracil)・ オテラシルカリウム(Oteracil potassium)の配合剤
TS1
FOLFILINOX (オキサリプラチン、イリノテカン、フルオロウラ
シル、ホリナートカルシウム併用療法)
FOLFILINOXの毒性はGEMより強いため、全身状態の良好な患者の治療選択肢の一つとなりうる。
生存期間中央値
FOLFILINOX 11.1ヶ月
GEM 6.8ヶ月
PS0-1の遠隔転移のある膵癌患者324例でのstudy
2013年12月に保険収載された。
ドレナージ方法の選択
ENBD (Endoscopic naso-
biliary drainage)
内視鏡的経鼻胆道
ドレナージ
外瘻術 内瘻術
Plastic Stent (Tube Stent)
EMS (Metalic Stent)
自己拡張型メタリックステント
MRCP
ERBD留置例:膵頭部癌
ERP ERC
ERBD
・総胆管下部にしめつけ様狭窄あり。
・主膵管は頭部にて途絶する。
EST(小切開)の上、ERBD tube stent
(Flexima)を狭窄部をまたぐ形で留置。
メタリックステントの分類
Uncover・Cover 手術不能悪性胆道閉塞の患者に対し、閉塞性黄疸症状を長期にわたり改善することを目的として留置される。
ステントの網目から腫瘍がステント内に浸潤して再閉塞がおこる。それを防ぐためカバー付きステントが開発された。
アンカバータイプ パーシャルカバー
タイプ フルカバータイプ
膵癌は2cm以下でも早期に診断できたといえない。
腫瘍の大きさ 2001-2004
TS1(=<2.0cm) 255(9.7%)
TS2(2.1-4.0cm) 1327(50.7%)
TS3(4.1-6.0cm) 671(25.6%)
TS4( >6.0cm) 292(11.2%)
不明 72(2.8%)
Stage分類 2001-2004
Stage I 47(1.8%)
Stage II 60(2.3%)
Stage III 393(15.0%)
StageIVa 679(25.9%)
StageIVb 1214(46.4%)
不明 224(8.6%)
47/255=18.4%
小膵癌を発見するには
• 症状/検査/膵癌の危険因子で積極的に腹部US
を施行し、主膵管拡張(2mm以上)、分枝膵管拡張、嚢胞などの間接所見を拾い上げる。 異常所見を有する患者に対して、MRCPで膵管全体を俯瞰し、EUSで膵全体を精査する。
• 描出困難な上皮内癌の診断にはERPに引き続いて内視鏡的膵管ドレナージ(ENPD)を留置し、繰り返し膵液細胞診を行うことが有用である。
• 6ヶ月毎に画像検査を行う。腹部USは6ヶ月毎、
MRCP、EUSは1年毎。
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